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「専門家」会議

 3月17日付けの読売新聞の記事です。
トキ襲撃 再発防止に電気柵導入

 佐渡トキ保護センター野生復帰ステーションの順化ケージで訓練中のトキがテンに襲われて死んだ問題で、環境省は16日、専門家らによる会合を開き、ケージ周囲への電気柵設置や、金網へのトタン板取り付けなどの再発防止策を決めた。同省は施設の改修を早急に行い、もともと21羽で計画していた今秋の放鳥については、今回死んだ分の補充はせず、残りの10羽程度で行いたい考えだ。

 この日の会合では、専門家の意見を踏まえ、〈1〉265か所見つかった金網のすきまの穴埋め〈2〉電気柵を順化ケージの周囲に設置〈3〉テンが登れないよう金網へのトタン板取り付け〈4〉小動物を発見しやすくするために、ケージ周辺の草木の除去――などの措置を決定。飼育繁殖専門家会合座長の小宮輝之・上野動物園長は、「応急処置をすることで、(訓練施設として再び)使えると思う」としており、根本的な全面改修は必要ないとの見方を示した。

 会合では、順化ケージの施工設計や、現場の管理体制について、「こんな事故はあり得ないとの大前提で仕事していたのでは」「過去に起きた小動物の侵入を報告していたら、その時点で対応出来た」などとの批判も相次いだ。施設を管理する佐渡トキ保護センター戸貝純夫所長は、「認識が甘かったと申し上げるしかない」と謝罪した。

 一方、2008年に順化ケージへイタチが侵入した事例については、直後の専門家による会合で報告されていたことも判明。環境省は、具体的な報告内容について不明としているが、当時は、問題視されなかった可能性が高く、委員の1人は、「環境省、県、そして専門家にも問題意識が欠けていた」と打ち明けた。

(2010年3月17日  読売新聞)
 私はトキの専門家でも何でもないので単なる疑問なのですが、元々21羽で計画していたのが10羽という半数以下で放鳥しても、当初目的、おそらくは自然の中での繁殖などでしょうが、これは果たせるものなのでしょうか?
 「何が何でも当初のスケジュールどおり放鳥せねば」という結論ありきでの話にも見えてしまいますが…大丈夫なんでしょうね!?

 会合の内容を聞くと、そんなことは建設計画のときにしておくべき話で、今さらそんなことを言っているのが呆れてしまいます。
 短い報道がされた限りのことではありますが、こんな程度の話は「専門家による会合」でなくとも、ちょっと自然観察をしている人であれば容易にわかるものです。まず確実に言えますが、この施設に私が勤めているか関わっていたら、少なくともこんな大失態は絶対に無かったと断言できます。

 それにしても「専門家」という言葉はあいまいですね。何だかその道に誰よりも精通した実績ある研究者のようなイメージに見えますが。
 今回の「専門家の会合」のメンバーと重複するのかわかりませんが、記事末尾にあるとおり、以前イタチが侵入したことは当時の「専門家による会合」で報告されていたのにも関わらず放置されていたというのですから、当時の「専門家」というのは肝心なことでは何の役にも立っていなかったということでしょう。
 どれだけトキやテンに詳しくとも、それらの関連や想像力豊かな危機管理や、会議の席で有効な発言をするとかに欠けていれば、このとおり、何の意味も無い結果になりかねないということです。
 この施設管理に関わる全ての人は、総入れ替えした方がよろしいでしょう。資質が大いに疑問です。

 同じく今日の毎日新聞の記事には、この会合で出された「検証委員会」の設置について書かれています。
トキ:9羽襲撃死 ケージのすき間埋める 電気柵、テン返しも /新潟
3月17日12時9分配信 毎日新聞

◇専門家会合、環境省方針

 佐渡市の佐渡トキ保護センターでトキ9羽が死んだ事故を受け、環境省のトキ飼育繁殖専門家会合(座長・小宮輝之上野動物園長)は16日、同市で会合を開き、テン対策について意見を交わした。同省は順化ケージのすき間を埋めるなどの対策を進めるほか、同ケージの設計・施工の過程などを検証する委員会をつくり調査に乗り出すことにした。
【中略】
 テンをめぐっては、同日朝に順化ケージのすき間に張った両面テープから毛が採取されたが、捕獲には至っていない。同センターの金子良則獣医師は「テンに襲われたときにはテンのフンがあったが、今までにケージで発見されたことはなく、これまでも日常的に出入りしていたとは考えにくい」との見方を示した。
【後略】
 はぁ、また検討委員会なんてものを設置するんですか。どの程度の検証能力がある人たちで構成されるのでしょうか。
 「設計・施工の過程などを検証する」とありますが、設計や施工だけではなく、その完了検査や運用後の点検とか、侵入事件があった後の怠慢と言える対応の問題などもしっかり検討してもらいたいものです。

 それにしても随分日が経つのに「捕獲に至っていない」とありますが、テンの捕獲はそんなに難しくないと思うのですけれど。
 現に以前書いたように、私はひと晩で捕まえかけたのですが。しかも、この猟法は「越後地方」に古くから伝わるものです

 と、いうか、この期に及んでテンを捕まえる必要があるんですかね?
 カメラの映像や足跡で、トキを襲ったのはテンというのはほぼ間違いない。
 侵入路として隙間から出入りが可能であることはこのテープの毛の付着でほぼ断定しても良い。
 そんな中で、隙間を埋める改修をしないうちに、ケージの中でテンを捕まえて、それが何だというのか、私は目的・意味がわかりません。捕まえても、もう時間が経ったので胃の中にトキの羽や肉片も残っていないでしょう。単に、「犯人を捕まえた」とでも言いたいのでしょうか?襲った個体かどうかなんて、どう確認するのでしょう?

 そんなことをするよりも、さっさと穴をふさいで、「これで良し」という納得行く施設に改修し終わったら、まずはかわいそうですがケージの中にニワトリでも入れて、本当にその金網などの改修だけで十分か、万一にも見逃している個所は無いかをテン自身に検証してもらい、安全性を確認してからトキの訓練に移れば良い。
 もし、「秋の放鳥に間に合わせるべく訓練開始を急がないと」などと慌てたりすることがあるならば、またろくな結果になりかねない。

 既に襲われてから1週間ほど経過しているわけですが、そもそも今回死んだトキを今の時期訓練ケージに入れていたのは、当然「秋の最適な時期に放鳥するのを間に合わせるための訓練期間は、この時期から始めなければならない」と検討した上でのことだったと思われます。ところが、新たに放鳥しようというトキの訓練をこれから当初の訓練開始時期から大幅に遅れて訓練を開始させて、それで期間が足りるのでしょうか?
 もし開始時期が遅れた分、放鳥時期も遅らせるならば、放鳥後の食糧探しなどの生き残りに影響しないのでしょうか?
 だから、秋に放鳥することは少し心配と思うわけです。
 まあ、一連のずさんな運営を聞いたので、もともとの放鳥時期もそこまで考えた時期や訓練期間とはとても思えないので、遅れても影響しないのかな?

 さて、記事中の獣医師のおっしゃる論拠も疑問です。
 265か所もの隙間の重要性にも気づかず、イタチやテンの侵入を確認しても問題視してこなかったような程度のスタッフが、テンの小さなフンがあったならばそれを見逃さなかった・きちんと報告したとでも言うのでしょうか?自意識過剰ではないでしょうか?
 それに、「日常的に出入りしていたか否か」なんてことは、議論する必要はないでしょう。順化ケージは、放鳥する前の訓練段階で入れられる一過性の滞在場所なわけでしょうから、中に「食料」が無ければ、入り込みにくいこのケージにわざわざ入る必要性が無いから入ることは少ないに決まっているでしょう。肝心の訓練のためにトキを入れたときからテンが入り込みたくなるわけで、日常的かどうかなんて意味が無い。
 どうもピントがずれたコメントです。

 ここからわかるのは、以前も「熊剥ぎを防ぐには枝打ちしなければ良い」とか「立ち枯れた木での事故は無い」という林業専門家の主張や、「熊に襲われたら死んだふりやガススプレイというのは間違いで、ナタで対抗するしかない」という研究者の話、スズメバチ駆除で莫大な利益をあげている私立高校教師が住宅地の自宅でスズメバチを飼って批判されている話などを紹介したことがありますが、ひとくちに「専門家」と言っても特定分野だけ他の人より詳しいというだけで、関連する事項を横断して考えて実行する能力が伴うとは必ずしも言えないということですね。
 行政らはいつも「専門家」という言葉でその発言に重みを持たせ、「その発言は専門家が言っているから間違いは無いので、この計画は大丈夫です」という根拠の補強にしたがる傾向にあるように思います。しかし、そこが重大なウィークポイントになりやすいということです。

 昨日も書きましたが、もうちょっと抜本的なところに立ちかえって、人間が思いつきで行うことが許される事業かどうか、手に余すのではないかどうかまでも検討すべきなのではないでしょうか?

【追記 2010.3.19】
 検証委員会の構成員が決まりつつあることが、3月19日の産経新聞に出ていました。
トキ襲撃の検証委員が決まる 7人中5人
2010.3.19 22:43
 新潟県の佐渡トキ保護センターでトキ9羽がテンに襲われ死んだ事故で、環境省と新潟県は19日、事故検証委員会の7委員のうち「トキ」「飼育施設管理」「建築」「ヒューマンエラー」「法律」の各分野で、山岸哲・山階鳥類研究所長ら5人の委員が決まったことを明らかにした。このほか外敵動物の専門家と、佐渡市のトキ保護活動関係者を人選中。第1回会合の日程は未定だが、環境省は「なるべく早く開催したい」としている。
 これを開いたからって何がどう成果があるのかわかりません。
 今ごろこんな会を開催するとは、驚きと呆れという思いしかありませんね。

【追記 2010.4.1】
 この「検証委員」のメンバーが決まったと3月30日の毎日新聞は伝えています。
トキ:9羽襲撃死 環境省が検証委−−佐渡で来月5日 /新潟
【中略】
 同省によると、委員は石井信夫東京女子大教授▽笠井照夫県猟友会佐渡支部長▽小宮輝之上野動物園長▽斉木悦男弁護士▽新海俊一長岡造形大准教授▽山岸哲山階鳥類研究所長▽吉川栄和京大名誉教授の7人で、建築や法律、動物などの専門家で構成。

 委員会では、多数のすき間が見つかった順化ケージの設計・施工や、管理体制について問題点を検証する。4月下旬にも結果をまとめ、公表する予定という。【畠山哲郎】
 ネットで検索して見られた「第7回トキ野生復帰専門家会合」(2008年12月8日開催)の資料にあるこの委員メンバーを見ると、「山岸哲 山階鳥類研究所長(座長)」とあります。
 先の報道では、2008年に同じ構造のケージにイタチが侵入したことが、この専門家会合で報告されたものの問題視されなかったということがありました。そのときの危機感ゼロの「専門家」のお1人に、この座長さんも含まれているのではないかと思われるのですが、もしそうなら、そんな人を検証委員にも据えて、いったい何が検証できるというのでしょう?反省文でも書かせるのですかね?

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責任感の無さを何とかせにゃならんですね。
少なくても彼らは血税を使っていいこと頑張ってやった感を
国民に醸成していくために
トキの繁殖と放鳥を行う使命があったのですから、
この期に及んで自己正当化では無く、
万全のために何をどうしていくかしかないはず。
人間は所詮アホなので失敗を許したとしても、
そこに胡坐をかいて反省のふりした無反省を露見させてどうする。

テンも人ならトキも人、
人の持ちこむ外来生物の問題として
結局最後の2行のために国民的な議論を起こすまでに向けば
今回の失敗はとても良い失敗となる。

そこを盛り上げると
長い目で見た場合には
環境省へのこれまでの血税のつぎ込み方批判などにも向かわず、
環境にとっての大きな成果となって、
環境省の行動は放鳥より効果あげられるような気もする。

そこを環境省自身で切り込んでいかないかなあ…。
自浄回路のある省庁として好感度上がるはずなのに。

2010/3/18(木) 午前 0:54 りーふ

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仕方がない事故だった、天災だ、ということばで片付けて欲しくない事件ですね。明らかに「人災」であることを認識してからこそ事故防止の対策が生まれてくるんですから。

2010/3/18(木) 午前 9:47 [ プーサン ]

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SHINYAさん、まったくおっしゃるとおりですね。
失敗をした限りは、それをどう最小限の被害に抑えるかを考えて、その誠意とかを示すのに全力を出すべきなのに、どうもそれが伝わって来ないんですよね。
しかし、どうも私は、このような自然への態度は、思い上がりのように感じてしまいます。昔の人は、自然を恐れ敬い、時間をかけて、その中で生きるすべを学んで行ったものだと思うのですが、その点に関しては私たちは古の先人よりも愚かになっているような気がします。

2010/3/18(木) 午後 10:07 [ 泉ヶ岳 ]

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プーサンさん、全くそうですね。失敗をするのが愚かな人というのではなく、失敗をその後に活かせない人が愚かなんですね。
本当は、2度も侵入されるという失敗から学んでいるべきだったのですが。

2010/3/18(木) 午後 10:08 [ 泉ヶ岳 ]

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