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JUDI こと都市環境デザイン会議・関西ブロックが10月25日に行う 第17回都市環境デザインフォーラム・関西
京都の景観はよくなるか!?
http://web.kyoto-inet.or.jp/org/gakugei/judi/forum/forum17/index.htm
「デザイン基準」から考える
そのプレ・フォーラムセミナー 京都の景観政策・理念と運用システムを問う
フォーラムに向けて徹底討論
が8月6日に行われました。http://www.gakugei-pub.jp/judi/semina/s0808/index.htm その準備会議にも参加させてもらっていますが、 新政策が施行されてからの現場での様子を話して欲しいという要望を頂き、 本当に小さな小さな設計事務所ではありますが、 参考になれば・・・・・、というより、 自分の考えを整理するために、恥を忍んで? 発表させて頂きました。 その時の原稿を転記します。 ■設計事務所の仕事の事例ストーリー設計事務所を(時々友人と協働しながら)一人でやっています。設立して20年ちょっとです。主な仕事は、木造住宅の設計、京町家の保全・改修設計などです。「京都府建築士会」に属し、まちづくりのお手伝いや、人を通じて京都の素晴らしさを再発見するラジオ番組の作成、また、「京町家居住支援者会議」では京町家で暮らしていく事の支援、「NPOうつくしい京都」では美しいまちなみ・暮らし・生活文化をこころとして橋渡ししていく活動などをしています。 ですから、基本的には京都のまちが、京町家を大切にしつつ美しい町並みになって欲しいと願う者です。しかし、新景観政策の細部に関しては、専門家も市民も疑問を感じているなかで強引に雪崩れ込んでしまったという印象も持っています。今は、令文を自分なりに咀嚼して、施主も自分も納得のいくような、地域や市民(施主)側に立った提案を行政に提示し、「進化させる」一助を担えればという意気込みで、仕事をしています。 新政策が昨年の9月に施行された以降に、30坪程度の住宅を4件設計させて頂いています。ここではまず、その時のストーリーをお話したいと思います。最初の2件は、北区の「旧市街地型景観地区」に当たる場所です。「旧市街地型景観地区」とは、「概ね昭和初期に市街地が形成されていた北大路通・東大路通・九条通および西大路通に囲まれた地域または伏見の旧市街地の地域内において、生活の中から生み出された特徴のある形態意匠を有する建築物が存し、趣のある町並みの景観を形成している地区」と書かれています。150坪ほどの敷地を3つに分割して建て売り住宅にする不動産業者からの仕事で、始まったばかりの景観施策のなかで、お手本になるような町並みを作ろうという不動産業者の意向のもと、まず1件をモデルハウスとして建てました。とはいえ、一般的に受け容れられなければ売れません。昨今は車を2台持っていることも多く、背の高いワンボックスカーも止められるようにしたいということで、まず、それが大きな問題でした。というのは、「道路に面し駐車場等の開放された空間を設ける場合は、周囲の景観に調和した門または塀等の設置を行うこと」という制限がかけられているのです。間口6mで高い車が入るようにするためには、かなり大きな門が必要になります。準防火地域では、2mを超える門は木製ではつくれません。となると、鉄骨で組んでデザインしなければなりません。外構に大金を使う余裕はありませんし、そんな仰々しい門が並んで果たして町並みと調和するかどうかという疑問も感じました。
そこで、ケーススタディーを描いてみました。まず、極端な読み方をして、“門があれば良い”というケース。鉄骨のフレームだけでも、まったく当てはまらないものでもない筈です。それにたとえ庇をつけても、結構圧迫感があり、どこかの新興住宅地のようです。逆に文言からは外れるけれど、狭い道などではこんな解決の仕方はどうでしょうか、という提案もしてみました。(お茶庭にあるような結界を置く)
やはり、固定されていない物はダメ だということでした。そして、3件並ぶので、門を3つ並べるよりも、袖壁状の塀が並ぶことで、通りの連続性を出せるという提案をしました。それが漸く認められました。 今、認められたと言いましたが、景観条例による申請は、建築確認申請が法令等に適合して いるかどうかを確認するのとは違って、景観法による市町村長の認定ということになります。ですから、細かい規定が書かれていなくても役所(市長)の判断に委ねられるということがあり得るわけで、逆に認可された形は基本的には変更出来ない事になります。 その次の仕事は、やはり「旧市街地型」の地域で、お施主さんは郊外からまちなかへ、こぢんまりした家を建てたいというご年配のご夫婦でした。現在は洋風の家で外車に乗っておられるような方ですが、まちなかでは和風でもかまわないという事でした。バルコニーが道路側になってしまうので、出格子ふうに囲ったデザインを考えましたが、景観上のその先に庇を回さなければいけないというのが構造上不可能だったことと、確認審査の方でバルコニーを可燃の格子で囲うことが良くないといわれて、インナーバルコニーにしたという事がありましたが、着工することができました。 今抱えている仕事は、「歴史遺産型美観地区」で、旧市街地よりもより厳しい規定があります。お施主さんも若いご夫婦なので、なぜ和風なのかという事にはかなり抵抗を感じておられますが、妥協できないこととある程度の妥協することの狭間で駆け引きをしているような状況です。 ■進化させるために情報の交換・共有を本当に小さな設計事務所の拙い事例ではありますが、進化させるには多くの事例を重ねて情報を公開していく必要があると思います。私自身は何件かやっていくうちに、これは良い提案だとか、これなら通るということが少しずつ解ってきて、自分の中では小さな進化をしているかもしれません。役所のほうでも、円卓会議を開いてぶれがないように話し合っているそうで、そのなかで次第に構築しているものがあるはずです。また、和風にと木や竹などを使った場合や、屋根の仕上げと勾配についてなど、条例と基準法、景観課と審査課、消防局との食い違いがあり、設計者にとっては大きな問題です。 それらの問題と解決策を公開していかなければ、制度として進化は果たされないのではないでしょうか。現在は、設計者それぞれが、同じレベルでぐるぐると似たような苦労をさせられているような気がします。 ■市民への啓蒙を一般市民の方は、景観条例を理解していない方が大半です。「京町家を残していった方が良いか」というアンケートには、約8割の方が良いと答えたそうですが、ほとんどの方が町家に関係ないところで暮らしていて、人ごととして捉えていますし、実際に京町家に暮らしている方は何とか残すことが可能ならという条件つきが多いように感じます。今回の景観政策については、高さ制限が厳しくなったことは知ってはいても、それはマンションなどだけに関係することとやはり人ごとです。デザインに関しても和風にしなくてはならないらしいということは何となく知っていても、細かい地区分けや基準までは知りません。いざ、自分の家を建てるときに初めて直面し、なぜそんな事まで決められるのかと憤られます。私たちは、設計の前に景観法の意義を説明しなければならない状況です。それは、設計者の大事な使命の一つではあると考えますが、しかし、内容も制度も未完成(と感じます)の政策を、設計者が全面的に支持しているわけでもありません。 条例を通す前は、各区役所などで説明会を何度も開いたと言いますが、とても充分だったとは言い難いですし、むしろこれからが大事です。市民全体で、京都で景観を整えていく必要性や意義について共通の意識を構築していくような取り組みが、細やかに気長にされていくことが必要だと思います。 ■まちづくりの観点からいくつかの地域のまちづくりに関わらせて頂いている経験からの意見です。京都には江戸時代から町衆がお町内で暮らしやまちを治めてきた歴史がありますし、今でも明治時代からの本学区制のなごりが地域自治会として機能しています。そこでは、地域の魅力づくりやコミュニティーの形成、安心安全・良好な環境作り、地域独自の景観・建築のルールづくりなどが、地道に続けられています。今回の景観条例は、ある意味その地域での努力を蔑ろにする危険性さえ感じられます。市は「景観デザイン協議会」を作ってよりきめ細やかな地域にそったデザイン基準を2年を目処に策定していくと言っていますが、専門家と行政が協働して研究することは意義もありますが、それよりもまず地域のまちづくりを後押しし、まだ活発でないところには支援をしていくことが大事なのではないでしょうか。そして、地域のまちづくりのなかに専門家が入っていて一緒に作っていくシステムが望ましいのではないでしょうか。■「和風」と「調和」・「創生」ということ新政策の中に、「和風」という言葉がたくさん出てきます。「歴史的な」、「伝統的な」という表現もその言い換えと言えますし、「京都の生活の中から生み出された特徴ある建築物」は町家を指していると思われます。設計をしていくうえには、その場所の地域特性を読み取ることは重要なことで、本来設計者はそこから計画すべきですが、市域全体の景観政策のなかで、先により具体的な形が提示されるべきだと考えます。 また、設計行為の建物をデザインするという側面からいうと、「・・・と調和した」という表現もたくさん使われているのですが、「和風」という言葉と共に、主観的な判断が入ってきます。誰がどう判断するのかというのは、大変難しい問題です。 さらに、『時を超え光り輝く京都の景観づくり』という名の政策は、京都市の街並みを京町家が建ち並ぶある時代(江戸末期〜明治)の姿のままを再現・保存しようというものではない筈です。(それは「伝統的建築物群保存地区」に指定されています。)今の時代の、新しい用途、規模、構造、素材、などを、如何に伝統的な建築物とも調和させ、京都らしい(和風な)景観を創っていけるかということが、私たち市民と設計者に課せられた大きな課題だと感じています。それには、伝統や和風の概念を狭義に捉えることなく、未来を創造していくエネルギーと深い美意識が必要だと思っています。
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2008年08月20日
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