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FX業者

外国為替証拠金取引(いわゆるFX)について、競争が激しくなり廃業する業者が増加中であり、顧客から預かった財産を返還できずにトラブルを起こしている業者もあると聞きました。

この話を聞いて、あれっと思ったのは、今残っているFX業者は金先法または金商法の登録を受けることができた業者(ある程度、しっかりしたところ)だけだと思っていたからです。FX取引の多くは店頭デリバティブ取引ですから、これを扱う業者は、第一種金融商品取引業の登録を受けなければならず、最低資本金の規制や自己資本比率規制が適用されます。つまり、証券会社と同じだけの財務の健全性が求められているのです。

しっかりしていたかどうかはともかくとして、顧客資産の返還が困難になっていることについては、制度上の問題もあるようです。有価証券の取引や有価証券関連デリバティブ取引を扱う金商業者は、厳格な顧客資産の分別管理義務を負います。そこでは、顧客から預かった金銭に相当する一定額を信託しなければなりません。それに対して、有価証券関連以外のデリバティブ取引については、分別管理義務が緩やかなものになっており、顧客から預かった金銭の管理方法として預金の方法をとることも認められます。後者では、顧客資産の流用が生じやすいですね。このような違いが生じたのは、それぞれ証取法、金先法の規定を引き継いだからです。この点は、立法担当者も、「従前と同様」としか説明していません。分別管理の方法が異なっていてよいか再検討する必要がありそうです。

また、分別管理義務が履行されないまま業者が破たんした場合、有価証券関連業では投資者保護基金が顧客資産の返還を一定の限度で保証してくれますが、有価証券関連以外のデリバティブ取引(FXはこれに当たる)は投資者保護基金の適用対象ではありません。したがってFX業者が顧客の資産を流用した場合、顧客は投資者保護基金による救済を受けることができないのです。この差異について、立法担当者は、「投資者保護基金の制度趣旨(一般投資家を保護し証券市場の信頼性を維持する)にかんがみ、従前と同様に」としか説明していません。なぜ、証券市場の信頼性は維持する必要があるが、FX市場の信頼性は維持する必要がないのか、合理的な答えを出すのは、なかなか難しそうです。後者は企業の資金調達と関係がないからでしょうか。

もちろん、投資者保護基金への加入を業者に強制するには、その前提として厳格な分別管理義務を負ってもらわなければ困るという事情はあるでしょう。しかし、反対に、投資者保護基金への加入が認められていないから、当該業者には厳格な分別管理義務を課さなくてよいとは言えないはずです。このような整理の下で、厳格な分別管理義務および投資者保護基金制度を、有価証券関連以外のデリバティブ取引に及ぼすべきか否か、論じる価値がありそうです。

金融商品取引業の定義

ある原稿を書いていて、次のような問題に当たりました。

金融商品取引法では、2条8項各号の行為を業として行うことを金融商品取引業と定義し、金融商品取引業をするには登録を受けなければならないと定めています。このなかには、有価証券の売買やデリバティブ取引が含まれています。

そこで、個人や会社が投資目的で有価証券の売買やデリバティブ取引を行うには登録を受けなければならないのでしょうか。この点については、自己のポートフォリオを改善するために行う有価証券の売買や、リスク・ヘッジの目的で行うデリバティブ取引は、「対公衆性」に欠けるので金融商品取引業に当たらないという解釈が金融庁のパブコメ回答などで採られています。この「対公衆性」は、法律に書かれていない要件です。

対公衆性とは何でしょうか? 不特定多数を相手方とすることだとすると、市場で有価証券の売買をする場合、相手方は不特定多数のこともあるでしょう。

自己のポートフォリオを改善するための有価証券の売買は金融商品取引業に当たらないとしても、それは投資家の資金を有価証券で運用するのとどこが違うのでしょうか。金融商品取引法では、組合型のファンドが集めた資金を主として有価証券またはデリバティブ取引で運用する場合には、原則として金融商品取引業の登録を受けなければならないとされました。投資家から集めた資金を運用する者に専門性を求めるためです。これを自己運用といいます。ところが、株式会社が資産を株やデリバティブで自己運用する場合には、業者登録は要らないのです。強いて違いを挙げるなら、ファンドの場合は最初から投資で運用する予定で資金を集めているのに対し、株式会社が投資で運用するのは例外的だからでしょうか。最初から投資で運用するといって資金を集めた場合には「対公衆性」があるから、運用面でも投資者保護が必要になるということかも知れません。このときは、ポートフォリオ改善のための有価証券の売買は対公衆性の要件を満たすので、金融商品取引業の登録が必要ということになるのでしょうか。

自己勘定での取引になぜ規制を加える必要があるのか、正直、私はずっと疑問に思っていました。委託売買業務を行う証券会社については、委託売買と自己売買を同時に行うことから生じる弊害を除去するために、自己売買を規制する必要が生じます。しかし、その場合には委託売買だけで登録が必要になりますので、業者の自己売買を規制すれば済み、自己売買をするのに業登録を要求する必要はありません。

業の定義をどうするかとは、どの範囲の投資者を保護するかの問題ですから、保護を必要としている投資者の範囲を確定しなければ、明確な線引きはできません。ファンドの出資者と株式会社の出資者の要保護せいをどう判断するかが、難しいのです。解答の一つはすでに出されていて、株式会社はガバナンスが法で規制されているので株主を投資者として保護する必要性が乏しく、ファンドはガバナンスの規制がゆるいので出資者を投資者として保護する必要があるというものですが、投資者保護をガバナンスの問題に置き換えることができるのでしょうか。

結局良く分からなくなってしまったので、この部分は原稿にしませんでした。時間のあるときに、また考えることにします。

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