日々是雑感

初めてお越しの方は、私のプロフィール欄をご覧ください。

全体表示

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全182ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 前のページ | 次のページ ]

 先日書きましたように、有害鳥獣駆除において被害地域の住民が行政らの対応に不信や不満を持ったり、狩猟規制が厳しすぎたりした場合、その被害住民の方々らが個別に密猟により対処=駆除をし始めかねない懸念が生じます。それは頭数調査や管理をしていく上で、重大な障害になってしまいます。


 12月20日の北海道新聞の記事です。
無許可クマわなに有罪 釧路簡裁 「緊急避難」主張認めず(12/20 23:24)

【釧路】飼育する牛をヒグマから守るため、許可を得ずに自分の牧場に箱わなを仕掛けたとして、鳥獣保護法違反の罪に問われた釧路管内浜中町の牧畜業の男性被告(73)に対する判決公判が20日、釧路簡裁(青木忠儀(ただよし)裁判官)で開かれた。青木裁判官は「犯行は独善的で、箱わなの免許制度を無視しており、酌量の余地はない」として、求刑通り罰金30万円を言い渡した。 

 男性側は事実関係を認めた上で「家族や牛を守るためにやむを得ず行ったもので、刑法上の緊急避難が成立する。罰を加えるほどの違法性はない」として無罪を主張していた。 

 判決理由で、青木裁判官は「箱わなの状況を見回るなど、危険防止策を講じておらず、違法性が明らか」と指摘。「被告がヒグマ対策を考えてから、わなを設置するまで3カ月あり、差し迫った危険があったとは言えない。わなを仕掛けるための試験を受ける機会もあった」とした。 

 判決によると、男性は牛130頭、馬13頭を飼育。毎年1頭くらいの牛がいなくなるのをヒグマの仕業と思い、2007年10月に箱わなを購入、道知事に無許可で牧場に設置、09年11月に1頭を捕獲した。男性は今年4月、同法違反の罪で略式起訴され、釧路簡裁から罰金30万円の略式命令を受けたが、命令を不服として、正式裁判を請求した。
 また、12月21日の毎日新聞には上記記事の補足的な部分も掲載されています。
鳥獣保護法違反:無許可クマ捕獲、罰金30万円判決−−釧路簡裁 /北海道

【中略】

 公判で被告側は「わなの設置はクマの危険に対する緊急避難。自分の敷地内でのわな設置が違法との認識もなかった」と無罪を主張したが、青木忠儀裁判官は(1)町などに被害を申告すれば、駆除も可能だった(2)昨年6月にわな猟免許の申請をしようとしており、違法性の認識はあった−−などとして、主張をすべて退けた。

 判決後、男性の弁護人は「行政側に適正な対応を取る態勢がないから自衛せざるを得ないのであり、判決には事実誤認がある」と批判。今後、控訴するかどうか検討する。【山田泰雄】
 求刑どおりの判決です。被告が控訴するかどうか(確定判決か否か)は今後に持ち越しかもしれませんが、やはり、と言うべきか、被告側の主張は全面的に認められなかったわけですね。判決理由を見れば、例え控訴・上告しようとも、判決が覆るのは難しい印象を持ちます。

 切迫した状況では無いほどの一定の期間設置されていたことが「緊急避難」に該当せず、その他の危険防止策や設置のための正式な努力もしようとしていなかったことや、一度は免許を取得しようとしたことから違法性の認識もあったということが認定されたために、「例え緊急避難ではなくとも、罰を課すべきほどでもない=悪質ではない」というのも認められなかったのでしょう。

 これは、法的には妥当だと思います。先にも書きましたとおり、もしもこれが是とされたならば、全国で似たようなことを始める人が出てしまうでしょう。

 しかし一方で、もし、狩猟免許や許可を取得するための期間内に多くの被害が予見されるような場合とか、全く違法だと言う認識も無かったとか、捕獲できた場合の安全策を考えていたとか、判決内容において違法性が高いとされた点がもう少し違えば、判決内容も当然変わりうるかもしれません。

 その意味では判決が、深刻な被害が発生した際の行政らの初期対応の迅速さも暗に求めているような判決でもあり、動物愛護団体などからのプレッシャーと、司法と被害者から行政の対応の迅速さ求められるとも言えるかもしれません。

【追記 2010.12.23】
 bratewurst100mさんから「初公判 〜 自力救済?後日談 その2 〜 」のコメント欄にいただいた内容によりますと、「この被告の義理の弟さんが猟友会に所属しており、熊駆除作業中に襲われて命を落とされていたらしいことから、猟友会に頼める状況であったか疑問である」ということと、「北海道という広大な場所で、1日も牧場を休めないという条件下では、狩猟免許などの取得しに行くのも困難ではないか?」という点でご意見をいただきました。
 ごもっともなご意見・ご視点だと思います。
 裁判の中でそのような点が考慮されたかどうかはわかりませんが、もし被告が控訴されるのであれば、そのような事実関係をも加えての主張を展開されると、違法性が除外される見込みもありうるかもしれません。

 1つ言えるのは、以前から書いておりますが、私はこのような「密猟」は、違法行為であるかもしれないけれども、心情的に理解できないわけではないということです。
 事情を知らないような、農家の苦労を思いやれない人が、安易に非難したりできるような単純なものではないと思います。

 bratewurst100mさん、貴重なご意見をどうもありがとうございました。とても参考になりました。

【追記 2010.12.24】
 bratewurst100mさんからお知らせいただいた、死亡事故と思われる記事が、2006年10月15日付けの釧路新聞に出ていました。
ヒグマに襲われ2人死傷

 14日午後4時37分ごろ、浜中町茶内西18の浜中町農協乳牛育成牧場付近で、同町茶内、酪農業伊東博さん(62)と同町居住の酪農業森一郎さん(59)ががヒグマに襲われ、伊東さんが死亡、森さんは頭や手足を骨折するなどの重傷を負った。
 厚岸署によると、伊東さんは同日早朝、伊東さん所有の牧場敷地内で熊の足跡を発見し、猟友会のハンターとともに駆除に出掛けていたところをヒグマに襲われた。その後連絡を受けた猟友会ハンター4人が現場に向かい、ヒグマ1頭を射殺したが、この際ハンターの森さんが負傷した。森さんは釧路市内の病院で治療を受けている。釧路管内でヒグマよる死亡事故は今年初めて。 

開く トラックバック(1)

 原因というか要因というべきか誘因というべきか。 

 地味な視点かもしれませんが、このような国土の広いとは言えない日本で、縦横無人に道路が通り、自動車保有台数が多く、それを使うことが前提のインフラ整備等の国でもあり、そして近年、シカやイノシシのような大型哺乳類が増加している・人里に多く出没して農業被害額が増加しているという事実を聞くたびに、私はそのような動物と自動車との交通事故を、新たな時代の交通事故として危機感を持っています。

 高速道路ではその速度の速さから重大な結果を招くでしょうし、市街地近郊の場合は多重事故や歩行者を巻き込む事故になるかもしれません。

 私がこう思うのは、以前、北海道に初めてツーリングに出かけた際、夜間にも早朝にもエゾシカがすぐ路肩にいて、バイクや自動車の走行音に慣れており驚き逃げるというようなことが無かったのを見て以降です。もし衝突されたならば自動車でもかなりの衝撃がドライバーに加わりますが、バイクではライダーにとっては致命的になるでしょう。衝突に至らないまでも、もし急に飛び出た場合には、自動車は他車を巻き込むかもしれませんし、バイクの場合は自損事故になる可能性もあり、身近な危険を感じたからでもあります。
イメージ 1
【2005年10月8日午前5時59分 知床半島で撮影。道路端から10mほど先】

 また、熊やイノシシの場合は体重も重くなりますから、こうなると幸か不幸か、事故に遭っても小型動物よりは死にづらく、そのために「手負い」となった場合は間接的な事故を拡大させる可能性も十分にあります。

 そのようなことから、これまで何度か動物と自動車などの交通事故の記事を紹介していますが、今日もまた、実に残念な事故が起きてしまいました。
 12月20日の毎日新聞の記事です。
イノシシ:バイク便の男性が衝突し転倒、車にひかれ死亡

 20日午前5時10分ごろ、広島県尾道市因島重井町の瀬戸内しまなみ海道(西瀬戸自動車道)上り線で、大阪市旭区中宮4、バイク便運転手、入江伸幸さん(35)のオートバイが、路上に横たわっていたイノシシに衝突し、転倒。後ろから来た東広島市の会社員男性(28)運転の軽乗用車にひかれ、入江さんはまもなく死亡が確認された。県警高速隊が詳しい死因を調べている。

 同隊によると、現場は因島北インターチェンジの南約1キロ。事故と同時刻ごろ、現場付近でイノシシをはねたと、愛媛県東温市の会社員男性(35)が申し出ていた。入江さんは愛媛県内の配達先から、大阪に戻る途中。事故で、因島北IC−因島南IC間は一時、上下線とも通行止めになった。

 瀬戸内しまなみ海道では、イノシシと車の衝突事故が頻発している。【北浦静香】
 むろん、運転者が前方を十分に注意するというのは基本ではあると思いますが、Yahoo!ピンポイント天気を見ますと、12月20日の広島県尾道の日の出時間は午前7時9分ということで、事故時間の午前5時では高速道路上の照明があるといえども暗かったでしょう。しかもこの日、尾道では午前3時ころは晴れでしたが午前6時の段階では小雨と記録されていますので、バイクにとってはただでさえ良くない条件下であったことがわかります。
 
 イノシシをはねた男性がそれを通報するということは立派(当たり前)ですが、では、はねたイノシシを路上に残したまま、回避措置は何か取ったのだろうか?ということが不明です。
 路上、まして高速道路上に何かしらの大きな重量物を放置しておけば、二次被害が発生するのはドライバーとしては常識なわけですが、発煙筒や三角停止板の設置など、後続車に何か注意を促すことはしたのかどうか。

 以前紹介した事故では、路上に残されたままのシカの死がいを回避しようとしたのが原因の事故というものがありましたが、撤去は難しくとも、このような事故が発生した場合は、自身の安全を確保しながら後続車に事故を知らせる行動もすべきでしょう。

 私の経験上、三角停止板を常備していないような車もしばしば見かけるのですが、発煙筒は車検時には点検項目のはずですから、どのドライバーでもできる回避手段なのです。
 交通事故を起こした場合の基本的な対応は講習などで受ける機会が多くなってきましたが、今後は動物との事故注意や回避方法、事故発生時の初期対応なども少し、免許取得時や更新時の講習の際や、普段からマスコミなどは広く呼びかけるようにすべきではないかと思います。

 と、同時に、野生動物による農作物被害はどこかピンと来ない人でも、交通事故でしたら少しは身近でしょう。
 その点では、やはりある程度の頭数管理(駆除)や、そのための頭数調査というものの必要性というのがお分かりいただけるのではないでしょうか?

 また、行政や道路管理者などにあっては、高速道路のような高速移動をする道路上での動物進入防止には、これまでどおり全力で工夫していただければ、と思います。

開く トラックバック(1)

 以前から何度か、熊を過剰に保護しようとするごく一部の人や団体の常軌を逸した姿勢を批判したことがありますが、こんな記事がありました。

 まずは11月11日の朝日新聞の記事から。
クマ射殺、先走る是非論 抗議相次ぎ地元困惑
2010年11月11日

【前略】

「なぜ射殺したのか。クマに非はない」「福祉施設なのに、動物に優しくできない人が人に優しくできるのか」 

 10月に女性看護師がクマに襲われた勝山市のデイケア施設に届いた手紙だ。クマは一晩施設内にとどまり、その後市の依頼を受けた地元猟友会員によって射殺された。九州から出された手紙の主は匿名。文字や書き方から中高年の女性と見られた。 

 施設の池端定男デイケア長は「いろんな意見があるのはわかる。でも我々が射殺したわけでもなく、なぜこんな手紙が来たのか」と複雑な表情を見せた。 

 勝山市にも、メールと市のホームページへの書き込みだけで抗議が約50件。電話も数多くあったという。麻酔銃を使うべきだという対処法への批判から、「女性が不用心だったのが悪い」といった心ない言葉もあった。 

 大野市でも昨年、市中心部の公園でクマを射殺した際、公園なのに山中で殺したと勘違いして批判するメールが動物愛護団体などから届いた。両市とも多くが東京や大阪などといった都市部から発信されていたという。 

 ただクマと隣り合わせに住む地元では、やむを得ない手段として射殺を容認する声が多い。勝山市の男性(77)は自宅近くでよくクマを見るといい、「解決策として射殺はやむを得ないのでは」。同市の農業の男性(65)も「クマを見るのは日常茶飯事。家の近くでびっくりするし、射殺でも解決出来る方がよい」と理解を示す。 

【中略】

 麻酔銃を使えばよいという意見も多いが、県鳥獣害対策室によると麻酔銃の所持・使用は登録制で、現在県自然保護センター(大野市)の職員しか使えない。時間をあけて複数回撃たないと麻酔は効かず、人に危害が及ぶ緊急時には射殺を選ぶしかない。勝山市の親泊安次農林部長は「殺したくて殺しているわけでは決してない。やむを得ない場合だけだ」と話した。 

【後略】
 こういう、見当違いな抗議を感情的に・考えも無しに送りつけるような愚かで人間性のカケラも無いような人間にだけは落ちたくないものです。

 記事にもあり、私も以前書きましたが、麻酔銃なんてものは映画やマンガではないのですから、当たった瞬間にグウグウ眠りだすような簡単なものでも、ましてはその命中させるのも簡単なものではないのです。

 このような的外れで常軌を逸した批判・圧力は、冷静で裏付けのある慎重意見にまで同類と誤解されてしまったり、調査をする際にも関係者を警戒・用心させてしまってそれが進まなかったりと、害毒でしかありません。

 11月22日の山梨日日新聞にも、そんな抗議や要請などへの対応に苦慮する自治体職員の苦悩が触れられています。
クマ 処分か放獣か、市町村苦悩 
「市民の安全」と「保護」で板挟み 
県、捕獲時の指針検討   
 
 保護か殺処分か−。山梨県内でクマの出没が相次ぐ中、市町村がクマ捕獲時の対応に苦慮している。現場に駆け付けた職員の判断に任されているのが現状で、「市民の安全」を優先して殺処分されるケースが多い。ただクマを処分すると、役所に苦情が寄せられることがあるという。県は市町村の要望を受け、クマが出没した際や捕獲後の対応などに関するガイドラインの策定を検討している。

 「クマを殺処分したら、電話やメールの苦情が殺到した」。今月、県庁で開かれたツキノワグマの保護管理検討会で、市町村代表の委員はこう漏らした。別の委員からも「市町村がその都度判断するのは難しい」と、対応に頭を悩ませている現状が報告された。

【後略】
 これも以前から何度か書いていますが、多くの地方自治体では、有害鳥獣を担当する職員は専門の研究をしたわけでも勉強したわけでもない、普通の職員です。法律や条例などに照らし合わせて、個別の案件を許可・対応するというのが実情。
 そのような体制を改善するのが必要なのに、ただ圧力のように苦情を殺到させたり、あるいは「捕獲しないように」と要望書を出したところで、何の役にも立ちません。
 せめて抗議や要請をするのであれば、「広域的に対応する専門官の設置をお願いしたい」といったような現状を根本から変えて行こうとする働きかけや、その専門官への積極的なフォローやアドバイス、情報提供や寄付をすることの方が重要です。

 むしろ、そのような「圧力」は、以前から懸念しているとおり、自治体職員らの初期対応を鈍らせ、その結果重大な人身事故などを引き起こす要因になりかねません。
 そんな場合でも、圧力をかけた人や団体は、決して自治体や職員を弁護してくれたりはしません。そういう覚悟の無い思いつきの意見など、私はいい加減、黙殺すべきと思いますね。市民やら国民の「公僕」が公務員ですが決して下僕ではないわけですし、全体の奉仕者ではあっても特定の声の大きな人や団体に対してだけの奉仕者であってはならないわけです。
 少数「意見」を黙殺するということではなく、そういう少数意見に対してあまりにも労力や費用をかけるのは、かえって公けの利益に反する行為だとさえ言えるでしょう。

 11月14日の東京新聞には、なんと処分までに7時間も行政らと日本熊森協会さんの「にらみ合い」「対立」が続いたという記事が出ていました。
クマ殺処分 行政・住民VS保護団体、対立7時間

 愛知県瀬戸市片草町の山林で十三日、おりにかかったツキノワグマの殺処分を決めた行政、地元住民と、処分を阻止しようとする自然保護団体「日本熊森協会」(兵庫県西宮市) が七時間にわたって対立。話し合いは平行線のまま、結局クマは瀬戸市に依頼された猟友会の会員に射殺された。 

 市環境課によると、クマは九日、イノシシ用のおりの中で発見された。最初は殺さずに放すことを検討し、保護を訴える協会とも協議した。他県に移送を打診したものの受け入れを拒否され、住民の不安も高まったことから、十二日に殺処分を決めた。 

 十三日午前七時ごろから現地で、協会の会員と、市・県の職員、住民が“にらみあい”。 
 「クマはおとなしく、人と共存できる」と主張する協会側と、「ここは私たちの生活の場」「けがをしたら誰が補償するのか」と住民たち。午後二時ごろ、クマは殺処分されたが、市環境課の高木啓次課長は「放つのが基本だが万策尽きた」と苦渋の表情だった。 
 イノシシ用のオリでの捕獲というのですから、最初からの有害鳥獣としての熊捕獲ではなく錯誤捕獲なのでしょう。それを殺処分するというのは確かにできれば避けるべきで、公平に言って日本熊森協会さんの主張も理解できなくはありません。
 しかし、「クマはおとなしく、人と共存できる」という協会側のせっかくのご意見は、住民の皆さんの「ここは私たちの生活の場」などの意見に対しては全くの無力で空虚でしかありません。

 それにしても7時間もこんなことに時間を費やすというのは、様々な事情があったのでしょうけれども、ちょっとどうか?と思います。
 瀬戸市の一般行政職員の平均給与月額は平成20年4月時点で491,051円ということですから、単純にこれを月勤務日数23日で割ると1日21,350円。これを8時間で割ると2,668円で、これが時給の目安になります。7時間ということは18,676円の人件費です。もし、担当職員、担当係長、担当課長の3人で対応したのならば、3倍の56,028円が、この対応にかかったという目安になります。
 ちょっとその程度のことに、経費(時間)をかけ過ぎでは?と単純に思いますが。
 こういう対応は、最初に時間を区切って対応しなければならないと思います。

 そういうどっちつかずの対応にならざるを得ないのもわかりますが、それは保護・駆除双方にいら立ちを感じさせてしまいます。
 11月20日の日本海新聞を見てみましょう。
揺れる八頭町 ツキノワグマ保護と処分のはざま
2010年11月20日

 「環境省が定める絶滅のおそれがある動物」―。10月下旬、八頭町役場で開かれたツキノワグマ緊急対策本部設置会議の席上で、鳥取県職員が発した一言に出席者からため息が漏れた。

■ぶつかる正論

【中略】異例の会議に県や猟友会、森林組合、警察関係者などが出席。法律に基づき策定した保護計画を説く県職員に、地元関係者が語気鋭く迫る。

 「梨の被害はあきらめるが、人間が死んだら遺族は怒りのぶつけどころがない」「おりを破って逃げた場合の銃使用許可を」「数頭出る年と100頭の年を同じ法律で考えていいものか」

 さまざまな立場から正論が交錯する中、同町は「町民の安全第一」を原則に、捕獲した個体の殺処分を含む苦渋の対処方針に踏み切る。

■温度差に苦慮

 10、11月と2度にわたった対策本部の設置。冬眠準備を迎えたことで本部は打ち切られたが、依然目撃例があり、予断を許さない状況に地元では継続を望む声も。今年の騒動を機に「長年続けた果樹園をやめようと思う」という農家まで現れた。

 担当部署の同町産業観光課は「こういった町民を助けたい」と尽力する一方、役場には保護すべき動物と定められている上で殺処分するのは不当などと、抗議の電話やメールも相次いで寄せられており、職員が多様な意見の対応にも追われる。

 効果的なクマ対策には目撃情報が不可欠として、県や同町は情報提供を呼び掛けているが、小林孝規産業観光課長によると「寄せられる情報は氷山の一角」という。度重なる目撃に「いまさら」と通報しなくなるのをはじめ、中には危害を加えられる不安感から「放獣を認めない」との理由で協力しないケースもあるなど、住民の温度差による課題も少なくない。

【後略】
 こういった住民の不信感が高まり行政頼りにならずと失望感が広がると、「こっそりと駆除しよう」といったことが住民の中で半ば公然とささやかれたり、実際に始まってしまうのを大変危惧します。実際にこれまで何度か紹介してきたような自力救済として密猟行為はしばしば起こっており、こんなことが個々に始められ・広がってしまえば、行政らが適正な頭数管理をしていく上で重大な妨げになりかねません。

 このような利害関係というか、様々な立場・思惑が、行政の最前線ではかかっています。
 今、必要なのは保護団体の「抗議」や住民の「非協力」でもなく、積極的な理解と支援であり、そして行政はそれに応えられるような体制や予算獲得などを構築していくべきでしょう。

開く トラックバック(1)

 先日、長野県在住の写真家・宮崎学氏がその著書「ツキノワグマ」(偕成社)の中で「ニホンカモシカなどが増えているのに、ツキノワグマだけ減っているとは思えない」という主旨を書かれている点について、「そもそも長野県内におけるニホンカモシカとツキノワグマの推定生息数に大きく差がある上、それに占める捕獲率もかなり違っている=狩猟圧が違うのだから、無理がある論理では?」感想を書きましたが、やはりと言うべきか、今年の長野県でもツキノワグマの補殺数が相当な頭数になっていることがわかりました。

 12月18日付けの産経ニュースです。
クマ出没 昨年の2.6倍、2569件 長野
2010.12.18 01:50

 県内で11月末現在までに目撃されたツキノワグマの出没件数は2569件で、前年度同期の2・6倍にも上ることが、県林務部のまとめで分かった。集落内への出没は1587件に達し、負傷者数も8人増の14人だった。

 地方事務所別でもっとも出没が多かったのは木曽管内で626件。続いて北安曇426件、松本405件、長野355件、下伊那255件などとなっている。

 捕殺処分されたのは354頭で、学習放獣は68頭。県林務部は「ツキノワグマは縄張りを持たずに餌を探し回ることから、廃棄果実や生活ごみ、防護柵(さく)のない農地の作物などに引きつけられて出没を繰り返す」として、集落周辺に誘引している状況を改善するとともに捕獲などの総合的な被害対策を進めたいとしている。
 目撃件数は単純に鵜呑みはできないということは先日も書いたところです。
 負傷者数が前年度の倍以上・8人も増えているという点でそれだけ人と熊の接触する機会が増えたということは言えますが、1つ1つの状況を正確に調査して、どういう事故例が増えているかを分析することで、最新の事故防止策が構築できます。

 今年補殺されたのは354頭・学習放獣が68頭=合計422頭(延べ?)ということですが、先日見た長野県の資料では平成18年度は捕獲頭数は553頭とありましたので、計画をはるかに上回る捕獲数ではありますが、同じ大量出没の年同士とはいえ、捕獲頭数そのものは以前より大きく減っていることがわかります。
 これは、単純に生息環境が改善したとか人里周囲の誘引物の撤去が進んだ結果だというのならば結構な話なのですが、学習や警戒でワナなどにかからなくなって捕獲が進まなくなった結果かもしれませんし、そもそも生息頭数が減った結果かもしれません。保護計画の中で捕獲を厳しく自粛した結果かもしれません。これも減った要因の分析が必要でしょうね。
 しかし、少なくとも「個体数が増えている」と読み取れる要素は私はここからは1つも感じられません。

 ある動物が、一定地域の中でどれくらいの頭数になってしまえば、その他の要因が無くとも絶滅に向かうようになるのか?あるいはわずかな要因でも絶滅につながるのか?そしてその地域での正確な生息数はどれくらいなのか?と言ったことを把握するのが急務でしょう。
 
 そういう責任を負う立場でもなく、半ば遊びの印象だけで「増えている」と強弁されたところで全く説得力はありません。
 しかし、残念ながら、今までも、今も、多くの自治体で行われている生息数調査は、このような目撃や半ば印象に近いものでの推定値であることが多いというのが現状です。

  *******************************

 続いて、冬眠の時期にも熊に注意&注目という話を先日もしたところでした。

 12月17日の日刊スポーツに、恐れていた事故が起きてしまった記事が出ていました。
クマに追い掛けられた!男性重傷

 17日午後3時ごろ、秋田市の無職利部金男さん(72)方にクマが現れ、付近の除雪作業をしていた利部さんを襲った。利部さんは頭や顔を引っかかれ重傷とみられる。

 秋田東署によると、クマは体長約1メートルで、クマを見た利部さんが自宅に逃げようとしたところ、後方から追い掛けてきたという。

 現場はJR秋田駅から東に約9キロの山あいに集落が点在する地域。(共同)

[2010年12月17日20時58分]
 頭や顔を引っかかれて重傷…というのは、かなり深刻です。
 熊による人身事故の恐ろしいところは、鋭い5本の長い爪で、人間を凌駕する圧倒的な力で引っ掛かれるということです。このような事故の報道に触れた際、たとえ命を失うことが無かったとしても、「それは不幸中の幸いでした」などとも安易に言えないくらい、悲惨なケガになってしまうただ不幸なだけということも少なくないのです。いかに鋭いと言っても刃物ではありませんので、傷跡が広く・汚く裂かれてしまうために、傷跡も治りづらいものになります。特に頭や顔という場合は、申しづらいことですが、目鼻や耳などをえぐられたり、顔の原型をとどめないほど破壊されてしまうということもあります。それを快復させようとするには、形成外科手術を繰り返しても困難ですし、肉体的な被害だけではなく、精神的な被害もはかり知れないのです。
 むろん、熊の爪や力は積極的な攻撃用というよりも食餌するためなどの活動用と言えますが、熊を過剰に弁護・保護し、時に被害者を安易に悪く言うような人がたまにいるのは信じられないことですが、そういう事実を少しは知ると良いでしょう。あるいは、熊の対策をせずに山に入ったりする人も学ぶと良いでしょう。へらず口など叩けないと思いますが。

 熊は逃げる後を追うという習性が知られていますが、この記事から状況を拝見すると、それがそのまま当てはまりそうな感じです。もしも、被害者の方が落ち着いて、静かに下がるなどができるようであれば、このような悲惨な結果は避けられたかもしれないと思うと、悲惨なだけに、悔やまれます。
 まさか被害者の方も、除雪作業が必要なほどの状況で、自宅近くに熊がいるなどとは想像の範囲外でしたでしょうから、突如現れた熊に慌てて逃げても、もちろん何の落ち度があるわけではありません。

 しかし、行政や研究者、保護団体などは、先に書きましたように冬季における出没も今後は環境などの変化で変わってくる可能性もあることですから、その年の環境などによっては冬季にも出没する恐れがあることや、目撃情報が多く寄せられる地域での対処方法の広報などを住民の方々や観光パンフレットなどに掲載して啓発していくべきだと思います。
 被害者を出さないということは熊の適正保護の業務を推進させることができますし、何より大事な住民の生命や健康、財産を守ることは行政などの最優先の義務ですから。

 ですが、以前も書きましたとおり、行政側も人員や予算の削減で、細やかな業務遂行は困難な時代です。本当にそういう対策をも必要だと住民が感じるのならば、そういう人員や予算は減らさないように求めると言う方が、私は有効な被害防止と頭数保護の両立の第一歩だと思うのですが。
 単に大人数でおしかけたり、長時間居座ったり、何度も電話をかけ続けて「クマを殺すな」などというのは、保護のためには何の役にも立ちません。「そういう予算と専門の人員をぜひ、つけて欲しい」と強く働きかける活動をした方がよほど有効だと思うのですがね。

【追記 2010.12.20】
 12月20日の日テレNEWS24で、秋田市の重傷事故の現場近くで、その翌日にも小さめな熊が目撃されたと報じられていました。
冬眠できないクマ出没か(秋田県)

 県内では、今月に入ってクマの目撃情報が相次いでいます。エサが不足して冬眠できないクマが出没しているとみられ、県では注意を呼びかけています。県警察本部のまとめによりますと、今月に入ってから県内では秋田市と北秋田市でクマが5件目撃されています。
 これは12月としては、過去10年間で最も多くなっています。秋田市の太平地区では、今月17日に72歳の男性が自宅近くで除雪作業をしていたところ、体長およそ1メートルのクマに頭や顔を引っかかれ大けがをしています。また、同じ太平地区ではその翌日にも体長およそ50センチのクマが目撃されています。
 県自然保護課では「通常は冬眠している時期だが、エサが不足して十分な栄養をとることができないのが原因ではないか」と分析しています。
[12/20 12:13 秋田放送]
 目撃情報が多いということは、何度も申しますとおり直ちに危機かと言えばうかつな判断はできません。また、翌日目撃されたという熊も50cmというかなり小さいことから、黒っぽい野良犬とか、他の野生動物と見間違えているかもしれませんから、やはり何とも言えませんね。

開く トラックバック(1)

森を作る熊

 ヒグマが川を遡上するサケを捕え食べることは有名ですが、そのサケを食べ散らかすことで森が豊かになるという話があります。
 熊も川でサケを捕えたならば、それを見通しの悪い=安全な森の茂みの中で食べることも多いわけですが、食べ残しが土に還ったり、食べ残しを小動物が食べたり、その小動物やヒグマがフンをすることにより、森の土が豊かになるというわけです。森の土が豊かになれば木々の生長も盛んになり、葉を落として土を豊かにし、その養分が川を通じて海や砂浜を豊かにしてサケが育って川を遡上し…という循環です。
 この辺の話は、独立行政法人森林総合研究所 独立行政法人水産総合研究センターのパンフレットにも出ています。

 木々など植物は自分で動くことはできませんから、タンポポのように綿毛で種を遠くに飛ばしたり、ブナのように柔軟性を得て豪雪地帯で他の木々との生存に勝ったりするという方法で勢力を拡大しようとします。花を咲かせて虫を呼んで受粉してもらったり、栄養価の高い実をつけることでネズミやリスなどにそれを遠くまで運ばせようとする戦略を身に付けた植物もあります。

 このアカネズミやリスが、冬季における食糧不足への備えとして、秋に地中や樹洞に木の実を貯め込み後で食べるという習性は知られており、同時に、その残りが発芽して生長するという木々の戦略は有名ですが、実は熊はそれがダイナミックになった役割を果たしているということが、12月11日付けの岩手日報に掲載されました。
岩手日報 2010年12月11日付け

森に種まくツキノワグマ
東京や栃木で調査
ネズミや虫がふん拡散

 人里への出没や農林業被害で、このところ厄介者扱いされることが少なくないツキノワグマ。森の植物の多様性維持には一役買っていることが、小池伸介東京農工大助教らの研究で分かった。食べた植物の種がふんにまじり、これをネズミやふん虫が拡散させていた。
 ツキノワグマは日本では本州以南に生息。植物を中心とした雑食性で、特に木の葉や過日を大量に食べる。種は原形をとどめた状態でふんと一緒に排泄される。
 小池さんらは、東京・奥多摩地域や栃木県・日光などで調査を行い、100種類近くを食べていることを確認。クマのふんには最大で数千粒の種が含まれていた。
 通常、一カ所に多くの種が集中すると、発芽や成長に悪影響が出ると考えられるが、小池さんらが自動撮影カメラを設置したところ、ネズミが中にある種を食べたり、持ち去ったりするのが写っていた。
 ふんを前足で引っ張って巣穴まで運ぶオオセンチコガネなどのふん虫が、種を含んだふんを移動させ、地面に埋め込む様子も確認した。観察したふんの中の種は、1週間で数が2割以下になった。
 ふんを網で囲い、ネズミやふん虫が入れないようにすると種は発芽せず、囲わない場合は約7%が芽を出したことから、小池さんらは、ネズミとふん無視が発芽を助けていると結論付けた。行動範囲や消化に要する時間から分析すると、「種まき」の範囲はツキノワグマが最初に過日などを食べた地点から最長22キロに及んでいた。
 これはサルや鳥の40倍以上。小池さんは「ツキノワグマは、さまざまな生物との結びつきの中で、山全体の植物の多様さを維持する重要な役割を担っている」と話す。
 この記事は私はネット上では検索にヒットせず拝見できなかったのですが、当ブログをご覧くださっているN様にお知らせいただきました。とても良い記事でしたので、皆さまにも紹介させていただきます。N様、どうもありがとうござました。大変参考になり助かりました。

 ツキノワグマが実に多くの種類の植物を食べるわけですね。そして、その多くの植物の種を遠くまで運び、ネズミや昆虫によって発芽するということが確認できたということです。

 最長で22kmもの移動というのは、かなりの距離です。むろん、それが全て発芽し、無事生長するかどうかは運ばれた場所の環境や状況によるわけですが、植物にとってはより遠くまで多くの子孫を運ぶことで、何らかの環境の変化や災害などによってある特定地域における自分や子孫が一気に絶滅するというを避けることもできるわけです。木にとっては実にありがたいことですね。

 こう聞くと「熊は偉いなあ」と思ってしまいそうです。私も、このような循環の話を聞くと理屈抜きで感銘を受けます。
 しかし、ここで勘違いしてはならないのは、いずれも「人間がそう分析した」わけであって、「熊やネズミや昆虫、リス…などがそれをそう意識して行っているわけではない」ということです。生きるのに身に付けた体質や能力などを全力で駆使して一生懸命に生きている結果、そういう相互関係が成り立ってもいるようだ、という結果に過ぎないということです。生命は長い時間をかけて、様々な環境に適応して生き抜こうとしていますが、その中で、そういう構造を身に付けた植物が競争に勝つのに有利だったので生き残ったと考えられますから、巧みな生き残り戦略は長い時間の中ではある意味、当然なわけです。
 ここを勘違いして動物を擬人化すると、以前、紹介した日本熊森協会さんの主張「熊剥ぎは無料間伐」などという甚だしい勘違いした主張になってしまいます。人間だけが、その循環の外に立っていて、自然を見下しているかのような発想ですね。きちんと手入れされている林業も、人間が生きて行く上では重要な・循環する生存行為であるわけですから。

 むろん、そういう共生している側面も見られるのは確かなことですから、「危険な熊は絶滅させてしまえ」という主張に対して、行政や研究者らが持つことができる1つの説得材料になりうるのではないかとも思います。熊を絶滅させては、森の維持や生命のバランスに重大な影響が起きますよ、と言うことをわかりやすく説明していけば、「命は大切です」「クマがかわいそうです」という漠然としたものよりもまだ納得は得られやすいかもしれません。

 と、言いつつ、だからと言ってこういう1つの現象でもって人間が下手にそれに介入しようとすると、沖縄のマングース佐渡島のテンのように、思いがけない痛手を被ることにもなるんでしょうなあ。

全182ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 前のページ | 次のページ ]


.
泉ヶ岳
泉ヶ岳
男性 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
検索 検索

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
11/30まで5周年記念キャンペーン中!
Amazonギフト券1000円分当たる!
話題の新商品が今だけもらえる!
ジュレームアミノ シュープリーム
プレゼントキャンペーン

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事