日々是雑感

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【ニュースを見て感じたこと】

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ニュースを見聞きして感じたことを掲載していきます。
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 物事を考える時は、この複雑な社会ですから、様々な視点で考えなければなりません。
 しかし、何だか物事を単純化してしか考えることができない人なのか、正論を言えば相手は反論できないのでその快感にでも酔っている人なのか、ささいなことを振りかざして要求をする、という人が多くなっているように思います。
 モンスターペアレント・モンスターペイシェントなどもその一環かもしれません。

 先ほど見た「ゴミ収集」についても、なるほど、おっしゃるとおり、地方自治法どおりに競争入札をすべき、というのは確かでしょう。現実にかい離した法というならば法を現実に合わせるよう改正すべきという意見もあるでしょう。
 しかし、現実問題としては競争入札をして得られるメリット・回避できるデメリットよりも、受けるデメリットの方がはるかに大きいと思います。

 例えば、公共事業における競争入札を厳密にしたために、地方の建設業者が経営を悪化させているという現実があります。
 それは地方における雇用の安定が維持できなくなるほか、重機や人員を常備させることができなくなるため、例えば雪国では除雪作業がままならなくなるという、思いがけない事態になっています。
 一例として、2009年12月7日の山陰中央新報の記事から。
大田で除雪作業の一括委託  

【前略】

 県はこれまで、路線ごとに各建設業者と契約してきたが、公共事業の減少や不況の影響で、保有する重機や運転手の数は減少の一途。県によると、今冬に建設業者から借り上げた除雪作業用の重機は292台で、2000年代初めに比べて31%も減ったという。

 県は重機の維持管理費の助成など、対策を講じているものの、減少に歯止めが掛からず、全県的に除雪作業の確保が危ぶまれている。このため、試験的に一括委託方式を採用することにした。

 
【後略】
 当然ですね。
 除雪委託は普通、規定の積雪があったときに出動し、そして実際に除雪した距離か時間でもってお金を支払う契約をします。出来高払いです。
 ですが業者さんの立場にしてみれば、1シーズン、いつその規定積雪量に達するかわかりませんから、いつ出動の必要が生じても良いように、人員も機械も待機させておかなければならないわけです。
 人員や機械を待機させるとそれだけで経費が発生しますが、行政の契約では「仕事をしていない」以上、お金を払うわけにはいかないわけですね。1シーズン、何回出動するかもわからない以上、1回当たりの単価の見積もりなんて事前に出せるはずがない。
 そういう中で、建設業者さんらは「公共事業で世話になっているから」という思い(思惑)があって、なんとなく、そういう持ちつ持たれつというあいまいな部分で、これまで成り立っていたわけです。
 しかし、様々な背景はありますが、結果として過度の競争を求めるようになったために、冬の損害を夏で補う、ということができなくなり、夏の公共工事は低価格になったものの、冬の除雪は高上がりどころか、そもそも受注してくれる業者さんさえ無くなってしまって除雪ができなくなるという事態にさえなっています。

 こういう、風が吹けば桶屋が儲かる的な影響を把握した上で、改善や改革を進めて行かなければ、どこにどんな影響が出るかわからないというのは、有害鳥獣駆除における天敵利用(沖縄におけるマングースとか)のように、思いがけないダメージを受けるということになりかねません。

 今回の豪雨災害でも、こんな声も聴こえています。
 7月17日の毎日新聞です。
大雨被害:建設業界低迷で復旧の遅れ懸念−−知事会見 /長野
7月17日13時1分配信 毎日新聞

 村井仁知事は16日の会見で、14〜15日の大雨で飯田市や天竜村などで土砂崩れが相次いだことを受けて「道路の復旧は比較的短時間でできた」としながらも、「地方の建設業者の体力が弱っていることは、目を覆うばかりだ。(復旧作業の)対応ができなくなってしまうかもしれない」と懸念を口にした。長期不況による建設業界の低迷が、将来的な県内の災害復旧の遅れにつながりかねないとの見方を示したものだ。

 復旧工事の発注などを担当した県下伊那南部建設事務所によると、今回の大雨で作業に遅れや支障は出なかった。ただ一方で、同事務所の担当者は「一昔前に比べて、業者の重機や人員が減っている印象はある。人繰りや機材の配分が、将来うまく回らない状況もありうるのでは」と話した。【渡辺諒】

7月17日朝刊
 公共事業を減らすということが現政権だけではなく、政治家の「ブーム」のようになっていますが、その結果、建設業界が激減した場合、このような災害復旧の際にはどうするのか、明確な回答が欲しいです。
 ・・・自衛隊という意見が出そうです。
 ではもう1歩進めて聴くと、今、高度経済成長期に作られた公共建築物が一斉に耐用年数を迎えようとしています。温暖化やヒートアイランド現象に伴い、都市部では今後、ますます豪雨が増えるとも言われていますが、舗装された都市では道路に雨水が浸透しませんから、都市における排水機能・下水道整備ももっと必要になりますし、その他の自然災害に対しての備えも必要になります。
 そんなとき、建設業者が無くて、自衛隊に全てそれを依頼するのでしょうか?

 「公共事業に頼らなくても建設業界が生き残れるよう、景気回復を・・・」という抽象的かつ不確実な回答では、お話しになりません。

 5月1日の朝日新聞に、こんな悪意というか記者の見識が不足していると感じる記事が。
「除雪と雇用が心配で…」青森県、談合業者に甘い処分
2010年5月1日14時23分

 談合業者を冬まで指名停止にすると、道路が雪で埋もれちゃう?――。青森市発注の公共工事をめぐる官製談合問題で、青森県は4月30日、市内の建設業者28社に対する指名停止期間について、「雇用や除雪に影響が出る」(県県土整備部)として、原則1年を半減の6カ月にした。この結果、28社は今年末の除雪作業が可能になった。 

 同県の要領では、公正取引委員会から独占禁止法違反を指摘されるなどした28社の指名停止期間は本来1年。ただ、28社で市内の主要業者をほぼ占めており、県幹部でつくる「県建設業者指名審査会」は、(1)長期処分は倒産や地元経済への影響が懸念される(2)地元経済界や議会が軽減を要望(3)除雪を担う業者がいなくなる――などの理由で処分を軽くしたという。 

 県は前年度、年間の総降雪量が平均約7メートルの同市内で県道など延べ約250キロの除雪を2億円弱で建設業者に発注したが、受注した13社のうち10社が今回の処分対象。県幹部は「道路の形状に詳しい地元運転手でないと、雪に埋もれた道路標識などを除雪車で壊しやすい。安易に新規の業者に頼めず、深刻な問題だった」と打ち明ける。(別宮潤一) 
 記者は楽ですね。代案を考えずに、「甘い処分」と批判だけしていればいいのですから。
 じゃあ、冬の除雪はどうするの?と聞かれたら、記者は何と答えるだろうか。

 さて、ついでに以前から政治家や公務員の給与ではなく、定数を安易に削減するのは止めた方が良いと書きましたが、それは非常時の対応や通常期での対応も不十分になりかねないからです。
 たまたま7月18日の毎日新聞にこんな記事がありました。

<生活保護>受給者急増でケースワーカー不足に 本紙調査 
7月18日15時18分配信 毎日新聞

 生活保護世帯を定期的に訪問して、受給者の生活実態を調べる自治体のケースワーカーが不足し、全国主要74市・区の半数にあたる37市・区で、1人当たりの平均受け持ち世帯数(09年度)が100世帯超の「過重負担」になっていることが、毎日新聞の調査で分かった。こうした市・区は09年度までの5年間で1.5倍に増加している。景気低迷で受給世帯数が急増する一方で、自治体によるケースワーカーの確保が追い付いていない現状が浮き彫りになった。【小林慎】

 自立に向けた生活指導がケースワーカーの主な役割だが、受給者らへの面談などで保護費の不正受給がないかどうかのチェックも担う。このため、関西で発覚が相次ぐ「貧困ビジネス」を見逃している原因の一つに、ケースワーカー不足があるとされている。

【後略】
 通常期ならば十分足りていた人員でも、何か少しでも状況の変化があったとたん、その仕事の質やスピードが下がるということがわかります。これは個々人の能力ではカバーできるものではありません。

 と、いうような一面もあることを把握した上で、「公共事業削減」「全面的な競争入札」「政治家や公務員定数の削減」をするか否かを判断しなければ、「こんなはずじゃなかった」となることが目に見えていますし、そうなってからでは取り返すことはかなり、時間も労力もかかります。

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 行政や政治に高い透明性や説明責任を、というのは、納税者から見れば当然・正論であり、それに対して異議を唱えるのは汚職公務員・政治家だ、というような雰囲気が昨今、漂っています。

 以前、行政における入札制度について触れたことがありますが、契約をしようとするときは、一定条件をクリアすれば誰もが入札に参加して、より安い価格で受注させる「一般競争入札」が原則になっています。誰もが入札に参加するので、機会平等と競争原理による低価格化が期待できるというメリットがあります。
 しかし、受注成果を確実にしたいとか、緊急だとかいう事情があれば、指名競争入札や随意契約(特命)が可能になります。

 随意契約(特命)は、どこか特定の業者にのみ発注をするという契約方式で、一般家庭や企業においてはそれほどめずらしいことではないかもしれませんが、行政においてはしばしば贈収賄などの温床になりやすく、批判の対象になってきました。

 しかし、近年、公共事業において競争入札が増えてきたために、長年それに依存して経営してきた民間企業が一気に経営状況を悪化させているという一面もあります。
 「そんなもん、そんな間違った契約にあぐらをかいてきた自業自得じゃないか」というご意見は、正論です。反論しようがありません。
 しかし、何かを考える時に、正論を振りかざせば良いわけでは無いと私は思います。まず、その人たちもそのご家族も生活があり、同時にその会社が雇用を生み、地域経済を支えているという面も間違いなくあります。
 改革や改善をしていく際には急がず、それらのことまで考えた上で制度を変えて行かなければ、その人たちの生活を圧迫し、そして思いがけない弊害を生む可能性があります。

 7月17日の河北新報の記事を見てみましょう。
仙台市のごみ収集契約「違法」 オンブズ、支払い中止請求

 仙台市民オンブズマンは16日、仙台市が市の外郭団体「市環境整備公社」と「泉清掃協業組合」との2010年度の業務委託を特命随意契約(特命随契)としたのは違法性があるとして、委託金計約12億4055万円の支払い中止などを奥山恵美子市長に求める住民監査請求を行った。

 市監査委員は受理の可否を判断し、受理した場合、60日以内にオンブズマンに監査結果を通知する。

 2団体への委託内容は、缶、瓶、ペットボトルなど廃棄物の収集や選別業務。委託費は、環境整備公社が2件計11億1090万円、泉清掃協業組合が1件約1億2965万円。いずれも1社のみを契約対象とする特命随契だった。

 請求では(1)競争性が働かない特命随契は一般競争入札を原則とする地方自治法に違反する(2)業者への積算依頼、見積書提出、契約締結がすべて4月1日付になっている例があり、手続きに問題がある―などと指摘。奥山市長に対し、2業者への未払い分は支払いの中止を、既払い分は返還要求をそれぞれ求めた。

 オンブズマンは「3件のうち2件は、見積額と予定価格がぴったり合っている。市が金額を教えたとしか考えられない。公社に市幹部が天下りしているのも問題だ」と話している。

2010年07月17日土曜日
 この記事を読んだ人は、何だか契約先が仙台市の天下りを受け入れるために、その見返りに不当に高い契約を独占している、悪い癒着という印象を持つでしょう。当然の感覚です。
 しかし、
(1)競争性が働かない特命随契は一般競争入札を原則とする地方自治法に違反する
 これは問題ありません。
 地方自治法第234条第2項や、地方自治法施行令第167条、第167条の2により、随意契約(特命)は認められています。
 「その理由では、随意契約(特命)の理由に当たらない」というのならばわかりますが、随意契約(特命)が即・違反という言い方は、記事なのかオンブズマンなのか、読者をミスリードするものです。
 
(2)業者への積算依頼、見積書提出、契約締結がすべて4月1日付になっている例があり、手続きに問題がある
 これは確かにおかしいですが、地方自治法や地方自治法施行令で国・法律で決められていることを、地方自治体におかしいと言われても困ることでしょう。
 地方自治法施行令143条では、このような支出が生じる委託契約は、その年度にならなければ支出行為ができないと定められています。
 つまり、新年度開始の4月1日からすぐに始めなければならない仕事であっても、早目に、例えばその日から見れば前の年度である3月中に契約をしておこう、ということは、できないわけです。次の年度の予算を前の年度に使うということになるからです。

 だいたい、地方議会において翌年度の予算が可決されるのは普通、2月〜3月に開催される議会ですから、「この業務のために、この金額をください」という行政からの予算要求に、議会が「よかろう」という承認が出るのが3月半ばごろです。それまでは正式契約はできないんですね。
 早まって契約をしていたところ、もしも議会が「その予算はまかりならん」と否定したら、契約した委託料がもらえず、支払えなくなるわけです。
 そんなとき、担当者が「いや、まず承認されると思って、翌年度契約をしてしまっていました」と言っても、「地方自治法違反。懲戒処分だ」と言われ、業者からは「契約したからには、仕事と委託料をください」と言われてしまいます。

 市町村役場としては、地方自治法を守って4月1日以降に、4月1日に開始しなければならない全ての契約を行うなんてことは無理ということは当然承知ですので、せめて議会が予算を承認してくれる3月半ばに、予算が承認されたのを確認して契約をする、というのが慣例化しています。
 しかし、そう3月半ばに契約をしても、契約の全ての事務は4月1日以降にしたことにしなければ「地方自治法違反」という証拠を残すことになるので、全ての仕事は4月1日にした、というように記録しておくという、民間からすれば理解不能な苦肉の策をするわけです。

 これは何とかすべき地方自治法の弊害ですが、同時に、それは国の定めた法律の問題ですので、地方自治体はどうしようもない、というのが実情です。

 まあ、それは行政で何とかすべき都合ですが、これの煽りを受けるのは民間企業です。

 年間を通じて委託業務をしている、例えば庁舎清掃というものがありますが、たいてい、1年契約のパートさんが働いていたりします。ところが、3月半ばまで、契約事務が進まないわけですから、ご自身があと半月後である4月1日からもそこで働けるかどうか、わからないということになります。
 普通、退職を求める場合は1ヶ月前予告か、1ヶ月分の給与を渡すことになっていますが、1年更新ですから、単に「更新をしない」「更新をする」ということが遅れての通告だけでは、こういう規定には該当しないようで、現場の弱い立場のパートさんにも雇用の不安定という非常に迷惑なことになっています。
 ですので、定例的にすべき委託契約に関しては、3年くらいの継続した契約をしておこう、という動きが、ここ近年、ようやく出て来ています。

 ちょっと脱線しましたが、では、随意契約(特命)をする理由は不当な天下り・癒着なのでしょうか?
 これは仙台市さんに聞いてみなければわかりませんが、私の経験上、これは「必要悪」と言えるものではないかと思います。
 例えば、誰かがゴミ収集業を始めようとした場合、大変厳しい許認可の手続きを得て、そして受託できる規模の収集車の台数確保や人員確保をするという、莫大な投資が必要になります。そこまでして、1年ごとの契約をされては、その投資が回収できなくなる恐れがあるため、当然、受託をする際にはその投資額を回収できる分の委託料をもらわなければ、業者としてもやっていられないわけです。

 具体的な数字を例にすれば、収集車1台が900万円だとします。
 最初から10年契約とか、毎年必ず仕事がもらえる、いう暗黙の了解があれば、収集車分の減価償却を1年あたり90万円と見た委託料がもらえれば良いので、1年あたりの委託料を安くすることができます。
 ところが、「1年ごとの更新で、来年は他の業者さんとの競争で、取れないかもしれないよ」という「正しい」契約の仕方をした場合、どの業者さんも、「来年仕事が取れなければ、この収集車を持て余す。じゃあ、1年で元を取らなければ」という考えになるでしょうから、その年の委託料は収集車分は900万円となってしまいます。つまり、高あがりになってしまいかねないんですね。
 それで契約ができなくなったり、契約できたとしても翌年はじゃあその1年で元を取った分、収集車経費をゼロで見積もりをしてくるかと言えば、そんなことも無くなってしまうわけです。
 また、毎年の契約ということになると、多くの従業員を継続して雇用するとか、そういうこともできなくなってしまい、雇用の不安定化を招いたり、経営基盤を不安定にして会社そのものの存続が危うくなってしまって、受託先が無くなってしまう=ゴミ収集ができなくなるという恐れさえ、現実的にありえるのです。広い地域を効率よく、短時間で確実に回るということが必要な業務ですから、誰にでもできる仕事ではないわけでしょう。
 そういう面があるので、数少ない受託能力のある業者を存続させて必要な業務を停滞させない、という苦肉の策として、このような随意契約(特命)に至ったのではないか?と私は推測します。

 見積もり価格と設計金額が同じ額というのは、おそらくその地域でのゴミ収集はその業者しか受託する先が無いことから、設計に必要な参考見積もりをその業者から取って、その内訳をそのまま設計に使うちう安易な方法をしているからでしょうね。

 これを「正しいやり方」どおりに競争をさせた場合、おそらくは入札に参加できる業者はまず無いのではないかと思いますが、受託会社を不安定にし、必要な業務が停滞する一因になると思います。
 長くなりましたので、続きます。

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 元上野動物園や多摩動物公園の園長、横浜市立よこはま動物園ズーラシア園長で、獣医学博士の増井光子さんが、日本時間の7月13日に滞在先の英国で落馬し、お亡くなりになったということです。

 増井光子さんは、テレビや著書でそのお考えをお教えいただきましたが、学者で多くの知識や実績をお持ちであると同時に、女性らしい動物への深くまっすぐな愛情を合わせ持ち、そして日本や世界中を動物の姿を求めて活動するエネルギッシュな、まだまだ日本には必要な方でした。
 大変驚きました。実に残念です。

 大変残念でなりませんが、今ごろは天国で、既に絶滅したたくさんの動物たちに囲まれて、あの優しい笑顔でいらっしゃるような気がしてなりません。
 また、多くの方に与えた影響ははかり知れず、次の時代に増井さんの意思を受け継ぐ方も多いと思います。

 お疲れ様でした。
 ご冥福をお祈りいたします。

 7月16日の東京新聞の記事に、増井さんのご功績・お人柄の一端が見えます。
パンダ人工繁殖に成功 増井光子園長
2010年7月16日 夕刊 
 
 「無給でもいいから働かせて」。十三日に七十三歳で死去した元上野動物園園長で横浜市立よこはま動物園ズーラシア園長の増井光子さんは、上野動物園にこう掛け合い、獣医師として採用された。上野動物園は一九八五年、ホアンホアンに人工授精し、パンダの繁殖に初めて成功。増井さんは「パンダの主治医」として、約二十人の繁殖チームの主要メンバーだった。

 毎週の休園日に類似のクマなどを使い、麻酔や電気刺激によるシミュレーションを繰り返した。パンダの尿からホルモンなどを分析、生殖メカニズムを徹底的に研究した。

 その結果、八五年に赤ちゃんが誕生、増井さんは「見たか、と晴れがましい気持ちになった」という。残念ながら生後二日後に圧死したが、その一年後にはトントンが生まれ、無事に育った。

 かつて増井さんの部下だった小宮輝之・上野動物園園長は「パンダは、増井さんの功績のほんの一部。超人的な行動力のあるすごい“動物園人”だった」と振り返る。

 特に熱を入れたのは、野生動物の研究。自然に生きるタヌキやカモシカの姿を求め、夜行バスで東京と仙台、秋田などを往復。世界中の動物を観察しようと、アフリカなどにも何度も飛んでいた。

 「動物園でも、野生に近い環境に近づけようと努力していた。上野動物園の園長になり、狭いプールでなく、不忍池でカバを飼育するアイデアを出して話題になったのは増井さんらしかった」と小宮さん。

 そのアイデアは後年、横浜市立よこはま動物園ズーラシアの園長となって実現した。動物を生息地に似た環境で展示する「生息環境展示」を国内で初めて取り入れた。昨年四月には、ジャングルをイメージしたチンパンジーの展示コーナーもオープンさせた。

 馬術競技の現役選手でもあった。英国の大会に出場し競技中に落馬して亡くなった。

 小宮さんは「動物園の枠に収まりきれない人だった」と先輩の死を悼んだ。 (井上幸一)

登山

 去年も今ごろに書いたことですが、日本はまとまった長期休暇がとりづらいためか、ゴールデンウィークやお盆(夏休み)、シルバーウィークや年末年始は一斉に旅行などをするという習慣になっているように思います。
 まして、年末年始は「お正月」が関係するためか、初日の出・「ご来光」を見ようと、山頂を目指す人が多く出ます。

 装備が完全で、経験が豊富で、体力も日ごろから鍛えていて十分…という人でも、一瞬の判断を誤ったり急激な・局地的な天候の変化によって、事故となることもめずらしくはありません。

 今月、富士山で起きてしまった片山右京氏らが遭難した事故ですが、おそらくは経験も体力一定程度あって、装備もおそらく問題は無かったであろう状況下でも、あのような残念な結果になるということがあるわけです。

 12月19日付けの朝日新聞の記事で、遺体発見直後の様子が出ています。少し見てみましょう。
片山右京さん「全部自分の責任です」 2遺体と涙の対面
2009年12月19日21時29分

 元F1レーサーの片山右京さん(46)らが富士山登山中に遭難した事故で、安否の分からなかった2人は遺体で見つかった。「助けられなかった。全部自分の責任です」。対面後、片山さんはうつむき、泣き声を上げた。
【中略】
 会見で事務所のスタッフが遺族のコメントを読み上げた。堀川さんの父親の和男さん(68)は「若くして亡くなったのは親として残念なことですが、喜んで出掛けた美しい富士山で仲の良い先輩と最後を一緒にできたことは幸せだと思う」とコメント。宇佐美さんの妻の直子さん(45)は「思い残すことはたくさんあるが、好きな山で逝(い)くことができてよかったと思います」との文面を寄せた。それを聞いた片山さんは嗚咽(おえつ)をもらした。
【後略】
 様々な報道事実などから考えると、この登山では「明らかな落ち度」というのは見当たらないように思います。体力も知識も無いシロウトが、冬の山をなめてかかったわけでも情報や準備が不足していた要素も無い。

 それでもなお、「冬の富士山に行くなんて」ということが非難に値するか否かはこれはもう個々の価値観になるでしょう。実際に、捜索に当たった静岡県警の関係者らも多大な労力や危険な目に遭わせているのですし、私なんかは自分を知っているし自然の怖さを知っているので、自分が冬の富士山に行くことじたいが発想の範囲を超えています。
 しかし、私は、無謀や無計画ではない登山は、それほど非難すべきものとは思っていません。どこで線を引くかは説明しにくいですが、少なくとも聞いた限りでは、今回の事故はそう感じないとしか言えません。

 この事故の経緯などは今回語りません。

 私がこの事故からここで言いたいのは、「たとえ準備などが万全でも、最悪の結果になるということはよくある」という事実であり、「『山に行くこと』には、必要な普段忘れがちな覚悟が必要である」という事実であり、この報道記事は3つの教訓をあらためて与えてくれるということです。

 この年末年始にも、その長期休みを利用して山に出かける計画の方がいらっしゃると思いますが、それが冬の富士山のような過酷な場所ではないにせよ、ご自身がどれほどの装備や経験や、そして日ごろからのトレーニングをしているのか?ということを冷静に考えて、それでお出かけになって欲しいということがまず1つ目にあります。

 2つ目は、パーティーで登山に行くときに、特にリーダーの方にはその計画や判断などにおいては重大な責任を負うわけで、この事故の場合、生き残った片山氏についても、仲間が亡くなったということを一生背負い、その責任を追っていかなければならず、誰もが不幸な結果になったわけです。
 計画や装備や体力づくりなどの「準備」の他に、登山前や登山中の「判断」、そしてそういった諸々のものに対しての「責任」「覚悟」の自覚があるかどうかも重要です。

 そして3つ目ですが、この事故で教えてくれる教訓は、一番忘れがちかもしれませんが、そういったことに対する覚悟は実際に山に行くご本人だけはなく、そのご家族にもそれらの覚悟を求めるということです。
 今回亡くなった方のご遺族は、様々な思いや葛藤や悲しみにあっても、外に向けて発したコメントがその死を覚悟し、受け入れている態度でなされています。これはなかなかできるものではありません。ご家族はもちろん、亡くなられた方が、普段、どのようにその生き方をご家族に伝え、一緒に山に登ってもらっていたかを感じさせることであり、それだけに優秀な登山家だったのではないかと思います。
 私がバイクの免許を取り購入することは両親は大反対でしたし、狩猟での事故についても私はやむを得ないということを書いたのですが、人間、誰もが1人で生きているというわけではなく、心配したりされたり、頼りにしたりされたりという生きものです。
 そういう社会的義務や家族としての義務がある中、少なからず危険な場所に赴くということは、本人だけの問題ではなく、それら家族の許容も求めなければならないわけです。

 そういうことをよくよく考えて、準備されて、ご家族にもそれらを求めた上で、この年末年始休みの登山にお出かけいただきたいものです。

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 「銃社会」のイメージの強いアメリカの一部観光地にはそういうものがあるというのは聞いたことはあったのですが、すぐの隣国・韓国でも、観光外国人客にそういう実弾射撃場で射撃して遊ぶ場所があるとは、今回の事故があるまで知りませんでした。

 11月14日付の産経新聞の記事の抜粋です。
釜山射撃場火災 日本人観光客ら10人死亡
11月14日20時51分配信 産経新聞

【ソウル=水沼啓子】韓国南部・釜山市内にある室内射撃場で14日午後2時25分(日本時間同)ごろ、火災が発生し、日本人観光客を含む10人が死亡、6人が負傷した。射撃場には当時、日本人観光客9人がいたとされ、地元警察当局は日本人5人が死亡したと推定していることを明らかにした。消防と警察が死傷者の身元確認や出火原因を調べているが、遺体の損傷が激しく、身元確認作業は難航しているという。

 火災に巻き込まれた日本人観光客9人は長崎の旅行会社「島鉄観光」のツアー客で、同県雲仙市内の小中学校時代の同級生グループとみられる。一行は14日から1泊2日の日程で釜山を訪れていた。

【中略】

 また、射撃場内の暖炉のそばに弾薬が置かれていたとの情報もあり、火災が発生してから弾薬の火薬に引火して被害が拡大した可能性もあるという。

 韓国メディアは国際市場の道路が狭く、消防車などが入りにくい場所だったことが被害を大きくした要因の1つだと指摘している。

 釜山市内には室内射撃場が4カ所あり、日本人向けの人気観光コースの1つになっていた。火災が起きた室内射撃場もそのひとつで、日本語の看板も掲げられ、スタッフが日本語で射撃方法などを説明していたという。

 韓国では2006年4月にもソウル市内の室内射撃場で火災が発生き、従業員1人が死亡、日本人観光客ら7人が負傷した。
 私は施設管理を担当しているので、よくわかるのですが、日本の場合は、国内で何か特異な火災事故が発生した場合は統括する消防庁が全国の消防署などに通達し、類似事件の防止を促したり、法改正に動いたりします。全国的な事故でなくとも、例えばホテルで火災が起きれば、同地域内を管轄する消防署が管轄地内のホテルへ臨時査察・指導に立ち入ることが多いです。

 そういう国内の消防態勢を垣間見ている私としては、既に過去に「室内射撃場」という特殊な空間で火災が起きたにも関わらず、3年経ってもまだ改善が行き届かず、こうも大量の死傷者を出した韓国の消防事情に疑問を持ちます。

 消防行政の態勢以前に、普通に施設経営者や責任者であれば、既に起きた同業者の事故については情報を収集する態勢であるべきで、そして過去の火災事故を聞いていれば「自分の施設は安全だろうか?」と考えて対策を構築しているのが基本でしょう。私は自分の管理施設ではそうしています。

 韓国の国内事情などがどういうものかわからないのですが、結果としてこういう大量死傷事故が出たということは、日本国内のように一定規模や営業内容により、火災報知機やスプリンクラーや防火壁や排煙設備…などの設置基準が厳しかったどうか。
 まあ、日本国内でも有名な「歌舞伎町ビル火災」の大量死傷事故があり、様々な問題が浮き彫りになったので、外国ばかりをいろいろと批判はできませんが、まず、共通して言えるのは、そういう、うさん臭い場所・普段と事情が違う場所に行くときは、それなりの覚悟や自己防衛が必要ということでしょう。

 私は、予約した宿に入ったときはまず必ず消防・建築設備、避難経路は確認しますし、今まで経験はありませんがそれが不備・不安と感じたら当日キャンセルもするつもりです。また、友人らと飲みに行くときも、私がそういう怪しげな雑居ビルは避ける人間だと友人は知っているので、自然と安全度(値段も)高そうな店にばかり行くことになります。
 「君子、危うきに近寄らず」というところでしょうか。

 それはともかく、このような「観光で、実弾射撃」という発想そのものが私には理解できません。
 一部の道具、特にこのような銃砲というものは、以前にも書いたように、「持つ人にも、責任や資格や覚悟、そして危険」が伴うものです。銃というものは、他の生命を殺傷するためだけの目的の道具なのですから。
 韓国釜山旅行案内サイト「Busan navi JP」というサイトでこの実弾射撃場の様子を見ると、ここでの射撃に使われるのは拳銃のようですが、これは人間を攻撃する目的で作られている武器です。
 それを遊び感覚で「撃ってみたい」と思うのは、純粋というか単純な欲求のままのあまりにも考えが無いのではないか?と思うのです。
 と同時に、それが日本語で看板が出ていたり、日本語のできるスタッフを配置していることから、結構な日本人客が出入りしていたことがわかります。

 銃そのものを否定するつもりも、亡くなった人をどうこう批判するつもりはありません。道具を使うのは最後は人間ですから。
 しかし、そういう国内では禁止・制限がされているような命・人命を殺傷するための目的の道具を、一瞬でも持つには、やはりそれ相当の「資格」や「覚悟」や「責任」は必要ですし、今回の火災は直接は関係ないことですが「危険」もどこかで高いものです。
 物見遊山でこのような射撃場に行く人たちは、そういうことを考えて行っているのだろうか?と思います。

 そう思うのは、以前に少し触れたのですが、若い時、知り合いの狩猟免許と銃砲所持許可を得ている方とお話ししたときに、私も有害鳥獣駆除のために免許や許可を取ろうかと考えていると、話をしたことがあります。有害鳥獣駆除の担い手が少なくなっている一方でそれに悩んでいる方の役に立ちたいと思っただけの、若い考えだけでした。
 それに対してその方は、「ワナも、銃も、動物を殺すための道具だし、技術だよ。生き物を殺すというのは、何年やっていても、楽しいどころか平気というものではない。申し訳ないと思ったり、ありがたいと思ったりする一方で、仕方が無いと思ったり、悩むことばかり。それに、その扱いには一瞬も気を抜けない。考えていた動物ではないものを捕まえてしまったり、それどころか自分や家族、他人も危険に遭わせるかもしれない道具や技術だから。そういう銃を持っている限り・ワナを仕掛けている間のプレッシャーというのも、かなりのものだよ?そういうのに耐えられるなら、がんばりなさい。歓迎しますよ。」というようなことを言われて、漠然とした甘い考えだけでは耐えられないと猛省したことがあります。

 自動車免許を取るときと、初めて自動車を購入するときに、父からも同じ内容のことを言われました。

 今回の火災事故とは関係が無いことですが、このような「海外で実弾射撃をしたい」と、そういう武器を持ってみたいと思う方は、少しそういう視点でも考えてみていただきたいなあ、と思いました。
 これは何も、実銃だけではなく、おもちゃやゲームでの銃でも言えると思いますが。

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泉ヶ岳
泉ヶ岳
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