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今は無くなった大陸書房から、昭和57年4月に初版が発行された本です。 その当時は私は子供で、当然熊に興味があったわけではありませんから、ずっと後(近年)になって熊の生態を知る参考にするために購入したものです。 以前にも書いたのですが、私は野山で「フィールドサイン」を発見し、それで動物の動きを推測するのが好きで、やがて自動撮影装置での動物写真を撮ることに興味が出て来るわけですが、そういう動物のことを知ったり、うまく撮影しようとすれば、同じような追跡やワナを仕掛ける猟師の経験談は非常に参考になるのです。 この本も、そんなことで古書店で購入したものです。 当初はそういう目的で購入していたわけですが、何十年も前の「山」や「熊」の話を、高齢となった猟師からの話や古い本から知ることは、別の価値もあります。 それは、その話の時代当時、この著者の場合は昭和27年ごろからの話がありますが、「その当時」の熊の習性というか性格というか人里への出没事例などと、「今」と、熊の基本的な習性や社会情勢を含めて変化は無いか?ということも参考になる手がかりになります。 私たち人間でも、昭和27年と平成21年の現在、人々を取り巻く環境や性格というかそういうものが、明らかに違っています。 人間という生物としての基本的な習性というか性格や能力は変化が少ないでしょうが、それを取り巻く社会環境や年月でもって、何かの事象が起きたときに対する反応などはまるで違うというのは想像ができます。 学習能力の高い熊であっても同じではないか?と思いますね。今、私たちが見ている熊と、昔の熊が、何か変わりが無いか?ということを、今はもう、こういう書籍で参考にするほか無いのです。 ですので、私は自動撮影をする際の参考などにしたり、熊の行動を推測するときにはこういう実際の猟師の話は大変参考にしていますが、それは時代や場所、それどころか同じ時代同じ場所でも個体差によって当然、熊も個性や変化があることも前提としていないと、何か1つ、本で知ったことをそれだけと思い込んでいては、それ以上進歩がありません。 それはともかく。 この本にも、著者が実際に経験した山での不思議な話がいくつか収録されています。 著者は元教師らしく、非科学的なものを盲目的に信じたりしない態度です。ほとんどが猟の体験談を冷静に書いている中で、こういう不可思議な話があると、信憑性や神秘性が一層増して感じてきます。 猟の最中に野宿した際、「ヒーヒヒヒヒ」と女の笑い声のような怪しい声を聴いてその正体を探ったり、木を切り倒す正体不明の音を聴いたという体験を書いた「闇夜の怪音(山形県)」。 野営して、外に出た際に正体不明の発光体を見て、先輩猟師らも見ていたと聴き、その正体を推測した「幽境恐怖の怪光(富山県)」。 これらが「不思議な話」ですが、冷静にこれらに向き合う姿勢は、実に好感が持てます。本文中の内容を拝見すると、著者の方には失礼かもしれませんが、発想や行動が実に私に似ています。 そのあたりの記述を一部引用させていただきます。 【前略】私たちは人間の機能能力で分からないことを不思議だと言って怪しみ、ひいては神の怒りと言ってみたり偶像をつくって拝んだりし出す、愚かな面と弱さを持っている。動物はこういった惑う知恵もないのであるが、人間は半端な知恵があり、惑う。一方科学する知恵者は、過去から現在に至る何千年かのうちに多くのことを解明してきた。【中略】また、幼稚園の子供でも知っている地動説を記した「天文対話」を一六三二年に出版し、宗教裁判にかけられ、その説の放棄を命ぜられるという珍妙裁判の当事者、イタリーのガリレイは「それでも地球は回っている」と言った。物事の真理は一つでしかない。人間が勝手に創作した宗教がどう結論付けようと、全世界を覆うほどの信者が出ようと、そんなものは真実ではありえないことのいい証明であり、非論理に対するいい戒めになる例である。「真理は多数決にあらず」―科学的に裏付けされたものだけが真実である。【後略】
まあなんでもかんでも科学的に解明したいとも思わないですけれどね。「ありえない」と思いつつも、どこかでキツネやタヌキが人を騙したりするとか、天狗や河童の話が信じる余地が残っている山の方が歩いていても楽しいと思います。しかし、それはバランス感覚があれば、の話で、世の中には「やっぱり天狗はいるんだ」などと騒ぎだす人がいるから厄介。 このほかに面白かった話は、野生のミツバチの蜂蜜を食べたところそれがトリカブトの花から作られたものだったために食べて失神した話と、野山では老衰死した熊に出会ったことが無いという話が面白かったです。 当然、絶版本ですが、熊と狩猟と、山が好きな方には面白くお読みいただける本だと思います。
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昭和57年に子供だったと言う一文で、私などよりはるかにお若いと言うことがわかりました。
山には不思議な話がたくさんありますよね、確かに。
2009/12/4(金) 午後 4:32 [ プーサン ]
昭和57年ですと、私は小学生でした。
30年近く前ですねえ。夢中になってカマキリやイナゴを追いかけた田んぼや、ザリガニを取った用水路は、今や高いマンション群になっていたり。夢中になって走り回った空き地(他人の土地。所有者が子供を遊ぶのを黙認していた)は、月極駐車場に。
そういう、「子供」時代でも、30年前と今では全く違う見え方でしょうから、違う環境なんですよね。考え方も体力も、30年前と今とでは、まったく違うのかなあ。
私も、不可思議な話を盲目的に信じたりは決してしないのですが、そういう理性的な感覚を持っていたいと思っていましても、夜の山には不思議な気配を感じたり、自然と頭が下がる気持ちになることがあります。
2009/12/4(金) 午後 8:32 [ 泉ヶ岳 ]
こんにちは。
「野山では老衰死した熊に出会ったことが無いという」やはりそうなのですね。
以前、自然死したカラスが見つからないのはなぜか?という議論をしたことがありますが、カラスより体が大きいクマも見つからないのですね。
その後に、「からすの死骸が見つからないのはなぜか?」という本が出てましたが、UFO研究の矢追さんの本だったはずで、読んでも結論は出なかったと記憶しておりました。
ではまた。
2009/12/5(土) 午後 4:06 [ sou*and*yo*m*itta ]
sounandayo_maittaさん、この著者も、仲間の猟師さんも野山を何十年も歩いているのに、老衰死した熊の死がいはおろか、骨やらの痕跡も見たことが無いとおっしゃってはいます。
テンやタヌキなどのような動物はすぐに他の動物に食い散らかされてしまうでしょうし、広大な山野において、動物が占める大きさや、人間が歩く面積・視界の範囲は限界があるでしょうから、そもそも見つかる可能性の方が少ないような気がしますね。
以前、私が山の施設に勤めていたとき、近隣の施設の管理人さんが「小熊の死体がある」と駆け込んで来られたのですが、すぐに現場に行ってみたら、跡形も無く消えていたことがありました。
その人の話によると、「確かに死んでいた」「犬より少し大きなくらいだった」ということで、その他の動物が運んでいったとも考えづらいので、「親熊がくわえて行った?」という説明でウヤムヤになったことがあります。
そういえば、その人もその施設で何十年も勤めているベテランさんでしたが、事故死以外では熊の死体はその時初めて見たとおっしゃっていました。
2009/12/5(土) 午後 8:44 [ 泉ヶ岳 ]
で、カラスの方ですが、実は私は田んぼのあぜやら街中やらでも、そして野山では結構見たことがあります。
死んだ原因まではわかりませんが、寿命か、外敵や仲間と争ったか、餓死か、人間によるものか、有害なものを食べたのか。
なので、矢追氏の本は知っていましたが、見ないということが無かった私は、その問題提起からしてちょっと理解できませんでした。
「死がいはなぜ見当たらないか?」ということについて、カラスなどの研究で有名な柴田佳秀さんの「カラスの常識」(寺子屋新書)にが掲載されています。
ホームページもすばらしい情報がいっぱいです。http://homepage3.nifty.com/shibalabo/
柴田氏の見解では、カラスはねぐらである森などで死ぬことがほとんどであるので、人目につかないだけではないか?ということで、「死にそうなカラスはねぐらから飛び立てずに死ぬのだろう」ということです。
後は昆虫やら野鳥やら微生物に食べられて消滅するのでしょうね。
2009/12/5(土) 午後 8:56 [ 泉ヶ岳 ]
始めまして。
柳田さんの本は「ライフル・ハンター」「北極に熊を追う」「アフリカ サハリ大陸」の3冊持っています。この「熊と猟師」も近いうちに手に入れたいです。
柳田さんは現在生きているとしたら78歳。東京に住んでいるそうですが、まだ生きているのでしょうか?ぜひ会いたいと思っているのですが、何か情報はお持ちでしょうか?
柳田さんは以前、「ユニバーサル・アート」という会社を経営していました。そこに電話をしても「現在この番号は使われておりません」と案内されます。狩猟界社に電話しても同じです。もし何か柳田さんについて情報を持っていたら教えてもらえますか。ぜひ会いたい人です。
お願いします。
2010/4/13(火) 午後 11:18 [ niwa ]
niwaさん、はじめまして。
「熊と猟師」は非常に面白かったですよ。本を拝見した限りでは、私の発想や行動にとても似た感じがする方で、もちろん能力や行動力などははるかに上ですが、とても好感が持てますね。
私もお会いできればいいな、と思うのですが、残念ですが情報というものは何もありません。この著書の中の略歴に「日本シューターズ協会会長」とありましたが、検索しても見つかりませんでした。
ご存命でしたら、お会いできるとよろしいですね。
2010/4/15(木) 午後 11:35 [ 泉ヶ岳 ]
了解しました。
いろいろな人に聞いていますが、誰も知らないようです。何とか探し出して会えたら嬉しいです。
柳田佳久さんの本を読んで、より一層動物に興味が持てました。これが高じてアフリカに何回も行っています。岐阜県の根尾村(現本寿巣市)にも時々動物撮影に行きます。
泉ヶ岳さんのブログはいいですね。もしよろしければ僕のブログも拝見していただけると嬉しいです。
niecesより
2010/4/16(金) 午前 8:15 [ nieces ]