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ニイウスコー事件判決のもう一つの重要な判旨は、虚偽記載の発覚と民事再生手続き開始の申立てが同じ日に行われたのに、金商法21条の2第2項の推定損害額からの減額(同条5項)を行わなかったことです。判決は次のようにいいます(要約しています)。
再生手続開始の申立てやそれによる上場廃止が明らかになった後に株式の市場価値が下落することがあるとしても、これはこうした事実を原因とするものではなく、飽くまで当該会社が再生手続開始の申立てに至るまでの経営、財務等の状態が悪化していた事実が明らかになったことによるものである。そして、本件においては、虚偽記載によりニイウスコーが相当期間にわたり巨額の債務超過等の状態にあった事実が明らかにされていなかったものが、再生手続開始の申立てと同時に明らかになっているのであるから、本件株式の市場価値が下落したのはまさにこの事実が明らかになったことによるものである。したがって、再生手続き開始の申立てやそれに引き続く上場廃止という事情があるからといって、虚偽記載と損害との因果関係を認めるに足りないということはできないし、金商法21条の2第4項所定の事情の証明がなされたということもできない。
上記に述べたことからすれば、推定損害額の全部または一部が虚偽記載によって生ずべき本件株式の値下り以外の事情によって生じたとは認められないから、金商法21条の2第5項の適用による減額はできない。
この判示は、再生手続開始の申立てや上場廃止による株価の下落も、虚偽記載の発覚による株価の下落も、根本要因は、ニイウスコーの巨額の債務超過であるから、異なる原因ではない。したがって、再生手続開始の申立てや上場廃止は虚偽記載によって生ずべき株式の値下り以外の事情に当たらないとするものです。
アーバン事件②③判決は、事案の特殊性を考慮して同じことを言っているのだと解する余地はありますが、アーバン事件①判決はそういっていません。アーバン事件とニイウスコー事件ではもちろん事案は違いますが、真実が開示されたとしても同じ結果(民事再生手続開始)になっていたであろう点では共通しています(この点は、西武鉄道事件も同じですね)。虚偽記載の発覚によって発行者の信用が毀損され企業価値が下落した場合や、虚偽記載の発覚によって上場廃止の可能性が生じて株価が下落した場合には、その下落分は金商法21条の2の適用範囲ではないという見解がありますが、ニイウスコー事件判決は、その見解に立つ場合でも、発覚すれば民事再生手続開始に追い込まれるような財務状況が隠されていた場合には、別に考える余地を示しているように思います(この点については論文で簡単に触れたことがあります)。
前回の記事では、私はこの判旨に賛成と書きましたが、詳しく検討していくと、粉飾決算が発覚して倒産したケースはすべて本当にニイウスコー事件判決と同じに判断してよいのかについては、若干の疑問も残ります。粉飾決算が長年継続し、それが発覚して倒産に至ったケースでは、粉飾の初期では粉飾の幅(すなわち取得時差額)が小さく、虚偽記載の発覚直前では粉飾の幅が大きいはずです。粉飾の初期に株式を取得した投資家についても、発覚直前の粉飾の幅を反映した株価下落を基準として損害賠償を認めて良いのかという疑問が生じます。これについては考え中なので、意見を留保させてください。
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2011年03月20日
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