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トキの放鳥

 先日、佐渡島で人工飼育されていた中国産トキが放鳥され、しかしそのうち1匹が死がいで見つかったというニュースが流れました。

当然の結果です。

 トキ連なる団体は「佐渡の空をトキが舞う日のために」などという御大層なスローガンをあげて活動しているようですが、トキが絶滅した理由は「狩猟によるもの」や「水田の環境が大きく変わって、トキの食べ物となる水田に棲む水生生物が減少した」ためです。

 ただでさえ減反により水田が減少している中、絶滅した当時と何らトキの好む環境に戻っていないどころか悪化している以上、そんなトキにとって荒野みたいなところに、まして、食べ物を採ったり外敵から身を守るなどの「自分で生きるすべ」をろくに知らない個体を放り出して、全部が全部、無事生きていけるとでも思っていたのでしょうか?
 だとすれば、このプロジェクトに関わった全ての関係者は、

恐ろしく無知なドシロウトばかり

ということです。

 私は当然、そんなことは承知の上で、

「人工飼育したトキなんぞが今の日本国内ではそううまく生きて行けっこないことを証明するために放った」

のかとばかり思っていたくらいなのですが、どうもただ単に、机上の空論しか無いボンボン学者が手柄を焦ったか、ただ観光の目玉にでもしたい団体たちの思惑なのか、こうなるとは考えてもいなかった愚かな罪深き無知か、考えても関係者の強欲さから無視しただけのようです。
 中国のトキを日本で放して、それが何だというのでしょう。

 今日の読売新聞の記事には、「放鳥トキ、緊急時には捕獲も…冬場は餌も不足」などという「今さら」な記事が出ているようでは、単に何にも考えていなかっただけのようですね。

放鳥トキ、緊急時には捕獲も…冬場は餌も不足
                             12月16日14時38分配信 読売新聞 

 新潟県佐渡市で国の特別天然記念物トキ10羽が放鳥されて間もなく3か月を迎える。

 市内の山林で14日、メス1羽が死んでいるのが見つかり、本格的な野生復帰に向けて、冬場の餌不足とともに、不測の事態への対応にも関係者の目が向けられている。

 環境省によると、死んだメス(1歳)は、今月9日の観察で、約5時間、ほとんど水田で移動せず、飛び立っても木に止まれないことが確認された。

 衰弱したトキについては、8日に開かれた環境省のトキ野生復帰専門家会合(山岸哲座長=山階鳥類研究所長)で、緊急時に限って捕獲・収容することを決定したばかりだった。

 問題のメスは、ケガをした可能性があるとされ、観察態勢を強化して確認のうえ、捕獲などの対応を検討することになっていた。だが、骨だけの死骸(しがい)で発見された。

 環境省は15日現在、行方不明の1羽と死んだ1羽を除く、8羽について所在を確認している。

 専門家会合では、自力での採餌が難しくなる冬場の対応を巡って意見が交わされ、自然下での生態に関するデータ収集を重視するため、給餌は原則として行わず、緊急時に限って、捕獲・収容することで一致した。だが、山岸座長は「継続的な観察で餌不足は把握できるが、けがをしたり、外敵に襲われたりするなど不測の事態への対応は難しい」と打ち明ける。  

 今の日本の環境ではトキが生きていくのは難しいであろうことは最初から当たり前のことなのに、それでも無理やり放って、しかしやっぱり難しければ捕獲して、って、いったい何をしたいのか?
 理解できませんね。
 まあ、同じくらいの体格のサギの仲間が田んぼで生きていることを考えれば、わずかな数であれば個体としては生きていけるかもしれません。しかし、繁殖・発展をしていくかどうかはまた別の話です。

 冬はどんな生き物にとっても生きるのに厳しい環境になるなんて当然のことさえわかっていない幼児レベルの連中が、国の特別天然記念物にかかわっている時点で、この国の野生動物保護政策が原始時代のままだというのを如実に証明しています。

 別に特別天然記念物だからではなく、この無知さ・傲慢さで、一個の生命を無為に死地に追いやった責任をどう考えているのだろう?

 本当にトキを日本の空に復活させたいのならば、その生息場所となる生息環境を完全に整えてからでなければならないのは、当たり前すぎる大前提。
 しかし、野生のトキが絶滅して年月が経ち過ぎているわけです。もう、「トキがいない、日本の環境」が定着している中で、トキに居場所は無い。

 一部の外来種のように、ずぶとく生きていけるだけの身体構造や繁殖能力は無い以上、今の固定された日本の生物相の中に一度その競争に負けて消えたトキが、再び入っていけるスペースは無い。
 それだけに、「トキが生きていける環境を作る」というのは、相当な労力が必要であるし、そしてそれができたとしても、今、生きている別の生物全般への影響は甚大となる。

 「トキを再び!」という人々は、それを分かって言っているのだろうか?
 トキのために、既に長らくそこに定着している他の生物への多少の影響はこの際どうでも良いとでも思っているのだろうか?

 おそらく、何も考えてはいやしまい。
 「外来種問題」と、その点でどこが違うと言うのか。説明して欲しい。


 フィールドに出て、そこにある環境全体を見渡してみれば、人間も、ニホンオオカミも、トキも、スズメも、大きな自然の中の1種でしかなく、上も下も無い、みな必死に生きている生き物・隣人同士であるという当然のことを知ることになります。
 そうすれば、どんな命も粗末にするような人間の恐るべきエゴの犠牲にしよう・人間がその自然環境をどうにかしようなどというそんな考えに至るはずはないところなのです。

 しかし、以前スズメバチの狂信者について「専門馬鹿」で書いたように、自分の興味のあるごくごく限られた対象にだけ目を向けている人間は、えてしてこういうその他を軽んずるような、周りが見えずに盲目的な行動を取り、しばしば愚かなことを繰り返すものです。
 本人が笑い物になるのだけなら良いのですが、だいたいの場合、多かれ少なかれ迷惑を受ける人や動物が出てしまう。

 まだまだ、トキが安心して生きられるような環境は、無いです。
 自然環境以前に、それを取り巻く人間が、幼稚過ぎるのです。

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泉ヶ岳
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