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朝日新聞と毎日新聞は、その内容でしばしば、読者をミスリード、ときには悪質なねつ造を行う新聞社と思っているので、私はほとんど信用していない新聞社です。 さて、いつものように全国の熊に関わる話題を見ていると、日本熊森協会&朝日新聞という、何と言って良いのかわからない組み合わせを見てしまいました。 7月19日の朝日新聞、山梨地方版の記事です。 クマ目撃情報、ハイペース 人の食べ物の味覚える? 2010年7月19日 県内各地で「クマを見かけた」という目撃情報が、ツキノワグマが盛んに動き出す春先以降、例年を上回るペースで自治体や警察に寄せられている。野外キャンプなど夏のレジャーの本格化を踏まえ、捕獲用のワナを設けるなどの対策も始まった。一方、「クマは森林荒廃の被害者」とする保護団体は捕獲の動きに対して目を光らせている。 甲府市街地の北側に広がる森林公園「武田の杜(もり)」(同市羽黒町片山)は今月12日、キャンプ場やバーベキュー場がある中心施設の健康の森(195ヘクタール)の3カ所にワナを設けた。ドラム缶の中にクマの好物の蜂蜜を置き、いったんクマが入れば外に出られなくなる仕組み。キャンプ場ができた1979年以降、クマ用のワナを設置するのは初めてという。 武田の杜では、まず5月にツキノワグマが目撃され、市側は来園者や市民向けに看板や行政放送で注意を呼びかけた。今月に入ってからもクマが再び目撃されたことを受けて捕獲に動くことを決めた。 甲府市によると、市内で4月以降に寄せられたクマの情報は11件。例年なら数件どまりで、今年は明らかに多い。管理事務所の【中略・所長名】所長は「夏には大勢の人が来る健康の森にクマの親子などが居ついてしまった可能性がある。人の安全確保に努めなければならない」と話す。 園内にワナが仕掛けられた12日、日本熊森協会県支部(【中略・支部長名】支部長)のメンバーや市議が事務所を訪れ、ワナの詳細などをただした。その際、クマ対策を担当する市森林整備課の担当者は、「クマは捕獲後に捕殺せず、長野県との境界にある金峰山に放獣する」と説明した。解放するところは登山客が入らないことに加え、クリなど広葉樹が広がり、クマの生息に適している地域という。 40年間以上にわたって県有林の管理など森林に携わってきた【中略・所長名】所長は、クマ情報の増加の背景に「里山の変容がある」とみる。かつてはクマは奥山に、人は人里にと住み分けができていた。その間にまきの採取など山仕事をする人が行き来する里山が広がり、警戒心の強いクマが人里に降りてこないようにする緩衝地帯の役目を担っていた。 ところが、まきの需要がほとんどなくなっていき、山仕事も大きく減少。緩衝地帯が崩れ、クマと人の両者の住む領域が重なるようになった結果、雑食性のクマは様々な食べ物を知るようになった。杉本所長によると、武田の杜近くに霊園があり、お供え物の果物などがあることをクマが知った可能性もあるという。また、登山客やレジャー客が自然界に置いていった食べ残し、飲み残しもクマにとっては格好のエサになる。こうした要素が複合的に重なって、人が活動する地域でクマの出没が頻発するという現象を生んでいるとみられる。 クマを取り巻く生息環境の変化に危機感を持つ熊森協会県支部の【中略・支部長名】支部長は「クマの好物だったドングリ類も広葉樹から針葉樹へという林業政策で減った。クマが人間に追いつめられている事実を多くの人に知ってもらいたい」と話す。(永持裕紀)私が朝日新聞を信用できない新聞社であるという論拠は、報道機関というのは公平中立で、かつ、精度の高い情報を多面的に集約して、何かの事象を読者に分かりやすく・正確に伝えるというものだと私は思っているのですが、そのいずれも果たしていないということです。 この記事を要約すれば、「森林公園では熊が出没したためワナを設置したが、そもそも熊が出没するようになったのは戦後の林業政策の失敗で山に広葉樹が無くなるなど、熊が人間に追い詰められたり誘導されて、人里に出て来ているため」という主旨で、まるっきり一部の人や団体の主張のみに肩入れした、そして読者にとっては不利益になりかねない誤った構成になっています。 「市の管理地内にある森林公園で、例年よりもはるかに多い熊の目撃情報があった。そこで事故が起きる前に利用者の安全を確保するため、施設管理責任者として熊の捕獲を決めた」という管理者からすれば当然とも言える1つの選択が、この朝日新聞にペンにかかるとその決して間違いではない判断が、まるで「かわいそうな・やむを得ず熊をいじめる行政」という印象を読者に与えます。 疑問なのは、市民の安全や市の施設の運営に万全を期すべき職務に励むべき市議が、市民の安全に万全を期すべき手段を提示するならばともかく、ワナについて「ただした」とあります。 一体あなたの職務は、熊の保護なのですか?それとも市民の安全確保や市有施設の運営維持なのですか?どっちですか?と、あなたの言動こそ「ただしたい」ところです。 日本熊森協会山梨県支部にしても、日ごろから実践と、熊や森について最前線で調査研究活動をしているのならば、森林公園の対応に協力をして、事故が発生しないように何か具体的な提案とか、森林公園を利用する市民のために有効かつ確実な熊の回避を広報するとか、「人の安全確保」について、そういうことは何かなされたのでしょうか? 記事からは、この森林公園にとってはどうでもいい、「クマが人間に追いつめられている事実」なんてものを知ってもらいたいとありますが、そんなことよりももっと呼びかける優先順位が高いことがありゃしませんか? 私でしたら、「熊を呼ばないようにキャンプ場に食べ物を残さないとか、見かけても驚かせないようにするよう、利用者の方もご注意ください」というようなコメントを掲載し、熊と人、両方とも事故が無いようにしたいところですけど? さて、そのように登場人物の言動にも大いに疑問が生じるわけですが、この「記事」の全体で言えば、部分部分の記述を見れば、特に間違いは無いと思います。 ところが、朝日新聞の恐ろしいところは、「事実をつなげ合わせて、全体で読者をミスリードする記事を作りあげる」というところです。 この記事で言えば、 市内で4月以降に寄せられたクマの情報は11件。例年なら数件どまりで、今年は明らかに多い。
と、この施設における、昨年と今年の比較を書いています。これで、なるほど、この記事は「この森林公園での話」なのだな、と読者は思うわけです。そして、件数自体も施設側の発表ですから、事実なのでしょう。 記事の後半では ところが、まきの需要がほとんどなくなっていき、山仕事も大きく減少。緩衝地帯が崩れ、クマと人の両者の住む領域が重なるようになった結果、雑食性のクマは様々な食べ物を知るようになった。
「クマの好物だったドングリ類も広葉樹から針葉樹へという林業政策で減った。クマが人間に追いつめられている事実を多くの人に知ってもらいたい」と話す。
と、一般的な傾向を書いています。この内容も、一般的な意見であれば、間違いではありません。 しかし、「まきの需要が無くなった」だの、「林業政策」だの、「森林荒廃」だの、それっていつの話です?ここ1〜2年のことでしょうか? 数十年のスパンでみれば、なるほど、林業政策や山と人の関わりも変わったのは間違いない。でも、今年になって急に森林公園に出没が始まったことや、ワナで捕獲することの是非とは、何も関係が無いわけです。 それなのにこんな書き方では、読者にとって、「森林公園に今年になって急に出没した熊も、戦後からの林業行政の失敗や山と人との関わりによって出没した」と思い込んでしまいかねないわけです。 繰り返しますが、この森林公園に今年になって急に熊が出た原因は、記事後半にあるような理由であるという根拠はゼロです。 そして、狡猾なことに、記事はあいまいで、「森林公園に熊が出ている原因は林業政策の失敗」などとは、どこにも書いていない。あくまでも「読み手の印象」と言われかねないんですね。 よくよく自分で何も調べたり考えたりしないで手抜きの記事を書いただけなのか、途中で何を書いているのかわからなくなるような愚かな記者なのか、読者をミスリードするために狡猾に書いたのか知りませんが、やはり朝日新聞はこのような姿勢なのですね。 「熊は森林荒廃の被害者」などと言っていますが、仮にそうだとしても、人々が生活するところに熊が現れたものを放置していい理由にはならない。 お涙頂戴の、考えの無い愚かしい記事で読者を騙すのは、いい加減にしたらどうか。 そうそう、朝日新聞の記者さん。 見出しに「人の食べ物の味覚える?」として、記事の後半にも人間が不用意に食べ物の味を熊に覚えさせてしまったのが原因だと、まあそれも一般論としては間違いではないのですが、あなたが今回取りあげた「日本熊森協会」さんは、以前、別の栃木支部の方が毎日新聞の紙面で「大切なのはクマを下山させないこと。農家の人に、商品にならなくなった食べ物を譲ってもらい、山奥に運んで下山させないようにすべきだ」と、人間の食べ物を山に置いてくるということを主張していましたが? そういう、団体の中でさえも見解が統一されていないのに、不用意に読者に、そんな団体の主張の一部を紹介して、いったいどういうつもりでしょうか? ついでに言えば、日本熊森協会の本部は、昨年の「乗鞍岳・畳平バスターミナル」で、現地調査をした複数の研究機関・研究団体の調査結果に反する主張をして、それを未だに訂正も削除もしていません。 そういう団体ですよ? 私は無料で記事を読んだので良いのですが、こんなレベルな記事を購読料を払って読まされる購読者はかなわないでしょうね。
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たしかにそうです、想像と憶測で話を作られると、一般の人はそうなのかと思い間違いを覚えます、でわ無いだろうかとか、考えられるとかいいがけんな想像で記事を書かないでほしい、書くのならせめて但し書きをそえてほしい。
2010/7/21(水) 午後 9:42 [ rankiti007 ]
ran*iti*07さん、私もワナをむやみに仕掛けるとか、誤った設置とか、そういうものであれば、あれ?とは思いますし、この森林公園の設置がどういうものか詳細も伝えていないので何とも言えませんが、少なくともこの記事の構成は読者をミスリードしますよね。
私は物事を是々非々で考えて主張したいので、こういう誤解を招きかねない記事の存在というのは、誤っている人を持ち上げたり、一生懸命な人を貶めたりする結果になりかねないので、非常に不愉快です。
どこでもいいので、新聞やテレビで、事実のみを正確に客観的に報道してくれないかな、と思います。思想や知識に偏っていたりそれらが不足しているような記者や解説委員、コメンテーターなる馬の骨の解説なんて、聴く価値も無いようなものが多すぎますね。
2010/7/21(水) 午後 11:16 [ 泉ヶ岳 ]
ほぼ毎日長文記事の更新お疲れ様です。
本当に感心します。
2010/7/23(金) 午後 7:04 [ きいち ]
きいちさん、はじめまして。
私は入力が早いのでそれほど苦ではないのですが、ご覧になられる方からすれば、「もうちっと、要領よく簡潔に書け」と思われるでしょうね。
我ながら、こんなブログに1日200ヒット近くの方々にお付き合いいただくのも、ありがたい反面、申し訳無かったり、不思議な気もします。
2010/7/23(金) 午後 8:59 [ 泉ヶ岳 ]