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レンタルビデオ店で、「ワイルドグリズリー」という、動物パニックもののDVDを借りてきました。
「どうせ、ワケも無く熊が大暴れして人を喰い、バズーカ砲か何かで派手に爆殺でもするB級映画だろう」と借りてきたのですが、意外な展開を見せました。
この映画の良いところ(後になって「悪いところ」と思うようになる)の1つは、ヘタなCGや模型を使わずに、実際の熊を使っているところ。最近の氾濫するCGモンスターパニックものに辟易していた私には歓迎です。
これについてはアメリカでは有名な「動物芸能プロダクション」に所属している訓練された熊を使ったのでしょう。少し前に見た日本の駄作映画「リメインズ 美しき勇者たち」で気絶しそうになった私には、期待は高まりました。
でも、パッケージにあった「4mの熊」は言いすぎでしょう。どうみても標準。ただし、エサの与えすぎでかなり肥満気味の熊ではありましたな。
最初のキャンプをしていた一家が襲われるのは、食料品の管理をしていなかったため。
これは熊の生息地ではしてはいけない鉄則の常識ですから、「無知なキャンパーが悪い」と納得できます。冒頭部のこの細かな演出から「おぉ!?少し違っている映画かな?よく勉強しているじゃん。でも、動物パニックものにしてはビミョーな冒頭」と感心したのが間違いの始まり。
襲われた一家のお父さん、「大熊」に足をガリガリ齧られて明らかに食べられたのに、車まで走って逃げたりして・・・そんな無事では済まないでしょう?ひと噛みで骨ごと足が引き千切られているはず。と、いうか、普通は前足の強力な一撃で即死かノドか腹を裂かれて殺されるはず。
しかし、そして何ともご都合主義なことに、ちょうど森林警備隊のような人が通りかかり、麻酔銃で眠らせることに成功。キャンパー一家はこのお父さんのわずかなケガで済みました。
その後、なぜか熊を町に連れてくることになります。
そして、なぜか檻の中に入れると言っているのに、「街に観光客が来なくなったらどうする」と街の人が一斉に反対しています。
・・・これは逆では?「キャンプ地に熊が出たと発表したら、観光客が来なくなる」と秘密裏に処分しろとでも主張するならともかく、街に熊を連れてきたら人は見たいものでしょう?意味不明な反対です。
段々と見ていくのが不安になってきます。この辺は「ジョーズ」を意識したのかもしれませんが、見事に失敗です。
その後、街中で熊が暴れることになるのですが、この反対運動は冒頭のこれっきりで、後で「だから反対したのだ」というような詰め寄りによる混乱もなく、反対運動を展開したのが物語的にも意味がありません。
そして、実はこの町の町長とワルが組んでいて、「熊に保険金をかけてから逃がして、これを撃ち殺して保険金を詐取して大もうけしよう」というたくらみをしています。
「熊に保険金がかけられるのかどうか?」「それが悪だくみをするほど、そんなに多額なものなのか?」「逃がした状況によっては、それを射殺して保険金なんかおりるのか?」など、様々な疑問が生じる動機ですが、ワル役は大真面目に殺そうとして、熊を逃がして必死につけねらいます。
そんな町長が「これがバレたら破滅だ」と心配するほど大きな犯罪ではなく、セコい話です。
ちょうどそのころ、そんな街に都会から引っ越してきたのは、母と高校生くらいの青年。
青年は何とも協調性が無くワガママ無鉄砲で、パニック映画では勝手な行動や騒ぎを起こして主人公の足を引っ張るわき役がいて、「お前なんぞ、さっさと死んでしまえ」と観客に思わせるのが定石なキャスティングですが、この映画では【主人公とその母親がその役】だというのが斬新、と言えばいいのかどうか。とにかく、周囲の迷惑や心配を顧みず、自分勝手な行動を繰り返して、街の混乱に拍車をかけています。
しかし、観客には主人公と母親にイライラし、身勝手な行動としか思えないのに、それが「主人公である青年は、愛する自然や動物を守るために必死に戦っているのだ」といわんばかりの扱いで描かれているのに、開いた口が塞がりません。
主人公が繰り返しワガママな行動をするのに、誰も叱ったりしないで甘やかして終わらせているのは教育上良くないでしょう。
で、いろいろ主人公とその母親の身勝手極まりない行動を乗り越えて、何とか事態は収束していきます。
その間、腹を裂かれて内蔵を喰われた人もいる(衝撃映像は無し)のですが、そんな人でも「重傷」で済んでいるのが、熊を悪者にしたくがないゆえの配慮なのかもしれませんが、シラケる要因になっています。
では、熊がなぜ暴れているのか?という原因は、主人公は「インターネットで調べた」結果、「虫歯で歯が痛いからだ」という推測をします。
おいおい、一度熊を街に連れてきたときに専門家が診ているのに気づかないはずがないだろう?と思いましたが、ラストでそれがそのとおり正解だった、という、脱力感にトドメをさす事実が発覚します。何を診てるんだ専門家。
主人公や母親が追い詰められていても、ここまで来るともう誰も死なないことが分かっているので、別に緊張感も切迫感もありません。日本の時代劇でいうところの「水戸黄門」のように、家庭で安心して見ていられるムービーです。
ワルと森林警備員のような人が旧知のような会話も出てきますが、それっきりで、それが後で説明もなく、「伏線か?」と思っていたこっちはそんなことを覚えていて最後まで期待していてガッカリです。同じく、主人公の父親が射殺された話も意味ありげにガールフレンドに話しますが、これまた物語や主人公の性格形成には全く関係ない話です。
熊は最後に、再び麻酔銃で眠らされます(こればっか)。
森林警備隊の人も、「(青年の)気持ちは分かるが、3人も人を襲った熊は処分しなければならない」と、非常に当たり前のことを言ってはいたのですが、「追跡したけれど、逃げられたことにしよう」と、たくさんの人と口裏合わせをして、車で運べる程度のところに連れて行き、青年とともに熊を逃がしてしまうという、職務放棄ぶりを発揮します。なんじゃあ、そりゃ。いいのかいな、そんなんで。
人を襲った熊が再び人を襲う可能性が高いというのは世界の常識。この、あまりにバカバカしい結末に、襲われて内蔵を食われて重傷の人なんぞはやりきれないでしょうな。
最後に、主人公の青年に熊が振り返って立ち上がり、右前足を上げて「バイバイ」のポーズ。・・・。訓練された熊の得意技だからって、そんなことさせるなよ・・・。もう、何が言いたいのか、物語の方向性や主張すらわかりません。
世紀のカス映画「ジョーズ」とは違い、「やたら殺さない」「熊を一方的に悪魔のような存在にして、観客に偏見を与えない」という点だけは評価できるものの、映画として見ればとてもしょうもない映画でした。
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