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家庭用殺虫剤のほとんどには、「ピレスロイド系」に分類される薬剤成分が使われていますが、ひとくちにそういっても、様々な成分がこの中でさらに分類され、それぞれに特徴があるわけです。独立行政法人 製品評価技術基盤機構さんのHPや金鳥さんのHPに大まかに出ています。 1年近く前に、「スズメバチに一番効く殺虫剤は?」という記事を何回かにわたって書いて、その2回目の記事で私の経験と、「スズメバチ用」として名の通った殺虫剤は、ほとんどがこのプラレトリンを用いていることから、「私は『プラレトリン』を用いている薬剤が最もハチ駆除には効果がある」と書きました。 この記事の中でも触れたのですが、このプラレトリンを用いている「スズメバチ用」としているたくさんの殺虫剤の中で、住友化学園芸さんの「キルノック」のHPには「●ハチに特異的に作用する殺虫成分プラレトリンを使用しております」と書かれていました。 スプレー缶のデザインも、これは明らかにスズメバチとわかるイラストが、アース製薬さんの、スズメバチに見えるイラストなのにスズメバチを駆除対象昆虫から外しているという話に比べ、やはり強気です(笑)。 それがどうにも気になったので、ご迷惑をお詫びしつつ、もしよろしければお教えいただきたいと、住友化学園芸さんに質問をさせていただきました。 【前略】御社HPの商品ご説明に、「ハチに特異的に作用する殺虫成分プラレトリンを使用しております」とあります。
これに対して、住友化学園芸さんは一般向け販売の会社ということで、わざわざ親会社である住友化学さんにお問い合わせをしていただいて、すぐにご丁寧な回答をいただきました。いわゆる「ピレスロイド系」の殺虫剤成分は様々ありますが、例えばd-T80-フタルスリンやd-T80-レスメトリンというようなものではなく、この「プラレトリン」を「『ハチ』に『特異的に』作用する」とされたのでしょうか? 他の成分と比較しての実験ですとか、ハチの身体構造が他の昆虫類と違う部分があり、この成分が特別その構造に作用するなど、何か根拠のようなものをご教示いただけますと後学のためありがたく幸いです。【後略】 以前書いたNECさんのご対応もそうですし、この殺虫剤についてアース製薬さんなどに問い合わせたときもそうでしたが、名の通った企業さんというのはこういう問い合わせやサポートが本当に一流です。 回答内容を箇条書きにすると、こんな感じです。 ○実際に各種ピレスロイドをハチに対して実験し、「プラレトリン」が最もハチの駆除に適していることを確認している。 ○多くのピレスロイドは「ノック剤」(ノックダウン効果)と「キル剤」(死亡させる効果)に大別されるが、この「プラレトリン」はその両方を兼ね備えている数少ないピレスロイドで、ハチのような「早く、確実に駆除する」ことが求められる対象害虫に適している。 ○フタルスリンやレスメトリンは、ノックダウン効果が主体である。 ○「ハチや薬剤の特異的な作用メカニズム」の詳細はわかっていない。 ○これらの結果から、プラレトリンがスズメバチに「最も効果的」という判断をした。要するに、「なぜプラレトリンがスズメバチに最も効くかはわからないが、成分ごとの実験の結果、最も効果が高いと判断したから」ということのようです。 これは私が使い比べて得ていた結論と一緒ですので、やはり、スズメバチ用にはピレスロイド系薬剤成分の中でも「プラレトリン」が使われている殺虫剤が選択する場合のポイントと言えるかと思います。 繰り返しになりますが、他の殺虫剤・ピレスロイド系のものでも効果はもちろんありますが、「その効きには違いがある」ということとや、ゴキブリやハエなど用としているものとは「噴射できる距離が違うという特徴の違い」であるとか、値段とか、駆除しようとするスズメバチやその巣の状態、火気やお子さん・薬剤に過敏な方の近くでは使用しない…など、様々な要件で使い分けをしたり、専門業者さんにお任せをすべきだったり、ということは基本です。 これから、スズメバチの巣の退治を自力でお考えの方のご参考になれば。 【追記 2009.12.23】
ホームセンターで、このキルノックのシリーズだと思うのですが、これとは違うデザインの缶で、スズメバチにも使える商品があったのですが、適用害虫項目を見ると、「スズメバチ(オオスズメバチを除く)」みたいな記載がありました。 これはむろん、「薬剤が効かない」のではなく、大型で体重が重いオオスズメバチには、その他のスズメバチよりも活動不能にさせるための薬剤量が多く必要となるために、同じ量を同じ広さの空間に噴霧しても、その他のスズメバチ同様にはうまくいかないことを示唆しているのだと思います。 インク1滴を、コップ1杯に落としたときのと、どんぶり1杯に落としたときでは、違う濁り具合でしょうからね。 |
【スズメバチ】
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私が興味を持っているスズメバチについて書いています。
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9月6日の福島民報の記事です。 スズメバチ活発化 巣続々、相談急増 福島の美化作戦中止に 清流日本一で知られる福島市の荒川河川敷で今年、スズメバチの巣が相次いで見つかり、10月24日に予定していた大規模な「荒川クリーンアップ大作戦」が初めて中止されることになった。県内保健所への駆除などに関する相談は昨年に続いて急増している。スズメバチの活動は今月以降さらに活発化するとみられ、県はホームページなどで注意を呼び掛けている。 国土交通省福島河川国道事務所から荒川河川敷の管理を請け負っている業者によると、スズメバチの巣が見つかったのは、市内佐原のあづま総合運動公園の東に架かる日の倉橋から、市内佐倉下の工業団地近くに架かるさくら橋間の約2キロの範囲。昨年は1年間で駆除したスズメバチの巣は二個だったが、今年はすでに五個駆除している。 高い位置に巣を作るキイロスズメバチのほか、草むらなど低い場所に営巣するオオスズメバチも多く発生している。見えにくいため、まだ確認されていない巣がある可能性も。 こうした状況を踏まえ、「荒川クリーンアップ大作戦」を主催する「ふるさとの川・荒川づくり協議会」はクリーンアップ大作戦の中止を決めた。今年5月に開催した際には約千人が参加した美化活動だが、同協議会の伊藤賢之会長は「万が一のことがあったら取り返しがつかない。安全策を取った」と話す。 ■県、注意訴え 福島k県食品生活衛生課の調べでは、4月から8月までに県内の保健所に寄せられたスズメバチの相談件数は188件に上る。一昨年同期は30件で、昨年は八倍以上の251件に増加した。今年も引き続き多い状況だ。 6月下旬から7月上旬にかけて気温が高い日が続いたことも要因らしく、同課の大島正敏課長は「スズメバチは9月から増える傾向があり、今年もこれから急増する危険性がある」と注意を喚起している。スズメバチは毒性が強く、刺した人間を死に至らしめることもあり、県自然保護協会の星一彰会長は「巣に近づかないことが一番の対策」としている。 【写真】荒川河川敷で見つかったスズメバチの巣 (2009/09/06 08:34)私にスズメバチのことをいろいろと教えてくださる方は福島県で駆除業もなされている方ですが、口コミや実績での評判から依頼件数が増えていることもあると思いますが、今年は既に昨シーズンの駆除件数を超えているということは聴いておりました。 ところが、私の住む宮城県、特に仙台市周辺では、それほどスズメバチが多いとは聴きません。 これはおそらくは初夏までは気温が高かったものの7月に入って以降は宮城県内では低温や長雨が続いたことが大きく影響していると思います。何しろ東北は梅雨明けしませんでしたし。 スズメバチは他の昆虫を狩って幼虫の食糧にし、成虫はその幼虫が出した分泌液や果樹の実などを食べますが、その昆虫は少なく、果樹も生長が悪いのは目に見えて明らかですから、これもスズメバチに影響を与えていることでしょう。 低温長雨は、まず植物の生長を停滞させ、それを食べたり生活の場とする多くの昆虫の発生も抑制させてしまいます。すると、昆虫界の食物連鎖の頂点であるスズメバチ類はかなり影響を受けてしまいます。 特に巣作り初期に長雨が続くと、女王蜂1頭だけで食糧集めと巣作りと産卵をしますので、長雨で食糧不足になると、すぐに餓死してしまいます。 昨年から今年にかけての冬は東北地方でも暖冬で雪も少なかったために、越冬に成功した女王蜂がある程度多くいるだろうことは予想していたので、夏も早々に梅雨明けして暑い日が続いていたら、東北でも例年並みか例年以上の発生件数になるだろうとは思っていたのですが。 以前、小樽市で統計を取ったときに、駆除の依頼を受けるたびに市内の巣を徹底して駆除したのにも関わらず、翌年もその翌年も目に見えた巣の発生数の減少は見られなかったということです。 これはどういうことかというと、1つの巣からは翌年に巣作りをする新女王蜂が多く発生して越冬しますが、翌年、越冬から目覚めても、巣作りを始めるまでに生存競争に負けて巣作りができない女王蜂が相当数あるわけで、その地域の巣を全て根絶でもしない限りは、その競争が緩和されるだけということです。駆除し切れなかった巣から発生した新女王蜂が、駆除された地域まで進出して巣づくりをするわけですから。 逆に言えば、仮に一定地域の巣を駆除せずに放置したとしても、翌年は生存競争が働いて、その地域から生まれた新女王蜂が全て巣作りができるわけではなく、やはり一定数しかできない=極端に巣が増えるとは限らないということが言えます。条件にもよりますが。 どの世界の食物連鎖でもそうですが、その頂点にある生きものが多くあるということは、その地域の生態系バランスがよく保たれているという目安にもなります。 この記事の場合で言えば、様々な昆虫や植物が豊富にありませんと、そこまでスズメバチが生きていけないということです。逆に言えば、豊富な環境であるということです。 しかし、10月下旬のイベント中止にするほどのことかどうか。活動終期ですから、半月も延期すれば可能だと思うのですけれどね。 確かに秋に、大人数での清掃活動は、知らずに地中に巣を作るオオスズメバチは歩く振動で。木々の枝に巣を作るようなキイロスズメバチやコガタスズメバチは茂みをかき分ける振動で、刺激と捕えて攻撃してくる可能性はありますけれどね。 この駆除件数の増加にしても、あるいは市民からの駆除相談の増加にしても、「本当に巣そのものが増加している」かどうかはまた別かもしれません。単に関心が高くなったりスズメバチの知識が少ない人がそれまで相談されないレベルだった巣まで相談するようになったり、駆除をするようになっただけかもしれません。特に何かと責任を問われることに敏感な行政は、その巣を駆除すべきかどうか判断する前に、「放置して苦情が来たら大変だ」とばかりに駆除をしているだけかもしれませんし。 スズメバチというのは先ほど書きましたとおり、その巣の周辺の昆虫を狩っているわけですから、巣を駆除すると、本来、そのスズメバチに狩られていたはずの昆虫が生き延びることになります。そうすると、これまで影響が無かった農作物や園芸植物を食べられたりという影響も出て来るかもしれません。 また、いくら攻撃性の強いスズメバチでも、正しい対処をしていれば早々に攻撃してくるほど凶暴ではありません。 そういう知識は以前にも書いたように、報道機関がきちんと伝えることが、視聴者や読者らの利益には大きいのですが、「スズメバチと仲良く」という見出しよりも「スズメバチに刺されて○人がケガ」とか「殺人蜂の恐怖!スズメバチハンターに密着!死闘!」というテーマの方が視聴率やらが稼げるという商売っ気と、記者自身の不勉強さで、役にも立たない情報だけが独り歩きしたりします。 この新聞記事も、「スズメバチは毒性が強く、刺した人間を死に至らしめることもあり、」と、明らかに誤報があります。 スズメバチの毒は強力で、アシナガバチらよりもその体内に蓄えている量も倍以上ですが、例え10匹分に刺されても、毒そのもので人間の致死量になるということはありえません。 スズメバチに刺されて年間3〜50人程度毎年亡くなっているというのは、スズメバチ毒に対するアレルギーショック=アナフィラキシーショックがほぼ多数を占める原因で、これは過去に刺された経験が無く体内にスズメバチ毒に対する抗体が無かったり、そういう体質でない場合は死ぬことはありません。 オオスズメバチの毒の場合は、1匹でも量が極端に多く、その分痛みも激しく、また心拍数を上げるなど心臓のショックを引き起こすことはあります。 つまり、毒性そのものの強さとは限らず、またどのスズメバチも同じような注意が必要とも限らないわけです。 この記事も、記者が不勉強なのか、あるいは「スズメバチで死ぬぞ。怖いぞ」というセンセーショナルな記事にしたかっただけ(おそらく、少しばかり取材しただけをそのまま考えもせずに記事にしただけ)でしょう。
こういう中途半端な記事は、読者にとって不利益情報であり、こういう小さいことのように思えるものが、駆除件数や駆除相談件数の押し上げにもなっているのではないか?と思ったりします。 |
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7月26日の佐賀新聞の記事ですが、こういう記事を見ると、有名な大学を卒業しているであろう新聞記者でも、オールマイティに物事を知っているわけではないとか、厳密な意味にまで正しいと言えるほどの「覚悟」が必要なのにそれらが無いということを感じさせます。 むろん紙面の都合もあるのでしょうが、こういったことは私たちがマスコミ報道を入手した際によくよく念頭に置いておかなければならないということでもあります。 スズメバチに注意 夏に入り活動活発化 本格的な夏に入り、スズメバチの活動が活発になっている。巣は民家にも作るため、注意が必要だ。 佐賀市天神の「どんどんどんの森」内の市有地では、植え込みの剪定(せんてい)中にソフトボール大の巣が見つかり、早速駆除された。 佐賀市環境課によると、巣は民家の軒下や天井裏、植え込みに作られることが多い。飲みかけのジュースを目当てにスズメバチが集まってくるケースもあるという。同課では「巣を見つけたら近づかず、すぐに専門の業者(消毒業)に連絡を」と、注意と対応を呼び掛ける。…え!? たった、これだけの記事ですか? 要するに、「夏はスズメバチの活動が活発になり、自宅周辺にも巣を作るので、もし見つけたら、専門業者の手配をするように市環境課でも話している。」というものだけ。 この記事を書いた記者の目的は、おそらくはスズメバチによる事故をできるだけふさぎたいという真摯なものだと思うのですが、しかし、こういう中途半端な記事はいかがなものかと。 私のブログや私が回答している知恵袋をご覧になられた方の結構多くは、「スズメバチといえども、巣にむやみに刺激を与えなければ、それほど危険ではない」というご理解をいただいていると思いたいのですが、実際にそうです。 ですから、この記事でいうように、そりゃあ慎重に、念には念を入れて専門の業者さんを呼ぶという対応は、最も安全な、不特定多数が読む新聞には模範解答的なものです。 しかし、実際は使っていない物置の中とか、人の手が届かないような高い屋根の軒先に作られたとか、そういう普通にしていればスズメバチの巣に人が近づけない・近づかなくとも良い距離であれば、'''必ずしも無理に撤去、業者さんに専門業者さんの「手配」までなんてする必要は無いのです。 それなのに、記事ではすべからく専門業者に依頼するように呼びかけている。 これは、どうかと思うのですよね。 専門の業者さんでも民間ですから、何かあっておよびすればするほど、別途お金がかかることもあります。当然ですよね。忙しい中、1人や2人が現場にくれば、それだけで人件費が発生するのは常識です。 それなのに、「巣が自宅に作られたら専門業者を呼んで全て撤去すべし」というような表現はよろしくないと思います。せめてその費用についても触れるべきでしょう。 記者さんは「良かれ」と思ってこの記事を書いたのだとしても、結果的に撤去が無償ではないことから、せめて撤去は有料であることに触れるとか、必ずしも撤去しなくと良いお場合がありそれがどんな場合なのか、そいう読者が選択して行動するには重大な情報でしょう。 記者さんは、ご自身が書く記事にそこまで影響があるとは思っていないとか、そこまで気づけないのかもしれませんが、そうだとすれば、それはそれで問題ですね、 記事としては、読み手が誰であっても「間違いではない」内容かもしれませんが、「親切でも、誰にでも正しいわけでもない」というものです。 しかも、恐ろしいことに、それはこのスズメバチの記事だけがそうとは限らず、私たちの社会や未来を託すような選挙なんかにおいて、特定政党や政治家についてのこんな「スズメバチ」並みの中途半端な記事があったとしたら、「駆除費用」どころではない損害をこうむりかねません。 また、そういう「スズメバチといっても、必ずしも駆除の必要なはない」ということは、単に費用面だけではなく、何度も言うように「命」としても失われずに済むのですから、先に書いた「鹿児島県のマングースの根絶計画」のように、個別事情をよく調査してからでも良かったのでは?と思います。 無知なのか無責任なのか、結果的に中途半端な記事を書いて紙面の掲載するということは、それだけ多くの被害をもたらす影響力の大きいことですから、記者とか報道機関というのは常にそういう恐ろしいものを持っていると自覚し、慎重にかつ日々研鑽を積んで欲しいものです。
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たまに、新聞記事の引用やその論評に頼らない記事を(笑)。 Yahoo!の知恵袋でスズメバチに関するご質問に回答していると、たまに、「巨大なオオスズメバチを見た」「でかいハチが飛んでいた」などという質問を見かけます。 春から初夏にかけては越冬から目覚めた女王蜂が飛びまわり、巣作りを開始する時期です。一般的にスズメバチの女王蜂は働き蜂よりも大きいので、なおのこと、大きく見えるはずです。 そもそも「オオスズメバチ」というインパクトが、実際よりも大きく感じさせるものでしょう。見慣れた私でも、オオスズメバチになるとその圧倒的な迫力に緊張が走ります。 たまに、「10cmはあった」などという目撃談もありますが、さすがにちょっとにわかには信じられません。もしそれが本当ならば、昆虫学会がかなり興味を示すことでしょう。 10cmともなれば「普通」のオオスズメバチの倍かそれ以上の大きさになるわけですから、単純に言って、飛行が難しいと思います。「普通」サイズでさえも大型ゆえ飛行が得意な方では無く、すばやい動きをする昆虫を捕えるよりも、やはり大型で動きの遅い昆虫を襲うのが得意なくらいなのですから。 単純に、体長が2倍となれば縦×横×高さ=2×2×2=6なので、体積は6倍になり、重さも同じ密度ならば6倍になるわけですから、さすがに羽が倍の長さになった程度ではこの重さを支えることはハッキリ言えばできないのでは。 と、いうことで、さすがに10cmものオオスズメバチはありえないと思うわけです。 人間、何かの大きさをとっさに目測で正確に測るというのは難しく、ためしに定規を使わずに○cmの線を引こうとしてもなかなか正確にいかないと思います。「cm」という単位じたい、意外にどのくらいか理解・意識していないところが、こんな目測を誤らせることにつながります。まして、飛行しているものを目測するのは難しいです。 それと、「逃がした魚は大きい」というような心理でしょうか。話をするときの「尾ヒレ」というところかも。 また、初夏の山で、エゾハルゼミが人の気配に驚いて飛び立ったとき、時期的にセミは盛夏のものと思っている人には、一瞬相当大きなハチか何かと見えてしまうこともありましょう。 さて、スズメバチ研究の第一人者・松浦誠先生によれば、オオスズメバチ女王蜂で43〜45mm、働き蜂で27〜40mm、オス蜂で35〜40mmとされています。 もっとも、私がオオスズメバチを駆除した経験上では働き蜂で40mmに達しているのは無く、せいぜい35mmほどの大きさでした。 このように大きさにバラツキが出るのはなぜでしょうか? ヒントは、上記の松浦先生のサイズ紹介。「女王蜂」や「オス蜂」に比べ、「働き蜂」の大きさが幅広いことがわかります。 これは、種族の特性もありますが、「幼虫期の栄養状態」があります。 春〜初夏くらいまでは、女王蜂がたった1頭で巣作りと子育てを全てやります。 従って、巣をどうにか形作り、そこに最初に生んだ卵から孵った幼虫には、女王蜂は巣を作りながら1頭で数頭の幼虫全てに与える食べ物も集めなければならないわけで、幼虫への栄養は最小限にしかまわりません。食糧となる昆虫じたいもまだ少ないでしょうし、梅雨の時期になれば狩りに出かけることができない日もあります。 このため、サイズ下限値に近い小さい個体ばかりになる傾向があります。 これは、冷夏などで幼虫の食糧となる昆虫全体が少ないような場合は初夏以降でも引き続き小さい働き蜂が多い傾向があることからみても「幼虫期の栄養状態」と「働き蜂の体長」が比例関係にあると言えます。 逆にいえば、既にたくさんの働き蜂が生まれて食糧確保が順調な体制となり、また食糧となる他の虫が多いような場合(季節)は栄養状態が良く、大きめの個体に成長します。 実際、オス蜂や女王蜂が生まれるのは秋〜晩秋の、最も勢力が大きく食糧となる昆虫が多い時期です。ですから、幼虫に与える栄養が一定なことも、上記サイズにあまりバラツキが出てこない理由と考えられます。 こういったことから、スズメバチの種類にもよりますが巣を駆除した後、働き蜂の大きさを計測し、その他の場所のものと比較すると、その種類のスズメバチが狩り集める種類の昆虫のその巣から半径1〜2km以内の生息数の多寡が推し量れます。 スズメバチは、自分の身体の大きさに合った昆虫を襲って食糧にしますので、その種類ごとにどんな系統の昆虫を集めるか、おおよそ検討がつきます。オオスズメバチならば甲虫類とかセミとか、大型昆虫ですね。 その食糧となる昆虫の種類が絞り込めれば、その昆虫が食糧としている他の昆虫や植物の生育・棲息状況も推測する目安になり、スズメバチの働き蜂の大きさ1つから、いろいろな様子を推測することができます。 むろん、スズメバチが巣づくりをうまくさせているということは、その地域が巣を維持できるほどの昆虫があり、それらが生息できる程度の植物などの環境があるということにもなり、巣はおそろしい迷惑なものに思えますが、自然環境を図るバロメータにも使えます。 巣を発見できず、個体だけを捕えることができた場合でも、スズメバチの行動範囲は種類にも寄りますが巣から数百mから2km以内といった程度がほとんどなので、やはりその発見した場所周辺の大雑把な目安にすることはできると思います。 ちなみに、この写真は再掲ですが、以前、四国にお住まいの方からいただいたオオスズメバチの標本。 形を整えるために身体を伸ばしているのですが、かなり大きな個体ですね。 ****************************************** 昨日、私が席を外している最中に事務室に入り込んで一時大騒ぎになりました。 その原因は、キイロスズメバチ。わざわざ離席中の私が探し出されて呼び戻され…。私はスズメバチを必要以上に恐れないのですが、まだまだ凶悪な猛獣のように見る人は多いようですね。 本当はこの巣作り初期には特に貴重な戦力の働き蜂を逃がしたかったのですが、来客も多くあり、捕えるのに失敗すると騒ぎが大きくなってしまいそうだったために、やむを得ず叩き落としました。どんな小さな虫でも、殺したり傷つけるというのは後ろめたく嫌なものです。 さて、同じく松浦先生によれば、キイロスズメバチの大きさを「女王バチ25〜28mm、働きバチ17〜24mm、オスバチ20〜24mm」とされています。やはり、働き蜂の大きさは幅広いですね。 で、計測したのですが、やはり、小さい。 スズメバチの中でも小型種とは言え、小さい。…2cmにも届きません(上司が早く捨てろとうるさい&仕事中だったので、きちんと計測と撮影できずにすみません) 働き蜂としては、上記松浦先生のご紹介の範囲の下限値ですね。時期から言っても、当然、これは巣作り初期の栄養が行き届かない個体ということです。 これがもし、夏ごろに捕えていれば、「ふうむ、アブやハエ、トンボなどが今年は少ないのかな?」という仮説が出るところ。 ちなみに、次の写真は去年の8月20日に駆除したときのキイロスズメバチ。 これも仕事中だったのできれいな計測ではありませんが…2cmを少し上回るほどで、時期による勢力・栄養状態の差ということがわかります。 それにしても、やむを得ないとはいえ、かわいそうなことをしました。 この時期はキイロスズメバチの巣でも、まだ10頭未満の戦力でしょうから、この1頭でも今後の繁栄のためには重要な戦力でしたから。 キイロスズメバチの普通の巣1つでも、1シーズンで数十万とも数百万ともいわれる昆虫を狩り集めるという試算もあります。キイロスズメバチは小型のスズメバチなので、ハエやアブ、トンボなど、比較的小さい昆虫を狙います。 逆にいえば、巣を1つ駆除するということは、単にキイロスズメバチの巣を根絶やしにするだけでなく、それらの数に及ぶ昆虫の命も左右することになるということです。 狩り集められる昆虫には人間にとって農業・衛生害虫に区分されるものもありますから、巣を駆除した結果、ハエが増えた、などという影響もあるかもしれません。 静岡県のお茶畑では、お茶につく昆虫を狩り集め攻撃性の小さいクロスズメバチを積極的に保護しており、隣県の長野や岐阜辺りではそれを「地バチ」「はちのこ」として食べるために巣を採りに来るのですが、それを牽制しているほどです。それほど、人間の経済・社会活動に少なからぬ影響がスズメバチにはあるといえるのです。 ですから、駆除は生命に対する畏敬というだけではなく、人間の利益上からも慎重にすべきものと思います。
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Q10:スズメバチは虫除けスプレーは効きますか? A10:市販の虫除けスプレーのほとんどは、効果はありません。 やたらとやって来るスズメバチに困って、「スズメバチの忌避剤はありませんか?」という質問もよくいただきます。 ハイキングに行くときにはよく「虫除けスプレー」を塗りますが、これにはディートという成分や天然ハーブを使っているものとか、ピレスロイド系薬剤を使ったものとか、いろいろな虫除けがあります。 これらは普通に飛んできたスズメバチには一定の効果は期待できるのですが、たとえば知らずに巣を刺激したとか、飛び回っていたのを恐れて手で追い払おうとして刺激を与えたとか、そういう興奮させてしまった場合には、これらの効果は全くないと言って間違いありません。 猛禽類の「ハチクマ」という野鳥が、スズメバチの巣を襲ってヒナ鳥の食料にすることが知られているのですが、その襲撃の様子を見ていると、スズメバチらはハチクマに攻撃することなくパニックになっているだけに見えます。 一部説明では、「厚い羽毛が毒針の攻撃を遮っているのだ」とされていますが、そもそも攻撃されているように見えません。 ツキノワグマも、スズメバチの巣を好んで食べるのですが、ノイバラや枯れ枝のトゲなどもものともしない針金のような剛毛と筋肉に覆われているツキノワグマでさえも、スズメバチに襲われればかなりうっとおしい様子を見せます。しかし、ハチクマの場合は一向にそんな気配は見られないのです。 このことから、ハチクマには、スズメバチが何か嫌がるようなにおいを発しているか、スズメバチが攻撃するときに連絡しあうフェロモンという物質を無効化する何かを発しているのではないか?という説があります。 しかし、残念ながら、まだそれが何か?というものはわかっていません。 ハチクマを育てている動物園の飼育員さんのお話しでは、アンモニア臭のようなにおいを感じるということですから、それがカギかもしれません。しかし、反面、そのような刺激臭のようなにおいがカギであるならば、スズメバチ除けの製品化も、技術的に可能であっても、実用的には向かないかもしれません。 私も今後、市販の虫除けやアンモニアを使うなど、スズメバチが忌避するものを身近なものを使って観察したいと思います。
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