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本条の未公開有価証券とは、社債券、株券、新株予約権証券その他の政令で定める有価証券であって、①金融商品取引所に上場されている有価証券、②店頭売買有価証券又は取扱有価証券(グリーンシート銘柄)、③売買価格又は発行者に関する情報を容易に取得することができるものとして政令で定める有価証券のいずれにも該当しないものをいいます(本条2項)。そもそも、未公開株詐欺は、現在は未上場だが近く上場するといって無登録業者が取得を勧誘し、顧客が上場時に高値で売却できることを期待して未公開株を購入するものですから、上場やそれに類する取引(店頭市場への上場、グリーンシート銘柄への指定)の対象となる有価証券でなければ、未公開株詐欺の対象となりません。また、上場有価証券のように売買価格や発行者に関する情報を投資者が容易に取得できる有価証券については、無登録業者と投資者との間で情報の非対称性が強いとはいえず、その売買契約を一律に無効とするのは適当でないと考えられました。そこで、本条の適用範囲を政令で指定する有価証券で上場等をしていないものに限定したわけです。
 
未公開株と称して法的実体のない会社の株券(と称する権利)の販売が行われることも考えられます。そのような仮装の権利も勧誘を受ける投資者との関係では本条の「株券」に当たると解して、本条を適用すべきであると思います。また、2項有価証券(ファンド持分等)が政令指定されるかどうかは分かりませんが、2項有価証券については自己募集も金融商品取引業に該当するため、無登録で自己募集を行えば本条の適用対象となります。そうしたときに、2項有価証券は上場等の可能性がないから未公開有価証券に当たらないとされる可能性もあります。これでは2項有価証券を政令指定した意味がありません。2項有価証券について未公開株詐欺に近い詐欺が行われるのは、それを株券と偽って販売したが実はファンド持分に過ぎなかったという場合でしょう。その場合、上述のように「株券」に当たるという解釈が難しければ、ファンド持分に当たるとして本条を適用すべきと考えます。
 
大阪証券取引所の研究会である大家の先生が、こんなにカズイスティックでローマ法みたいな立法のやり方は感心しないという趣旨のことを仰られました。そのときはよく意味が分からなかったのですが、本条では、政令で種類ごとに有価証券を指定しなければ、その種類の有価証券に本条を適用できないのです。これは、未公開株詐欺の行われている有価証券の売買のみを無効とするためのやり方だと思いますが、「政令指定した商品についてのみ無効」というのがカズイスティックだというのでしょう。
 
売付け等とは、売付け、売付け等の媒介・代理、募集又は売出しの取扱い、および政令で定める行為をいいます。既に発行されている有価証券を購入させる行為だけでなく、新たに発行される有価証券を取得させる行為も含まれます。これらの行為は勧誘という事実行為ですから、無登録業者が未公開有価証券の売主であっても仲介者であっても、売付け等に該当する勧誘行為を行う限り、本条を適用することができます。
 
無登録業者が顧客から未公開有価証券を買い付ける行為(買付け等)は本条の適用対象とされていません。もっとも、無登録業者が、顧客が発行者から未公開株を購入した場合にそれを高値で買い受けることを約束する行為は、顧客が発行者から未公開株を買い付けるよう促す効果を有しますので、未公開株の「募集又は売出しの取扱い」として「売付け等」に当たるでしょう。
 
対象契約とは、売付け等に係る契約又は売付け等により締結された契約であって、顧客による未公開有価証券の取得を内容とするものをいいます。顧客がすでに発行されている未公開有価証券を買い付ける契約(売買契約)と、新たに発行される有価証券を発行者から取得する契約(取得契約)がこれに含まれます。対象契約上の顧客の相手方が無登録業者以外の者、すなわち発行者又は無登録業者以外の売主であっても、当該対象契約が無効とされることが本条のポイントです。
 
平成23年金融商品取引法改正の一番のサプライズは、無登録業者による未公開株の売付けを無効とする171条の2でしょう。
 
この改正案を最初に聞いたときは、契約の内容を問うことなく、売り方が悪かったからといって契約を無効にしてよいものだろうかと思ったものでした。けれど、金商法違反の私法上の効力については学説の議論があり、私も15条違反のうち無届募集による売付けは無効と考えていましたから、無効とすること自体には違和感はありません。もっとも、無届募集では売主は発行者ですし、誰が勧誘しても(私見では)無効であるのに対し、171条の2は、未公開株を無登録業者が勧誘して売り付けた場合に限って無効とする点に特徴があります。
 
171条の2については、大阪証券取引所の研究会で藤本課長の話を聞き、また、すでに商事法務に立案担当者による解説が載っています。今回の記事の大部分は、これらによる耳学問ですが、今秋、発刊予定のコンメンタールで私はこの条文を担当していますので、多少の私見をまじえて書いてみようと思います。
 
171条の2第1項は、無登録業者による未公開有価証券の売付けが行われた場合に、対象契約を原則として無効とします。無効とした理由は、金商法の規制する無登録業者の行う行為であり、未公開株等という情報の非対称性の強い有価証券に関する取引であることを踏まえると、公序良俗に反する不当な利益を得る行為である蓋然性が高いことに求められています。
 
「不当な利得を得る行為」とはいわゆる暴利行為のことです。このように本条は暴利行為に関する判例法理に基礎を置くものです。もっとも、対象契約の効力については、無登録業者、売主、または発行者が、勧誘が適合性の原則に違反していなかったこと、又は契約者が不当な利得行為に該当しないことを立証すると、契約は無効とされません(本条1項但書)。これらの反証要件は、後で述べるように判例法理に立脚しています。そうだとすると、対象契約が無効とされる実質的な根拠は、「適合性の原則に違反した勧誘により不当な利得行為となる契約が締結されたこと」に求めることができ、「無登録業者による未公開株等の売付け等」が行われたという要件は、無効の立証責任を転換するために置かれたものと理解すべきでしょう。
 
本条にいう「無登録業者」とは、法29条の規定に違反して内閣総理大臣の登録を受けないで第一種金融商品取引業又は第二種金融商品取引業を行う者をいいます。登録業者が未公開有価証券の売付け等を行っても本条は適用されませんが、登録業者は、金融商品取引業協会の自主規制により、一定の場合を除いて未公開有価証券の投資勧誘を禁止されています(この点については批判もあるところですが、ここでは立ち入りません)。
 
第一種金融商品取引業又は第二種金融商品取引業を行うとは、それぞれの業に該当する行為(28条1項、2項)を反復継続する意思をもって行うことを意味しますので、反復継続して未公開有価証券の売付け等を行う予定でない者は、登録を受けずに売付け等を行っても無登録業者に該当しません。したがって、たとえば未登録株の発行者の役職員が当該未公開株等の売付け等を行う場合には本条は適用されません。登録を受けないで第二種金融商品取引業を行う者も無登録業者とされたのは、本条1項の政令によって2項有価証券が未公開有価証券に指定された場合に備えたものでしょう。
 

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