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慟哭の谷

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 昨日は吉村先生の「羆嵐」について書きました(http://blogs.yahoo.co.jp/mt_izumi_1172/41980164.html)が、今日はその基となった実話を長年のご努力によりまとめ上げた記録について紹介します。

 「慟哭の谷 戦慄のドキュメント 苫前三毛別の人食い熊」(木村盛武 共同文化社)がそれです。

 著者の木村氏は営林署職員として、北海道各地を赴任されました。幼少時に聞かされた「苫前三毛別事件」はずっと同氏の中に刻み込まれていたため、事件現場に赴任された機会に、実に事件から46年を経過していたものの当時の生存者や関係者を業務の合間を見て訪ね歩き、この悲惨な大事件の記録を後世に残そうとされました。
 そしてまとめ上がったのが「獣害史上最大の惨劇苫前羆事件」であり、それを近年再度構成したのが同書です。

 この記録が無ければ、吉村先生の傑作「羆嵐」も生まれることはなく、また、同書はドキュメントであり、これそのものも読み応えがあり、開拓民の無念や苦労を思うと涙が浮かびあがるほどの迫力です。

 著者は他にも「春告獣 エゾヒグマ ヒグマのことがわかる本」(共同文化社)や「ヒグマそこが知りたい 理解と予防のための10章」(共同文化社)など、ヒグマに関する著書が多く、単にヒグマの凶暴性だけを強調して面白おかしく煽りたてるようなものでは決してなく、ヒグマや北海道の大自然を愛し、それを愛するがゆえに北海道に住むあるいは訪れる方が事故に遭うという熊にも人にも悲劇的な事故を少しでも回避したいという思いがにじみ出ている、いずれも名著です。

 この「慟哭の谷」も、もちろん単なる興味本位の記録ではなく、大正期における北海道開拓の歴史と、埋もれかけていた悲惨な事件を後世に残すことが犠牲者への慰霊につながること。そして今後の教訓となることなど、広い視点と使命感でもって書かれたものです。
 もしも木村氏がこの記録を残されなければ、これほどまでの事件が永遠に忘れられるところだったのは間違いありません。

 この記録が基となり、様々な著作や映画などが作られました。

 木村氏のヒグマや大自然、そして人に対する愛情と情熱は、非常に敬意を表するものですが、しかし、この事件に関わった大川春義氏がヒグマ102頭を撃ったことを「偉業」と評しているのが、少し抵抗というかギャップを感じます。
 もちろん、同氏らのヒグマに対する様々な深い思いに対して、私のような事件に関わり合いの無い平和な時代で好き勝手評することは卑劣なような、知ったかぶったように思われるかもしれません。時代背景も違いますし。しかし、ヒグマを単に「数」を目的にして殺傷したという行動ならば、私はどうしても・少なくとも賞賛はできません。

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