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さて、③判決はどう判示したでしょうか。③判決の一般論は②判決に近いですが、微妙な違いもあります。そして③判決の結論は、7割の減額を認めた点で、むしろ①判決に近いのです。判決は要旨、次のように述べます。
本件臨時報告書に真実の情報が記載されていたとすれば、アーバン株式の株価は一層低下して資金調達に困難を来たし、より早期に民事再生手続開始の申立てがされたものと認められ、当該投資家がアーバンの株式を取得した平成20年7月15日ころの時点で、アーバン株式の株価は、実際よりも低くなっていたと推認することができる。そうすると、投資家が受けた損害の全部が、虚偽記載によって生ずべき値下り以外の事情によって生じたとまではいうことができない。
本件臨時報告書の公衆縦覧がされた平成20年6月26日の時点でアーバン株式の株価はおおむね下落し続けていたこと、本件取引(CBとスワップの組合せ)は予定されていた300億円の資金調達をすることができないなど、投資家に損失をもたらすリスクを有するものであり、真実の情報が記載されたとすれば、7月15日の時点で株価は実際よりも低くなっていたと推認されること等を考慮し、金商法21条の2第5項を適用して、7割弱に当たる額を控除した額を損害と認める。
第1段落で③判決は②判決と似たようなことを述べているのですが、本件の資金調達は虚偽記載がなければ成立し得ないものであったとまでは認定していません。この部分は、投資家の受けた損害の全部が「他の事情」によって生じたとはいえないことを認定するために述べられているようです。すると①判決との比較が必要になりますが、①判決が立てた公式は、虚偽記載の公表日以降に生じた損害の全部が「他の事情」によって生じたかどうかを問題としているのに対し、③判決は、取引時点の取得時差額という損害の全部が「他の事情」によって生じたかどうかを問題にしています。これは2つの問題が混在しています。一つは、理論的にいって、取得時差額が損害なのか公表後の下落額が損害なのかという問題。もう一つは、21条の2第5項の文脈(推定損害額の主張があり、5項の減額が論じられる場合)において、法技術的にどう考えるべきかという問題です。どちらの解釈が妥当なのか、検討してみる価値があるように思います。
③判決は、第2段落でも、真実が開示されていたらより早く倒産していたであろうという認定をしながら、②判決よりも①判決に近い7割の減額をしました。③判決の投資家は7月15日にアーバン株式を取得しています。6月26日に真実の情報を開示していたら7月15日までに民事再生手続開始の申立てがされていたかも知れないと裁判所は考えたのかも知れません(それにしては減額の割合が低いですが)。しかし、それは原状回復的な損害賠償の主張を認めることであり、実は③判決の裁判所は、21条の2第1項の定める損害とは取得時差額であると明言しているのです。この点は、もう少し論じる価値がありそうなので、もう一回くらい、この話を続けます。
もう一点気になるのは、③判決が取引時点でアーバン株が下落傾向にあったことを減額の際に考慮していることです。②判決は、公表日以前に下落傾向にあったとしており、その意味が良く分からないと前回の記事に書きましたが、③判決のこの部分も良く分かりません。「取得時に下落傾向にあったのだから買ったお前が悪い」ということでしょうか。それなら過失相殺ですが、21条の2第5項は過失相殺には使えないはずです。
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