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雑魚漫遊記世界あちこち釣り歩き

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釣り好きの私はオークランドに着くと、まっさきに目抜き通りの釣具屋を訪れた。釣り番組で80cmオーバーの鯛を船から入れ掛かりで釣るのを見ていたので、どこかの磯でチヌでも釣れたらという気持ちがあった。

(船酔いのやつめ!)

釣具屋は外国によくあるスポーツショップとの一体型で、2階1フロアーが海釣りと「その他」コーナーに分かれている。海釣りの道具を一通り見終えた私は隣のコーナーもお義理でのぞいてみることにした。

そこには先客が一人いる。日本人のようだ。話しかけると北海道出身の若者である。以後、彼のことを「師匠」と呼ぼう。

私「チヌとか釣れる磯、知りませんか?」

師匠「チヌ?ニュージーランドに来たのだからレインボー釣らなきゃ。」

私「何ですか−、その何とか棒っていうやつは?」

師匠「・・・」

こんなやりとりの後、彼は私にフライフィッシングとは何か、いかに魅力的であるか小一時間説明してくれた。

「おお、それはすごい。ぜひやってみたい。」

と言う私に、

「では、2日後にツランギ村で会いましょう。でも本当に後悔しませんか。ふふふ。」

と去っていった。

ひとをその気にさせておいて「後悔しませんか」もないもんである。

この時は、フライフィッシングが麻薬のようなものである、などと思い至らなかった。

これからこの釣りを始めようと思っている方に一言。

「人間やめますか。それともフライフィッシングやめますか。」

(つづく、物騒なおわりかたですねー。)

2日後、ツランギ村のユースホステルで師匠と落ち合った。かなり値の張る竿、リール、ライン等を買いそろえ歩いてトンガリロ川に向かう。わずか10分である。国号1号線の橋の上から川を見下ろしていた師匠が、

  「あそことあそこ、そしてあそこ。」

と、言葉遊びのようなことを言いながら指さす先をみると、いるわいるわ。大きな魚影が悠然と泳いでいる。瀬戸内海の小魚しか見たことのない私はすでに我を忘れている。

放っておけばこいつは川に飛び込みかねない、と感じたのだろう。師匠が「ここは釣りにくいから、少し上流にいきましょう。」と、うながす。

歩いているうちに徐々に興奮からさめてきた私は、やっと辺りの緑や小鳥の声、美しく豊かな水の流れに気づく。日本が昔はこうであったろう自然がそこにはあった。

(つづく、ちょっと一息)大きな魚(鯉ではない)が川中を泳ぐ姿というのは日本の川釣り師なら誰でも夢見るところ。本来あったはずの美しい渓流がどんどんコンクリート張りになり、今もわずかに残された良い川が軒並み破壊されつつあるこの現状。山の中で何やってても分からないからね−。国破れて山河無し。

釣り人は自分たちの気に入った瀬や淵にに名前をつける。これは海外でも変わらない。目の前に横たわる中州の向こうはアイランド・プール、さっきニジマス(レインボートラウト)を見つけた淵はロンリー・プールだそうだ。

中州に渡り、竿振りの練習をする。今までやっていた釣りとはずいぶん竿の使い方が違うので戸惑う。どうせ初めてなのでしばらくは師匠のキャスティングを見学することにする。

膝上までウエーディング(川につかった)した彼の竿から、ラインがスルスル面白いほど伸びていく。チアリーダーが振るボンボンを小さくしたようなインジケーター(目印)が下流まで流れきると、また上流に向かってキャストし直す。師匠には魚が見えているらしく決まった筋を流している。

突然水面が割れてきらめく。かなり速い流れの中から二度、三度と銀色がはじける。下流へ泳ぎだした魚に、リールが「ジーッ」と鳴る。竿はきれいな弧を描いている。

「こんなときは魚にさからってはいけません。」などと解説する余裕まで見せながら、彼は中州の上を下流へ走り、魚のちょっとしたスキをついて取り込んでしまった。ネットなど使わない。55cm。がっちりしたオスだった。

魚を傷つけないために水から上げずにリリース(放流)する。

「まだ、あそこには魚がいますよ。次はあなたの番です。」と、言われて、鼻息荒く水をはねあげ近寄ると、いきなり叱られてしまった。「そっとです。そっと。」

師匠のまねをするがへっぴり腰になってしまう。ともかくポイントに10mのところまで近づく。

なるほど、ここまで近寄れば対岸のえぐれの下に魚たちの影がはっきりみえる。仲間が一人いなくなったのに気づいたのか活発に前後に泳いでいる。

何匹かは上流に泳ぎ去り、流れに任せてまたもとの深みまでもどってくる。

群れが目の前に来た時をみはからってその上流へニンフ(毛鉤の一種)を投げ込んだ。

(つづく)フライフィッシングについて何か書こうとするとカタカナがたくさん出てきて大変です。雑誌などもしばらく読んでいないと分からない言葉がいくつも現れています。例えば「CDC」とか普通は絶対に使いませんよね。だって、訳しても「カモのお尻の毛」とかなっちゃいますから、ははは。

毛鉤は目の前を横切っているのだが、魚がなかなか飛びついてくれない。10回は流したろう。ラインはむなしく下流へ流されていくだけである。再びキャストしようとしてピックアップする。いや、しようとしたら根掛かりだ。(根掛かり=仕掛けが水中のいろんなものにひっかっかること)

いい加減いやになってくる。自分にとって初めての釣り方ということもあって、全く釣れる気がしない。

腹立ち紛れに竿をあおるといきなり銀色の魚体がジャンプした。根掛かりではなかったのだ。今になって思えば、流しきった毛鉤が水中でくるりと動いたところに下流からあがってきたニジマスが出会い頭に食いついたのだろう。

魚はあちらではね、こちらではね、なかなか近寄ってこない。油断していると竿がのされてしまう。張り切った糸がビーンと鳴り、リールがジーッっと音を立てる。

師匠のまねをして下流へ魚を寄せていく。最後の素晴らしい跳躍をあしらい、やっとランディングする。

53cm。がっしり太ったオスだ。2ポンド半はある。

リリース。雄姿はゆっくり川の中へ去っていった。

それは「釣ったら食べる」をモットーとしていた私にとって最初のリリースでもあった。

よく戦った好敵手を敬い送り出す。そんなごく自然の行為だった。

あの鱒は、今も私の心の中を、トンガリロ川の力強い流れの中を泳いでいる。

(雑魚漫遊記6 おわり)

この数年後、上流にあるルナペフ火山の噴火により、灰が流入したり、大雨で流れが大きく変わったりして、川の様子が随分変わった。当時の状態に戻っているかどうか知らないが、近いうちに、この思い出深い地を訪れたい。そこはマオリの人々にとって聖なる地だが、私にとってもそうなのだから。

「待った?」
「いや。ほんの6時間ほど。」

ウイリアムが遅れて来ても大して腹は立たない。これまでの経験から、オーストラリアでは時間を守ることにあまり気をつかわないと分かっている。

「マスでぐらぐらする川へ行くぞ。」
「オッケー。」

この旅行のために彼が作った(本当に自分で部品を拾い集めてきて組み立てた)ホルクスワーゲン・かぶと虫号に乗り一路西を目指す。

カンガルーを避けながら時速100kmで3時間、すでに夕刻である。いかにも釣れそうな小川のほとりにテントを張る。夜中になると、這うの、走るの、羽ばたくの、いろんな動物がテントのすぐ外をうろつくので目がさえて寝付けなかった。

翌朝、睡眠不足の目で川を眺めていると、

「こんな川は・・・・(汚い言葉)だ。今日は秘密のトラウト・パラダイスに行くのだからな。」

ウイリアムに急かされてトレッキングの準備をする。

「すぐそこだよ。」

彼の言葉に気がはやる。よっし。釣ってやるぞ。

(つづく、 こんなに気負って。嫌な予感が・・)

1時間後、二人の前から道が消えた。かん木の中を突き進む。

2時間後、歩きながら朝食代わりのオレンジをかじる。

3時間後、崖に行き当たる。10cmほどの出っ張りをカニ歩きで進む。「高所恐怖症」という英単語を覚える。

4時間後、小休止。そこらの枯れ葉、枯れ枝を集めて燃やし、その上に生肉を直にのせて焼く。塩も胡椒も使わない。

彼、「炭の味付けでおいしいよな!」
私、「・・・」うまいわけないだろ!

5時間後、赤ちゃんの頭くらいの石が積み重なるガレ場を100mほど滑り降りる。
(子供はあぶないからまねちゃだめだよ!)

6時間後、尾根の上から見下ろすと緑の筋が見える。川だ。またまた一気に急斜面を転げ降りる。

一足先に川に着いたウイリアムがじっと川面を見つめている。

「ウイリアム?」

感動のあまりだろうか、返事がない。彼の後ろから川をのぞきこむと・・・

「水がない!?」

川底に1m幅のみずたまりがあるだけ。流れもない。緑色した綿状の藻がびっしりと水を埋め尽くしている。「去年は・・・」という彼の愚痴を聞きながら、なぜだろう、私は絶対に魚がいるはずのない水面へ竿を出し、4、5キャストしたものだった。なぜそうしたのか、今もって、理由が分からない。

6時間かけて来た道を引き返した。

(雑魚漫遊記5終わり)

アンカレッジからプロペラ機で1時間ほど飛ぶと眼下に森に囲まれた小さな村が見えてくる。人口500人あまり。アニヤク村である。やせた熊といった感じのピーターが出迎えてくれる。

村の中を流れる川を船外機付きの小さなボートで20分ほど下るとやっと目的地のフィッシュ・キャンプである。

キャンプは木造の母屋、発電機小屋、シャワー・洗濯小屋、燻製小屋、トイレ、そして私が宿泊する大型テントからなる。すぺてピーターの手作りである。

この日、すぐに床(とこ)についたものの夜中に寒さで目が覚め、四苦八苦の末薪ストーブに点火して、やっと眠りに落ちる。

6時起床。テントを出る。旅行中はいつも早寝早起きとなる。八月なのに気温は6度。

母屋を覗くとピーターはすでに起きて本を読んでいる。医学書である。毎朝2時間はこれと取り組むのだそうだ。自分が、そして家族がいつ病気になってもいいように備えているわけである。アラスカの森で暮らすためにはなんでも自分でこなさなければならない。彼は他に消防士という肩書きを持っている。

薪ストーブで暖まった室内で冬季の狩猟の話を聞き、遅い朝食を終えるとすでに12時である。しかし慌てる必要はない。ここでは夜11時が過ぎないと暗くはならない。

キャンプにはピーターの他、彼の息子マイア、娘ライア、マイアの友達リッキーが滞在している。彼らは普段アニヤク村に住んでいるのだが、私のような「お客」が来ると手伝いを兼ねてキャンプへ来るわけだ。もっとも、子供たちは村よりここの方が気に入っており、学校がなければ年中こちらで過ごしたいそうだ。

初日のガイドはリッキーの役割である。彼は純粋なユーピック・エスキモーで17才。気のいい少年だ。

ボートで釣りのポイントへ向かう。途中ぽつぽつと雨が降り出す。刺すように冷たい。日本で3万円もしたゴアテックスのカッパに心から感謝する。

ここのところの長雨で、川は増水し、ミルクティーの色になっており、良いポイントどころかボートを着ける岸を探すにも一苦労である。

やっと中州の脇に降り立つが、どうも釣れる気がしない。アンカレッジで買った「おすすめフライ(=毛鉤)」はとんでもない代物であり、キャスティングどころではない。なにせ直径5cmはあろうかというエッグ・フライにティンセルの飾り付きである。これにはほとほと手を焼いた。水を含むとゴルフボールなみの重さになって遠投などとうてい無理である。どうやら船からの流し釣りにつかうもののようだ。これを山ほど買ってきたのだからかなわない。他のフライの数は知れたものだから、これから先が思いやられる。

(つづく、前回同様暗雲が・・)
冷たい雨に打たれて釣り続けたが当たりすらない。川底は流木が多く、「このフライこそ」と思うやつが軒並み根掛かりとなる。

5時間釣って諦める。アラスカまで来て寒い中雨に打たれて何も釣れないのだから鬱々としてくる。

キャンプへ戻ると遅れてやって来た釣り人が暖かく迎えてくれる。Tさんと、Nさんである。Nさんはピクシーというルアーを使ってシルバーサーモンを1本あげたそうだ。

落ち込んでいた私はみなの励ましを受け、夕べのひとときを存分に楽しんだ。

一夜明けて、今日は少し上流を攻めてみることにする。飾らない家がぱらぱらと建つアニヤク村を通り過ぎ、オーハット川の流れ込みまで行く。人気のポイントらしくボートが4艘も出ている。

皆ルアーで釣っており、フライをしている者はいない。混雑を避けて流れ込みを100mほどさかのぼり、中州で船を降りる。生い茂る草と灌木で竿を振るスペースはほんのわずかだ。

準備している間にもリッキーが一匹釣り上げる。銀ぴかのメスのシルバーだ。私も気合いを込めて竿を振る。またリッキーが一匹釣る。釣り場が狭いのでお互いの糸がからまぬよう慌てて仕掛けをあげる。どうやら魚の群れが目の前に来ているらしい。

またまたリッキーが釣る。こちらがキャストするより沖の所をルアーで引かれるとどうしようもない。こんなガイドなぞ見たことがない。腹が立つより先に呆れてしまった。この後も彼が魚を掛け、私が仕掛けをあげるということが30分程続いた。その後は魚の群れが通り過ぎたのだろう。当たりが遠のいた。この間私が釣ったのは50cm程の北極イワナ一匹だけ。

嫌になって早くキャンプへ帰ろうと彼を急かせたが、まだ釣れるのにどうしてやめたいのか分からないらしく不思議そうな顔をしている。

後になって彼がフライフィッシングについて何も知らないことを聞いてなるほどと思うのだが、この時は煮えくりかえるほど腹が立っており、キャンプに帰ってからピーターに「今回はシルバーは諦めたよ。」などと言ってしまい余計な心配をかけた。

二日目も夜は楽しく過ごし、ぐっすり眠った。まるで天国と地獄である。

私があまりに釣れないので、3日目はさらに上流へ行き、キャンプして4日目を釣るという計画になったのだと思う。

Mさんも加わり、七名を乗せたボートは力強く走り、途中ポイントごとに竿を出しながらキャンプ地へと向かう。

(つづく、どうか釣れてください・・・)

この途中、とうとう私にもシルバーが釣れた。それまで見た中で最もでかいやつでオスだった。婚姻色でやや赤っぽいのが残念だが3度にわたるジャンプや数知れない突進で最高のファイトをしてくれた。ルースニングで40cm以上あるグレイリングを釣ったのも胸のすく経験だった。遠くヨーロッパの地でこの魚を釣っていたシャルル・リッツに思いをはせた。

キャンプ地は本流脇の砂地である。地面には熊やカリブー、オオカミなどの足跡がべたべたついており、ここでは人間がお客さんに過ぎないとわかる。驚くほど高い位置に見える北極星と銀白色の月の下でキャンプファイアーを囲み最高の夜が更けていった。

最終日、我々の関心はまだ魚の顔を拝んでいないMさんが釣ることにあった。みな彼に一匹釣らせたい。しかし、飛行機の時間があるから私は1時にはベースキャンプに戻らなければならない。二日目に苦い思いをしたオーハットのポイントを彼にすすめたら、一か八かそこでやってみようということになった。

(つづく、自分が釣れたら人の心配をする私って・・)

中州に降りてみて、水が前より澄んでおり、予想以上に浅いことに気づいたが場所を移している時間は無い。やや下流では時々魚がジャンプしている。何とかなるのではないかと思ったがこれは甘かった。釣れないMさんも場所を紹介した私も腰に力が入らない。

約束の時間が来て船に乗り込んでも諦めきれない私は、魚がジャンプしたポイントで船を一流しして欲しいと頼み込んだ。ピーターも他のみなも快く釣らせてくれた。

Mさんがあと5回と決めたその第2投目、水面が割れ銀色の魚体が宙を舞う。

船に乗せていた猟犬が興奮して川に飛び込む。そして、ハリに掛かって暴れているサーモンめがけて泳ぎよる。

みなは大笑いしているが竿を持つMさんとネットを持つ私は気が気ではない。それでもやっとのことで魚をすくい上げた。拍手喝采。

他の人が釣るのを見てうれしかったのはこの時が初めてである。釣行の輪が閉じた。

釣れにくい魚を釣ったときの喜び。みんなで釣ることの楽しさ。そんなことを感じられた旅行だった。

アンカレッジを離れる夜、すてきな思い出を祝福するように、北の空にオーロラが輝いていた。

(雑魚漫遊記4終了、 今回は珍しく釣れた話でした。次回はボーズにご期待ください?)

クライストチャーチは広大なカンタベリー平原にある緑の都市である。町の中心部にはヘグリ公園が広がり、エイボン川が流れている。ほとんどが一戸建ての平屋で、各家が趣向を凝らした花壇で囲まれている。花好きにはたまらない。特に春の終わりから夏にかけてが最高だ。

そんな12月(日本とは季節が逆)、私は郊外に住む友人のところに滞在していた。マウンテンバイクを借り、毎日のように市内を走り回る。ショッピングセンターやスポーツ店、釣具屋に行けば興味は尽きない。

ある日、アーケード街で小さいが品揃えが豊富な釣具店を見つけた。なんでこんな所にあるの?という地図を見てもわかりづらい所にある。(その後リカトン通りに移転)歴史教科書でおなじみのフランシスコ=ザビエルそっくりの店長がニュージーランド人ならではのソフトさでお客の相手をしている。必要なときだけ道具の説明をしてくれるのも気配りがいきとどいている。無愛想なだけの某大型釣具店の店員に爪のアカをもらって帰ろうかと思ったほどだ。

北島でレインボー(ニジマス)を釣った話をすると、南島ではブラウントラウトやサーモンが狙えると教えてくれる。
 「今の時期どこが釣れるのかな。」
哀れな子羊の目をして尋ねると、しばらく考えて
 「○○公園に行ってみたら。」
とアドバイスしてくれる。
この国の場合、公園といっても信じられないくらい広大なものが多く、自然もありのままの姿でのこっているのだ。

さて、キャンプ道具まで用意し、釣るまでは帰らない決意の私がこの公園の入り口に立ったのは二日後の夕方5時頃だった。暗くなるのは9時過ぎなのでこれからひと釣りできる。

公園の管理人に釣りをすると告げると地図をくれた。指定された場所以外では釣りができない。はやる気持ちを抑えきれず早足に釣り場に向かうが、なにぶん広い公園である。30分後に目的地に着いたときは完全に息が上がっていた。

そして、その釣り場では我が目を疑う光景が待っているのだった・・

(つづく、大丈夫か俺)

そこには明らかに人の手による差し渡し25mほどの丸い池が2つあり、3名の釣り人が竿を振っている。ルアーを投げているものもいる。そう、これは紛れもない「釣り堀」ではないか。そういえば釣具屋のおじさんがここを紹介してくれたときなにやら品定めするような目でこちらを見ていたっけ。

水の中を覗くと時々回遊中の魚体が鈍く光る。不本意だがせっかくここまで来たのだから釣らずには済まされない。ただでさえ下手なのに力無く仕掛けを用意し、力無くキャストするものだから、飛んでいくラインの形が情けないこと。

魚も相当すれているらしく、時々水面まで上がってはくるのだが毛ばりに見向きもしない。8時を過ぎ夕方のライズが始まったが当たりすらない。今にして思えばかなり小さい虫を水面に近いところで追いかけていたのではないだろうか。

毛ばり釣りを覚えたての私はどうやって釣るのか考えもおよばなかった。そして真っ暗になろうとする時、8番3XLのフックに巻いたダムゼルフライもどきに50cmのグリルス(サーモンの子供)がヒットした。こいつは小さいがファイターで、揚げるまでにしばらくかかった。

9時納竿。プール脇の芝生にテントを張る。なんといっても初めて鮭が釣れたのだ。嬉しくてなかなかねつけない。「羊が一匹。羊が二匹。」と数えていくが、飛び跳ねる羊の姿がいつの間にか鮭に変わったりする。明け方になってやっと眠りについた。

夢の中に羊が出てきてメーメー鳴いている。周囲を悪意に満ちた羊に取り囲まれる場面で目が覚める。

「ふーっ。悪い夢だった。」
テント入口のジッパーをおろし外に出ようとする。目の前にいきなり羊の顔が・・。これは夢の続きか?

しばらくお互いに見つめ合う。私が両手両足を地についているから向こうは「こりゃ変わった仲間がいたものだ。」といった目でこちらを眺めている。

我に返った私が立ち上がると、この子羊「なんだ。」という失望と軽蔑を目に浮かべ、ゆっくり群れに戻っていく。そして一声「メ〜〜。」と鳴いた。

それに応えるようにメ〜〜の大合唱。テント越しに見回すと、いるわいるわ。大きいの小さいの、きれいなの汚れたの、仮住まいは一夜にして羊たちに囲まれていたのだ。

この日、魚が釣れずじまいだったのはいうまでもない。
(雑魚漫遊記3 おわり)

ハネムーンや観光旅行で有名なシドニーであるが一歩観光地を離れると日本人はほとんど見られない。私が今立っている磯もボンダイ・ビーチという観光地の裏側にあたるのだが、地元の釣り人と子供しか姿はない。

当地の釣り人の仕掛け、釣り方はじつにおおらかなものである。釣れても釣れなくてもいいじゃないの、というのがオージー気質なのだ。磯からはグレやタイのほかチヌも釣れる。潮がいいとマグロやヒラマサ、カンパチの数釣りさえ夢ではない。良い磯からはカジキすら掛かるそうだ。もっともめったに釣り上げるところまではいかないようだが。

浮子を使って釣っているのは「ラダリク」という魚である。日本名は分からないが、チヌとヘラブナをかけあわせたような姿である。えさは足元に生えている海藻。

釣り人が靴で磯を蹴っているのは、靴底のスパイクで海藻やイソギンチャクの類を撒き餌しているわけである。パンを餌にすることが多いグレも同じ仕掛けで釣れるそうだ。ラダリクは当たりが繊細なのと非気味が楽しいから熱狂的なファンがいる。釣りに熱中して高波にさらわれる人も多いとか。

私もラダリクが釣りたくなり、日本のウミタナゴ仕掛けで挑戦してみた。最初は半信半疑で足元の海藻を使ってみる。すぐに当たりがあって釣れたのはコッドというアブラメみたいな魚。40cmほどあって結構引いた。使うエサに自信が持てると意気込みも違ってくる。気合いを入れて2投目を振り込む。ウキがくくっと1cmほど沈み動かない。根掛かりかと思い、竿をあおると魚の手応え。日本製のカーボンロッドが手元まで曲がる。これほどの引きは経験したことが無い。不安と興奮で体がはじけそうだ。根ずれだけは起こらないでくれと祈るような気持ちである。

1時間はたった気がしたが実際には10分程度ではなかったろうか。ようやく姿を見せたのは50cmオーバーのラダリクだ。ここでタモ網を用意していなかったことに気づいたがもう遅い。仕方が無いので波に乗せて抜き上げることにする。ハリスは1.2号。「1、2、3、!」タイミングを合わせて抜くというより引きずり上げる。磯の上に揚げたとたんハリスがプツンと切れる。危ないところだった。震える手でずっしりした魚を抱き上げるのは釣り師の本懐であろう。さて、いよいよ気分が乗ってきたぞ、と仕掛けを振り込もうとすると目の前にぽっかりと2つスイカのようなものが浮かんだ。怪物か、それとも、、オーストラリアは奇妙な生き物が棲む大陸として知られているのだ。

なんのことはない、正体は子供の頭だった。子供たちが浮子の辺りをばしゃばしゃ泳ぎ回るので隣で釣っていた老釣り師も堪忍袋の緒が切れて「向こうへ行かんかっ!」と、怒鳴っている。しかし、磯に砕ける波の音でよく聞こえないらしく、子供たちはかわらず泳いでいる。私も次第に腹が立ってきた。

怒鳴るのも大人げない。子供たちが近くまで来たとき大きく手を振って注意を引く。こちらに気づいたようだ。手招きすると磯際まで泳いでくる。

私「昨日その辺で大きなひれを見たよ。」
子供1「ひれ?」
子供2「イルカだよ。」
私(きっぱりと)「いや、イルカじゃなかった。」
子供1「どのくらい大きかった?」
私「7〜8メートル。いや、もっと大きかったかも。」
子供1「もしかして・・・!」
子供2「セイウチか何かだったんだよ。」
私「ひれは三角形で体は灰色だったかな。」
子供2「・・・。」
私「たぶんあれじゃないかな。丁度君たちの下あたりを泳いでいたんだ。今日は見えないなぁ。」
子供1、2「!!」

二人はロケットのように水から飛び出した。

子供1「だから言ったじゃないか。」
子供2「でも、、」
子供1「いるんだよ!だから言ったじゃないか。お前が誘ったんだぞ。」

気の毒に二人はぶるぶる震えながらへっぴり腰で去っていく。結局、私の口からは「サメ」という言葉は一度も出ずじまいだった。

皆さんも釣り場の腕白小僧には手を焼いているのでは?日本では「マムシ」「毒蜘蛛」「かっぱ」あたりが効果的かもしれませんね。

(雑魚漫遊記2 終わり)

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