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月末に原稿の締切りが重なってしまったため、更新が遅れました。この間、時事ニュースなどもありましたが、とりあえず前回の続きから。
相場操縦の成立のために「人為的操作目的」のみで足りるかを考えるに当たって、アメリカの学説を見たところ、同じような議論があったので、この論文ではそれらを参考にしています。
とりわけ、操作によって相場が変動するメカニズムを取引圧力による価格変動と情報動機による価格変動に分けて論じているセル(Thel)教授の分析が有用です。取引圧力による価格変動とは、投資家が大量の売買注文を出したときに、市場が大量の注文を吸収できないことから一時的に受給のバランスが崩れ価格が変動することをいいます。情報動機による価格変動とは、たとえば、大量の買注文が出されると、背後に好情報が生じているとみられ、その情報を利用しようとする一般投資家の取引により価格が変動することを言います。セル教授は、取引圧力による価格変動を狙った取引には欺まん(deception)の要素がないことを認めつつ、相場操縦を欺まん行為に限定しない解釈を採用すべきだとします。
これに対してフィッシェル教授とロス氏(Fischel=Ross)は、証券の価格を人為的に変動させることが現実取引による相場操縦(変動操作)だとすると、人為的でない価格を定義する必要があるが、それは不可能であると論じます。すべての重要情報が開示されたと仮定した場合の価格をもって正しい価格と定義するとしても、問題の取引自体が重要な情報なのだから、議論は循環論法に陥ってしまう。操作者に人為的操作の意図がある場合のみ罰するとしても、それは悪い行為がないのに悪い意図のみを罰することになってしまうが、それで良いか? フィッシェル=ロスは、現実取引による相場操縦は「詐欺」とは言えないというのです。
私は次のように考えました。取引圧力による価格変動は、自然の需給を価格に反映させるものだから禁圧すべきでないが(ここがセル教授との違い)、情報動機による価格変動は、一般投資家を欺いて、一般投資家の力を借りて価格を変動させようとするものであるから禁圧すべきである。情報動機による価格変動には悪い意図も悪い行為もある(ここがフィッシェル=ロスとの違い)。取引圧力による価格変動は、投資家が取引に誘い込まれなくても生じるから、取引圧力による価格変動には誘引目的がない(情報動機による価格変動には誘引目的がある)。したがって、取引圧力による価格変動を禁圧せず情報動機による価格変動のみを禁圧するためには、誘引目的を変動操作の要件とすべきである。そして、この場合の誘引目的とは、投資家を取引に誘い込んで自己の取引だけでは出来ないような価格変動を実現する目的のことを意味することになる、と。(つづく)
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