全体表示

[ リスト ]

少女ロボット

クリスマスも押し迫った12月のある日。
街はクリスマス一色である。

道の向こうから中年の小男が黒いコートの襟を立ててやってくる。
男は髪をオールバックになでつけていた。額は世の中年男性と同じように広く、その広さは思慮深さと賢さをそのまま現しているかのようだ。凛々しい眉毛、そして、黒い水晶を思わせる美しい瞳。年齢とともに刻み付けられた皺は、渋さと深みを彼に与え、魅力を逆に増して見せていた。

今日、彼は別居している一人娘のためにクリスマスプレゼントを買いに来ていた。
妻と離婚し、3年もの間、ずっと会っていない。彼女はどういう風に成長しているのだろう。
たとえ、クリスマスに渡せなくとも、いつか会ったときに渡したい。

彼の目の前を茶色い猫が横切る。
「あっ…」
彼は無類の猫好きであった。

茶色いふわふわの猫に触れようと近寄ると、猫はそれを察し、走り去った。
走り去ったといっても、少しだけ遠くに行っただけで、少し遠くからこちらの様子を推し量っている。

「ついてこい」と、誘っているのかのようだ。
彼はそう勝手に解釈し、猫を追った。

猫は裏小路を抜け、街とは正反対に閑静な住宅街に出た。
猫は彼にとって歩きやすい道を選んでいるかのようだ。
彼は猫を見失うことはなかった。

猫を追い続けていると、いつの間にか、住宅街を離れ、
森の中にいた。

森の中に突然、不思議なおもちゃ屋があった。
建物はずべて木で作られていて、暖かみを感じた。
猫はその建物の中に入っていった。
「おもちゃのモンキー」と絵の具で木の看板に書かれていた。
その看板は店の軒先に吊り下げられていた。

おもちゃ?彼女はもう中学生だぞ?
しかし、ショーウィンドーに飾られた少女の人形に目が釘付けになった。
なぜかというと、とても可憐で、とても精巧に作られていてとても日本では見かけることができない異国情緒を感じさせる衣装を身に纏っていた。そして、この人形こそ自分の娘にピッタリだと思ったからだ。

彼はそのおもちゃ屋に足を踏み入れた。
店内は牧歌的かと思いきや、近代的なロボットなどの置物があったり、パソコンの部品らしきものが置かれていた。そうかと思えば、可愛らしい人形や、民芸品調の敷物が飾ってあったり。
店内は整頓されているにもかかわらず、混沌としていた。
この店の雰囲気をどうカテゴライズすればよいのか。



プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事