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ミドリニリンソウ

 春の花・ニリンソウをご存じの方でも、ミドリニリンソウまでご存じの方は、意外に少ないかもしれませんね。

 ニリンソウというのは文字通り、1本の茎から普通2輪の花を咲かせることからその名がついているわけです。
 こんな感じですね。

イメージ 1

 この、白い花びらに見える部分は、実は「がく」なんです。花はこの中央にある小さな部分。
 日が沈みかけていたり寒い日は、この白い「がく」が閉じているのを見かけます。

 さて、ミドリニリンソウ。別に、ニリンソウの別種の仲間などではなく、突然変異でこの白い部分が緑色になったものです。
 例えば、この写真も、完全な緑ではありませんが、緑がかっています。

イメージ 2

 「がく」は変異しやすい部分のようで、ニリンソウのこの白い「がく」は5枚であることが多いのですが、6枚や7枚というのもめずらしくありません。

 ミドリニリンソウは、完全にこの普通白い「がく」が、緑に変化…というか、先祖がえりというのでしょうか、なったものです。

イメージ 3

 私も泉ヶ岳に通い始めたころ、ニリンソウはもちろん真っ先に知った花なのですが、後でこのミドリニリンソウがあるということを知って、探しまわって見つけました。
 泉ヶ岳には、小川沿いにニリンソウは多く咲くのですが、私が探し回った限りではごく一部の群生地の、そのさらに一角の一群にだけで見かけます。変異に何か条件があるのか、また、その変異は遺伝的に引き継がれる性質なのか、詳しく観察などしていないのでわからないですが・・・。

 このミドリニリンソウ。見るのが難しいのは、数が少ないからだけではありません。

 まず、「そんな変異がある」ということを知らないと、あえて探すということをしないものです。「ある」と知った上で探すのと、「あるかどうか、わからない」「存在を知らない」というスタンスで見て回った場合とでは、見つかる可能性は全く別ものになります。

 そして、たとえたまたま見つけても、「これはなんだろう?」ということに興味を持って調べない限りは、「なにかの花だろう」ということで終わってしまい、すぐに忘れてしまうということがあります。

 私は野山を歩くときには、いつもこのことを肝に銘じています。
 同じ山道を同じように歩いても、見えるもの・知るものに、その歩いた人の視点の持ち方いかんでは、全く違う世界になると思います。

 シャーロック・ホームズの冒険「ボヘミアの醜聞」の冒頭の一節を思い出します。
「君はただ眼で見るだけで、観察ということをしない。見るのと観察するのとでは大ちがいなんだぜ。たとえば君は、玄関からこの部屋まであがってくる途中の階段は、ずいぶん見ているだろう?」
「ずいぶん見ている」
「どのくらい?」
「何百回となくさ」
「じゃ、きくが、段は何段あるね?」
「何段?知らないねえ」
「そうだろうさ。心で見ないからだ。眼で見るだけなら、ずいぶん見ているんだがねえ。僕は十七段あると、ちゃんと知っている。」

 シャーロックホームズの冒険 「ボヘミアの醜聞」(新潮文庫 コナン・ドイル 延原謙訳)より
 かくありたいと思います。

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