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これは、私が学生時代に購入した本です。 文庫本で、当時こういう文庫本を大量に発行していた(株)大陸書房が発行したものです。今はこの会社は無く、絶版となっているので古書店やネットオークションくらいでしか入手できないです。 著者も世界各地の名峰を登る登山家で、この本は著者が読んだ多くの文献から山に関わるふしぎな話を集めたり、著者自身が経験されたことや考えを書かれています。 よく聞く「山の幽霊話」だけではなく、埋蔵金伝説、未確認動物の話などにも及んでいるほか、実際の遭難事故についてや山の怖さにも多くページを割いて触れています。 山にも行ったことの無いような人が、単に幽霊話を羅列しただけの本ならばそれはそれで面白くとも眉唾ものでどこか安心するのですが、山の経験が豊富な著者が山の一般的なお話しと一緒にそういう話をサラリとすると、逆に信憑性みたいなものが生まれて、不気味さが出てきたものです。 私のお気に入りの話は、1938年12月に富山県黒部川上流でトンネル工事の作業員宿舎が消えた自然の力を紹介した「消えた4階建て宿舎の怪!」。 月山スキー場にある山小屋が、無人の冬季に50mもそっくり動いたという「知らないうちに移動した山小屋!」。 静まり返った深夜に、遠くの方でノコギリやオノを使って木を切り倒す音がするという「山奥から響いてくる奇怪な音!」。 1968年に富山県で起きた炭焼きの方が大猫に襲われた事件や谷川岳の山小屋管理人が見た大猫の紹介をしている「猫又伝説の謎!」。 黒部峡谷で目撃された奇妙な動物の足跡と、ひと気の無い場所から人を呼ぶ声がする謎を紹介した「黒部峡谷の正体不明の足跡と奇妙な声!」…というものです。 当時、山を歩くだけの技術や経験を少し積んだくらいの自分でしたが、この本で初めて「山のふしぎ話」に触れた、最初のキッカケだったんじゃないかな?と思います。 ここから、山の不思議話に興味が出て行きました。 ***************************************** この本を読んだ後、私は一時山奥にある自然体験施設で働いていた時期があったのですが、その時に知り合った森林管理組合の方とお話ししたところ、夜に山奥から木を切る音がする「天狗コロバシ」は、その方も1度だけ聞いたことがあるし、ご自分のお仲間なども経験があるということを聞かされました。 夜に木を切る音がして、確かに木を倒す音がしたのに、翌朝現場に行ってみると何もそんな気配が無いというのです。 思いがけず経験談を聞いたものですから、ますます興味を持ったものです。 ある年の冬、私が管理番で宿直していた晩のことです。その日は昼まで晴れていたのが急に冷え込み始め、布団を何枚も重ねてもなかなか寝付けないほどでした。 深夜、誰もいない、積雪で周囲を覆われた山の施設は、シーンと静まり返っています。 ピシ…パキ…ミシ…何か、外で音がします。 こういう音は、昼間に陽の光で暖められた建物の建材が夜になって急に冷えることできしむ音がよくありますので、めずらしくもありません。 しかし、どうもこれは建物のそれではないんですね。音が遠いのです。 変だなあ、なんだろう?と思ったときに思い出したのが、「天狗コロバシ」の話。止せばいいのに、自然と一緒に掲載されていた幽霊話なんかも思い出したりして、不気味さは増すばかり。 仕方が無いので、強力な懐中電灯を持って外に出ても、特に何もありません。冷え込みで自分の白い息まで幽霊に見えて来ます。 真っ暗闇の中で、遠いのか近いのか、木を裂くような不気味な音が確かにします。 いくらライトを照らしても、何も見えませんので、やむを得ず、部屋に戻ります。 悶々として眠れずに、どれくらい時間が経ったのかも見当もつかないでいると…
と、大きな音が! こ、これには、さすがに驚きました。て、天狗コロバシ!? 遅い冬の朝が待ち遠しく眠れぬ夜が明けるのをひたすら待って、先輩が出勤するのを待たずに音がした現場に行ってみると…。 木が、倒れていました。 結論から言えば、私の経験したのは、木の裂け目に雪解け水でも入り込み、それが夜の急激な冷え込みで凍りつき、水は凍るときに膨張しますので、それが切れ目を広げてそれがキッカケで木が裂けて、自重で一部が倒れたんですね。…たぶん。 しかし、伝説の「天狗コロバシ」はそんなもんではなく、ノコギリで木をひく音、オノを木に打ち込む音が確かにするとか。
本当にそういうものがあるのかどうか、私はわかりませんが、あの晩の経験は、それを想像するに十分な不気味さでした。 |
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2009年11月30日
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