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1月27日に、宮古港なサメが水揚げされました。ニュース映像などから見る特徴や大きさなどから、小説や映画の「ジョーズ」のモデルとなったホホジロザメ(ホオジロザメとも)とすぐにわかります。 大きなサメの水揚げということで、テレビも新聞も一斉に報道したのですが…なんじゃこりゃ!?体長や重さがバラバラです。 各内容を見てみましょう。 まずは1月28日の朝日新聞です。 巨大ジョーズ、かまぼこの運命 宮古で落札値1万円 2011年1月28日 水揚げされた「ジョーズ」=宮古市魚市場 宮古市魚市場で27日、体長6.4メートル、重さ640キロの巨大な「ジョーズ」が水揚げされた。同市の閉伊崎沖の定置網にかかり、大暴れしたといい、ホホジロザメと見られるという。 【後略】このサイズは日テレNEWS24でも採用されています。 続いて同日の河北新報。 陸上でも迫力満点 巨大ホオジロザメ 宮古港に水揚げ 岩手県宮古市の宮古港で27日、巨大なホオジロザメが水揚げされた。体長約5.4メートル、重さ約630キロの雄。宮古沖でサケなどを狙う定置網にかかった。 【後略】次は同じ日の読売新聞。 ジョーズ 1万円 映画『ジョーズ』のモデルにもなったホホジロザメが27日朝、宮古市魚市場に水揚げされた=写真=。体長5・4メートル、重さ640キロと大型。同市の閉伊崎にある定置網で捕獲された。同市場が県水産技術センターに確かめたところ、エラの位置や歯型などから、ホホジロザメと断定された。 【後略】1月27日のテレビ朝日の報道です。 体長6メートルのサメ水揚げ、競りに 岩手・宮古(01/27 18:54) 岩手県で、体長6メートルを超える凶暴なサメが水揚げされました。 地元の漁師:「デカいのは珍しいですね」 水揚げされたのは「人食いザメ」ともいわれるホオジロザメで、体長6.4メートル、重さ640キロです。 【後略】1月28日の岩手日報です。 宮古湾に640キロのサメ水揚げ 落札額1万円 宮古市の市魚市場に27日、体長4・4メートル、重さ640キロの巨大ホホジロザメが水揚げされ、市場関係者を驚かせた。 【後略】1月27日のFNNニュース(岩手めんこいテレビ)では、こう伝えています。 岩手・宮古市の魚市場で体長5メートル、重さ640kgの巨大なサメが競りに 岩手・宮古市の魚市場で27日朝、体長5メートル、重さ640kgの巨大なサメが競りにかけられた。 宮古湾の定置網にかかっていたもので、凶暴な「メジロザメ」とみられているが、この寒い時期にサメが揚がるのは珍しいという。 【後略】サイズはもちろんですが、今度は「メジロザメ」と種が違っています。 28日になって更新・訂正はされましたが、27日の時点での日テレNEWSでも、以下のとおり当初はメジロザメとしていました。 640キロのサメ水揚げ 取引価格1万円 岩手・宮古市の魚市場に27日朝、重さ640キロのサメが水揚げされた。 27日朝、宮古湾の入り口の定置網に入ったサメの体長は6.4メートルで、「メジロザメ」とみられている。 【後略】ここで、各記事をまとめてみましょう。 ・朝日新聞 体長6.4メートル、重さ640キロ ホホジロザメ
…もう、バラバラ。・日テレNEWS 体長6.4メートル、重さ640キロ ホホジロザメ(前日は「メジロザメ」) ・河北新報 体長約5.4メートル、重さ約630キロの雄 ホオジロザメ ・読売新聞 体長5・4メートル、重さ640キロ ホホジロザメ ・テレビ朝日 体長6.4メートル、重さ640キロ ホオジロザメ ・岩手日報 体長4・4メートル、重さ640キロ ホホジロザメ ・FNNニュース 体長5メートル、重さ640キロ メジロザメ メジロザメは普通、大きくても2m前後。オオメジロザメでも3m前後ですから、それが5mだの6mだのって、世界中が驚くサイズだっつーの。こんなことはネット検索をすれば10秒でわかること。 ホホジロザメでも、6.4mというのはにわかに信じがたいですね。世界記録的なサイズになります。 一方、体重はほぼ同じに伝えられています。これは、セリにかけるためには1キロいくらで競り合うため厳密に計測したのでしょうが、この体重を見ても6.4mは大きすぎます。体重から普通に考えれば4.4m。映像を見ても人間との比較でそれくらいに見えます。 ちょっと5.4mまでは無さそうですね。あるいは、全てハズレかもしれません。 だいたい、映像や写真があるということは、写真は関係者からの提供かもしれませんから少なくともテレビは取材した時点で目の前にサメがあったのでしょう。にも関わらず、重さはまだしも大きさを計るということの検証や、そのサメが何か?ということもろくに調べないで報じるんですか?映像や写真を見てみれば、まず、「大きさがそんなにあるだろうか?」と率直に疑問に感じても良さそうなものですが。 サメや熊などの最大サイズの記録をたどると、しばしば「大げさ」に伝えられていることがあります。世界最大の記録とされていたものが、研究者が残された標本を計測した結果、どう考えてもそのサイズには至っていない、というものです。 水揚げ現場の慌ただしさとか、狩猟者や記者が注目を得ようと誇大に伝えたとか、単なる誤り・誤解とか、そういう数字の独り歩きというのはあるようです。それにしても、現代日本で同じそんなことが起きるとは、情けない限りですな。 その大きさが誤っていたところで、「別にサメの大きさが大きく間違っていようとも読者や視聴者に実害無い」とでも思ってテキトーなお仕事をされているんでしょうか?こういうネット社会になって、簡単に各報道を見比べることができるから「おかしい」と気づく機会が出てくる場合がありますが、これがもっと視聴者などにとって重要な出来事なんかでも、こんなスタンスで報じるんですかね?各紙とも、同じ1つの情報源で同じように検証せずに報じた場合、その情報源が誤っていた場合はそれまでですが。 もしもちょっと大柄な犯罪容疑者が捕まった場合、それを伝えるニュースでも「○○警察署によると、容疑者は身長260cm。体重200kgの宇宙人」などと連行される容疑者を目の前にしてもなお、警察発表の情報をそのまま伝えるんですかねえ?あるいは逃走中の容疑者の特徴を伝えるときにもバラバラだったりして。そりゃ、困るんですが。 ついでに言えば、見出しや記事本文にやたらと「ジョーズ」と書いていますが、英単語として「Jaws」は、「顎」です。あの大きい口全体を指しているわけですが、日本人の場合は大ヒットしたスピルバーグの映画「ジョーズ」の印象があまりに広まったためか、サメとかホホジロザメの別名のように思っている人も少なくないようです。 記事の造りとしては、そういう書き方も短絡的で工夫が無くどうなんかなあ、と思ったり。大きな亀が捕獲されたら、「宮古港にガメラ水揚げ」とでも書くのかいな。「人喰いザメ」という呼ばれ方もしていますが、数も少なくなっていると言われるホホジロザメによって亡くなった人の数は、世界中を見てもそれほど多くありません。また、人と意識して襲っているということも確認されていません(アザラシと見間違えている?)。むしろ国内におけるスズメバチによる死者の方がはるかに多いのですが、「殺人蜂」とはあまり言いませんね。本当に身近な危険はパニックになるから抑え気味の表現で、あまり身近でない危険はセンセーショナルに、というようなスタンスなのかな? そんなんでいいんかい。 【追記 2011.1.29】
「サメ・ウォッチング」(ビクター・スプリンガー、ジョイ・ゴールド著 仲谷一宏訳 平凡社)の第2章「スーパーシャーク」の「ホホジロザメ」の項(P155〜)を抜粋で紹介すると、 ホホジロザメは六メートル以上になるが、「逃がした魚は大きい」のたとえのように、大形になるサメの信頼できる実測値はほとんどない。今までに正確に測定されたと思われる最大のホホジロザメは、一九四五年キューバのコマヒール沖でとれたメスで、全長6.4メートル、体重三三二四キログラムと報告された。しかし、一九七四円に公表されたこのサメの写真を、一九八七年に再検討したところ、この個体は実は五メートルよりも小さかった。
とあります。【中略】 一九八四年には再び南オーストラリアで巨大なホホジロザメがサメ猟師により捕えられ、それがクイーンズランドでテレビ放映された。彼は、このホホジロザメは全長が六.三メートルであったが、体重は重すぎて測れなかった、と証言した。サメを海から引き上げるとき、耐加重二トン半の鋼鉄製ケーブルは切断してしまい【中略】 現在、信頼できる最大のホホジロザメは西オーストラリアでとれた全長六メートルの個体で、体重は不明であるが、このくらい大きな個体ならば二トンはあるだろう。 つまり、一部の記事にあるような6.4mなんて数値が正式に記録されたものであれば、1万円でカマボコにするのではなく、丸ごと標本にするくらいの価値があります(顎だけはどこかの博物館で展示する予定とのことですが)。 また、この記述だけ見ても、いかに大きなサメが正確な記録もされずに来ているかという歴史を感じます。それがサメの生態研究などにも影響を与えているのですから、サイズをきちんと記録するということは、重要なことなのですが。 それに、6m前後のサメであれば、2,000kgほどになるだろう、というのもポイントで、6.4mで640kgってなんだよ!?と思いますね。身長250cm、体重80kg、とでも言われているような違和感。 こんな報道がバラバラなサイズを表記しては、後世のサメ研究者からも「信頼できるサイズではない」扱いをされてしまいそうです。 |
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2011年01月28日
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