|
ドイツ人のシンドラーは自社工場働いていたユダヤ人1200人をドイツの迫害から救い出しました。そして東洋のシンドラーと言われる杉原千畝は大量のビザを発行して、6000人のユダヤ人をドイツから脱出させました。
ところがこの2年以上前に、杉原千畝と同じように、大量のユダヤ人を救った人がいたのです。それが前記事で紹介した樋口季一郎です。 あ1938年ドイツの迫害から逃れてきたユダヤ人が満州国と接するソ連領オトポールに押し寄せてきました。ソ連が入国を拒否したので、満州国に受け入れを求めてきましたが、満州国は、日本とドイツとの関係を考慮して、入国を拒否しました。吹雪の中、立ち往生したユダヤ難民は、このままでは凍死者が大量に出そうな状態でした。 あハルピンのユダヤ人協会会長・カウフマン博士も飛んできて、樋口に同胞の窮状を訴えました。しかし、満洲国外務部(外務省)を飛び越えて、独断でユダヤ人を受け入れるのは、明らかな職務権限逸脱です。しかし樋口は 「博士! 難民の件は承知した。だれがなんといおうと、私がひきうけました。博士は難民のうけいれ準備にかかってほしい。」 力強い樋口のことばに、カウフマン博士は感きわまり、声をあげて泣きました。 あ樋口は独断で、難民受け入れを決め、満州鉄道総裁の松岡洋右に特別救援列車を要請し、現場では樋口の部下である安江仙弘が奔走しました。 数刻後、難民が列車で到着し、地元の商工会や学校で炊き出しを受けました。凍死者は十数名あったそうですが、もし救援列車が遅れていたら、この程度ではすまない数の大量の凍死者が出ていたはずでした。 あその後ドイツから、樋口のユダヤ難民保護に関して、強烈な抗議が来ます。樋口は、関東軍司令部からの出頭命令を受け、参謀長・東条英機(後の首相)に対して次のように述べました。 あ「私は、日独間の国交親善と友好は希望するが、日本はドイツの属国ではないし、満洲国もまた、日本の属国ではないと信じています。 あ東条参謀長!ヒトラーのおさき棒をかついで、弱い者いじめをすることを、正しいとお思いになりますか」 あ「樋口君、よく分かった。あなたの話はもっともである。ちゃんと筋が通っている。私からも中央に対し、この問題は不問に付すように伝えておこう。」 あ樋口を待っていたのは、「不問」どころか、参謀本部第2部長への栄転でした。ドイツからの「善処」要求のわずか5ヶ月後に、このような人事を行ったということは、「人種平等を国是とする我が国はヒトラーのお先棒は担がない」という強烈なメッセージではなかったでしょうか。 あその後この事件をきっかけにユダヤ難民救済の樋口ルートが開通し、昭和13年から16年くらいまで有効であったようです。14年まででもおそらく一万人近くの難民が逃れてきたのではないでしょうか。 あユダヤには、ゴールドブックとシルバーブックというものがあって、ゴールドブックには、同族(ユダヤ人)で世界に傑出した人物、シルバーブックにはユダヤ人以外の人々の名を登録し、功績を顕彰します。ノーベル賞の如く現界の栄誉にとどまらず、神聖な「神の記録」のごとく扱われるところに特徴があります。このユダヤ人しか名前が乗らないゴールデンブックに名前が載っている日本人が、このオトポール事件での樋口季一郎と、安江仙弘です。この時同じく活躍した海軍大将犬塚惟重もゴールデンブックへ記載したいとの申し出を数回うけましたが、全て断っています。東条英機はユダヤ人の知人がいなかったために救済に尽くしながらも、名前が載りませんでした。 あ終戦後、ソ連極東軍は日ソ不可侵条約を破って、ポツダム宣言受諾後の停戦したあとの日本に侵攻してきました。多くの日本人が虐殺され、婦女子は陵辱され虐殺されました。樋口はソ連が連合国なら、停戦後の侵攻はないはずと言う論理でソ連と連合国とを分け、ソ連に立ち向かって日本人を守ることを決意します。 あそして占守島にいた日本人400名を北海道に逃がすことに成功しました。 その後日本政府の弱腰姿勢から、ソ連も連合国とみなして、停戦し、その時の日本兵はシベリアに連れていかれ、強制労働で多くの人が死ぬことになります。ソ連は札幌にいた樋口を「戦犯」に指名し、連合軍総司令部に引き渡しを要求してきました。停戦後の8月19日まで、北千島を攻撃してきたソ連軍は、北方防衛の責任者であった樋口に大損害を与えられ、北海道上陸を阻止された事を恨んでいたのです。 あ樋口の危機を聞いて、ニューヨークに総本部を持つ世界ユダヤ協会が動き出しました。その幹部の中には、オトポールで救われた人々もいました。 「オトポールの恩を返すのは、いまをおいてない」世界各地に散らばっているユダヤ人に檄がとび、樋口救出運動が始まりました。世界ユダヤ協会は、アメリカの国防総省を通じて働きかけ、マッカーサー総司令部は、ソ連からの引き渡し要求を拒否し、逆に擁護することを通告したのです。 |
過去の投稿日別表示
[ リスト | 詳細 ]
2010年10月05日
全1ページ
[1]
全1ページ
[1]




