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「水戸黄門」で誰もが知っている西村晃さんが主人公の老マタギ・平蔵を演じる「マタギ」(http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD17315/)を見ました。
長年、この映画のことは知っており、ビデオが出ていたことも知っていたのですが、たまたま立ち寄ったツタヤさんに置いてあるのを発見し、慌てて借りてきたしだいです。普段通るツタヤさんではないので、また返しに行くのが大変ですが(笑)。
1982年の作品ですが、監督は後藤俊夫さん…ごめんなさい、知らない方です。
しかし、実にいい映画でした。これほどまでに良かった映画は、「八甲田山」以来です。
舞台は、マタギで有名な秋田県の阿仁町です。町の全面協力で、かの地の歴史や民俗、当時の生活がかなりリアルに描かれており、美術を担当された大谷和正さんは、相当な方と思います。
撮影のアングルや視点も実にいい。映画ですが、写真を見ているようです。山崎尭也(やまざきたかや)さん、いい撮影をしていらっしゃいます。
あらすじは、かつて襲われた巨大なツキノワグマを、街の人々から笑われようとも頑固に追い続ける老マタギのお話しです。
しかし、単に動物パニックものにしないところが、実にいい。
生まれた子犬をマタギ犬に育成していくところや、平蔵の孫・太郎の、祖父を誇りに思う気持ちがよく出ていて、そうそう、この太郎役の安保吉人さんも、子役の実力派ですね。もう1人の主人公で、彼の名演技無しではこの映画は成り立たなかったでしょう。
映画と言うよりも、かつてのNHKの良質ドキュメンタリーを見ているような気がします。
阿仁町・マタギの文化や、当時の生活、人々の交流などが活き活きと描かれており、民俗学的な記録映画としても秀逸です。私のような、山村民俗に興味がある者には、細かな描写までこだわっているのがわかり、今の一般的な人が見ても、その細かさはなかなか実感できないであろうことが残念・寂しいです。
驚いたのは、当時の映画ですから、リアルな熊なんて期待していなかったのですが、おそらくはほぼすべてを本物の熊を使っています。かなりの迫力です。どうやって撮影したのだろう?という気がします。
しかし、今の一方的な価値観では、「動物虐待だ」と言われかねない描写が多いので、そんな神経質な方には見ていただきたくないですね。
単に大暴れする熊との娯楽作品にした駄作「リメインズ」に比べれば…いや、比べるのも失礼ですね。名画です。これほどまでの作品が、それほど有名ではないというのが不思議です。
秋田県の郷土や民俗歴史、マタギ、文学的な作品が好きな方には、ぜひご覧いただきたいです。昭和50年代の地方都市の様子は、当時はなんてことのない風景でしょうが、今は見ていてノスタルジックな気持ちにもなります。
「熊との死闘」だけを期待している人には、オススメできませんが。そんな誰でも作れる映画なら、見る価値は無いと思うのですがね。
平蔵の、頑固なまでに山を畏敬する気持ち。しきたりを重んじ、野山の生物をも友とする心。功名心や手柄など、その前ではもうどうでもいいとする潔さ。すがすがしい気持ちになります。
非常に良い映画でした。
この監督さんやスタッフの皆さんでしたら、あの「羆嵐」の映画ができるだろうなあ。実現して欲しいですが、今やなんやかやと動物愛護の規制とか、芸能プロダクションの思惑とか、商業主義が走りすぎていて、なかなか難しいかな。
サッカーくじで6億円当てたら、全額使ってその夢を実現させたいな。誰にも邪魔させずに、スタッフの好きなとおりに作ってもらう。
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