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先日キツリフネの記事を書いたら、インパチェンスのつながりで私のブログを訪問してくれたらしい読者がいて、その方のブログページを拝見していると、「サンパチェンスで地球温暖化が防止できる。」という話題で盛り上がっていた。 私は以前にホームセンターの園芸コーナーで大きなPOP看板の前で販売されているこの商品を見たことがあったので、興味を引かれて調べてみた。 このサンパチェンスというインパチェンスの新品種は「サカタのタネ」という企業が開発・販売している花苗で2006年5月から販売が開始され、国内外で大量に販売されているらしい。 「サカタのタネ」のホームページに掲載されている2008年3月25日のニュースリリースには以下のように記載されていた。 参照サイトURL http://c10ul3yh.securesites.net/hotnews/2008/080325.html 「従来の園芸植物と比べ、NO2で5〜8倍、ホルムアルデヒドで3〜4倍、CO2は4〜6倍もの高い吸収能力を発揮 当社開発の草花『サンパチェンス』シリーズの高い環境浄化能力を実証 さらに都市部のヒートアイランド現象に寄与する高い「打ち水」効果も持ち合わせた総合環境浄化植物」 と朱書きされ、続いて 「株式会社サカタのタネ(代表取締役社長:坂田 宏、所在地:横浜市都筑区)が開発し、販売を行なっている草花『サンパチェンス』シリーズが、おもに自動車などの排気ガスに含まれる大気汚染物質の二酸化窒素(NO2)、シックハウス症候群の原因物質であるホルムアルデヒド(HCHO)や地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)できわめて高い吸収能力を発揮することが、浦野 豊氏(東京大学博士・農学 生態工学会理事)との共同研究の結果、実証されました。同シリーズは、当社が開発したインパチェンス属の種間雑種で、今回、従来の園芸植物と比べてNO2で5〜8倍、ホルムアルデヒドは3〜4倍、CO2では4〜6倍もの高い吸収能力を発揮するという実験結果が得られました。また、『サンパチェンス』の表面温度をサーモカメラで計測したところ、地面の温度よりも10℃以上も低く、「打ち水」効果による温度降下能力も備えていることが判りました。 当社はこの研究結果を通じ、『サンパチェンス』を社会問題となっている地球温暖化や大気汚染を軽減する「環境浄化植物」と位置づけるとともに、地球温暖化防止策の一環として注目されているCO2の農地への吸収のため、栽培後の堆肥としての再利用の提案も含め、その優れた環境特性を積極的に訴求していきます。」 と書いてあった。 「サンパチェンスを地球温暖化や大気汚染を軽減する環境浄化植物と位置づける」と明言しているので、どのような根拠でそう言っているのか、彼らの実証試験のレポート(詳細はニュースリリーズの原文をご参照ください。)を読んでみた。 まず一番に気付いたのは、この企業が環境改善を謳う商品の開発を行なっているにもかかわらず、ライフサイクルアセスメントをまったく実施しなかったかあるいは実施したけれどもその結果を公表していないということだ。 ライフサイクルアセスメントとは、ある製品が生産されてから廃棄されるまでの間に、環境に与える影響や負荷を評価する考え方あるいは手法のことで、ある製品を作るための資源の調達から素材の製造、製品の生産、流通、使用されて廃棄されるに至るまで、製品のライフサイクル全体を通して資源消費量やエネルギー消費量、排出物量などを求める評価法だ。 「サンパチェンス」について説明すると、まず研究開発段階で設備や原材料に資源とエネルギーの投入があったはずである。 次いで製造段階でも花苗工場で資材やエネルギーが投入されていると考えられる。 さらに商品が出来上がると全国各地の販売業者へ配送されるが、このときにも資源とエネルギーが投入されているはずだ。 また商品販売のために多大の広告宣伝費が投入されていると思う。 この費用を捻出するためには新たな生産活動が必要になり、そこにも資源とエネルギーが投入される。 さらに消費者は、この商品を購入するためになんらかのエネルギーや資源を消費すると考えられる。 たとえば購入にでかけるのに、マイカーを使うとすると、このときにも自動車の損耗と石油製品の消費が発生する。 さらに栽培中には化成肥料や多くの水資源(サンパチェンスは頻繁な水遣りが欠かせないとメーカーは言っている。)を消費する。 また一株580円(企業サイト表示価格)の購入費用を捻出するためには、新たな資源とエネルギーの投入が必要となる。さらには廃棄のための費用もかかるかもしれない。 つまりサンパチェンスのライフサイクル全体の中で必要となった資源やエネルギーの消費で発生する二酸化炭素ガス量と商品そのものが吸収する二酸化炭素ガス量の収支を明らかにしなければ、果たしてこの商品に大気中の二酸化炭素の削減効果があるのか、またその結果としての温暖化防止効果があるのかの判断はできないと言うことである。 当然のことながら、この評価をすると、サンパチェンスの効果は現在企業が宣伝している数値より低くなる。 この企業がライフサイクルアセスメントもやらずに、簡単な商品テストの結果だけをもとに「サンパチェンスを地球温暖化や大気汚染を軽減する環境浄化植物と位置づける」と言うのは、あまりにも根拠が脆弱で説得力に欠ける。 商品のライフサイクルアセスメントなしでは、この種の商品の評価してもあまり意味がないのだが、参考までに温暖化防止につながると彼らが言う二酸化炭素ガスの削減効果についてレポートを読んでみた。 レポートに掲載されている試験結果のグラフによると、サンパチェンスは、年間一株あたり約200gの吸収能力があるように読み取れる。 これは現実的にどの程度の削減効果なのだろうか。 環境省の温暖化防止推進サイト「チームマイナス6%」を見ると、日常生活で削減できる二酸化炭素ガス量が紹介されている。 参照サイトURL http://www.team-6.jp/index.html サンパチェンスは、年間一株当たり200gなので、一日当たりにすると0.55gとなり、個人住宅の庭へ仮に10株まとめて植えたとすると、削減量は5.5gとなるので、この数値と比べてみよう。 チーム6%では、達成可能な個人目標として、一日一人当たり1000gを掲げていて、その具体的な削減方法と削減量の一部を転載すると、以下の通りである。 ・シャワーの使用時間を1日1分短くする。 74g ・冷蔵庫を壁から離す。 19g ・冷蔵庫にものを詰め込み過ぎない。 18g ・車の急加速をやめる。 73g ・エンジンスタート時に吹かさない。 207g ・アイドリングを5分短くする。 63g ・冷蔵庫の扉を開けている時間を短くする。 3g ・待機電力を節約する。 65g ・炊飯ジャーの保温をやめる。 37g ・ガスコンロの炎をなべ底からはみ出さないように調節する。 5g ・温水洗浄便座の便座暖房の温度を低めに設定する。 11g ・使わないときは温水洗浄便座のフタを閉める。 15g ・食器を洗うときガス給湯器の温度を低く設定する。 29g ・白熱電球を電球形蛍光ランプに取り替える。 45g ・通勤や買物の際にバスや鉄道、自転車を利用する。 180g これを見れば、彼らの言うサンパチェンスの温暖化防止効果が仮にあったとしても、如何に微小なものかがわかる。 またガソリン1L当たりの二酸化炭素排出量は、2.31kgだという。参照サイトURL みんなの知識「ちょっと便利帳」 http://www.benricho.org/co2/ 仮に燃費20km/Lの省エネ車で自宅から5km離れた園芸ショップへ「サンパチェンス」を購入に出かけたとすると、往復する間に発生させる二酸化炭素ガス量は、1155gにもなってしまう。 2310x5x2/20=1155g つまりサンパチェンスを車に乗って買いに出かけるより、家で寝ている方が何倍も地球温暖化防止に貢献できるということである。 そして私がもっとも驚かされたのは、「サカタのタネ」のホームページのニュースリリース転載記事のの後に付け加えられていた囲みの付記だった。 そこにはこう書いてある。 「今回の実験結果からサンパチェンスのCO2吸収能力は、ほかの植物よりも高いことが得られました。しかしながら、地球温暖化という現象は、CO2のみならず複数の要因が関わる地球レベルの極めて大きい事象です。したがって、サンパチェンスのCO2吸収能力だけをもって、それが温暖化対策にすぐにつながるというものではありませんのであらかじめご了承ください。 」 なんともいやはや、あきれたものだ。 この内容は、ニュースリリースで述べている「サンパチェンスを地球温暖化や大気汚染を軽減する環境浄化植物と位置づける」という発表内容とはまったく違うではないか。 良心的な企業ならば、「サンパチェンス」を販売する際にこの付記で言っている「サンパチェンスの二酸化炭素ガスの吸収能力は、温暖化対策にすぐにつながるものではない。」という自ら認めている事実を消費者にはっきりと知らせるべきだと思う。 またすでに企業がこれまで展開してきた広告宣伝活動によって、「サンパチェンスを植えると温暖化防止ができる。」と誤まった認識を植えつけられてしまっている消費者の誤解を解く努力を速やかに開始すべきだとも思う。 企業が「売らんかな」の意思で大々的に喧伝するいわゆる「エコ商品」を購入する時に、私たち消費者が肝に銘じておかねばならないことは、企業の宣伝文句を鵜呑みにせず、『商品の「ライフサイクルアセスメント」をチェックすべし。』ということである。
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このレポートを読んで、エセエコ商品を売っている会社は他にもたくさんあるような気がしてきた・・・(。 ̄x ̄。) ブーッ!
エコエコとマスコミが騒ぎ立てているのは、後ろに控えている大会社の商品を売らんかなの思惑が透けて見えて・・・なんだかなぁ〜っと思う今日この頃でっす(´・_・`)
秀逸なレポートに大ポッチィ〜ン!
2009/7/27(月) 午後 8:04
賢明な消費者が一人増えてうれしいです。
2009/7/27(月) 午後 8:40
まったくご指摘のとおりです。
エコ家電だって、まだ使える家電を廃棄して買ったら逆に負荷になるし、
ハイブリッドカーを買うより、車を使わない方がよほど地球環境のためです。
企業側はいまが商機と捉えているので、消費者側が気をつけないといけませんね。
2009/7/28(火) 午前 11:42 [ seattle_garden ]
ほんとうのエコライフというのは、エコ商品を購入してつくるものではなく、むしろ無駄な商品の購入を控えることで生まれてくるものだと思います。エコビジネスを標榜する企業はどこか胡散臭い印象を受けます。 エコ商品には十分な注意が必要です。 企業の販売戦略に惑わされてはいけませんね。
2009/7/28(火) 午後 0:04
まさしくそうですね。
人間の理屈でエコっていっても生態系や気体の循環はとても複雑です。
二酸化炭素って言っても物を燃やせば出るし、動物の呼吸からや、海水の蒸発で大量に出てます。
人間が車やエアコンで出してる量はそれに比べれば少ないです。
エコだなんていくらでも言えます。
2009/7/29(水) 午前 8:37 [ シマ ]
「環境にやさしい」という言葉が氾濫していますが、この言葉には人間優位の考え方が透けて見えます。 これまで「環境に優しくしてもらってきた」のは人間の方なのです。 今は人間がその「環境にこれ以上迷惑をかけないよう振舞う」ことが求められている時代なのです。
2009/7/29(水) 午前 9:01