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(つづき)意味のある注意表示(meaningful cautionary statement)とは何かという問いかけに、SECは大要、次のように答えています。
何が意味のある注意表示に当たるかは、各事案の事実と状況に依存する。司法が作った「注意表示の法理」(bespeak caution doctrine)に言及しつつ、議会の報告書は、紋切り型の警告(boilerplate warining)では不十分であり、注意表示には、当該発行者の事業に関する情報のように、予測された表示の結果を現実に大きく変える、実質的な情報をもたらすものでなければならないとする。発行者は、すべての知りえたリスク要因を特定する必要はないが、歴史的事実を不実に表示する注意表示はセーフハーバーによって保護されない。
裁判所は、「1フィート先にグランドキャニオンが横たわっていることを知りつつ、ハイキングの同行者に、前方に溝があるかも知れないと警告する者には保護が与えられない」としている(判決名省略)。SECも行政手続きで同様の立場をとっている。
本件では、「高利回り社債への投資の損失は第1四半期よりもかなり低くなると予想される」という将来情報の表示に対し、「高利回り部門の潜在的な(potential)悪化が投資ポートフォリオの更なる損失を招く可能性がある」という注意表示がされている。このような表示は、悪化が現実に起こっていることを被告が知っている場合には、「意味のある」注意表示に該当しない。「潜在的な」という記載が歴史的事実に反するからである。
(以下、感想)
このSECの意見書は裁判実務に影響を及ぼすように思います。
アメリカの連邦法上のセーフハーバールールは、将来情報が虚偽であることを発行者の役員が知っていても、意味のある注意文言を置いておけば、発行者は責任を問われないという奇妙な規定です。これは、意味のある注意文言が置かれた将来情報の表示は重要性の要件を欠くという判例(In re Donald J. Trump Securities Litigation, 3d Cir. 1993)を採り入れて、事実審理前の請求棄却を認めるためのものでした。しかし、1995年の制定当初から、免責規定は嘘をつくライセンスを与えるものであってはならないという批判がありました。また、1995年以降の裁判例は、表示者が悪意であっても注意表示の要件を充たせば被告は免責されると解する裁判例が多いものの、悪意でなされた虚偽の予想に付された注意表示は「意味のある」ものと認められないとして、悪意の要件と注意表示の要件を組み合わせる裁判例もあります。この問題を論じた論文は3つあったのですが、すべて表示者は悪意でも免責される(多数裁判例に賛成)としています。
これに対してSECは、注意表示そのものが虚偽でありそれを表示者が知っているときは「意味のある注意表示」の要件を充たさないと言っているのです。注意表示そのものが虚偽であるとか、それを知っているとかを問うことに意味はないようにも思いますが、紋切り型の注意表示では駄目で、注意表示に虚偽があり表示者がそれを知っているということは、注意表示が保護しようとしている将来情報の表示にも虚偽があり表示者がそれを知っている場合が多いことに注意してください。SECは上記の少数裁判例と同じ立場をとっていることが分かるでしょう。
雑誌「企業会計」には、日本ではセーフハーバールールをどう考えるべきかについても書きました。興味のある方はそちらをご覧ください。
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2011年10月07日
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