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この冬は日本海側を中心に、記録的な豪雪が続いている地方もあります。福島や鳥取では、坂道を登りきれなくなって停車したトラックがキッカケで大渋滞になって、その間に豪雪が降って埋まりかけるという出来事もありました。 1月17日の宮城県の地元紙・河北新報には、こんな記事が出ていました。 東北・連日の「どか雪」 進まぬ除雪に住民イライラ 東北各地で除雪をめぐる市民からの苦情や要望が殺到し、自治体が苦慮している。この冬は例年に比べ際立って降雪量が多いわけではないが、短時間でまとまった雪となる日が多いのが特徴。年末年始の大雪に追い打ちを掛ける積雪で、除雪車がフル稼働しても、手が回りきらなくなっているようだ。各自治体では除雪費もかさみ、除雪予算も心配になり始めた。 「除雪車はまだ来ないのか」「こっちには、一度も来ていないぞ」 昨年12月25、26日の大雪で、積雪が過去最多に並ぶ115センチ(12月26日)を観測した福島県会津若松市には、1月3日までの10日間に約1500件の苦情や要望があった。 除雪車を総動員しても雪は片付かず、その後も市民からの苦情は絶えない。担当者は「降雪10センチが10日間続いても怖くはないが、一度に100センチでは対応できない」と年末大雪の“後遺症”に悩まされている。 大みそかに観測史上5位の1日降雪量35センチを記録した盛岡市も同様だ。12月24〜27日にもまとまった積雪があり、湿った重い雪質だったことも除排雪作業を手間取らせる原因になった。 市への苦情・要望は14日までに1725件に上り、既に前年度(880件)の倍近くに達した。市は17、18日の小中学校の始業式を前に、延べ200人の職員による緊急除雪を始めている。 湯沢、横手両市は6日以降、断続的に大雪が続く。湯沢では昨年は降っても10センチ台だった1月の1日当たり降雪量が、ことしは20センチ以上を5回記録。横手は30センチ以上を3回も観測している。 市民からの苦情・要望は「例年の倍以上」(秋田県湯沢市建設課)となる日が続き、担当課は「一日中、電話が鳴りっぱなし」(横手市横手地域局)の状態だという。 青森県弘前市は日中も気温が上がらない日が多く、雪が減らないのが悩み。1月8日夜には除雪への不満を募らせた男性が電話で庁舎の爆破をほのめかし、弘前署が一時警戒する騒ぎになった。 除雪費も底を突きつつある。会津若松市は本年度当初予算に計上した2億9000万円を今月中に使い切りそうなペース。福島県会津坂下町は既に当初予算分が尽きた。会津地方17市町村でつくる「会津総合開発協議会」は12日、国土交通省に財政支援も要請した。 【後略】昨年の夏にもこの自治体の行う除雪について懸念を書いていたところですが、今回の場合は、季節性の要因=思いがけない豪雪で、時間がかかったということです。 しかし…果たしてそれだけでしょうか? ここで脱線して、私の知っているある地方自治体の話です。 その自治体では、スキー場へのアクセス道路にもなっている山奥を走る長い距離の道路の除雪を、ある個人事業主のような男性に30年近くも任せていました。ところが、自治体の契約行為は「競争入札」をするのが原則ですから、ある人たちが「その男性に随意契約で任せているのは違法だ」と言い始め、やむを得ず競争入札をすることになりました。 そして、市中心部の道路を除雪していた大手建設業者が落札しました。この契約は1時間の除雪作業につきいくら、という単価契約の出来高払いです。その単価では、大手業者は男性よりも安価に入札したため、このベテラン男性は30年にして、その仕事を初めて失ってしまいました。 ところが、確かに1時間当たりの作業料金は競争により安くなったのですが、初めて作業をする作業員の方は当然不慣れなために、それまでよりも除雪時間が多くかかってしまいます。結局降雪量は前年度とほぼ同じくらいだったはずなのに、作業時間は倍近くかかったため、トータルでの支出額は前年度とほとんど変わらなかったのです。 個人的にその長年除雪をしていた男性の仕事ぶりを知っているのですが、山奥の道路を夜間・吹雪く中を除雪するということは、その土地の「くせ」を身体で熟知し、そして「冬のこの路線は俺が守るのだ」という使命感やプライドのようなものがある、ある意味「職人芸」的なものがあったんですね。天気予報では市街地などの予報しかしませんが、長年の経験でいつごろに出動があるか(すべきか)?ということがわかり、初動の出動も迅速でした。木々の道路へのはみ出しとかカーブなどの危険個所、山の形状により吹きだまりやすい個所、除雪した雪を積んでいく安全なポイントなど、様々なそこの場所での「プロの技」が、長年という経験で蓄積されていたわけですが、自治体の競争入札の仕様書にはそんなことは書けないわけです。 そうこうしているうち、男性は競争入札そのものも辞退し、参加しなくなっていったのでした。その理由は後述します。 ある年、その地域一帯が豪雪に見舞われたため、その大手の建設業者は経費を出来る限り抑えるために、普通の雪ならなんとか対応できる程度のギリギリの余裕のない体制であったため、昔から担っていた市街地の除雪だけでも手いっぱいになってしまいました。ところがスキー場に向かうその県道も、週末に差し掛かっていたためにスキーに行く自動車が多く来るであろうことが予想できたために、道路管理者は慌てました。 そこで、その男性に大手建設業者の下請けとして入るように依頼したところ、断られました。その理由は、男性は、高額な除雪車の維持ができなくなっために、手放していたのです。 結果、大渋滞。利用者やスキー場からの苦情殺到。 …そんなことを思い出しました。 続いて、前日・1月16日の河北新報の記事です。 青森の除雪作業 業者の7割以上が態勢維持「5年が限界」 青森県内の道路除雪作業に携わる建設業者の7割以上が、5年後までには今の除雪態勢を維持できなくなると考えていることが、県建設業協会(杉山東幹会長)が会員に実施したアンケートで分かった。公共工事減少のあおりを受け、老朽化した除雪車の買い替えや作業員の確保が困難になっており、厳しい経営実態が浮き彫りになった。 アンケートは昨年10月、会員企業169社を対象に行った。回答があった133社のうち、119社が除雪作業を受託。自前の除雪車を所有しているのは109社だった。 自前の除雪車の6割以上は、耐用年数の基準の一つである10年を超えていた。車検などで更新時期を迎えた場合、ほとんどが新車に買い替える予定はないと答えた。高齢化などにより、除雪作業員が「不足している」との回答も20%あった。 除雪委託費に関して、「採算が取れない」と答えたのは、発注者が国、県、市町村の順で増加し、市町村では25.9%に上った。県と市町村から請け負った除雪について「採算の限界」としたのは、それぞれ44.3%、40.0%だった。 状況が改善されない場合、除雪態勢を維持できる期間は「3年後まで」が33%で最も多く、「本年度まで」が12%、「1年後まで」が14%などとなった。「6年以上続けられる」と答えたのは26%にとどまった。 同協会の神豊勝専務理事は「業者の経営状況は悪化の一途だが、社会的責任から、採算性が悪くても引き受けている。このままでは、除雪態勢が崩壊する恐れがある。発注者側に、除雪費の見直しや機材の貸与などを強く訴えたい」と話している。これも、業者さんの本音では、むろん、地元貢献というのも実際にありますが、「役所とのお付き合い」という点もあったりして、儲けにならないことは承知で、仕事を回してくれるお得意さんへのサービス的な部分で受託していたのが、競争入札は厳しくなるし、そもそも公共事業が減っていれば、そんなことも言っていられない…というわけですね。 除雪のための作業車両は冬季にしか使うことはできない特殊車両ですから、維持管理費も相当かかります。 除雪作業は過酷ですよ。非常に危険ですし、緊張します。夜だろうと朝だろうと、一定の積雪になれば出動しなくちゃならない。作業員さんも同じ場所を継続して任せられれば慣れも早いのに、その日の交通状況や苦情により、どこから除雪してくれ、などとバラバラなので、どうしても慣れないので効率も悪くなることもあります。そして、その作業員の方の人数も少なくなったり、除雪車両の台数も少なくしか保有できなくなって…という現実が、最前線ではあるんですね。 これは除雪だからまだいい、というわけでもありませんが、そのうち、大規模災害が発生した際、崩れた建物や土砂などを一刻を争う撤去が進まずに人命にかかわる…ということも、十分にありえますね。 そもそもが、国などや民間も、高度成長期に整備したインフラや建物が、そろそろ物理的に耐用年数が進んでいる現状があるわけですから、これは一斉に作った以上、ほぼ一斉に更新の必要が迫られるわけですが、そのとき、それが可能な人員も技術も機材も無い、なんてことになりかねませんね。 シロウト考えに過ぎませんが、ここはあえて、全国のインフラを補強や更新する一大公共事業を実施し、技術や機材も更新しつつ雇用を確保するということが、今、最後の時期ではないかと思うのですが。今、それをやっておけば、次の3〜50年は何とか持つかもしれませんが…。 何でもかんでも、公務員が悪いとか、公共事業は悪いとか、コンクリートから人だとか、そんなことを言っていれば良いわけではないですね。 と、いうことをこれらの記事を読んで思ったしだいです。
特にオチも無く。受験生の皆さんのために、落ち無し、なんて。 |
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2011年01月17日
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