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【映画を見ての感想】

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イタズ

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 先日「マタギ」という邦画を見て、これが久々に夢中になった映画であることを書きました。

 この「マタギ」という映画の存在は以前から知っていたのですが、同じ後藤俊夫監督で同じ秋田県阿仁町を舞台に「マタギ」の後の1987年に作られた映画「イタズ」のことは、私は今回、「マタギ」の映画を調べていて初めてその存在を知りました。しかも、監修として、「苫前三毛別熊害事件」を元に「羆風」を書いた戸川幸夫さんがついているという。
 これは非常に期待できます。
 ちなみに「イタズ」とは、秋田地方の方言で「熊」を指します。熊が山からの恵み・授かりもの・いただきものという感謝の念がこもっている言葉です。

 そこでさっそく私得意の「ヤフオク」で検索すると、ビデオで出品されている方がいらっしゃいました。1000円でしたので、さっそく落札。昨日、到着しました。

 内容は、昭和初期の秋田県の阿仁町が舞台です。
 人喰い大熊(まあ滅多にいません)を、老練な昔気質のマタギである主人公・銀蔵が仕留めたわけですが、それに仔熊がいるのを仕留めてから気づいたわけです。
 マタギの掟として、子持ち母熊を撃ってはいけないというタブーを破った銀蔵は、人喰い熊だったのだし仔がいると知らなかったのだから仕方がない、という意見にも耳を貸さず、鉄砲を置き、仔熊を責任もって一人前にして山に還すことを山神に誓います。
 そこで、銀蔵の孫・一平とともに、愛らしい仔熊を育てていくことになるのですが・・・というお話しです。
 これは実際に見る前に、「goo映画」のサイトで紹介されていたあらすじを見て、分かっていました。

 見初めて数分、主人公の銀蔵(田村高廣さん…どなた?)が登場するのですが、ううむ、「マタギ」の西村晃さんに比べて、重厚さに著しく欠けています。名マタギの雰囲気を感じられません。孫を厳しくしかし優しく見守るような雰囲気もありません。
 …大丈夫かいな。

 続いて死んだ息子の嫁(桜田淳子さん)が登場するのですが、私は某宗教で有名な広告塔である彼女をそれでの名前しか知らなかったのですが、さすがに大女優と言われただけあって、唯一、存在感があるいい演技をなさいます。

 そして、もう1人の主人公であり、銀蔵の孫である一平(宮田浩史さん…どなた?)。
 眉毛とまつ毛の太さだけが非常に目立ちますが、演技は「マタギ」で太郎役を演じた安保吉人さんとは比べものになりません。ヘタなわけではありませんが、到底名演技とは言えないのです。

 この主要3人が揃った、映画開始後10分目くらいで、何だか不安になってきました。

 最初に現れた「人喰い熊」も、憎むべき、あるいは手ごわいという印象を観客に与える前に、瞬く間に「悪さ」をして(チラッと人の腕をくわえているカットがあったくらい)、瞬く間に銀蔵に撃たれます。
 他のマタギの手に負えなかった、というような描写が皆無だっただけに、大熊を苦労も工夫もする(演出される)ことなくあっさり仕留めた銀蔵に対して、「おお、さすが名人は違う」という銀蔵が引き立つわけでも感想を持つこともできません。それどころか、他人から借りた名マタギ犬を無茶な使い方をしてしまったあげくあっさり殺されてしまいそれも助けもしない(パートナーを大切にしない)など、到底名マタギとは思えないという、この主人公・銀蔵の存在感がこれで完全に薄っぺらくなってしまいました。

 さらに言えば、唐突に現われてさっさと討たれたこの母熊と仔熊のふれあいなども皆無なので、あまり仔熊が母を失くしてかわいそう、という感情移入ができません。
 ですから、銀蔵が母熊の毛皮に土下座するとか、鉄砲を置くまでの決意をしたというのが、理屈では十分にわかるのですが演出不足なのと、感情的に「こんな母子を討つなんて、銀蔵は悪いことをしたんじゃないか」ということもなく、「なんで鉄砲を置かなければならんの?」という感想にさえつながります。

 だいたい、この「人喰い熊」にしてもその子供である「ゴン太」にしても、毛の色や顔つきなどから、どうみても秋田県阿仁町にいるべき「ツキノワグマ」ではなく、北海道だけにしかいないはずの「ヒグマ」です。
 これは「マタギ」と映画の出来の上で象徴的なものです。
 少しでも熊を知っている人から見れば、ツキノワグマとヒグマの違いなんてすぐにわかります。これは、「マタギ」ではツキノワグマがほとんどでしたし、もし違う場合であっても、「これ、ヒグマじゃねえの?」と鑑賞中、考えるような「余裕」はありませんでした。夢中だったので。
 ところが「イタズ」では、「観客にはわからないだろう」とでも思ったのか、それとも大きな熊という迫力を撮るためにはやむを得なかったのか、わかりませんが、明らかに考証ミスというか、この「ありえねー」ぶりが、さらにゲンナリさせます。「マタギ」の緻密な小道具に至るまでの考証は感動ものでしたが、今回の「イタズ」はねえ。この熊の種類の違いが、全て映画の出来の違いを現われています。

 そして、「マタギ」では歴史や文化、阿仁町の伝統風俗を見事に取り込んで描いていたものが、「イタズ」ではほぼ皆無です。
 「マタギ」が、まるで良質ドキュメンタリーを思わせるような、引き込まれる迫力に満ちていたのに対し、この「イタズ」は、完全に「映画」という感じです。従って、見ていても、「マタギ」では、この先の運命がどうなるのか、ということに手に汗握るような一体感を感じましたが、この「イタズ」ではまるっきり映画という冷めた見方で見てしまいました。

 この映画の最大の失敗は、仔熊である「ゴン太」と、少年である「一平」の共に成長していく中での人と動物との違いを描き、成長とともにその違いが歴然と現れる悲しみなどを表現したかったのであろうところ、単に仔熊の愛らしさを描いた場面だけが延々と続かせたところです。
 これは80年代半ばごろに流行った、動物のかわいらしさを強調した映画の粗製乱造に乗ってしまったかのような失敗です。まるっきり夏休みや年末年始の子供・ファミリー映画のノリです。
 しかし、そのしつこい愛らしさも、きちんと主人公・一平との友情を描ききれば、まだ良かった。これが不発で、ただただ一平は最初から最後まで女々しい・成長の跡が見られない!という印象しか残りません。
 本当は、何も考えずに無邪気に遊びあった1頭の熊と1人の少年も、成長するにつれて、熊は力が強くなり、少年は勉強や家の仕事などに、と、それぞれの成長による人と熊との違いとその違いによる悲劇を描きつつ、たくましくなっていくシーンを作るべきだったのです。おそらく監督もそうしたかったのでしょうが、全くダメです。
 そして、イルカさんの余計な主題歌までしばしば挿入されるので、もうこれは、「動物友情感動もの」映画に落ちています。それも中途半端な。

 同じ監督さん?と思わるくらいの没落ぶりです。商業映画としてのスポンサーや関係者らからの介入でもあったのかもしれません。
 ストーリー展開にしても、演出にしても、余計な音楽にしても、何もかにもが「マタギ」に比べて、いや、比べるまでもないくらいのレベルに落ちています。
 失敗作とまで、言っても良いのではないでしょうか。鑑賞後に不満以外の何も残りませんでした。

 どんなジャンルの映画好きにも、オススメはできません。
 唯一評価できるのは、「このシーン、どう撮ったのだろうなあ」という、映画そのものではなく、その手法を評価するくらいでしょうか。しかし本来、そんなものは観客にはどうでもいいことですので、要するに褒めるべきものが無いと評価します。

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田村高廣は、田村正和の兄貴です。阪妻の長男ですよー。「本陣殺人事件」や大島渚の「愛の亡霊」など主演も多い日本を代表する俳優ですが・・・。2008年の執筆なので今更の話でしょうが田村三兄弟を知らないようなのがかなり気になったので。失礼しました。

2015/9/15(火) 午後 3:32 [ やんや ]

田村高広を知らぬとは!!失礼致します・・・

2016/2/5(金) 午後 10:29 [ - ]

今さらコメント読んでないと思うけど、いちいち「マタギ」と比べるの何なんですか?
まぁ、監督が同じだからなんでしょうがけど。
マタギにはマタギの良さ、イタズにはイタズの良さがあると思います。
それにこれは、小学校などの映画館鑑賞会で上映されたりした映画です。
実際私も小学校で観ました。
マタギが大人向けならイタズは子供向け的なポジションだと思います。
いちいちマタギと比べて下げないでください。
あなたはマタギがとても面白くて、それと比べたらイタズはダメってことでしょう。
でも、マタギを観たことがない人がイタズを観たら面白いと思うかもしれませんよ。
なのにあなたが、自分の好きなマタギと比べてイタズにダメ出しすることで、マタギを知らない人も、あーイタズは面白くないんだなと思ってしまうかもしれません。
観たら好きになるかもしれないのに。

あなたがつまらないと感じたのは事実ですからそれは構いませんけど、いくら同じ監督作品とはいえ、他の作品と比べて、マタギではこうだったのにイタズではこうと下げるのはどうかと思います。
だったらいっそ感想なんて書かないでほしいぐらいです。

2017/7/29(土) 午後 10:20 [ utu***** ]


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