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法務省民事局参事官室から、会社法改正中間試案と補足説明が公表されました。私の本務校では関係教員の連名でパブリック・コメントに応募する予定ですが、それとは別に、本務校のGCOEの企画で中間試案をめぐるシンポジウムをやり、私も企業統治・企業結合以外の部分について、中間試案の内容を紹介し、若干の検討をしました。その際、考えたことから金商法と関係がありそうなものを2つ取り上げたいと思います(内容は、シンポジウムの報告(の一部)とほぼ同じです)。
 
一つ目は金商法違反者の議決権行使の差止めです。中間試案第3の第1は、金融商品取引法上の公開買付規制のうち、株券等所有割合が3分の1を超える場合の強制公開買付規制、および3分の2以上となる場合の全部買付義務の違反があった場合に、対象会社の株主が株主総会における違反者の議決権行使を差し止めることができる制度の創設を提案しています。公開買付規制の違反を抑止するとともに、違反行為によって株主の利益が害されることを防止するための規定であると考えられます。
 
部会では、公開買付規制のうち情報開示規制、株主の平等取扱いや、大量保有報告制度、委任状勧誘制度の違反があった場合の議決権行使の差止めについても検討されましたが、これらは差止事由とされませんでした。中間試案に対しては、これらの規制の違反についても差止事由とすべきであるとの批判が考えられますが、この点は、差止事由から除外した理由の評価にかかっているといえるでしょう。
 
部会の資料や議事録によると、どの規制違反を差止事由とするかについては、当該違反によって株主のどのような利益が害され、その利益が議決権行使の差止めによって保護されるかという観点からの検討が行われています。それによると、強制公開買付規制については、その違反があると株式売却の機会を与えられなかった残存株主の利益が害され、当該利益を保護するには違反者による議決権行使を認めないことによって違反者の支配権の取得を防ぐことが有効であると考えられるから、差止事由とすることとされました。これに対して情報開示の違反は応募した株主の利益を害するところ、違反者による議決権行使を認めないとしても当該利益の保護に結びつかないことから差止事由としなかったのです。大量保有報告制度や委任状勧誘制度の違反についても同様の分析がされており、その論旨には一応の説得力があります。要するに、会社法的な保護法益を有する規制の違反のみを議決権行使の差止事由としたと理解できます。その観点からすると、委任状勧誘規制には議決権行使の行使を適正にするという会社法的な保護法益が認められるので、委任状勧誘規制の違反を差止事由とする余地があったと思います。
 
中間試案は議決権行使の差止請求に関し、注で検討事項を列挙していますが、そのうち一番の難問は注4の差し止められた議決権を株主総会の定足数に算入するかという問題です。この問題を検討する前提として、議決権行使の差止めの対象となる株式は規制に違反して取得した分のみなのか、違反者が所有する対象会社の株式すべてについてかという点が、中間試案では必ずしも明らかでないように思います。違反者による支配権の行使を許さないという規制の趣旨からは、違反者の有するすべての議決権の行使が差止めの対象となるという考えも成り立つでしょう。中間試案の文言は、違反者による議決権行使の差止めといっているので、全部と読めます。もしそうだとすると、差止めが認められると、違反者の有する3分の1超、あるいは3分の2以上の議決権の行使ができなくなることになるため、株主総会の運営に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。
 
違反者の有する議決権を定足数に算入しないとすると、株主総会決議をすることは可能ですが、少数派の意向により株主総会決議が左右されることになります。違反者が株式を売却すればそのような状態を解消できますが、株式の売却には時間がかかることも考えられます。他方、違反者の有する議決権を定足数に算入するとすると、定足数を満たさないために株主総会決議が成立せず、会社運営に支障を来たすことになります。会社運営を妨害するために違反者がわざと違反状態を解消しないこともあるでしょう。難しい問題ですが、定足数に算入するとした上で、(課徴金納付権限のある)金融庁なり(差止めを認めた)裁判所なりが違反者に対し違反状態の解消を命じ、違反状態を早期に解消させるため、解消のための株式の売却について公開買付規制を適用しないといった措置を講ずる必要があるように思いました。
 
シンポジウムの楽屋で神作教授と雑談したときに、違反状態をどう解消するのかという話になり、神作さんは、「売って買い直しても議決権が復活しないというんです」(大意)。どこでそう聞いたのか、正確にどういう意味なのかその場では確かめませんでしたが、推測するに、たとえば20%の相対取得が強制公開買付規制の違反だったとして、20%を市場で売って、市場から買い直しても、その20%が相対で取得した分だと特定できないので議決権を行使できるようにならないという意味でしょうか。この考え方からすると、違反者は保有する全株式を売却した上で買い直さなければ議決権が復活しないようであり、大変なことになりますね。ドイツでは、義務的公開買付に違反した者は株式についての権利がないものとするという規定があるのですが、ドイツの義務的公開買付は所有権割合が30%を超えた段階で公開買付をする義務が生じるというもので、違反者は公開買付を行うことによって違反状態を解消できるのです。日本法では、3分の1を超える市場外取得は公開買付の方法によらなければならないとされているので、違反状態の解消が難しいという問題があるのです。私は議決権行使の差止め制度については、金商法違反の抑止という観点から、全般的には賛成なのですが、差止め制度を機能させるには、まず公開買付のルールを変えなければならないとしたら、道は遠いですね。

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