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書斎の窓

長らく更新をさぼっていました。

昨年出版した拙著は、だれも書評を書いてくれないので、自ら紹介を書きました。興味のある方は以下のリンク先を辿ってもらえると嬉しいです。



ミャンマー証券事情

1月12日から15日まで、JICAのフォローアップ事業の参加し、ミャンマーで開かれた「JICA Open Seminar on Stock Exchange Development in Myanmar」で基調講演をしてきました。

ミャンマーの資本市場整備については、財務総合政策研究所に設けられたWGを通じて、証券取引法とその下位法令の整備の手伝いをしました。ミャンマーでは、2013年に証券取引法が制定、2015年12月にヤンゴン証券取引所が開設され、2016年3月から上場株式の取引が始まっています。今回のセミナーは、証券取引委員会、証券取引所、証券会社の職員に対する研修を兼ねていて、日本取引所グループ、金融庁、大和総研なども講師を出しています。私はもう帰国しましたが、研修は1月18日まで続きます。今回のセミナーでは、ディスクロージャー、不公正取引、効率的な価格形成、自己責任原則、適合性の原則といった証券取引法を構成する基本的な理念について話をしました。かつてミャンマー側のWGの一員として一緒に働いたウーさんを含む、証券取引委員会(SEC)の委員数名から上場予備軍の会社関係者まで、100人程度の参加者があり、熱心に話を聞いてもらえました。現地に駐在している日本人ら関係者のご努力に頭が下がります。

ミャンマー証券取引所の上場銘柄は現在3つで(近く4社目が上場する)、証券会社は6社です。http://secm.gov.mm/en/home/ (SECのホームページ) ミャンマーの経済は発展しつつあるのになぜ上場会社数が増えないのか? 関係者の話を聞いてみるといろいろな問題が浮かび上がってくるようです。そこから、上場会社が増えない理由を推測してみると、次のようにいえそうです。

第1に、現在のミャンマー経済、すくなくとも目に見えるインフラの整備等を支えているのは外資との合弁企業であり、つまり外国資本が入っているということ。ミャンマー法によると外国人はミャンマー内国会社の株を買えず、したがって外資との合弁企業は内国会社ではなく外国会社扱いになる。この外国会社は証券取引所に株式を上場することができない。現在、国会に提出されている会社法の改正が通ると、外国人もない国会社の株式の一定割合を保有できるようになり(つまり、外資との合弁企業が内国会社扱いとなり)、資本市場からの資金調達が可能になるようです。

第2に、内国企業が資本市場から資金調達をする需要が大きくないようであること。これまで上場した3社は、もともと十分な株主数があったためか、いずれもIPOをしていません。ミャンマーでは銀行預金が少なく、間接金融もうまく回っていないのに直接金融は早すぎるという意見もあるようです。

第3に、上場要件を充たしている内国企業が必ずしも上場していないのは、上場するとディスクロージャーによって企業内容が明らかになるのを避けるためではないかといわれているようです。「税務当局との関係で」という意味でしょう。

上に挙げた理由は、ミャンマーの当局、投資家、業者が証券取引法の理解を深めても、それだけでは解決できない社会システムの問題かも知れません。しかし、ミャンマーの経済成長の成果を国民が享受し、また国民の富が経済成長を後押しするには、資本市場の活用が不可欠なので、なんとかこれらの障害を乗り越えて行ってもらいたいものです。
写真上はセミナーのコーヒーブレイク時、下は新しいショッピングセンターイメージ 1
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有難い御礼状

拙著を10月に出版し、お世話になった先生方には献本したのですが、こういう場合、御礼状をもらうにしても、御座なりの文句が並んでいるのが普通です。かくいう私も、御礼の文章を書くのが苦手で、御礼状さえ出さないことが多いのですが・・・。

今回、日ごろから尊敬する西の方の某大学の先生からいただいた次のような御礼状には感激しました。曰く、

「・・度重なる改正を経て現在の金商法は、一般の研究者には(ましてや学生には)非常にわかりづらい法律になっていますが、なぜこのような制度があるのかを法と経済学の観点を交えつつ丁寧に説き明かすとともに、個々の論点についても最新の議論を紹介しつつ黒沼さんのご見解が示されており、金融商品取引法の体系書の決定版といえる大著とお見受けいたしました。今後は学界においても御高著を現時点の理論的到達点としてさらなる議論が展開されていくであろうと思います。・・」

なぜ感激したかというと、

第一に、その先生は専門が違うにもかかわらず、内容をある程度読んだうえで、感想を述べていただいていることが分かるからです。自分が出す場合も含めて、「これから勉強させていただきます」という御礼状が多いなかで、なかなかできることではありません。

第二に、御世辞が入っているとは思いますが、的確な批評を加えていただいていると(勝手に)思うからです。

第三に、おそらく、最も重要な点ですが、最後の一文で、これからの議論を見据えて、お前もこれから精進しなければだめだとよ励ましてもらっているからです。

S先生、先生の保険法を楽しみにしています!

中国の重慶にある西南政法大学に招かれて、「契約法の観点からの会社法・金融法の適用」という学会に参加してきました。テーマからは契約の束としての会社法とか定款自治が思い浮かびますが、現にその通りで、アメリカの契約主義者の思想はすでに中国に及んでいるんだと感じました。とはいえ、参加者は中国各地、韓国、日本とイギリス(1名)で、アメリカからの参加はなかった模様です。

私はテーマと少し離れますが、上場契約によるある種の規範の適用と勝手に捉えて、日本のコーポレートガバナンス・コードを若干批判的に紹介する話をしました。概要は次の通りです。

・日本のガバナンス・コードは、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を目的として設定し、これを達成する手段としてステークホルダーとの協働を強調していること。
・経営陣はステークホルダーとの協働を確保しつつ、会社や株主共同の利益のために行動するべきであるとする原則4−5は、会社法学の主流の立場からは違和感があること。
・「攻めのガバナンス」を勧める原則4−2は、取締役会の監督機能を放棄せよといっているように読めること。
・最近の企業実務において、ガバナンス・コード(たとえば原則4−2、補充原則4−2①など)に沿った経営が推奨され、会社の中長期的な業績に連動する報酬として、アメリカのリストリクテッドストックに相当する譲渡制限付株式の導入が大々的に奨められており、業績連動型報酬を普及させたいがためにガバナンス・コードを策定したといわれても仕方のない状況にあること。
・補充原則4−11③に見られるように、原則の趣旨を理解しないで「遵守した」と表明している例が見受けられ、違反に対する制裁がないとはいえ、原則の趣旨を解釈する法学者の作業が必要であること。
・会社内のダイバーシティを求める原則2−4、取締役会内のダイバーシティを求める4−11の遵守率が、それぞれ99.5%、94.8%と異様に高く、実態を反映していない(Global Forum(2)に記載したドイツのガバナンス・コードと比較せよ)。これはどのようにも解釈できるプリンシプルベースの規範の限界であり、真に社会政策を実現したいのであれば、プリンシプルの書き振りを工夫すべきである。

写真は、重慶の前に立ち寄った成都郊外の都江堰(秦代からの水利施設で写真は運河部分。世界遺産)と重慶の夜景
イメージ 1

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Global Forum 2016 (2)

フォーラムでの講義で興味深かった点をつまみ食い的に取り上げていきます。あくまでドイツ法を英語で聞いた耳学問であり、そのようなものとして受け止めてください。

案の条、ドイツの報告者からは、ステークホルダーの利益の尊重やガバナンス・コードの話が、アメリカの報告者からはCSR(がアメリカにおいては重要でないこと)の話が出てきた。まず、ドイツの会社法の先生が、ドイツの公開会社の目的は企業価値の最大化であって、それは株主利益の最大化とは異なると言い切ったのには驚いた。ドイツでは、会社法にコーポレートガバナンスコードの遵守または不遵守の場合の説明義務が規定されており、また、取締役の報酬制度については、企業の持続的発展(company's sustainable development)を目的とするものでなければならないと規定されている。この、企業の持続的発展は、sustainableという語が当てられているが、最近の議論ではなく、「企業それ自体」(Unternehmen an Sich)という概念に由来しているのだ。

ガバナンスコード本体には、取締役会(Management Board)メンバーの解任違約金の制限(報酬2年分が上限)、監査役会(Supervisory Board)メンバーの年齢制限や就任期間に上限を設けるべきことが勧告されている。後者は世代間のダイバーシティの観点から設けられたという。また、共同決定法が適用される会社では、監査役会の「少なくとも30%は女性から構成され、少なくとも30%は男性から構成されるべきである」。これも、もちろんダイバーシティの観点からの規定なのだが、形式的には男女平等のルールとなっていておもしろい。

このようにドイツのガバナンスコードは、会社法の目的からは説明できない規定が含まれていて、「進んでいる」。日本の研究会で、ドイツのガバナンスコードの遵守率が低いという話を聞いたことがあるが、内容が全然違うので比較にならないだろう。

ゲーテ大学で日本法を専攻している大学院生がいて、面会を求めてきた。日本のガバナンスコードを勉強しているという。5年前に会った日本法研究者の彼も駆けつけてくれた

2日目の午前は欧州中央銀行に行き、銀行監督の話を聞いた。5年前も訪問したのだが、そのときは街中にあった。今はちょっとはずれ(低開発地域)にある市場跡に高層ビルを建てている(写真)。
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欧州中央銀行は重要な銀行(ドイツには20行)の監督を行い、他は各国の中央銀行と協力して監督する。担当者は、我々はSupervisorであって、Regulatorではないという。たしかに、ドイツには規制当局としてBaFinがある。Superviseの内容を聞いていると、これは健全性規制だということが分かった。もっとも、銀行免許は中央銀行が出すらしい。

3日目の午後、フォーラムが終わった後、日本からの3名の学生とHeidelbergに遊びに行った。ここには、学生の頃、ヨーロッパ一周旅行のごく初期に訪れたことがある(Frankfurt起点だったので)。城跡から見るネッカー川の眺めは相変わらず美しかった(写真)。
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