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Halliburton判決(2)

Thomas, Scalia, Alito判事の意見(実質的には反対意見)は次のように論じています。
 
Basic判決による信頼の推定は誤りであった。その理由は第1に、裁判所が、争いのある経済理論と投資家の行動についての誤った直観に依拠したからであり、第2に、それが、クラス認可を求める原告に、個別の争点より共通の争点が優越するという要件の立証を求める連邦民事規則23条に関する判例法に反するからである。第3に、推定された信頼は、ほとんど反証することが不可能であり、信頼の要件を廃止するのに等しいからである。
 
A 1
Basic判決が前提とする事実のうち、すなわち公表情報が市場価格に反映されているという点は、効率的資本市場仮説に立脚したものであるが、Basic判決以来、その経済理論は広く批判にさらされている。また、市場が公表情報を反映するにしても、正確に反映するとは限らないことを示す多くの実証研究がある。
 
Basic判決が前提とするもう一つの事実、すなわち投資家は市場の誠実性を信頼しているという点は、誤りである。多くの投資家は、市場が株式を過大評価または過小評価していると信じているからこそ、取引をしているのであるし、他の投資家は、価格と関係のない理由で、たとえば流動性の需要、税金の考慮、ポートフォリオの組換えのために取引している。
 
多数意見は、穏健な前提を置くことで理論と現実を架橋しようとする。しかし、そのような穏健な前提は、Basic判決の判決文言と整合しない。また、多数意見は、市場が過大評価・過小評価している価値投資家も、将来、市場価格が公表情報を反映することを信じているというが、取引の際に市場価格が公表情報を反映していなければ、投資家は、公表情報が彼を取引に誘い込んだと主張することはできないはずである。
 
Basic判決による信頼の推定は、クラスの認可を求める当事者が連邦民事規則23条の要件を立証しなければならないとするComcast Corp. v. Behrend, 133 S. Ct. 1426 (2013)に反する。Basic判決は、推定が発動されれば、クラス認可のための優越性の要件が充足されると考えているようであるが、我々の理解では、Basic判決は、個々の投資家が市場価格を信頼して売買したことの証明を求めているのであり、このような問いは、本質的に個別の争点である。もし、Basic判決が前者のように解釈されるのであれば、それは裁判所の権限を越えている。
 
Basic判決は、被告に反証の機会を与えているようにみえる。しかし、クラス認可の段階では、反証はクラス代表に対してのみなされるので、クラス代表の信頼を反証することは難しい。クラス認可後は、裁判所は信頼の要件の反証を拒絶してきた。信頼の反証を認めた事例は、何千ものrule10b-5訴訟中、6件しかないという。Basic判決は、信頼の要件を実質的に廃棄するのに等しい。
 
多数意見は、先例拘束の原則により、制定法の解釈の変更には特別の理由が必要であるとする。しかし、rule10b-5は判例による訴権であるから、制定法の解釈のような先例拘束は働かない。裁判官が作った法が間違っていたときは、議会に期待するのではなく、自ら誤りを正すべきである。
 

Halliburton判決(1)

6月23日にアメリカ合衆国の連邦裁判所は、Halliburton, Co. v. Erica P. John Fund, Incを下しました。これをHalliburtonⅡ(判決)といいます。この事件では、rule10b-5訴訟で信頼(reliance)の推定を認めた1988年のBasic Inc. v. Levinson, 485 U.S. 224(以下、Basic判決)を見直すかどうかが注目されていました。Basic判決が変更されれば、証券クラスアクションを提起すること自体がかなり難しくなるため、影響が大きいのです。判決は、結局、Basic判決の見直しをせず、クラス認可前の段階で、発行者は虚偽記載が市場価格に影響を与えなかったこと(price impactがないこと)を証明して、信頼の推定を覆すことができる(争うことができる)としました。価格影響性(price impanct)の判示も重要であり、アメリカではHalliburtonⅡは重く受け取られているようです。この判決が、ただちに金商法の解釈に影響を与えるものではありませんが、米連邦最高裁の考え方を知るにはよい材料ですので、まず、以下に判決の要約を示します(一部、意訳が入っています)。
 
Erica P. John Fund, Inc. v. Hallibuirton Co., 131 S. Ct. 2179 (2011)(以下、HalliburtonⅠ)において我々(最高裁のこと)は、Basic判決またはその論理は、Basic判決の推定を発動させるためには、証券訴訟の原告がクラス認可の段階で損害因果関係(虚偽記載と損害との間の因果関係)を証明することを要求していないと判示した。差戻審において、Halliburtonは、損害因果関係の反証として提出していた証拠は、虚偽記載が価格に影響を与えていなかったことの証拠でもあると主張した。地裁はHalliburtonの主張を取り上げることを否定し、第5巡回区控訴裁判所も、価格影響性の主張は事実審(トライアル)でのみ認められるとした。
 
Ⅱ A
まず、判例の変更には特別の正当事由(special justification)が必要であることが、我々の判例法である。Diskerson v. U. S., 530 U. S. 428 (2000)参照。
 
Basic判決において当裁判所は、信頼の要件の直接的な証明が、公開市場で取引するrule10b-5の原告に不必要かつ非現実的な負担を課すことを認識し、よく発達した市場において証券の市場価格が公に利用可能な全ての情報を反映していると考える「市場に対する詐欺(fraud-on-the-market)理論」に基づいて、当該市場で形成された価格で株式を売買した投資者は、公表された重要な虚偽記載を信頼したと推定されると判示した。この理論によると、信頼の推定を受けるためには、原告は、(1)虚偽記載が公表されていること、(2)虚偽記載が重要であること、(3)株式が効率的な市場で取引されていること、(4)虚偽記載がされ、真実が発覚するまでの間に、原告が取引を行ったことを示す必要がある。
 
Halliburtonは、Basic判決の2つの前提が今日では成り立たないので、判例が変更されるべきだと主張する。
 
第1に、Halliburtonは、今日では、効率的資本市場仮説(efficient capital market hypothesis)が成り立たない証拠がいくらでもあるという。しかし、Basic判決が、信頼の推定を認めるに当たり、特定の理論に依拠していないことは、当該判決が述べるとおりである。裁判所は、一般的にいって、市場のプロが、会社に関して公表された重要な情報の多くを考慮しており、したがって、市場価格に影響を与えるという穏健な前提を置いているだけである。Halliburtonが引用する学説は、このような穏健な前提を否定するものではない。
 
第2に、Halliburtonは、投資家が市場価格の誠実性(integrity)を信頼して投資を行うという、Basic判決が仮定に置いている命題を攻撃する。Halliburtonは多くの例を引用するが、そのうち重要なのは、株式が過小評価または過大評価されていると信じている価値投資家(value investor)であろう。しかし、Basic判決は価値投資家の存在を否定するものではない。そのような投資家は、株価が最終的には重要な情報を反映すると暗黙のうちに信頼しているのである(そのような市場修正がないとしたら、どうやって価値投資家は利益をえるのか?)。たしかに、価値投資家は取引の時には価格を信頼していない。しかし、信頼の推定を受けるためには、合理的な期間内に市場が情報を反映すると信じていれば足りる。
 
Basic判決は、信頼の推定を受けるために原告は、公開性、重要性、市場の効率性、および取引のタイミングを証明しなければならないとした(上記A参照)。これらの前提の証明責任は原告にあり、かつ(重要性を除いて)、クラス認可前に証明されなければならない。
 
Halliburtonおよびその賛同者は、Basic判決は、証券クラスアクションを促進することにより、深刻で害のある結果を引き起こしてきたと主張する。しかし、そのような心配は議会によって対応されるべきものであり、すでに1995年の私的証券訴訟改革法(Private Securities Litigation Reform Act of 1995)によって対処されてきた。
 
Ⅲ  
Halliburtonは、Basic判決を変更する2つの提案をしている。
 
第1は、信頼の推定を発動させるために、原告は、虚偽記載の価格影響性を証明しなければならないというものである。たしかに、Basic判決が採用した信頼推定の4つの要件(上記A(1)-(4))のうち、(1)-(3)は価格影響性に向けられたものである。しかし、Basic判決の信頼推定の要件は2つの構成要素からなる。第1に、原告が、虚偽記載が公表されており、重要で、かつ原告が、一般的に効率的な市場デリバティブ取引をしたことを証明した場合には、彼は虚偽記載が価格に影響を与えたとの推定を受けることができる。第2に、原告が、関連する期間に市場価格で株式を購入したことを証明した場合には、彼は虚偽記載を信頼して株式を取得したとの推定を受けることができる。原告が価格影響性を直接に証明しなければならないというHalliburtonの提案は、第1の構成要素を奪うことになる。市場の効率性はあるかないかの命題ではないから、一般的に効率的な市場において、重要な虚偽記載が株価に影響を与えないこともあり得る。だからこそ、Basic判決は、特定の虚偽記載が価格に影響を与えなかったという反論の機会を被告に与えている。我々は、Basic判決を半分廃棄することになる原告の主張を認めることはできない。
 
第2に、Halliburtonは、クラス認可段階で、虚偽記載が株価に影響を与えなかったという証拠により、推定を覆すことを認めるべきだと提案する。我々はこの提案に賛成する。
 
従来から、クラス認可の段階で被告が価格影響性を否定する証拠を提出することは、それが、推定の反証ではなく、市場の効率性を反証する目的を持つ限り、認められてきた。しかし、このような制限は意味がなく、奇妙な結果を招く。たとえば、クラス認可の段階で、被告が6つのイベントに関するイベントスタディを提示し、そのうちの一つが被告の虚偽記載であったとする。地裁が、市場は効率的であったが、虚偽記載に対しては市場の反応がなかったと認定した場合、これは信頼の推定を覆すものではないという理由でクラスを認可することはおかしい。
 
このようなおかしな結果はBasic判決の論理とも矛盾する。Basic判決の市場に対する詐欺理論の下で、市場の効率性と他の前提条件が価格影響性を間接的に証明する。そのことは価格影響性の直接的な反証を許さないものではない。したがって、価格影響性はrule10b-5のクラスアクションにとって本質的な前提条件である。
 
控訴裁判所は、Amgen判決に依拠して、Halliburtonはクラス認可段階で価格影響性の反証を提出できないと判断した。しかし、Amgen判決は、クラス認可段階で原告が重要性を証明しなければならないかどうかについて判示したものである。重要性はBasic判決の推定の前提条件であるが、それは連邦民事規則23条(a)項(3)号の優越の要件と関連しないので(重要性の要件は各原告に共通するので、クラス認可の適否の判断とは関係しない)、本案まで持ち越されると我々は判示した。EPJ Fundは、価格影響性の要件も重要性の要件と同じであるという。しかし、価格影響性は重要性と重要な点で異なる。他の要件がクラス認可の段階で証明されているのであれば、クラスに共通する要件である重要性を本案段階に持ち越したとしても、クラスの認可をあとで覆すような事態には至らないからである。 
 
Ginsburg判事、Breyer判事、Sotomayor判事による賛成意見
 
価格影響性の考慮を本案段階からクラス認可段階へ早めることは、認可段階で利用できるディスカバリーの範囲を拡げることになる。もっとも、価格影響性がないことの立証責任は被告が負うので、本判決は証券訴訟の原告に追加的負担を課すものではない。以上の理解を前提として法廷意見に賛成する。
 
Thomas判事らの実質的反対意見は次回に紹介します。

元引受証券会社の責任

商事法務から、岩原・山下・神田先生編集の『会社・金融・法』(上・下)が届きました。
 
おそるおそる読んだ論文があります。後藤元さん(肩書を付けるのに本当に向いていないお名前ですよね)の「発行開示における財務情報の虚偽記載と元引受証券会社のゲートキーパー責任」です。
 
私はこの論文集に「有価証券届出書に対する元引受証券会社の審査義務」という論文を寄稿していましたので、完全にテーマがダブりました。私がテーマを連絡せず、なおかつ原稿の提出も遅れたためです。私は自分の論文にあまり自信がなく(独自のアイディア・切り口で切ったのではなく、判例・学説を紹介して分析を加えるという伝統的な手法をとっていたという意味で)、出版前にテーマの重複を知らされていたので、「ああ、比較されるだろうなあ。結論が違っていたら嫌だあ」と不安でした。
 
一読して、結論はそれほど変わらず、引用文献もあまり重なっていないのでほっとしました。よく読むと、私は入口の問題を扱い後藤さんはその先の問題を扱っている点で、テーマもある意味では重なっていないのです。後藤さんの論文を読んでいたら、私のは書きにくかったとはいえます。また、問題意識を持ったきっかけも、私はある訴訟、後藤さんは研究会と違っている点も面白かったですね(私の問題意識は、ここのディスクロージャーの記事にも書いています)。
 
どちらも、ぜひ一読ください。
論文の3つ目のテーマとして「ディスクロージャーの効用と限界」と題し、具体的には役員報酬の個別開示(平成23年内閣府令改正)と第三者割当増資(平成21年取引所規則と内閣府令の改正)を取り上げました。
 
役員報酬の個別開示は、金融審議会のスタディグループ報告を受けてのものであるとされているが、同報告は報酬の個人別の開示までは求めていません。役員報酬の個別開示は政治的判断で導入されたものといえるでしょう。
 
会社法でなかなか実現しなかった役員報酬の個別開示が、上場会社の役員(取締役・監査役・執行役)に限って、かつ1億円以上に限ってではあるが、法律ではなく内閣府令の改正によってあっさり実現してしまったのです。注目したいのは、情報が投資者の投資判断にとって重要であるという理屈さえ立てば、金融商品取引法は開示会社または上場会社に対してどんな開示でも要求できるというディスクロージャーの強制力です。
 
他方で、このような強制力に鑑みると、どのような開示を求めるかは、それによって害される利益との衡量のなかで慎重に決定されなければなりません。役員報酬の個別開示との関係で衡量されるべき利益はコーポレート・ガバナンス、換言すると株主の利益でしょう。論文では、1億円以上の役員報酬の開示が、上場会社に役員報酬の引下げを促したり、有能な経営者の採用を難しくすることを通じて株主の利益を害さないかが慎重に検討されなければならないと指摘しました。
 
第三者割当増資の開示については、内閣府令と取引所の上場規則を説明し、両者を比較しました。前者は開示ルール、後者は行為規範となっており、内容も後者の方が発行者に厳しいものとなっています。そこではハード・ローとソフト・ローの役割分担が行われているとみることもできますが、上場会社等の発行者に対して金融商品取引法では開示規制しか及ぼすことができないというのは当然のことかという問題提起をしました。
 
この問題については、金融商品取引法と会社法の役割を画すべきであり、上場会社の株主保護は会社法の領域に属する問題であるというという声をよく聞きます。しかし、私自身は、金融商品取引法は行政処分や課徴金によって法を執行することができる点で上場会社の株主に適切な救済を与えることができるから、金融商品取引法の利用を一概に否定すべきではないと考えています。上場会社は既に金融商品取引法上の行政処分の対象とされているのであり、立法すれば、発行者の役員の解任命令権を金融庁長官に付与することさえできるでしょう。また、たとえば、希釈化率300%超の第三者割当を金融商品取引法上禁止して、証券取引等監視委員会が192条に基づく緊急差止命令を申し立てることができるようにすれば、これを取引所の自主規制のみに委ねて上場廃止とするよりも株主の保護を図ることができるようになります。
 
前半では、効用が強いので規制のデザインを慎重にすべきであるといい、後半は限界を超えて強い効用を大いに利用すべきであるといっており、結論がバラバラですが、この辺りは論文というよりもエッセイになっていると反省しているところです。
【文字フォントが読みにくいですがご勘弁を】
 
ジュリスト8月号で「金融商品取引法―施行5年の軌跡と展望」を特集することになり、私はいつものようにディスクロージャーについて依頼されました。「5年の軌跡と展望」というと、普通は平成18年金商法の改正内容とそれについての今後の展望について書くことになるのですが、ディスクロージャーはその後も頻繁に改正されています。そこで、平成18年以降の改正を横断的に取り上げることにしたため、内容はディスクロージャーあれこれになってしまいました。
 
ここではそのいくつかを紹介します。
 
まず取り上げたのは、ディスクロージャーの要否を決定する基準はなにかということです。
 
当然、第1は、「投資者がその情報を必要としているかどうか」でしょう。しかし、投資者の必要性だけでディスクロージャーの範囲を決することには、少なくとも2つの点で問題があると考えました。
 
1に、ディスクロージャーは情報を収集・編成して開示する発行者に少なからぬコストをかけ、そのコストは最終的に投資者も負担することになるため、投資者を保護するためのディスクロージャーが投資者に不利益を与えることになりかねません。そこで、発行者に何についてどれだけ詳細な情報の開示を求めるかを決するには、発行者の負担を考慮することも必要になると考えられます。
 
2に、発行者がディスクロージャーの負担を嫌って投資者に有価証券を提供しないようになると、投資者は当該有価証券に対する投資の機会を逸することになります。多様な投資対象を提供して国民の資産形成に資することができなければ、「国民経済の健全な発展」という金融商品取引法の目的を達成することができません。そこで、投資機会の提供や国民の資産形成という観点からも、発行者の開示コストを考慮することが必要になると考えました。
 
この第2の意味での発行者の開示コストの問題を扱ったのが、平成23年改正に係る英文開示と平成20年改正に係るプロ向け市場の開示であり、平成21年改正に係る売出し概念の見直しにおいて複雑な規制が導入されたことも、投資者の投資機会の確保を考慮したものであったと思います。
 
【英文開示の内容については省略】英文開示は平成17年の証券取引法改正で導入されたのですが、その利用は極めてわずかにとどまっており、投資者に外国会社への投資機会を提供できませんでした。その原因としては、外国会社は有価証券の募集・売出しの段階で日本語による有価証券届出書を作成しており、継続開示書類のみについて英文開示を認めても大きなコスト削減にならないことが指摘されていました
 
【平成23年改正の内容も省略】改正のポイントは、発行開示書類および臨時報告書についても外国会社等に英文開示を認めることにしたことですが、なお、証券情報については日本語・日本基準によって記載しなければなりません。外国会社等の情報が外国の市場において英語により開示されており、外国の投資者の十分な評価の対象となっていることが、発行開示において英文開示を認める根拠ですから、外国の市場で十分な開示が行われていない証券情報について英文開示を認めないことは筋が通っています。しかし、この結果、外国会社届出書には英文と日本語、外国基準と日本基準が混在することになり、かえって作成にコストがかかりはしないか、その結果、改正後の英文開示も利用されないのではないかという心配もあります。
 
今後も英文開示が利用されないのであれば他の方策を講じなければならないでしょう。その一つの候補は、投資者層を限定することによって発行者の開示負担を軽減する「プロ向け市場の開示」です。
 
【プロ向け市場の開示の解説をしたあと】プロ向け市場も現在、低調ですが、その理由は、プロ向け市場のディスクロージャーの仕組み以外の部分に存するようです。私は、①特定投資家向けに特化したディスクロージャーの内容、②自主規制による開示を民刑事責任及び課徴金でバックアップする仕組みは、他分野でも応用可能なものと評価しています。ここで①と②は必然的に結びつくものでないと思っています。たとえば、①の例として、外国基準・外国語による開示が考えられるわけですがが、これらを伝統的な法定開示と位置づけ、特定投資家向け法定開示とすることも可能でしょう。②については、タイムリー・ディスクロージャーのような自主規制に民刑事の責任・課徴金制度を適用するという方向性も、伝統的に法定開示の対象とされてきた開示内容を自主規制に移行し、これに民刑事の責任・課徴金制度を適用するという方向性も考えられるところです。
 
【売出し概念の見直しの説明をしたあと】既発行証券の勧誘である「売出し」を新規発行証券の勧誘である「募集」と整合的な定義にするだけならば、このような規制の柔軟化は要らないはずですし、規制の柔軟化が望ましいのであれば募集についても柔軟化をすべきであるといえます。なぜ、売出しに係るディスクロージャーにのみ、柔軟化とそれに必然的に伴う複雑な規制が必要だったのでしょうか。
 
その答えは、新規発行証券と既発行証券の性質が2点において相違することに求められると考えました。第1に、新規発行証券の取引は募集に該当するか否かの別しかありませんが、既発行証券の取引は売出しと私売出しのほかに個別の売買取引があり、ディスクロージャーの必要な売出しとそうでない個別の売買取引とを区別する必要があるのです。第2に、新規発行証券では募集により利益を得る発行者が発行開示を行う関係にありますが、既発行証券では売出しや個別の売買取引を行う者は、発行者の協力を得られなければ取引をすることができないという違いがあります。そして、1の性質から、売出しについては詳細な適用除外取引が必要となり、第2の性質から、金融商品取引業者等による情報提供の制度が必要になりました。そうしないと、外国で発行された有価証券の国内における売買取引が著しく制約され、投資者の投資機会が奪われることになるからです。
 
このように、売出しの定義は、発行開示を行わない発行者の有価証券に対する投資者の投資機会の確保という難しい問題を含んでいることが分かります。
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