日々是雑感

初めてお越しの方は、私のプロフィール欄をご覧ください。

全体表示

[ リスト ]

 今年はいわゆるドングリ類、特にブナの実が各地で不作ということは言われていますが、同時に熊も人里に出没することが相次ぎました。
 「人里に出没するのは、山に食べ物が無いから」とは、よく言われていることです。

 ただ、その「山に食べ物が無い」という意味に、木々の拡大戦略的あるいは気候的な要因による豊凶だけではなく、「広葉樹林を伐採し、ましてや林業放棄地が増えたため、熊が食べるものがそもそも無いのだ」という意味を含ませる人もいます。
 しかし、林業放棄地など人為的な失敗が原因で熊が出没するというのなら、それはその地域には慢性的に食料が無いということであり、木々の豊凶に関係なく毎年人里に出没するはずです。豊作の年には出没が少ないというのであれば、それはその地域の食糧の量と生息数がバランスが取れているわけであり、凶作のときに飢えるのはそれは木々の拡大戦略としては意に沿った結果であります。
 また、もし豊凶関係無く出没するようになったからといって、それが直ちに山に食べ物が無いとは限りません。単に人里の食べ物を食べることを学習や依存した個体とも考えられます。

 さて、先日も再度触れましたが、写真家の宮崎氏は「奥山は荒れていない。食べ物は豊富であり、熊も増えている」という主旨の主張をされています。
 私も単純に「奥山が荒れている」という話には懐疑的で同感です。ですが、だからと言って「増えている」というのは飛躍のし過ぎと言う感じがしています。

 むろん、氏がおっしゃるとおり熊にとってドングリばかりが食べ物では無く、昆虫や他の植物の葉や芽や実、動物の死がい、両生類や爬虫類など様々なメニューがあるという点では異論はありません。
 しかし、ドングリというのはちょうど熊の冬眠直前の秋〜晩秋にかけて自然界にある食べ物の中では栄養価が高く、しかも狭い範囲で一度に大量に摂取できるという効率性でも非常に重要な食糧です。そのためドングリの豊凶は、特に秋以降の熊の活動には特に大きな影響があり、そして引いては熊の繁殖などにも大きく関わる出来事であると考えます。
 そのため、いくら「通常期」に他の食べ物が多いと地域といえども、冬眠前の秋に多く実をつける広葉樹の森林に問題があるような場所であれば、それは熊の生息環境・頭数維持には決して無視できない話だと思います。
 なので、針葉樹の恵みが広葉樹に変わり熊の生存を支えるまでの能力があるかと言えば、どうかなあ?と思ってしまいます。

 本当に広葉樹の実の不作が熊の生存に大きく影響するか否か。広葉樹の実の不作が熊の人里への出没を増やすか否か?を確認する方法の1つは、まずは農業被害額・件数が統計的に見てどうか?ということがあると思います。

 「目撃件数」というのは以前から書いておりますようにとても参考になりそうですが、その内容をしっかりと精査しないと非常にアテにならないものになりかねないと私は思っています。
 ある年は天候が良い(悪い)とか、祝日の並びが良い(悪い)とか、テレビで何か山の特集をした(悲惨な遭難事故のニュースがあった)・・・などという要素で山にハイキングに行く人が多かった(少なかった)から目撃する人数が多く(少なく)、その結果として目撃件数が多い(少ない)のかもしれません。あるいは、マスコミ報道などでやたらと熊を報じるので、いつもは見かけても気にもしなかった人までもがちょっと見ただけでもすぐに通報するようになったのかもしれない…。といったように、目撃件数の比較の前提が危ういかもしれないと思います。

 それに比べ農業被害件数や被害額というのがどうか?という統計は、むろん、それが確かに熊か他の動物か?という見極めも重要でしょうけれど、目撃件数の推移よりは確度が高いのではないかと思います。

 また、今の時期以降〜4月ごろまでの目撃情報や被害の発生件数というのは1つの傾向をあぶりだすのではないかと思います。
 以前触れましたように、熊というのは地域にもよりますが、普通、11月ごろから4月下旬ごろまで冬眠をします。しかし、暖冬であったり、食べ物が豊富であったり、逆に冬眠するほどの体力を維持するだけの食糧が得られなかった場合などは、冬眠しないということもあります。
 と、いうことは、これから4月までの間、全国的に熊が出没するか否か。出没した場合は、その状況は例年に比べて多いのか少ないのか?という点で、秋に、その地域で熊が食べ物を十分に食べることができたか否かということにも1つの目安になると思います。
 もし、この時期に出没しなければその地域では冬眠に足る十分な食べ物があるという可能性が言えます。その食べ物が「自然界のもの」か「農作物」かはその地域の農業被害額を照らし合わせてみればよろしいのでしょう。冬季に目撃情報は無いけれども秋の農業被害額が多いという場合は、それに依存して冬眠に入った=地域には生息するだけの食べ物が無いかもしれないという見方ができますし、農業被害額が少ないのに冬季の目撃が無ければ自然界の中で十分に食べ物がある、という目安になるかもしれません。
 逆に出没した場合、秋の農業被害額が少なければそれは自然界の食べ物が少ないということかもしれませんし、農業被害額が多ければそれが逆に冬眠を阻害している要素=農作物に依存し過ぎているといえるかもしれません。
 むろん、冬季の気温や天候といった要素にも左右されると思いますが。

 そう思っていたところ、実に良い記事が。
 12月14日の中国新聞の記事です。
県北3市でクマ目撃230件 '10/12/14 

 三次、庄原、安芸高田市でツキノワグマとみられる動物の目撃や被害の件数が本年度計230件(13日時点)に上り、既に昨年度年間件数(70件)の3倍を超えたことが、3市のまとめで分かった。

【中略】

 目撃情報が大半だった昨年度と比べ、ことしは9〜11月にクリや柿、リンゴの食害が目立った。3市の担当課とも、猛暑の影響でドングリなどの木の実が山中に少なく、餌を求めて里山に現れたとみている。

 けが人の報告はないが、三次市君田町で飼い犬の耳がかまれる被害があったという。

 12月の目撃や被害件数は、庄原市での1件のみ。安芸高田市農林水産課は「冬眠に入ったのではないか」とするが、「十分な餌を食べられず、冬眠できないクマがいる可能性もある」と、引き続き注意を呼び掛ける。

 三次市農政課と庄原市農林振興課は「果樹など餌のある場所を学んだ恐れがある」として、来季の出没を警戒している。
 記事の様子だけから考えると、この地域は木々の実が豊作の年は生存を賄える食糧の量でも、凶作になると食べ物に依存する地域と言えそうです。おそらく、冬眠期間中の出没は無いのではないかと思いますが、凶作の年に人里に出没し食べ物があることを覚えてしまうと、凶作でもない年にまで出没しかねませんから、こういう年ほど対策は重要になってきます。

 昨年は12月20日過ぎに長野市で熊が目撃されましたし、1月早々にも根室市でヒグマが出没するといった出来事がありました
 その根室市は今ごろの季節、かなり冷えるころだと思いますが、12月13日の共同通信では中学校の校庭にヒグマが横切って行ったという出来事を伝えています。
中学の校庭脇をヒグマ歩く 北海道根室市
 13日午前9時50分ごろ、北海道根室市落石の市立落石中の校庭脇をヒグマが歩いているのを授業中の男性教諭(24)が目撃、根室署に通報した。ヒグマは姿が見えなくなり、生徒にけがなど被害はなかった。

 同署によると、ヒグマは体長約1メートル。校庭には高さ約1メートルの木製柵があり、その外側を道道に向かって歩き、その後はどこに行ったか分からないという。

【後略】
 根室市はこの翌日以降に急激に冷え込み積雪となりましたから、冬眠場所に向かう途中だったのかもしれません。

 多摩では、昨年同月には目撃が皆無であったのに、今年は目撃があるという記事が。
 12月13日の読売新聞の記事です。
冬眠前にエサ探し?多摩でクマ情報相次ぐ

 東京都多摩地区でツキノワグマを見たり、痕跡を見つけたりした人からの市町村への通報が11月に15件もあったことが、読売新聞立川支局の調べでわかった。

 今年あった通報の約4割を占める。前年同月は0件だった。11月下旬から12月にかけてクマは冬眠に入るとされ、今年はクマのエサとなるドングリが少なく、エサを求めて活発に動いている可能性がある。奥多摩町の民家近くの柿の木の実を食べた跡も見つかっている。同町の担当者は「地元住民だけでなく、ハイキングや登山をする人も注意してほしい」と呼びかけている。

 多摩地区では今年に入って、今月9日現在、クマの目撃や出没した痕跡の通報は38件に上った。場所は、山間地を抱える奥多摩町、檜原村、青梅市、あきる野市の4自治体で、昨年の奥多摩町、檜原村だけの12件から3倍以上に増えた。

 都多摩環境事務所(立川市)によると、目撃情報は例年、山間地が多い奥多摩町や檜原村がほとんどで、青梅市やあきる野市は珍しい。担当者は「クマが人里に下りてきていることを示している」と指摘する。

 奥多摩町氷川の集落で、柿の実をクマが食べた跡が見つかったのは11月30日。納屋の中にあった干し柿を食べようとして、納屋の窓をたたいた痕跡もあったという。同月の町内での目撃件数は8件を数えた。

 青梅市では10月、周囲に小学校や人家があり、“山奥”とは言えない成木地区付近で、クマが栗の木に登って実を食べていた跡があった。市職員は「こんなところまで下りてくるなんて」と驚く。11月も2件の目撃情報が寄せられた。

 あきる野市では今月5日、養沢地区の山で散策していた男性がクマに出くわした。男性は逃げる際に転倒し軽いけがをしただけで済んだ。

【後略】
 このケースでは、ちょっとこの期に及んでまだ食料が足りておらず、さまよっている印象です。もしかしたら、12月下旬にもまた、目撃や痕跡が続くかもしれません。

 冬の時期に心配なのは、熊が冬眠することは有名なことですので、ハイキングの人などが熊への注意が薄れるという懸念です。普段は熊除け鈴などを身につけていてもこの季節はつけず、一方熊も食餌を必死になっていれば人の接近に気づくのも遅れるかもしれません。
 晩秋から初冬の熊の出没情報というのも、いろいろなことを推測し、用心する上では重要ではないでしょうか。

閉じる コメント(2)

顔アイコン

私、山歩き歴35年程になるのですが、確かにシカを含め、野生動物を見る確率が高くなっているような気がします。東京在住なので、地方の方とは感じ方は違うとは思いますが、25年程前までは関東、信州界隈の山で野生動物と出会うのは非常に稀でした(丹沢のシカぐらい?)。でもここ20年くらいは結構目撃している気がします。北海道のキタキツネなんかも30年前より見かけるようになった気もします。
当然昔の方が自然が豊かな気がしているのですが、高度成長期の乱開発の影響で数が少なかったのか、豊だからこそ懐が深く、目にする事が無かったのかはわかりません。
特にシカの話題はある時期から結構聞きますし、自分自身の目撃や、山に行った時の現地の方の話(お土産屋さんのおじさんがシカ、猿が悪さして困る)など、リアリティーを感じています。
ただし、自分の山の歩き方の変化や世間の情報量の変化等があると思うので、あくまでも“印象”です。科学的なカウントではありません。
ちなみに上記の目撃経験値としてはシカ、カモシカ、キタキツネ、猿くらいですが・・・。
そいうえば3年前、東京都内でハクビシン見てびっくりしましたが・・・(^

2010/12/17(金) 午後 8:23 [ s.stone ]

顔アイコン

さんぽさん、先だってのカモシカと熊の記事にも書きましたように、カモシカの場合も捕獲していても微増しているような地域もあります。シカやイノシシの繁殖力はすさまじいものがある反面、それに歯止めをかける狩猟圧は年々低下していますので、このままでは今後は増える一方なのは間違いないと思います。
ハクビシンやアライグマは都市生活に適応していて、近年、都市部でも空き家や庭木の果樹の放棄が増加していることもあって、たくましく生活して増えているようです。
生物の増加は、環境の変化にうまく対応したものだけが許されるわけですが、今の都市部やその近郊の環境や状況は、それらの動物は見事に適応させているんでしょうね。適応できないのが、メダカやホタルとかなんでしょうが…。

2010/12/17(金) 午後 9:41 [ 泉ヶ岳 ]

開く トラックバック(1)


.
泉ヶ岳
泉ヶ岳
男性 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
検索 検索

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
11/30まで5周年記念キャンペーン中!
Amazonギフト券1000円分当たる!
話題の新商品が今だけもらえる!
ジュレームアミノ シュープリーム
プレゼントキャンペーン

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事