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私の好きな小説の1つシャーロック・ホームズの中で、ホームズはこんなことをワトソンに語っています。 【前略】
これは犯罪事件に限らず、様々な事故でも言えることです。だいたい犯罪にはきわめて強い類似性があるから、千の犯罪を詳しく知っていれば、千一番目のものが解決できなかったら不思議なくらいなものだ。【後略】 (コナン・ドイル 延原謙訳「緋色の研究 −シャーロック・ホームズシリーズ−」新潮文庫) 私は施設管理を担当していますから、例えば他の都道府県のことでもどこか他の施設なんかで「エレベーター事故があった」という場合には、自分の施設のエレベーターはその原因での事故は起こりえないかどうかを確認するといった具合に当然の対応をします。ホームズは事後の解決に役立てていますが、私は事前の防止に役立てています。 ですので、学校なんかで一度どこかで発生した事故とほぼ同じ構図で児童生徒がまた被害者になると聞くと、そんな学校の校長や教頭はクビにすべきだといつも思ったりします。 交通事故でも施設事故でも、むろん、事故を起こそうとして起こしたわけではなく、そして少なからず被害が発生しているのですから、せめてその被害者の嘆きや苦労などを次の事故防止のために役立てなければその被害者はまるで報われないとも思います。 そんなわけで、私はここで、特に熊にかかる事故事例などを紹介し、ごくわずかでも事故防止になったり、事故発生時における解決のヒントになりえたらうれしいと思い書いておるわけです。 さて、1月9日のIBC岩手放送のニュースエコーが報じた内容です。 雪の山中でクマに襲われ男性大けが (2011年01月09日 11:48 更新) きのう午後遠野市の山林で猟をしていた男性がクマに襲われ大怪我をしました。 クマに襲われたのは遠野市宮守町の会社員吉田雄悦さん60歳です。吉田さんはきのうひとりで近くの山に出かけ、キジ猟をしていたとみられます。吉田さんはクマに頭や顔を噛まれたり引っかかれたりして大怪我をしましたが、自力で帰宅し病院で手当てを受けています。命に別条はないということです。 猟友会によりますと雪深いこの時期にクマに襲われるのは珍しいといういうことですが、現場は国道396号線沿いの小峠トンネル付近で、車の往来が頻繁な場所で冬眠するクマは眠りが浅いケースもあるとして注意をと呼びかけています。頭や顔に大ケガということですから、後々まで後遺症などがありうるかもしれません。ですから、このような事故を報道する際、「命に別条が無い」などという表現の仕方は、親族や知人にとってはひと安心する大事な部分ではありますが、同時に、その他大勢のうちこういう言葉の響きから「被害者が亡くなったわけでもないのに射殺しようというのか!」などという、想像力も思いやりも無い人間が苦情を言い出す一因にもなりかねない部分でもあり、慎重に表現・報道していただきたいものです。 熊は冬眠すると言っても完全に動かないというわけでもなく、刺激を受けるとすぐに活動したりします。昔は「穴熊猟」などといって、越冬穴にいる熊を巧みに狩る猟があったそうですが、対応を誤ると越冬穴から飛び出して逃げられたり逆襲されたということです。 また、冬季の林業作業中にも加害事故は起きます。 先日、冬眠の時期でもその年の気候や条件によって冬眠しない熊がいるかもしれず、また、冬は山に入る人でも熊への対策をしないということもあるので注意が必要と書いたところです。 また、ちょうど1年ほど前にも長野県玉滝村において、冬季といっても記録的な暖かさの日が関係しているのか、除伐作業中の作業員の方がその近くで冬眠していたと思われる熊に襲われ負傷したという事故記事を紹介し、人里近くに平気で出没する熊が多いようである以上、越冬も以前より近くで行う場合もありうるのではないかと書いたところです。 しかし、環境条件などで冬眠しない熊ではなく、冬眠している熊が越冬穴から飛び出て人を襲うという場合は、私が聞いたことがある範囲は、穴にこもった熊を狩ろうとしての逆襲のほか、悲劇的なことに偶然そうとは知らず越冬穴の近くで除伐作業などをしていてのことというケースです。 これはつまり、たまたま冬山ハイキングなどで通りかかった程度では熊はおそらくは飛び出てくることはせず、穴に継続的に刺激を与えた場合や、近くで音を立て続けた場合など、まさに「追い詰められた」と熊が感じとるような場合に限るのではないかと思います。 今回の事故は「キジ猟」中のことということですが、これが銃砲で音を立てていたのか、あるいはワナを仕掛けようと現場に長時間留まってしまったのか、その詳細を今後の事故防止のために知りたいところです。 今回の現場は、自動車の往来の激しい場所近くとのことです。事故の報道がこれだけで感想を言うのは口はばったいですが、1つはそういう山奥とは言えない場所であり冬であることから、被害者の方も当然、夏などにはしているであろう熊対策…というか熊への注意は十分にはしていなかったかもしれません。もっとも、例え熊鈴などを身につけていたところで、越冬穴に入っている熊がそれに気づいても、そこから逃げて離れて行ってくれるわけでもありませんから、その点では、夏などよりも熊が進退極まりやすく、危険とも言えます。 報道では、「往来が激しいので眠りが浅いのではないか」と書かれていますが、私はそれは逆であり、冬になって開通したり通行量が多くなる道路ではない以上、熊はそういう場所だとわかって越冬穴としたはずですから、そういう人の出す喧騒には慣れた熊であり、そうではない熊よりも人を恐れないという見方もできるのではないか?と思います。 実際に熊を調査するということは大変な労力ですが、起きてしまった事故は詳細に状況を調べ、その情報を共有し、それを広く知らせることで、次の事故を軽減できるかもしれません。また、そうすることで、大ケガをしてしまった被害者の方も、ほんのわずかでも、ご自身のケガが事故防止のために役立っているという救いになりうるかもしれません。 【追記 2011.1.10】 コメント欄にございますとおり、"ね" 様より「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律施行規則」第10条第3項8号にある禁止される猟法につき、今回のキジ猟は禁止されているワナではなく、銃ではないかというご見解をいただきました。 すみません、正直、私はこのような細かな条文はまるで知りませんでした。条文を見たところ、まさにそのとおりだと思います。 "ね" 様、今回もすばらしいご教示、どうもありがとうございました。 最近、私のような拙い知識や経験に対し、ご教示いただいたり、情報を提供してくださる方がいらしていただいて、本当に感謝申し上げます。
「それは違うと思う」「これはこういうことだよ」というご意見、これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。 |
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こんにちは。
クマの出没が区域だけではなく、時期も拡大しているのは人とクマとの住分けの新たな課題となりそうですね。
御存知かもしれませんが、鳥獣保護法において、鳥類を捕獲するためにわなを使用する猟法は禁止猟法(施行規則第10条第3項8号参照)として、狩猟では禁止されています。
なので、今回の出猟がキジ猟であれば銃猟だと思われます。
私の経験上、網も、わなも、散弾銃も、空気銃も何でも使う狩猟者さんは少ないですね。四つ足専門、キジ・ヤマドリ専門、ヒヨドリ・ハト専門、箱わな専門、くくりわな専門、北海道でのエゾジカのライフル猟専門みたいな感じで分野分けされてます。
もちろん、どんな猟具でも扱える有害駆除向き(笑)の方もいらっしゃいますが。
では、"ね"
2011/1/10(月) 午後 1:19 [ "ね" ]
"ね"さん、今回もご教示いただきまして、本当にありがとうございました。
「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律施行規則」を確認してみました。実は私はこの禁止されている猟法の細かな条文がここにあるとは知りませんでしたので、今回も大変勉強になりました。
それにしても、非常にお詳しいですね。ハンターさんやそれに関わるような専門の行政の方でしょうか?
そのような、様々なお立場やお住まいの方からお教えをいただけるおかげで、この拙いブログはとても助かります。
今回も本当にありがとうございました。
2011/1/10(月) 午後 10:43 [ 泉ヶ岳 ]
遠野と言ったら、四方を山に囲まれたところなんですよね。近くに早池峰山もあるし、その周辺の山といったら、夏場は、溢れんばかりの草ぼうぼうで、いまですら、地元の茅葺き屋根に、可愛い松の木が生えているくらいですから。その様なところに、無理やり道や畑を開いた感じで、自動車の往来が激しいと言っても、冬場の国道ほどのものではないです。
それにしても、いくら自己責任だと思い込んでいることが、実は、自分だけのことではないのだとしたら、やっぱり考えますよね。シャーロックホームズの「きわめて強い類似性」から跳ね上がって、正しくものを見極めたいことですね。非常によく伝わりました、とさ。 どんとはれ。
2011/1/11(火) 午後 6:38 [ とーまつ ]
私は有害鳥獣駆除を担っていただくハンターさんには感謝と尊敬をしていますが、同時に、他の命を奪うことは、自分の身も危うくするリスクがついてまわるものだとも思っています。
しかし、だからこそ、行政は安易にボランティア扱いするのではなく、きちんと対価や身分保障をして、外部からの苦情なども前面に出て…という、それらの方と労苦をわかちあう覚悟が必要・迫られているとも思いますね。
人家近くに出没する熊が、人家近く・喧騒の中で越冬するようになってきたか否か、今後も注目ですね。
2011/1/12(水) 午前 0:07 [ 泉ヶ岳 ]