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連載の途中ですが、AIJ投資顧問事件について、金商法のどこが問題なのか、少し考えてみたいと思います。
 
AIJ事件は調査中で詳しい事実関係は分かっていませんが、報道などによると、投資顧問会社が年金資産の運用を一任され、運用方法として私募投資信託(私募投資法人かも知れません)を購入していたところ、運用損が出ていたにもかかわらず、顧客(各企業年金)に対して運用成績が良い旨の虚偽報告をしていたということのようです。そして、この私募投資信託を実際に運用していたのはAIJ投資顧問の関係者であり、運用先は株価指数先物取引などであったようです(実際には投資をせずに横領していたのかも知れず、そこは分かっていません)。
 
虚偽報告が法令違反であることは間違いありませんが、それは問題の本質ではありません。投資運用業者の監査を強制するとか、信託銀行の管理体制を強化するなどの対策が唱えられており、それぞれ説得力があると思いますが、私が一番気になったのは、なぜ私募投資信託を買ったのか、なぜ、それができたのかということです。
 
順を追って考えて見ましょう。年金の一任運用は投資運用業に当たりますから、運用業者は顧客資産を分別管理しなければなりませんが、AIJは信託銀行に運用資産を信託していましたから、形式的には、分別管理義務を果たしています。運用業者がこの資金を株価指数先物取引で運用したければ、信託銀行にその取引の指示を出せばよいところ、このケースでは私募投信を買わせていた訳です。投資信託証券は有価証券の一つであり、投資先ともいえますが、運用形態を転換するスキームという面も持っています。投資スキームとして見ると、投資信託を買うことはその運用者に運用を委託することを意味するのですが、AIJははたして私募投信の委託会社(または投資会社)に正式に運用権限を委託していたのでしょうか。たぶん違うでしょう。なぜなら、投資運用業者が運用権限を委託するときは、委託先は金融商品取引業者か外国において法令に準拠して投資運用業を行う者でなければなりませんが、本件の委託先がその要件を満たしていたのか疑問がありますし、委託について、委託先の商号・名称、委託の概要、委託に係る報酬の額または算定方法を、投資一任契約に定めておかなければならないところ、委託先の情報を顧客に開示していれば、顧客もおかしいと思うはずだからです(なぜ日本の株価指数先物取引で運用するのに海外ファンドの持分を買わなければならないのか)。
 
もちろん運用方法として私募投信を買うと運用権限の委託に当たるかどうかは解釈問題ですが、その私募投信の運用者がAIJの関係者であるとすれば、私募投資信託の購入は運用権限をAIJ本体から切り離すためのからくりに他ならず、そこには運用権限の委託があると考えるべきでしょう。運用権限の委託の解釈を固め、法を守らせていれば、このようなスキームの採用を防げた可能性が高いと感じました。
 
また、私募投信を隠れ蓑に使われると、信託銀行としては、私募投信証券の価値を確かめる術がありませんから、AIJによる運用報告を信じるほかないわけです。私募投信を使わなければ、株価指数先物取引から生じた利益や契約残高を信託銀行は把握できるはずです。一般論や立法論は別として、この事件で信託銀行を責めるのはちょっと酷な感じがしますね。
 
さらに、私募投信を使うということは、お金も移転することになります。本件では、お金が信託銀行から海外ファンドに移転したことに加えて、そのお金がAIJの関係者に戻ってきたことになります。ですから、本件のスキームは分別管理義務の脱法にも当たるように思えます。解釈で違反ということが難しければ、立法上の手当てが必要ではないでしょうか。
 
このように考えると、私募投信の購入によってお金と運用者を入れ替えることができてしまう点にAIJ事件の発生を許した一つの原因があるように、私には思えます。もちろん、海外の株式等で資産を運用するために海外ファンドを使うことの有用性(顧客にとっても利益になること)は理解できますから、AIJ事件を教訓としてあれもこれも変えるべきだとは言いませんが、海外ファンドが脱法に使われることに対しては厳しくチェックできる規制が必要だと思います。

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