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今や残り少なくなった手つかずの自然「南極」- 南極半島クーバービル島 =生物多様性を脅かすもの= 生物多様性を脅かしているものには、どんなものがあるのでしょうか。 主なものをいくつか列挙してみましょう。 1.開発による生息環境の喪失や破壊 2.大気、土壌、水質汚染による生息環境の悪化 3.乱獲 4.「移入種」* による影響 *「移入種」: 国内外を問わず、本来の自然分布範囲外の地域から移動・移入してきた生物のこと。 「外来種」という言い方もありますが、外来種と言うと外国から渡来したものと受け取られがちなので、ここでは「移入種」という用語を使用します。 *「自生種」: その土地に自然に発生して生活し続けている生物のこと。 これも「在来種」という言い方もありますが、「在来種」の中に比較的古くに渡来した種が含まれている場合もあるので、ここではより明確にするため、「自生種」という用語を使用します。 これらの中で私たちのガーデニングにも関係の深い「移入種」と「生物多様性」との関係について、もう少し詳しく見てみましょう。 =地域の「生物多様性」を脅かす「移入種」= 「移入種」は次のようなかたちで地域の「生物多様性」を脅かしています。 1.「移入種」が増殖すると、自生種の生息地が失われ、「自生種」の生育ができなくなり、その種とその種に依存していた種の絶滅につながります。 2.「移入種」と「自生種」間の浸透性交雑*により、遺伝子撹乱が起こり、種の絶滅につながります。 *浸透性交雑:遺伝的に分化した分類群が二次的に接触して交雑し,遺伝的交流を行う現象 3.上記1.2は意図的な移入による影響ですが、ペットやコレクションなどへの「移入種」の利用の場合にも、それらの「移入種」が遺棄されたり、逸出すると同様の悪影響を生みます。 自生種の「カワラナデシコ」は、目にする機会が減ってきています。 ○ 「花いっぱい」は、「豊かな自然」? 時々「河川敷に数万本のコスモスを咲かせる事に成功した。」というようなニュースが地域環境を改善したというニュアンスで伝えられることがありますが、本来このような場所には、春はジシバリやヘビイチゴ、秋にはアキノキリンソウやカワラナデシコ、ススキなどが生育しており、それらの植物と共生していたチョウやハチなどの昆虫がいたはずです。 秋の一時期を彩る「移入種」のコスモスのために、それらの「自生種」の動植物たちはその生息地を奪われ、その地域の「生物の多様性」が失われると同時に、地域の生態系の輪が断ち切られてしまう危険性があることに注意する必要があります。 「アキノキリンソウ」の自生地も減っています。 ○ 「ビオトープ」が「地域生態系」を撹乱することも 今盛んにつくられている「学校ビオトープ」でも「ビオトープ」そのものの基本的な考え方は正しいのですが、「自生種」に対する認識の欠如から、「ビオトープ」に「移入種」が安易に持ち込まれることによって、「地域自生種の消滅」や「移入種」の拡散源にすらなっている実情が報告されています。(阪神ビオトープフォーラム1999) 「ビオトープ」づくりは、「地域生態系」についての正しい知識に基づいた計画と管理がなければ、真の教育効果も上がらないでしょうし、「地域生態系」にとってマイナスの効果も生みかねません。 ○ 道路建設や砂防工事の植栽に多用される「外来植物」 道路建設後の法面や砂防工事、高速道路脇空地の景観向上のためにイタチハギやウィーピングラブグラス(シナダレスズメガヤ)、ルドベキアなどの外来植物が多用され、地域自生種の生息環境を脅かしています。 最近の事例では関東では栃木県鬼怒川中流域でのみ生息するシルビアシジミが砂防のために植えられた外来植物(シナダレスズメガヤ)の影響でシルビアシジミの食草であるミヤコグサなどが生息地を奪われたため、絶滅の危機にさらされています。(日本経済新聞2005.05.02付け朝刊) 特定外来生物「ルドベキア」は、近年ようやく駆除対象となりましたが、その旺盛な繁殖力のために、今や駆除は困難になっています。 =「移入種」に対する国、造園業界の取り組み= 環境省では、2002年8月に「移入種への対応方針」を発表、2003年11月には生態系保護のために「移入種対策」の最終報告をまとめましたが、その対象は動物にとどまっており、植物に対しては殆ど考慮されていませんでした。 2004年6月にようやく「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(通称「外来生物法」または「特定外来生物被害防止法」)が制定され、植物も対象とされるようになりました。 *「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律に基づき規制される生物のリスト」 http://www.env.go.jp/nature/intro/1outline/files/siteisyu_list.pdf 造園業界では、2003年5月の日本造園学会でようやく移入種問題が取り上げられましたが、そこでも議論の対象は動物に限られていて、造園の主材料である植物について移入種問題がまだ本格的に論議されるには到っていないようです。 緑化工学会では、緑化事業の中で生物多様性を保全するための考え方として以下の提言をしています。 「生物多様性保全のための緑化植物の取り扱い方に関する提言」 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsrt/teigen.html また日本生態学会では、「外来種ハンドブック」を作成し、移入種問題を喚起しています。 =「害虫も絶滅させてはならないのか」= 生物の多様性を論議するときによく話題になるのが、「害虫も絶滅させてはならないのか」ということです。 では「害虫」とは何でしょうか。 人と「害虫」の歴史を振り返ると、「害虫」とは一次産業(農業)がその生産地の生産性を高めようとして生産地の「生物の多様性」を著しく低下させたために生じた不幸な産物で、本来「害虫」というものは存在せず、人間が誤った考えから名づけたものに過ぎません。 「害虫」を駆除するための農薬は「薬剤耐性型・「害虫」を出現させ、それがさらに強力な駆除農薬の開発につながるという「イタチごっこ」となっています。 農薬の使用が田園の「多様性」を崩壊させるとともに、生物濃縮によって農薬が集積され、食物連鎖の上位にいる「コウノトリ」、「トキ」などの「種の絶滅」を招いたことは良く知られています。 したがって「種の多様性」が確保されれば、「害虫」はおのずから「害虫」でなくなり、「害虫」の駆除とか保護という問題もなくなるのです。 「農薬による田園の多様性の消滅」について、警鐘を鳴らした有名な書籍としてレイチェル・カーソンの「沈黙の春」( Silent Spring )があります。 この美しい甲虫「アカガネサルハムシ」は、ブドウなどの「害虫」と言われています。 さてここまでは、ご理解いただけたでしょうか。 もしわかりにくい箇所や疑問点があればコメントを残してください。 また内容をご理解いただけた方は、ぜひ「ガッテン」の意味で「傑作」ポチをお願いします。 講師の励みになります。 次回は、「地域自生種」の重要性についてお話します。
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2009年12月11日
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冬に向かって、花が少なくなってゆく自宅の和庭で今鮮やかな色を見せているのは、咲き始めた「サザンカ」と真っ赤に色づいた「センリョウ」の果実だ。 「サザンカ」は、学名を Camelia sasannqua と言い、ツバキ科ツバキ属の常緑小高木で、本州(山口県)、四国、九州の山地の林内や林縁に自生している日本の固有種である。 自生種の花色は白だが、さまざまな園芸種がつくられていて、花色も花弁の形もさまざまなものがある。 咲き始めた「サザンカ」 「サザンカ」のつぼみ 開き始めたつぼみと花 やさしいピンクの花色が 冬の日差しの庭に温かみを添える。 「サザンカ」の右隣に植栽されている「センリョウ」に稔った果実が真っ赤に色づいている。 「センリョウ」は、学名を Chloranthus glaber と言い、センリョウ科センリョウ属の常緑小低木、日本では、本州(東海・紀伊半島)、四国、九州、沖縄の林内に自生する。 学名の Chloranthus はギリシャ語の「chloros(黄緑)」+ 「anthos(花)」から来ている。 「センリョウ」は漢字では「千両」とも書くので、良く「マンリョウ(万両)」とともに話題にされるが、「マンリョウ」はヤブコウジ科ヤブコウジ属で近縁の植物ではない。 また同様に「ヒャクリョウ(百両)」や「ジュウリョウ(十両)」という別称で呼ばれているのは「カラタチバナ」と「ヤブコウジ」だが、これらもヤブコウジ属の植物である。 「サザンカ」と「センリョウ」 「センリョウ」 赤く色づいた実は、これから野鳥たちのご馳走になる。 「マンリョウ」の実が葉の下に付くのに対して、「センリョウ」の実は葉の上に付く。 つややかな赤い実はいかにも美味しそうに見える。 「サザンカ」のピンクの花と「センリョウ」の赤い実を見た後、東の花壇を覗いてみると、「スイセン」が一株だけ早咲きして白い花を開いていた。 このままでは凍えてしまうので、切花にして花瓶に挿したが、冬の「スイセン」はやはりどこか寂しげに見える。 冬の「スイセン」 冬が近づくにつれ、庭に出る機会が減ってくるが、この時期には、落ち着いて庭全体を眺めることができるので、庭のデザインや植栽計画について新たなアイデアを考える好機となる。 他の季節と違って冬のガーデニングは、戸外でせっせと体を動かすのではなく、暖かな室内でのんびりとくつろぎながら、庭づくりについて、あれやこれやと思いを巡らす頭脳労働となるのだが、これもまた楽しいガーデニングなのだ。
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