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東日本大震災で本人やご家族が被害に遭われた方に、お見舞い申し上げます。
 
私は家族とも無事でした。阪神大震災のころ私は神戸大学に勤めていたのですが、そのときはたまたま家族と東京におり、直接震災を体験しませんでした。ですから、そのときの揺れと比べることはできないのですが、今回は津波の被害が甚大であったことと、原発の事故があり社会不安や停電による影響が大きく、かつ長引いている点で、未曾有の災害であると思います。東京でも、交通の不便と、人が集まることの危険性から、研究会の中止が相次いでいます。金商法の研究は、こういう災害には全く役に立たないのですが、こういうときはそれぞれの本分を尽くすことが重要だと思いますので、ブログを続けます(原稿も書いています)。
 
最近、「判例体系」の仕事をしていて、ニイウスコー事件判決(東京地判平成22年6月25日金判1346号25頁)を知りました。会社名は聞いていたのですが、判決に気づかなくて不覚でした。西田さん、中野さん、ごめんなさい。
 
事件はアーバンコーポレイションと似ています。4事業年度にわたり有価証券報告書に虚偽記載(粉飾決算)を行い、最近3事業年度は債務超過に陥っていたニイウスコー株式会社が、有価証券報告書に虚偽の記載が含まれていることを公表した日に民事再生手続開始決定の申立てをしました。査定異議事件において、ニイ社の金商法21条の2に基づく責任の有無が争われたのですが、(私の関心からは)2つの重要な判示をしています。私はその一つに賛成で、もう一つに反対です。
 
まず、反対のほうから。21条の2第1項の損害賠償責任として、投資者は原状回復方式の主張をしました。ニイ社が真実の情報を開示していたら、虚偽記載または債務超過を理由としてニイ社株は上場廃止になっていたはずであり、上場廃止になっていたら自分はニイ社株を購入できなかったから、株式購入代金の総額が投資者の被った損害であると主張したのです。
 
裁判所は、原状回復方式は21条の2に含まれていないなどとは言わず、この主張を引き取り、投資者のこうした主張は、いずれも本件株式(ニイ社株式)の客観的価値がないことを前提とするものであるとした上で、虚偽記載がされていても、債務超過であっても、本件株式の価値がないと認めることはできず、X(投資者)が本件株式を取得することがなかったということはできないのであり、Xの上記主張は合理的な根拠があるものとはいえないとしました。
 
こういう判示をした裁判例は過去にもありましたが、明らかに論理のすり替えです。判決を読む限り、Xは本件株式の客観的価値がないなどの主張はしていません。それを勝手に「客観的価値がないことを前提とする」と言い換えた上で、客観的価値がないとはいえないから主張は成り立たないというのです。上記引用中でも、「本件株式の価値がないと認めることはできず」と、「Xが本件株式を取得することがなかったということはできない」とが繋がらないことは分かるでしょう。投資者は、株式に客観的価値があっても、買わないという選択をすることはいくらでもあり得るのです。不当勧誘がなかったら当該株式を買わなかったという不法行為の主張は、当該株式の客観的価値がなかったことを前提としている訳ではありません。客観的価値があろうとなかろうと、買わなかったはずだから金を返せと主張しているだけなのです。
 
判決は、また、Xがニイ社が債務超過状態にあることを公表した後もニイ社株を購入していたことを、上記主張を排斥する理由として挙げています。しかし、Xの主張は「自分は買わなかった」というものではなく、「上場廃止の株を一般投資家の自分が買えるはずがない」というものですから、判決のようにXの属性を問うことはできないですね。
 
この裁判所は、アーバン事件判決と異なり、裁量的減額をしなかった点では高く評価できるのですが、今日取り上げた判示については残念でした。

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