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EU目論見書法(4)

目論見書公表義務の適用除外が3条2項に定められています。いわゆる私募(private placement)ですね。
 
(a)適格投資家(qualified investors)向けの募集
(b)加盟国ごとに150人未満に対する募集(適格投資家の数を除く)
(c)一投資家当たり10万ユーロ以上を対価とする募集
(d)最小額面10万ユーロの証券の募集
(e)EU域内で12か月で10万ユーロ未満を対価とする募集
 
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日本でいえば、(a)はプロ私募、(b)は少人数私募、(c)(d)は少人数私募に通じる考え、あるいは社債を想定すれば社債管理者の設置が強制されない要件、(e)は少額免除ですね。
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3条2項は過去と決別する意図を持った規定です。公募指令や上場目論見書指令は解釈の余地が大きい適用除外規定を置き、そのことが規制を複雑化し、目論見書の相互承認を妨げていました。3条2項は、規制水準の平準化に資すると評されています。もっとも、適用除外規定は組み合わせて使えるのかとか、3条2項は公表義務の免除を規定しているのみで、目論見書の作成・承認義務は免除されないのではないか等の新しい問題が生じています。後者については、もちろん、作成・承認義務も免除されると考えるべきです。
 
適格投資家の定義(2010年改正)は、MiFIDのプロ顧客(professional clients)の概念を引用しています。プロ顧客は、オプトアウトできるプロ顧客とオプトインによりプロ顧客となる者に分かれます。2010年改正は適格投資家の登録制度を廃止しました。発行者は証券会社や金融機関の顧客リストを利用できると考えられたからです。
 
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日本では特定投資家(プロ投資家)と適格機関投資家の概念は別立てで、適格機関投資家は金融機関等法定の者以外は届出制です。届出制をとっているのは、公募か私募かで罰則が適用される場合があるため、罪刑法定主義の観点から必要と考えられたからです。EUが登録制を廃止したことで不都合は生じないか気になるところですが、EU指令は刑事法を直接に扱っていないため、国内法化の段階で工夫がされるのかも知れません。たしかに、金融商品取引業者は自己の顧客がプロか一般投資家かを知っていますから、発行者はそれを利用すれば良いとも言えますね。
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ユーロボンド市場にはリテール顧客も参加していました。加盟国には、金融機関はリテール顧客に証券を転売できるとしていた国もありました(ルクセンブルク)。目論見書指令は、そのような慣行は望ましくないと考えて、公募の概念を拡大し、他方で、適用除外証券の転売規制でこの問題を扱っています(下記参照)。
 
それは「段階的小売り」(retail cascade)と呼ばれる問題です。引受人が証券を金融機関に分売し、金融機関がそれをリテール顧客に転売するとします(発行者ー引受人ー金融機関ー顧客)。この場合、発行段階で適用除外を受けても、転売段階で目論見書の作成が必要になりますが、それはどの段階か? 目論見書の内容はどの時点の情報であるべきか? CESRはレベル3で問題の解決を試みました。すなわち、金融機関が発行者と共同して(in association with)行動している場合とそうでない場合とに分け、前者の場合、金融機関は発行者の目論見書に依拠することができ、目論見書追補書類が発行者により準備されなければなりません。後者の場合は、金融機関が目論見書を作成しなければなりません。
 
2010年改正目論見書指令は、3条2項でこの問題を扱っています。すなわち、証券が転売される場合には、別の募集としてカウントされるものの、募集の目論見書の有効期間内に金融機関により証券が転売される場合であって、募集の目論見書を転売段階で用いることに発行者が書面で同意しているときは、新たな目論見書を作成する必要がない旨の規定が、3条2項に加えられています。
 
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日本でも全く同じ問題がありますね。日本では、プロ私募証券の一般投資家勧誘は、発行者によって有価証券届出書が提出されていなければすることができません。転売が「売出し」にあたるときも同じです。EUでは、転売段階の目論見書は金融機関が作成することも許されているようです。ここが日米との大きな違いでしょうね。

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