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先日、長野県在住の写真家・宮崎学氏がその著書「ツキノワグマ」(偕成社)の中で「ニホンカモシカなどが増えているのに、ツキノワグマだけ減っているとは思えない」という主旨を書かれている点について、「そもそも長野県内におけるニホンカモシカとツキノワグマの推定生息数に大きく差がある上、それに占める捕獲率もかなり違っている=狩猟圧が違うのだから、無理がある論理では?」と感想を書きましたが、やはりと言うべきか、今年の長野県でもツキノワグマの補殺数が相当な頭数になっていることがわかりました。 12月18日付けの産経ニュースです。 クマ出没 昨年の2.6倍、2569件 長野 2010.12.18 01:50 県内で11月末現在までに目撃されたツキノワグマの出没件数は2569件で、前年度同期の2・6倍にも上ることが、県林務部のまとめで分かった。集落内への出没は1587件に達し、負傷者数も8人増の14人だった。 地方事務所別でもっとも出没が多かったのは木曽管内で626件。続いて北安曇426件、松本405件、長野355件、下伊那255件などとなっている。 捕殺処分されたのは354頭で、学習放獣は68頭。県林務部は「ツキノワグマは縄張りを持たずに餌を探し回ることから、廃棄果実や生活ごみ、防護柵(さく)のない農地の作物などに引きつけられて出没を繰り返す」として、集落周辺に誘引している状況を改善するとともに捕獲などの総合的な被害対策を進めたいとしている。目撃件数は単純に鵜呑みはできないということは先日も書いたところです。 負傷者数が前年度の倍以上・8人も増えているという点でそれだけ人と熊の接触する機会が増えたということは言えますが、1つ1つの状況を正確に調査して、どういう事故例が増えているかを分析することで、最新の事故防止策が構築できます。 今年補殺されたのは354頭・学習放獣が68頭=合計422頭(延べ?)ということですが、先日見た長野県の資料では平成18年度は捕獲頭数は553頭とありましたので、計画をはるかに上回る捕獲数ではありますが、同じ大量出没の年同士とはいえ、捕獲頭数そのものは以前より大きく減っていることがわかります。 これは、単純に生息環境が改善したとか人里周囲の誘引物の撤去が進んだ結果だというのならば結構な話なのですが、学習や警戒でワナなどにかからなくなって捕獲が進まなくなった結果かもしれませんし、そもそも生息頭数が減った結果かもしれません。保護計画の中で捕獲を厳しく自粛した結果かもしれません。これも減った要因の分析が必要でしょうね。 しかし、少なくとも「個体数が増えている」と読み取れる要素は私はここからは1つも感じられません。 ある動物が、一定地域の中でどれくらいの頭数になってしまえば、その他の要因が無くとも絶滅に向かうようになるのか?あるいはわずかな要因でも絶滅につながるのか?そしてその地域での正確な生息数はどれくらいなのか?と言ったことを把握するのが急務でしょう。 そういう責任を負う立場でもなく、半ば遊びの印象だけで「増えている」と強弁されたところで全く説得力はありません。 しかし、残念ながら、今までも、今も、多くの自治体で行われている生息数調査は、このような目撃や半ば印象に近いものでの推定値であることが多いというのが現状です。 ******************************* 続いて、冬眠の時期にも熊に注意&注目という話を先日もしたところでした。 12月17日の日刊スポーツに、恐れていた事故が起きてしまった記事が出ていました。 クマに追い掛けられた!男性重傷 17日午後3時ごろ、秋田市の無職利部金男さん(72)方にクマが現れ、付近の除雪作業をしていた利部さんを襲った。利部さんは頭や顔を引っかかれ重傷とみられる。 秋田東署によると、クマは体長約1メートルで、クマを見た利部さんが自宅に逃げようとしたところ、後方から追い掛けてきたという。 現場はJR秋田駅から東に約9キロの山あいに集落が点在する地域。(共同) [2010年12月17日20時58分]頭や顔を引っかかれて重傷…というのは、かなり深刻です。 熊による人身事故の恐ろしいところは、鋭い5本の長い爪で、人間を凌駕する圧倒的な力で引っ掛かれるということです。このような事故の報道に触れた際、たとえ命を失うことが無かったとしても、「それは不幸中の幸いでした」などとも安易に言えないくらい、悲惨なケガになってしまうただ不幸なだけということも少なくないのです。いかに鋭いと言っても刃物ではありませんので、傷跡が広く・汚く裂かれてしまうために、傷跡も治りづらいものになります。特に頭や顔という場合は、申しづらいことですが、目鼻や耳などをえぐられたり、顔の原型をとどめないほど破壊されてしまうということもあります。それを快復させようとするには、形成外科手術を繰り返しても困難ですし、肉体的な被害だけではなく、精神的な被害もはかり知れないのです。 むろん、熊の爪や力は積極的な攻撃用というよりも食餌するためなどの活動用と言えますが、熊を過剰に弁護・保護し、時に被害者を安易に悪く言うような人がたまにいるのは信じられないことですが、そういう事実を少しは知ると良いでしょう。あるいは、熊の対策をせずに山に入ったりする人も学ぶと良いでしょう。へらず口など叩けないと思いますが。 熊は逃げる後を追うという習性が知られていますが、この記事から状況を拝見すると、それがそのまま当てはまりそうな感じです。もしも、被害者の方が落ち着いて、静かに下がるなどができるようであれば、このような悲惨な結果は避けられたかもしれないと思うと、悲惨なだけに、悔やまれます。 まさか被害者の方も、除雪作業が必要なほどの状況で、自宅近くに熊がいるなどとは想像の範囲外でしたでしょうから、突如現れた熊に慌てて逃げても、もちろん何の落ち度があるわけではありません。 しかし、行政や研究者、保護団体などは、先に書きましたように冬季における出没も今後は環境などの変化で変わってくる可能性もあることですから、その年の環境などによっては冬季にも出没する恐れがあることや、目撃情報が多く寄せられる地域での対処方法の広報などを住民の方々や観光パンフレットなどに掲載して啓発していくべきだと思います。 被害者を出さないということは熊の適正保護の業務を推進させることができますし、何より大事な住民の生命や健康、財産を守ることは行政などの最優先の義務ですから。 ですが、以前も書きましたとおり、行政側も人員や予算の削減で、細やかな業務遂行は困難な時代です。本当にそういう対策をも必要だと住民が感じるのならば、そういう人員や予算は減らさないように求めると言う方が、私は有効な被害防止と頭数保護の両立の第一歩だと思うのですが。 単に大人数でおしかけたり、長時間居座ったり、何度も電話をかけ続けて「クマを殺すな」などというのは、保護のためには何の役にも立ちません。「そういう予算と専門の人員をぜひ、つけて欲しい」と強く働きかける活動をした方がよほど有効だと思うのですがね。 【追記 2010.12.20】
12月20日の日テレNEWS24で、秋田市の重傷事故の現場近くで、その翌日にも小さめな熊が目撃されたと報じられていました。 冬眠できないクマ出没か(秋田県) 県内では、今月に入ってクマの目撃情報が相次いでいます。エサが不足して冬眠できないクマが出没しているとみられ、県では注意を呼びかけています。県警察本部のまとめによりますと、今月に入ってから県内では秋田市と北秋田市でクマが5件目撃されています。 これは12月としては、過去10年間で最も多くなっています。秋田市の太平地区では、今月17日に72歳の男性が自宅近くで除雪作業をしていたところ、体長およそ1メートルのクマに頭や顔を引っかかれ大けがをしています。また、同じ太平地区ではその翌日にも体長およそ50センチのクマが目撃されています。 県自然保護課では「通常は冬眠している時期だが、エサが不足して十分な栄養をとることができないのが原因ではないか」と分析しています。 [12/20 12:13 秋田放送]目撃情報が多いということは、何度も申しますとおり直ちに危機かと言えばうかつな判断はできません。また、翌日目撃されたという熊も50cmというかなり小さいことから、黒っぽい野良犬とか、他の野生動物と見間違えているかもしれませんから、やはり何とも言えませんね。 |
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