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2 指定紛争解決機関の設置
業態ごとにせよ、金融ADRの設置を強制すべきかという点については、審議過程では、業界団体への加入率が低い、事業者数が少ない、実態として相談・苦情が少ない、取引の相手が事業者である等の事情があることを考えると、強制は適当でないという意見が有力でした。そこで金融審の報告書でも、現時点では一律に金融ADR機関の設置を義務付ける状況にないと判断し、業界団体・自主規制機関等の申請を受けて行政が指定を行うのが適当であるとしました。
内閣総理大臣は、法人または法人でない団体で代表者等の定めのあるもので、紛争解決業務の実施能力を有するものを、その申請に基づき紛争解決機関に指定することができます(各法律に規定がありますが、金商法では156条の39、以下、金商法の規定のみ引用)。同条1項5号は、申請者が実施能力として経理的な基礎および技術的な基礎を有することを求めており、技術的な基礎の内容として、対象業務を限定することや業務の実施地域を地理的に限定することは認められないと説明されています(池田ほか『逐条解説 2009年金融商品取引法改正』367−368頁)。この点は、対象業務(たとえば、銀行法上は、付随業務・兼業業務を含めてすべての業務を包括的に対象業務としている)の限定や地理的な限定を禁止することが立法論として妥当かという疑問のほか、「技術的基礎」という語に、そのような内容(対象業務の限定や地理的限定の禁止)を読み込むことは難しいのではないかという疑問があります。
紛争解決機関の指定がなされると、関係業者は指定紛争解決機関との間で手続実施基本契約を締結することを強制され、手続実施基本契約の内容に拘束されることになります。そこで、指定紛争解決機関の申請者は、関係業者に対し業務規定の内容を説明しなければならず、意義を述べた業者の数の割合が3分の1を超えるときは指定を受けることができないとされました(金商法156条の39、施行令19条の8)。見ず知らずの団体に拘束されたくないという業者の声を反映させたものですが、契約締結を通じて業者の規制を狙った制度ですから、これ位の手続は要求されて良いでしょう。
指定紛争解決機関の指定がなされると、金融機関は当該機関と手続実施基本契約を締結しなければなりません(金商法37条の7第1項1号イ等)。金融審の報告書では、金融ADR機関が設立されている業態においては、その利用を業への参入の要件とすることが望ましいとしていましたが、そこまで強い規制は置かれませんでした。もっとも、金融機関が契約を締結しないと法令違反となるので、当該金融機関は、それぞれの法令に基づいて登録・免許の取消しを含む行政処分の対象となります。
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2010年07月25日
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