ここから本文です

書庫過去の投稿日別表示

全1ページ

[1]

Business Roundtable v. SEC (2)

新学期が始まり、授業の予習等でバタバタしていました。春休み(私にとっては夏休みよりも長い)呆けということもありました。Business Roundtable v. SECの続き(解説部分)です。
 
〔解説〕
SECはその規則で、株主の提案を会社の委任状資料および委任状行使書面に記載させることができるという「株主提案権」を定めていますが、いわゆる選挙提案は株主提案権の対象から除外されています。これは、選挙提案のように会社の支配にかかわる提案については、委任状勧誘規則にしたがって委任状合戦を行わせる趣旨です。しかし、会社の委任状勧誘は会社の費用で賄われるのに、株主は委任状勧誘の費用を負担しなければならず不利な立場に置かれること、諸外国では株主に会社の委任状勧誘装置を利用させる例が多いことから、株主の選挙提案を会社の委任状資料に記載させるべきだとする議論も根強いものがあります。
 
このような委任状アクセス(Proxy Access)の問題について、SECは、1942年以来、繰り返し提案を行ってきており、2010年に初めて規則の制定に漕ぎ着けました。本判決は、裁判所が、行政手続法の規定に照らしてSECによる規則14a-11の制定を取り消し、同規則を無効としたものです。SEC規則の制定に経済界が反対して訴訟を提起され、規則が無効とされる例は少なくありません。最近の例としては、Chamber of Commerce v. SEC, 412 F. 3d 133 (D.C. Cir. 2005) 〔投資信託のガバナンスルールを無効とした〕、Goldstein v. SEC, 451 F. 3d 873 (D.C. Cir. 2006) 〔ヘッジ・ファンドの登録規則を無効とした〕、American Equity Investment Life Insurance Company v. SEC, 613 F. 3d 166 (D.C. Cir. 2010) 〔証券の定義から除外される年金契約の定義規定を無効とした〕があります。
 
本判決が規則を無効とした理由は、判旨に掲げたように、費用便益分析が不十分であったことに求められています。費用や便益には数量化できないものもあるのであり、判旨は揚げ足取りの感もありますね。
 
本判決は、委任状アクセスについてSECに規則制定権がないことを無効の理由とするものではありません。Dodd-Frank法は、SECに株主の取締役候補者指名権を認める規則を制定する権限を与えたのでSECはこの権限を行使して、最終的には、規則14a-11に似たルールを制定するという予想があります(Choi & Pritchard, Securities Regulation, at 699 (3d ed., 2012))
 
他方で、SECスタッフは、世界的な金融危機や民主党政権の誕生等、政治状況がまたとない機会を提供していると考えて、委任状アクセス・ルールの制定を提案したという見方もあり(ill E. Fisch, The Destructive Ambiguity of Federal Proxy Access (U. Penn. Law School , Institute for Law and Economics, Research Paper 11-05), at 4546 (2011))、これによれば近い将来、SECがルールを制定することは不可能でしょう。
 
SECの費用便益分析が、規則を無効なものにするほど恣意的なものであったかどうかについては、論評の限りではありません。そこで、報告では、規則制定までの経緯、委任状アクセスについてのSECの考え方、規則制定に関する議論を紹介しましたが、この部分は省略します(雑誌に載せる原稿と同じではまずいので)。
 
株主に委任状アクセスを認める理由を、SECは、株主が州法上の権利を十分に行使できるようにすることに求めています。SECは、株主が出席して開催される株主総会でできることを出席しなくても可能にするのが委任状勧誘規制であると位置づけ、今回の改正は州法上の株主の権利を変更するものでないことを強調します。しかし、株主が取締役候補者を指名し投票することと、それを会社の委任状資料に記載させることは明らかに異なります。前者ができるからといって、論理的に後者もできなければならないとはいえません。つまり、SECの論法には論理の飛躍があるのです。
 
規則14a-11は州法上の権利行使を促進するどころか、破壊するとみる見解(Fisch教授)もある。(以下、Fisch教授の見解の紹介)その理由は、デラウェア州法は、株主が指名する取締役候補者を会社の委任状資料に記載するよう会社を義務付ける付属定款を認めるが、規則14a-11は、付属定款において同規則よりも厳しい株主要件を定めることを認めないからです。このようにSECの提案は、実質的には、連邦法上、株主の取締役候補者指名権(federal nominating power)を創設するものであったといえます。
 
(紹介つづき)
委任状アクセスを論じることはコーポレート・ガバナンス(株主と経営者の権限分配)を論じることであるのに、コーポレート・ガバナンスについての権限がないという攻撃を避けるために、SECはその議論を巧妙に避けています。委任状アクセスがコーポレート・ガバナンスの問題であるとすると、それは州法に委ねるのが適切です。その理由は、会社内の事項が伝統的に州法に割り当てられているからではなく、大部分が任意法規であり、競争に直面しており、漸進的な発展をする州法の方が、連邦法よりも、株主と経営者の権限分配を扱うのに適しているからです。(紹介おわり)
 
私自身、現在のデラウェア州法の内容がコーポレート・ガバナンスの法形成にとって最適の環境を提供しているかどうかについては判断を下しかねますが、株主提案権がコーポレート・ガバナンスの問題であり、株主と経営者の権限分配を調整するには連邦法よりも州法のシステムが適しているという点については、Fisch教授に賛成したいと思います。

全1ページ

[1]

くろぬま
くろぬま
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
検索 検索
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15
16 17 18 19 20 21
22
23 24 25 26 27 28
29 30

最新のコメント最新のコメント

すべて表示

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

本文はここまでですこのページの先頭へ

[PR]お得情報

CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫

その他のキャンペーン

みんなの更新記事