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SECによるゴールドマン・サックス(GS)の訴追は、業界では話題のようですね。面白い文書を入手しましたので、メモ的に書いてみようと思います。まず、SECの訴状から、抜書きしてみましょう(番号は、訴状に付されたものです)。これはSECの主張に過ぎず、事実かどうかは裁判で明らかにされる事柄です。
 
13. CDO(collateralized debt obligation 担保付債権)は、RMBS(residential mortgage-backed securities、住宅用抵当権担保証券)を含む債権により担保された債権である(obligationは債務ですが、投資家から見れば債権なので、債権と訳しておきます)。この証券はパッケージ化され、一般にはSPV(special purpose vehicle、特別目的媒体)により保有され、SPVがその資産を裏づけとして保有者に支払をするノートを発行する。合成(synthetic シンセティック)CDOでは、SPVは実際に収益を生む資産のポートフォリオを保有せず、ポートフォリオのパフォーマンスを参照とするCDS(credit default swap クレジット・デフォルト・スワップ)取引を行う。ただし、本件のSPVは、投資家への支払を確保するために、いくらかの担保証券を保有していた。
 
16..Paulson(ヘッジ・ファンド)はGSとの間で、Paulsonが参照債権の選定に参加し、GSとの間でプロテクションを買うCDS取引によりRMBSポートフォリオのショート・ポジションを取る(空売りをする)ことが可能なCDOの組成について、相談した。
 
18.この時期、GSは、CDO取引のマーケティングが困難になりつつあることを認識していた。
 
19.GS及び担当者のTは、もしPaulsonのようなショート・ポジションの投資家が選定に関与したことを開示したら、合成CDOを売ることが困難であることを知っていた。逆に、彼らは、経験のある独立した第三者が担保管理者としてポートフォリオを選定したことを示せば、CDOの販売に役立つことも知っていた。
 
20.GSは、また、有力な見込み客であるIKBが、担保管理者のいないCDOには投資しないということも知っていた。
 
22.2007年1月頃、GSはACAにPaulsonがスポンサーであるCDOのポーフォリオ選定代理人になるよう提案した。
 
23.2007年1月、GS、Paulson、ACAの間で交渉が持たれた。Paulsonが選定されたポートフォリオの空売りをする意図があることをGSは知っていたが、ACAは知らなかった。
 
35.同年2月、PaulsonとACAは、CDOであるABACUS2007-AC1のためのRMBS90銘柄の選定に合意した。
 
36.GSのABACUS2007-AC1用の販売資料は、ACAが参照ポートフォリオを選定したと記載する一方で、CDOの投資者と反対の経済的利害を有するPaulsonが参照ポートフォリオの選定に重要な役割を果たしたことを記載しなかった点で、虚偽かつ誤解を生じさせるものであった。
 
38.投資家は、ポートフォリオを選定した者は投資家と経済的利益を同じくしていると確信していた。
 
44.GSはまた、ACAを誤解させ、PaulsonがABACUS2007-AC1のエクイティ部分(資本構成の最下層に当たり最もリスクが高い部分)を保有し、したがってCDOの投資者とロング・ポジションを共有していると信じさせた。
 
45.PaulsonがCDOのショート・ポジションを保有していると知っていたら、ACAは、自己の評判が毀損されるのを恐れ、参照ポートフォリオの選定にPaulsonを深く関与させることを躊躇したであろうし、ACAがポートフォリオ選定代理人となることはなかったであろう。
 
53.2006年暮、IKBはGSの販売代理人及びTに対し、もはや、米国の住宅事情に詳しくRMBSの分析について専門性のある独立第三者である担保管理者なしにCDOへ投資することはない旨を伝えた。
 
54.2007年2月から4月にかけて、GSはIKBへABACUS2007-AC1の各種資料を送付した。
 
59.ポートフォリオが、専門性を有し、CDOの投資者と経済的利害を共通にする独立第三者によって選定されたという事実は、IKBにとって重要であった。IKBは、Paulsonが、一方でABACUS2007-AC1についてショート・ポジションを取ることを意図しつつ、他方で、選定プロセスにおいて重要な役割を果たしたことを知っていたら、当該取引には参加しなかったであろう。
 
60.契約締結から数ヵ月後に、ABACUS2007-AC1のクラスA-1とA-2のノートは、ほとんど無価値になった。IKBは1億5千万ドルの投資のほとんどを失い、その金の多くは、GSとPaulsonとの一連の取引を通じて最終的にPaulsonに支払われた。
 
68.GSとTは、それぞれ、取引所法17条(a)項(1)-(3)号に違反した。
 
71.GSとTは、それぞれ、取引所法10条(b)項およびRule10b-5に違反した。
 
救済の申立て
A. GS及びTが連邦証券諸法に違反したことの認定
B. GS及びTに対する違反行為の恒久的差止め
C. GS及びTが違法行為から得た利益の吐出し、及び判決前利息の支払い
D. GS及びTが、証券法20条(d)項(2)号、取引所法21条(d)項(3)号に基づいて民事制裁金を支払うこと
E. 取引所法21条(d)項(5)号の下で適当と認められる衡平法上の救済
 
合成CDOの仕組みについては、GSの上申書の中で触れられていますので、次回以降にそこで説明することとし、ここでは、ショート・ポジションについてのみ補足しておきます。
 
訴状ではさかんにショート・ポジションとかショートという語が出てきます。これは、一般には「空売り」と訳されていますが、本件ではサブプライム関連証券を借りてきて空売りする取引が行われた訳ではありません。PaulsonもGSもIKBもサブプライム関連証券を実際には保有していません。この場合、ショート・ポジションとは、サブプライム関連証券の価格が下落したら利益を得る立場を意味し、Paulsonはサブプライム関連証券の価格下落に賭けたのです。IKBは、サブプライム関連証券の価格が下落しないことに賭け、Paulsonが払った掛金はGSを通じてIKBが取得したものと思われます。ですから、日本流に言えば、これは有価証券ではなく、サブプライム関連証券の価格を指標とするデリバティブ取引(クレジット・デリバティブ)ですね。

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