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昨日、岐阜県高山市のひだ丹生川乗鞍バスターミナルで発生した稀有な熊による加害事故ですが、当時の状況などが少しずつ分かってきました。 今日の毎日新聞の記事です。 クマ 「登山者に馬乗りになった」目撃者ら声震わせ 岐阜 9月20日2時50分配信 毎日新聞 秋の5連休初日、行楽客でにぎわう観光地が惨劇に見舞われた。19日、岐阜県高山市丹生川町の「ひだ丹生川乗鞍バスターミナル」でクマが観光客ら9人を襲い、重軽傷を負わせた現場を目撃した人たちは「人が大勢集まる場所にクマが出るとは」とおびえた表情でクマの脅威を振り返った。【奈良正臣、三上剛輝、山田尚弘】 大阪府高槻市の女性(26)は午後2時半ごろ、ターミナルの建物内の土産物コーナーにいた。騒ぎに気付いて外を見ると、約100メートル離れた登山道でクマが男性を追い回していた。別の男性が棒きれで追い払おうとしたが、クマはひるまず逆に襲いかかった。「こんなに恐ろしい思いをしたのは初めて」。女性は声を震わせた。 愛知県一宮市のタクシー運転手、鈴木敏夫さん(65)は離れた場所から同じ場面を見ていた。「自分があの場にいたら同じように襲われていたと思うとぞっとする。こんなに人の集まる観光地に恐怖が潜んでいるとは」 クマはその後、木造平屋建てのパトロール小屋に逃げ込む。関係者がトラックで入り口をふさいだが、クマは暴れて飛び出し、再び登山者らへ向かった。 新潟県柏崎市の男性(59)は、クマがあおむけに倒れた登山者に馬乗りになり、ひっかくような動きをするのを見た。近くの土産物店の従業員がけりつけると、クマは従業員も襲った。男性は「こんなに人が大勢いるところにクマが出て人を襲うなんて」と信じられない様子だった。 ターミナル横の山小屋「白雲荘」の男性従業員(65)は、小屋の前で数十人の観光客らが逃げ惑うのを見て最初は「強盗が入ったのか」と思った。だが人垣の間からクマが見えた。「付近は食べ物も無くクマは珍しい。もっと大勢の観光客がいたらもっと多くのけが人が出たかも」 さらにクマは、レストランなどが入る建物に侵入。建物内にいた観光客ら数十人の大半は2階へ逃げた。土産物コーナーの責任者によると、ターミナルの女性従業員が椅子でクマに立ち向かおうとしたが、逆に右手をかまれた。他の従業員が消火器を噴射、クマを土産物コーナーに追い込み、シャッターを下ろして閉じ込めた。 午後5時58分、高山猟友会丹生川支部のメンバー3人がシャッターのすき間からクマに同時に発射。更に2発を撃ち込み、射殺した。まず、登山道で登山客を攻撃し、その次に山小屋へ入り込み・抜け出し、さらに登山者を襲って、再び今度は別の建物に入り、機転を利かした人がシャッターを下ろして閉じ込め、そこで射殺。 そういう順番のようです。 ツキノワグマもヒグマさえも、普通は人の気配を感じると警戒して逃げて行くもので、登山中、人が多ければその発する気配(会話などの音や体臭など)が多くなるので、よる大人数相手では避けて行くという傾向はあります。 しかし、明らかに人を襲おうと思っている場合や、山菜などを食べるのに夢中で人の接近に気付かずに偶発的な接近となった場合には、人数は関係なく、むしろ人数が多いことで一層慌てさせての攻撃に転じることがあります。 ヒグマによる人への食害事故の中には、複数人数でいたにも関わらず襲われたというケースもいくつもありますので、人が多ければ熊が出てこないわけではないということがわかります。 しかし、それはより大型で肉食傾向の強いヒグマの話であって、ツキノワグマがそんなたくさん人がいる場所に出てきて登山者を複数襲うというケースは、私は聞いたことがありません。 山小屋の方が「付近は食べ物も無くクマは珍しい。」という証言をなされていますが、この場合の「食べ物」が、通常、熊が食べる山菜や木の実を指して言ったものなのか、それとも人間の出す生ごみなどを指して言ったのか真意がわからないのですが、「クマは珍しい」というお話しからは、 (1)レストランの残飯などをあさりに、たびたび出没していたというわけではないこと (2)それ以外の木の実などがあって、たびたび出没していたというわけではないこと という、いずれにしても出没じたいがまれだということがうかがえます。 googleマップで現場の航空写真を見ると、残雪と緑が見られました。撮影時期は不明ですが、初冠雪か雪解け時期かに緑があるということは、針葉樹林帯かもしれず、そうであるならば熊の食べられるような木の実が無い場所と思われますが。 レストランがあるならばよく観光地であるようなファーストフードなどの持ち出し食べ物の販売もあるかもしれませんので、観光客が途中でその食器や食べ残しなどを登山道に捨てて、それに依存していたということだって考えられますが、目撃が少ないという以上、それも無さそうです。 しかし、これは私もツキノワグマを少し知っているぶっていますが、そんな高度で人の多くいる場所で遭遇するというのは少し想像や常識を超えています。 以前、秋田県鹿角市の温泉地で起きた出来事を紹介しましたが、観光地だけにその警戒心がゆるむこともあって、もし私がこの事故現場にいても、何の準備も対応もできなかったでしょうね。 山に入る者としての最低限の常識(熊鈴の装着とか、食べ物の匂いを出さないとか残さないとか)では対応できない内容ですから。 ですから、それだけに、こうも思いがけない騒ぎになったときに、トラックで出入口をふさごうとしたり、助けに入ろうとしたり、消火器を使ったり、シャッターを下ろしたり、というそれぞれでできる最善の防衛手段をとっさに動けたという人々には、よく機転を利かせて行動ができたなあ、と思います。 火事や地震の訓練のように、こういうとっさの行動は、資質とか普段からのイメージができていないと動けないものですから。 まあ、それだけまれと言える今回の事件ですから、ぜひ、背景を調査し、原因の手がかりを究明できればいいな、と思うのですが…。 同じく、今朝の産経新聞には長年熊の研究をされて成果をあげておられる米田一彦さんのコメントが紹介されています。
クマに襲われ9人ケガ 木の実求め標高2700メートルまで移動? 9月20日7時56分配信 産経新聞 ■残飯が格好のエサ 人がクマに襲われる事故は、エサであるブナやミズナラが不作の年に多発する傾向がある。環境省の統計によると、平年は数十件だが、大凶作だった平成16年は死者2人、負傷者113人、18年には死者5人、負傷者145人にのぼった。 今年は大凶作の年とみられ、東北でクマの出没が相次いでいるが、NPO法人(特定非営利活動法人)「日本ツキノワグマ研究所」(広島県)の米田一彦理事長によると、人が襲われる被害の報告は34件で、平年並みだという。 今回、9人が重軽傷を負った畳平バスターミナルは標高約2700メートル。米田理事長は「この時期はミズナラやブナの実が比較的標高の高い所にあるので、クマも移動していた可能性がある」と指摘する。 高山市から委託を受けてバスターミナルを管理している観光会社によると、周辺では今年に入ってクマの目撃情報が寄せられていたという。 米田理事長は「一度に9人負傷した事故は聞いたことがない。クマが大勢の観光客らと遭遇し、パニックになったのではないか」と推測。また、「観光地化している場所には観光客の残飯があり、空腹のクマにとっては格好のターゲットになる。残飯に引き寄せられた可能性もある」という。 シルバーウイークから紅葉シーズンにかけて、各地で登山や山歩きを楽しむ人が急増する。米田理事長は「クマの出没情報が少なくても油断しないで」と警鐘を鳴らす。現場をご覧になられていないので、私同様、一般論でしかコメントできないと思いますが、ぜひ、現地調査をしていただければと希望します。 |
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