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Halliburton判決(3)

判決の紹介をしてから、だいぶ時間が経ってしまいました。今年出すべき原稿は出したので、もう一度、Halliburton判決を振り返ってみたいと思います。
 
証券経済研究所の研究会で、この判決を採り上げました。その際、HalliburtonⅠ、Amgenを知らないと、HalliburtonⅡを正しく理解できないことが分かりました。すこし遠回りですが、これらを振り返ってみます。
 
Erica P. John Fund, Inc. v. Halliburton Co., 131 S. Ct. 2179 (2011).
解説として、藤林大地「市場における詐欺理論の適用と損害因果関係の立証の要否」商事1979号(201253
【事実】
 EPJ Fundが、Halliburton社が、(1)アスベスト訴訟の潜在的な責任の範囲、(2)ある建設契約から生じる予想収益、および(3)他の会社との合併の便益について、故意に、さまざまな虚偽の開示を行ったと主張して、199963日から2001127日までにH社の株式を購入した者を代表してクラス・アクションを提起した。
 却下の申立て(motion to dismiss)を退けたのち、地方裁判所は、EPJ Fundは、請求に係る損害因果関係を証明しておらず、連邦民事規則23(b)(3)号の要件を充たさないとして、クラスの認可を拒絶した。第5巡回区の先例は、クラス認可を得るために原告に損害因果関係の立証を求めていた。
 クラス認可のために損害因果関係の立証が必要かどうか、巡回区の不一致を解消するために、最高裁は裁量上訴を認めた。
 
【判旨】 破棄差戻し
 本件下級審は、クラス認可における共通性の要件を充たすために、信頼の立証が必要であり、信頼の証明のためには損害因果関係の証明が必要と考えた。
 しかし、控訴裁判所の要件は、Basic判決の論理からは正当化されない。損害因果関係は、投資家が不実表示を信頼したか否かとは関係のない事柄に関するものである。後の損失が不実表示の発覚以外の要因によって生じたという事実は、投資家が最初の段階で不実表示を信頼したかどうか(それが直接であれ、推定される場合であれ)とは関係がない。
 Halliburtonは、本件下級審が損害因果関係の名の下で実際に問うたのは、主張された不実表示が最初の段階で市場価格に影響を与えたか、すなわち価格影響性(price impact)の有無であったと主張する。しかし、控訴裁判所が言おうとしたことをHalliburtonがどう考えるにせよ、実際に言ったのは損害因果関係である。
 
【解説】
 判決の内容は当然のように思えますが、Amgen判決、HalliburtonⅡ判決への伏線となっており、そう単純な問題ではありません。
 
Amgen Inc. v. Connecticut Retirement Plans and Trust Funds, 133 S. Ct. 1184 (2013).
解説として、藤林大地「証券集団訴訟の認可と不実表示の重要性の立証の要否」商事2015号(201338頁。
 
【事実】
 コネチカット退職年金ファンドが、バイオテック会社Amgenとその役員(併せてAmegenという)に対し、証券クラス・アクションを提起し、信頼の要件については「市場に対する詐欺」推定を援用し、クラス・アクションの認可を求めた。地裁はクラスを認可し、第9巡回区控訴裁判所は、退職ファンドはクラス認可の前に虚偽記載または省略の重要性を証明する必要があるとのAmgenの主張を退け、クラスの認可を維持した。同裁判所は、また、クラス認可の段階でAmgenが提出した、重要性の反証となる証拠を考慮することを地裁が拒絶した点に誤りはなかったと判示した。最高裁は、クラス認可のために重要性を立証する必要があるかどうかについて、巡回区の不一致を解消するために、裁量上訴を認めた。
 
【判旨】
 重要な問題は、クラスに共通する法または事実の問題が、個々のメンバーのみに影響する問題に対して支配的であるといえるためには、重要性の証明が必要かどうかである。その答えは2つの理由により「否」である。
 第1に、重要性は客観的な基準に従って判断できるので、クラスに共通の証拠によって証明され得るからである。したがって、重要性は、23(b)(3)号にいう「共通の問題」(common question)である。
2に、原告が略式判決の申立てや本案において、重要性の十分な証拠を提出できなかったときは、個々人の信頼の問題がクラスに共通の問題に優越するという事態を招くことはない。重要性の要件の証明に失敗したときには、すべての者にとって訴訟は終了し、個々人の信頼という争点が支配的になるような請求が残ることはない。
 
Amgenは、市場に対する詐欺理論の前提条件はクラス認可の前に充たされなければならないから、前提条件の一つである重要性もクラス認可の前に証明されなければならないという。しかし、重要性と異なり、市場の効率性および不実表示が公表されたことは、Rule10b-5の欠くことのできない要素ではない。後2者が証明されなくても、信頼の個別的立証が許されるが、重要性が証明されなければクラスの請求全部が棄却される。市場の効率性や公表の争点と異なり、重要性の争点が証明できなければ、個別問題が共通問題に優越することはないので、重要性は23(b)(3)号のクラス認可の前に証明される必要はない。
 
 Amgenは、クラス認可は和解への大きな圧力となるから、認可前に重要性を争えないと、重要性を争う場面がなくなると主張する。しかし、その点は、不実表示や損害因果関係の要件についても同じである。議会は和解の圧力に対して、クラス認可段階で重要性の証明を求めること以外の手段によって対処したのであり、これに加えて裁判所が23(b)(3)号の再解釈により調整を行う必要はない。
 
 Amgenは、原告の申立てに対して、重要性の反証を提出できないとした点に地裁判決の誤りがあると主張する。しかし、主張された不実表示が最終的に重要でないとされる可能性があることは、共通問題が支配的であることを妨げるものではない。本件の地方裁判所が、Amgenの反証の考慮を略式判決または事実審(トライアル)にとっておいたのは正しい。
 
 本判決では、Thomas判事が反対意見を記載し、Kennedy判事がこれに同調、Scalia判示もその一部に同調している。
 
【解説】
 不実表示の重要性は、市場に対する詐欺理論による信頼の推定を認める要件の一つなのに、クラス認可の段階で証明を要しないのはなぜか。判決はこの問題に対して、重要性が客観的証拠によって証明できるという点で「共通の問題」であること、仮に本案において重要性が証明されなかった場合には、訴訟は終了するので、改めてクラスの認可を判断する必要がないことを以って答えています。
 クラス認可の段階で重要性の証明が不要だとすると、被告は重要性を反証する証拠を提出できないという不利益を受けますが、裁判所はそれもやむを得ないと考えたのです。この点は、HalliburtonⅡ判決で、一部変更されたとみることもできます(後述)。

Halliburton判決(2)

Thomas, Scalia, Alito判事の意見(実質的には反対意見)は次のように論じています。
 
Basic判決による信頼の推定は誤りであった。その理由は第1に、裁判所が、争いのある経済理論と投資家の行動についての誤った直観に依拠したからであり、第2に、それが、クラス認可を求める原告に、個別の争点より共通の争点が優越するという要件の立証を求める連邦民事規則23条に関する判例法に反するからである。第3に、推定された信頼は、ほとんど反証することが不可能であり、信頼の要件を廃止するのに等しいからである。
 
A 1
Basic判決が前提とする事実のうち、すなわち公表情報が市場価格に反映されているという点は、効率的資本市場仮説に立脚したものであるが、Basic判決以来、その経済理論は広く批判にさらされている。また、市場が公表情報を反映するにしても、正確に反映するとは限らないことを示す多くの実証研究がある。
 
Basic判決が前提とするもう一つの事実、すなわち投資家は市場の誠実性を信頼しているという点は、誤りである。多くの投資家は、市場が株式を過大評価または過小評価していると信じているからこそ、取引をしているのであるし、他の投資家は、価格と関係のない理由で、たとえば流動性の需要、税金の考慮、ポートフォリオの組換えのために取引している。
 
多数意見は、穏健な前提を置くことで理論と現実を架橋しようとする。しかし、そのような穏健な前提は、Basic判決の判決文言と整合しない。また、多数意見は、市場が過大評価・過小評価している価値投資家も、将来、市場価格が公表情報を反映することを信じているというが、取引の際に市場価格が公表情報を反映していなければ、投資家は、公表情報が彼を取引に誘い込んだと主張することはできないはずである。
 
Basic判決による信頼の推定は、クラスの認可を求める当事者が連邦民事規則23条の要件を立証しなければならないとするComcast Corp. v. Behrend, 133 S. Ct. 1426 (2013)に反する。Basic判決は、推定が発動されれば、クラス認可のための優越性の要件が充足されると考えているようであるが、我々の理解では、Basic判決は、個々の投資家が市場価格を信頼して売買したことの証明を求めているのであり、このような問いは、本質的に個別の争点である。もし、Basic判決が前者のように解釈されるのであれば、それは裁判所の権限を越えている。
 
Basic判決は、被告に反証の機会を与えているようにみえる。しかし、クラス認可の段階では、反証はクラス代表に対してのみなされるので、クラス代表の信頼を反証することは難しい。クラス認可後は、裁判所は信頼の要件の反証を拒絶してきた。信頼の反証を認めた事例は、何千ものrule10b-5訴訟中、6件しかないという。Basic判決は、信頼の要件を実質的に廃棄するのに等しい。
 
多数意見は、先例拘束の原則により、制定法の解釈の変更には特別の理由が必要であるとする。しかし、rule10b-5は判例による訴権であるから、制定法の解釈のような先例拘束は働かない。裁判官が作った法が間違っていたときは、議会に期待するのではなく、自ら誤りを正すべきである。
 

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