ここから本文です

書庫過去の投稿日別表示

全1ページ

[1]

Halliburton判決(1)

6月23日にアメリカ合衆国の連邦裁判所は、Halliburton, Co. v. Erica P. John Fund, Incを下しました。これをHalliburtonⅡ(判決)といいます。この事件では、rule10b-5訴訟で信頼(reliance)の推定を認めた1988年のBasic Inc. v. Levinson, 485 U.S. 224(以下、Basic判決)を見直すかどうかが注目されていました。Basic判決が変更されれば、証券クラスアクションを提起すること自体がかなり難しくなるため、影響が大きいのです。判決は、結局、Basic判決の見直しをせず、クラス認可前の段階で、発行者は虚偽記載が市場価格に影響を与えなかったこと(price impactがないこと)を証明して、信頼の推定を覆すことができる(争うことができる)としました。価格影響性(price impanct)の判示も重要であり、アメリカではHalliburtonⅡは重く受け取られているようです。この判決が、ただちに金商法の解釈に影響を与えるものではありませんが、米連邦最高裁の考え方を知るにはよい材料ですので、まず、以下に判決の要約を示します(一部、意訳が入っています)。
 
Erica P. John Fund, Inc. v. Hallibuirton Co., 131 S. Ct. 2179 (2011)(以下、HalliburtonⅠ)において我々(最高裁のこと)は、Basic判決またはその論理は、Basic判決の推定を発動させるためには、証券訴訟の原告がクラス認可の段階で損害因果関係(虚偽記載と損害との間の因果関係)を証明することを要求していないと判示した。差戻審において、Halliburtonは、損害因果関係の反証として提出していた証拠は、虚偽記載が価格に影響を与えていなかったことの証拠でもあると主張した。地裁はHalliburtonの主張を取り上げることを否定し、第5巡回区控訴裁判所も、価格影響性の主張は事実審(トライアル)でのみ認められるとした。
 
Ⅱ A
まず、判例の変更には特別の正当事由(special justification)が必要であることが、我々の判例法である。Diskerson v. U. S., 530 U. S. 428 (2000)参照。
 
Basic判決において当裁判所は、信頼の要件の直接的な証明が、公開市場で取引するrule10b-5の原告に不必要かつ非現実的な負担を課すことを認識し、よく発達した市場において証券の市場価格が公に利用可能な全ての情報を反映していると考える「市場に対する詐欺(fraud-on-the-market)理論」に基づいて、当該市場で形成された価格で株式を売買した投資者は、公表された重要な虚偽記載を信頼したと推定されると判示した。この理論によると、信頼の推定を受けるためには、原告は、(1)虚偽記載が公表されていること、(2)虚偽記載が重要であること、(3)株式が効率的な市場で取引されていること、(4)虚偽記載がされ、真実が発覚するまでの間に、原告が取引を行ったことを示す必要がある。
 
Halliburtonは、Basic判決の2つの前提が今日では成り立たないので、判例が変更されるべきだと主張する。
 
第1に、Halliburtonは、今日では、効率的資本市場仮説(efficient capital market hypothesis)が成り立たない証拠がいくらでもあるという。しかし、Basic判決が、信頼の推定を認めるに当たり、特定の理論に依拠していないことは、当該判決が述べるとおりである。裁判所は、一般的にいって、市場のプロが、会社に関して公表された重要な情報の多くを考慮しており、したがって、市場価格に影響を与えるという穏健な前提を置いているだけである。Halliburtonが引用する学説は、このような穏健な前提を否定するものではない。
 
第2に、Halliburtonは、投資家が市場価格の誠実性(integrity)を信頼して投資を行うという、Basic判決が仮定に置いている命題を攻撃する。Halliburtonは多くの例を引用するが、そのうち重要なのは、株式が過小評価または過大評価されていると信じている価値投資家(value investor)であろう。しかし、Basic判決は価値投資家の存在を否定するものではない。そのような投資家は、株価が最終的には重要な情報を反映すると暗黙のうちに信頼しているのである(そのような市場修正がないとしたら、どうやって価値投資家は利益をえるのか?)。たしかに、価値投資家は取引の時には価格を信頼していない。しかし、信頼の推定を受けるためには、合理的な期間内に市場が情報を反映すると信じていれば足りる。
 
Basic判決は、信頼の推定を受けるために原告は、公開性、重要性、市場の効率性、および取引のタイミングを証明しなければならないとした(上記A参照)。これらの前提の証明責任は原告にあり、かつ(重要性を除いて)、クラス認可前に証明されなければならない。
 
Halliburtonおよびその賛同者は、Basic判決は、証券クラスアクションを促進することにより、深刻で害のある結果を引き起こしてきたと主張する。しかし、そのような心配は議会によって対応されるべきものであり、すでに1995年の私的証券訴訟改革法(Private Securities Litigation Reform Act of 1995)によって対処されてきた。
 
Ⅲ  
Halliburtonは、Basic判決を変更する2つの提案をしている。
 
第1は、信頼の推定を発動させるために、原告は、虚偽記載の価格影響性を証明しなければならないというものである。たしかに、Basic判決が採用した信頼推定の4つの要件(上記A(1)-(4))のうち、(1)-(3)は価格影響性に向けられたものである。しかし、Basic判決の信頼推定の要件は2つの構成要素からなる。第1に、原告が、虚偽記載が公表されており、重要で、かつ原告が、一般的に効率的な市場デリバティブ取引をしたことを証明した場合には、彼は虚偽記載が価格に影響を与えたとの推定を受けることができる。第2に、原告が、関連する期間に市場価格で株式を購入したことを証明した場合には、彼は虚偽記載を信頼して株式を取得したとの推定を受けることができる。原告が価格影響性を直接に証明しなければならないというHalliburtonの提案は、第1の構成要素を奪うことになる。市場の効率性はあるかないかの命題ではないから、一般的に効率的な市場において、重要な虚偽記載が株価に影響を与えないこともあり得る。だからこそ、Basic判決は、特定の虚偽記載が価格に影響を与えなかったという反論の機会を被告に与えている。我々は、Basic判決を半分廃棄することになる原告の主張を認めることはできない。
 
第2に、Halliburtonは、クラス認可段階で、虚偽記載が株価に影響を与えなかったという証拠により、推定を覆すことを認めるべきだと提案する。我々はこの提案に賛成する。
 
従来から、クラス認可の段階で被告が価格影響性を否定する証拠を提出することは、それが、推定の反証ではなく、市場の効率性を反証する目的を持つ限り、認められてきた。しかし、このような制限は意味がなく、奇妙な結果を招く。たとえば、クラス認可の段階で、被告が6つのイベントに関するイベントスタディを提示し、そのうちの一つが被告の虚偽記載であったとする。地裁が、市場は効率的であったが、虚偽記載に対しては市場の反応がなかったと認定した場合、これは信頼の推定を覆すものではないという理由でクラスを認可することはおかしい。
 
このようなおかしな結果はBasic判決の論理とも矛盾する。Basic判決の市場に対する詐欺理論の下で、市場の効率性と他の前提条件が価格影響性を間接的に証明する。そのことは価格影響性の直接的な反証を許さないものではない。したがって、価格影響性はrule10b-5のクラスアクションにとって本質的な前提条件である。
 
控訴裁判所は、Amgen判決に依拠して、Halliburtonはクラス認可段階で価格影響性の反証を提出できないと判断した。しかし、Amgen判決は、クラス認可段階で原告が重要性を証明しなければならないかどうかについて判示したものである。重要性はBasic判決の推定の前提条件であるが、それは連邦民事規則23条(a)項(3)号の優越の要件と関連しないので(重要性の要件は各原告に共通するので、クラス認可の適否の判断とは関係しない)、本案まで持ち越されると我々は判示した。EPJ Fundは、価格影響性の要件も重要性の要件と同じであるという。しかし、価格影響性は重要性と重要な点で異なる。他の要件がクラス認可の段階で証明されているのであれば、クラスに共通する要件である重要性を本案段階に持ち越したとしても、クラスの認可をあとで覆すような事態には至らないからである。 
 
Ginsburg判事、Breyer判事、Sotomayor判事による賛成意見
 
価格影響性の考慮を本案段階からクラス認可段階へ早めることは、認可段階で利用できるディスカバリーの範囲を拡げることになる。もっとも、価格影響性がないことの立証責任は被告が負うので、本判決は証券訴訟の原告に追加的負担を課すものではない。以上の理解を前提として法廷意見に賛成する。
 
Thomas判事らの実質的反対意見は次回に紹介します。

全1ページ

[1]

くろぬま
くろぬま
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
検索 検索
1 2
3 4 5 6
7
8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18
19
20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

最新のコメント最新のコメント

すべて表示

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

本文はここまでですこのページの先頭へ

[PR]お得情報

CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫

その他のキャンペーン

みんなの更新記事