ここから本文です

書庫過去の投稿日別表示

全1ページ

[1]

環境省に置かれた「国内排出量取引の法的課題に関する検討会」が今年の1月28日に第3次中間報告を発表しました。http://www.env.go.jp/earth/ondanka/det/other_actions/ir_110128.pdf この検討会は、国内排出量取引の制度の導入を促進するために、制度導入時に生じ得る法的課題を予め検討しようとするもので、中間報告では憲法・行政法上の論点を、第2次中間報告では民事法・国際法上の論点を扱っています。今回の第3次中間報告は排出枠の取引規制に関する論点を扱い、私もその検討会に参加しました。その検討は、学問的見地からのもので(研究的なもので)、利害関係者の利害を調整するような性質のものではありませんでした。
 
取引規制に関する論点というのは、排出枠の取引形態、市場参加者の範囲、参入規制の要否、仲介業者・取引業者に係る規制のあり方、取引所に対する規制のあり方、不公正取引に対する規制のあり方、情報開示のあり方といった問題点です。これらは、商品先物取引法や金融商品取引法の研究者にとってなじみの深い論点なので、私が検討会に呼ばれたのだと思います。私自身、国内排出量取引に関する予備知識が十分でなく(今でもそうですが)、報告書の作成にあまり分寄与できなかったのですが、報告書も出ているので、その内容を紹介しつつ、十分に反映することのできなかった私の意見も少し述べてみたいと思います。報告書の内容と私見(私個人の見解・コメント)とはできるだけ区別して記載し、、読者に誤解を招かないように努めますが、同時に、報告書は学問的な意味での多様な意見(見解)を集約したものですので、多様な意見に含まれる私見をここで述べることは、報告書の価値を低くするものとは考えていません。私が「証券的規制」と名づけたのは、神崎克郎先生の「変額保険の証券的規制」を意識したものです。同僚の上村達男教授ならば「市場法的規制」というところでしょう。
 
さて、ここにいう排出量とはCO2などの温室効果ガスの排出量をいい、排出量取引とは「キャップ&トレード方式」の排出量取引を指します。CO2削減のために何ができるか、どんな政策がよいかについては、さまざまな役所や研究機関で研究がされていますが、ここでは環境省の提唱している「キャップ&トレード方式」を前提として、その方式を導入する場合に検討すべき法的課題を取り上げています。したがって、「キャップ&トレード方式」の是非は(もちろん議論のあるところですが)、報告書の議論の対象ではありません。
 
このように検討の前提となる「キャップ&トレード方式」の排出量取引とは、政府が排出量の削減目標を設定し、個々の事業者に対し、削減目標を考慮した排出量の限度(排出枠)を設定し、違反に対する制裁を用意した上で、個々の事業者が削減目標達成義務を遵守するために排出枠を取引することを認めるものです。削減義務の履行は、期限において事業者が排出枠を国に無償で移転する形式(償却)で行われます。排出枠の取引を認めれば、対策費用が割安の企業は枠を売却することにより利益を得ることができ、対策費用が割高な企業は、自社で削減するよりも枠を購入することにより、安価に目標を達成することができます。これにより、削減目標を達成するための社会全体における削減費用を最小化することができるのです。キャップ&トレード方式のメリットは、削減費用の最小化ということに尽きます。もちろん、このメリットが実現するにはいろいろな条件が満たされる必要があり、課題も多いのですが、キャップ&トレード方式を採る目的はそこにあり、キャップ&トレード方式の取引規制も、その目的を達成するという観点から検討されなければならないということが、重要な視点です。EUでは、キャップ&トレード方式の域内排出量取引制度(EU-ETS)が2005年1月から実施されています。
 
報告書では検討の前提として、排出枠が有する特徴を有価証券や商品との比較で分析しています。それによると、有価証券や商品との共通性として、登録簿上の記録によって取引される財産権であること、価格が変動すること、生産要素の一つであることを挙げています。生産要素の一つとは、商品現物との共通性を言っているものと思われます。他方、有価証券・商品との違いとして、報告書は、排出枠では元本の返済・償還、利息・配当の支払が発生しないこと、償却目的との関係においてのみ価値を有する特殊な財産権であり、供給総量は政府が政策的な観点から決定するため、政府の政策変更がその価値に与える影響が大きいこと、制度対象者(事業者)による排出枠のニーズや取引は償却期限に集中するであろうことを挙げています。
 
国内排出量取引制度の制度対象者(事業者数)は数百から数千程度が予想され、流通する排出枠としては国内排出枠のほかに、一定の外部クレジットが考えられています。外部クレジットとは、国内排出量取引制度に基づく排出枠以外の排出枠・クレジットをいい、海外の排出量取引における排出枠(EU-ETSに基づく排出枠等)や京都クレジットがこれに該当します。外部クレジットの導入の必要性については後述します。想定される市場参加者としては、制度対象者(排出枠の需要家・供給者)、外部クレジットの供給者、仲介業者・取引業者といった者が考えられます。現在、途上国の排出削減プロジェクトに基づいて国連が発行するCER(認定排出削減量)の取引市場が国内にもありますが、供給者または取引業者である商社・銀行と需要家(電力、鉄鋼、オフセット・プロバイダー(後述))による実需取引が主流であり、リスクヘッジを目的とした取引はあまり行われていないそうです。以上は、これからの議論の前提となる排出枠市場のイメージを掴むために報告書が記載しているところです。

全1ページ

[1]

くろぬま
くろぬま
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
検索 検索
1 2 3 4
5
6
7 8 9 10 11
12
13
14 15 16 17 18
19
20 21 22 23 24 25
26
27 28 29 30

最新のコメント最新のコメント

すべて表示

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

本文はここまでですこのページの先頭へ

[PR]お得情報

CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫

その他のキャンペーン

みんなの更新記事