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先日、熊の冬眠からの目覚めについて記事を紹介したときに、ミツバチの養蜂箱についても少し触れましたが、5月11日の読売新聞の記事に、群馬県内におけるミツバチ価格高騰を伝えるとともに熊被害に触れていましたので、ご紹介します。 ミツバチ高騰 ダニやクマの被害で 県内の養蜂農家で、ミツバチがダニやクマなどに襲われる被害が相次いでいる。近年のミツバチ不足に追い打ちを掛ける形となってミツバチの価格は高騰。果物や野菜の花粉交配に使う農家にも影響を与えているほか、転売目的とみられる巣箱の窃盗事件も発生している。 県内の養蜂農家などによると、蜜が詰まったミツバチの板状の巣(縦約15センチ、横約30センチ)の価格は、7、8年前は3000〜4000円だったのに対し、現在は1万円ほどに跳ね上がっている。 県内の養蜂農家約180人が加盟している県養蜂協会(前橋市)によると、価格高騰の最大の要因は、2007年秋に豪州から日本への蜂の輸入が伝染病のため禁止されたこと。日本は女王蜂の輸入のほとんどを豪州に頼っていたため、ミツバチの数が減少した。 さらに、主に冬場のダニの大量発生が事態に拍車をかけている。07年度は262箱の被害だったが、08年度は909箱、09年度967箱と急増。養蜂農家が長年使っていた駆除薬への耐性がダニにできたためとみられる。 昨年、巣箱の9割近くが被害にあったという渋川市の養蜂農家、福島紀男さん(65)は「壊滅的だった。ダニに栄養を取られて地面をはうミツバチばかりだった」とうつむく。 クマの被害も増えている。09年度は149箱の被害で前年比61箱増となった。沼田市の小林市郎さん(81)の飼育する巣箱は、毎年被害に遭い、例年1割程度がクマに食べられるという。巣箱の周りに電線を張り巡らすなど対策を講じてきたが、バッテリーが減って電力が弱くなる頃を見計らって、クマが巣箱を荒らすという。小林さんは「クマにやられることを頭に入れて、毎年余分に巣箱を作っている」と話す。 養蜂農家は冬場のイチゴに続いて3月以降、花粉の交配用にリンゴ、サクランボなどを作る農家に巣箱を貸し出す。小玉スイカの交配用にミツバチを借りている東毛地区の農協の担当者は「レンタル料は、数年前と比べて2倍近くの1箱2万円弱になっている。100箱購入すれば、単純に計算して100万円経費がかさむ」とこぼす。 高値になった巣箱を狙う窃盗事件も増えている。県内では昨年度、県養蜂協会が把握している限りで17箱(85万円相当)の被害があった。今年4月には、副業としてミツバチを飼育していた前橋市内の男性の巣箱2箱が盗まれた。転売目的とみられ、県養蜂協会は所有をはっきりさせるため巣箱に養蜂場名を書くなどしているが、いまだ有効な手段は練られずにいる。 (2010年5月11日 読売新聞)ミツバチの減少などについては以前、やはり少し書いたことがあったのですが、それは今回は置いておいて、熊の被害が増えているという記述です。 これが、先日も書いたように、養蜂がちょっとしたブームになって全体数が増えたからその分被害数も増えたのか? それとも養蜂家がその作業に慣れて来て今まで熊による被害と気づかなかったあるいは届け出をしなかったものを、熊と分かり届け出をするようになってきたからで全体数は本当は増えていないのか? 被害数が増えたといっても、その被害発生場所は同じ場所で養蜂箱を増やしたからなのかそれともあちらこちらで被害が出ている=被害発生地域が広がっているのか?(記事では同じ場所で養蜂箱を増やしていると思われる記述もありますので、それでは養蜂箱の被害がその分増えるのも当然とも言えるでしょう。) そういったことが記事からはわからないので、何とも言えません。 こういう統計を取るときは、全体の被害数や被害金額も大切ですが、被害割合とか被害地域の分布をも把握しなければ、実は全体数から見れば同じ割合の被害だった、という場合には、また少し違った見方も出て来ます。 しかし、いずれにしても被害数は増加傾向にあると警戒は必要でしょう。 それは、養蜂家自身の経済・精神的被害ももちろんですが、先日も書いたように春先のまだ食べ物が少ない時期にミツバチの養蜂箱を、山間部の住宅地付近に設置した場合は、それがその地域の春あるいは通年のメニューに組み込まれる=結果的に餌付けとなるという危険性があるからでもあります。 養蜂家におかれましては、そういう地域で養蜂をしようというときには、熊に食べられないように熊に対する基本的な知識を身につけて対策をすることが、盗難などを含めた経済被害防止と、そして周辺の人への危険防止・熊の誘引も防止ができるものと思います。 記事では電気柵についても書かれていますが、それは電気柵の選定と設置方法が問題があるように感じます。はるかに広大な農地での電気柵で効果を上げている地域も多いのです。また、熊は別にバッテリーの弱くなるころを見計らっているのではなく、やってきて、ショックが強ければ諦めて、弱ければ食べに入るというだけのことだと思います。 そういう、鳥獣被害への基本的な対策もご存じない・今まで必要無かった養蜂家の皆さんの記事でもありますが、養蜂がにわかにブームになってきて、そういう被害が増加しつつあるようなこの時勢だからこそ、養蜂家お1人お1人が熊を知り、対策方法をも学んで山間部での養蜂をしてくれませんと、日本の熊の新たな行動や新たな要因での事故などが始まるかもしれません。 私はこの養蜂と熊の行動について、ちょっと危惧しています。 それにしても、電気柵ではなく、猛犬用の大きな鉄のケージとか、熊捕獲用の鉄檻とか、そういうものの中に養蜂箱を入れた方が安価でメンテもあまりかけなくていいですし、ランニングコストもかからずに良いと思うのですが、いかがなものでしょうか?
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【ツキノワグマ・ヒグマ】
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私の興味のあるツキノワグマやヒグマについて、記載しています。
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先日、山菜取りの高齢者が熊に襲われる人身事故について書きましたが、幸い軽傷の事故ばかりの記事でした。 しかし、5月10日の信濃毎日新聞には、残念ながら重傷を負った人身事故が掲載されていました。 子連れ熊に襲われ男性負傷 区の境界線確認行事で入山 5月10日(月) 9日午前9時55分ごろ、中野市永江の山林で、同所の会社員伝田益夫さん(64)が熊に襲われた。ドクターヘリで松本市内の病院に運ばれたが、中野署によると、顔や腕をひっかかれるなどしており、重傷のもよう。命に別条はない。熊は子連れだったという。 同署によると、伝田さんは地元南永江区の役員12人とともに、山林内の境界線を確認する区の行事で入山。一団の先頭を歩いていた。襲った熊が雄か雌かや、連れていた子熊の数ははっきりしない。近くに熊の巣穴があった−との情報があるという。 現場は上水内郡飯綱町境で、近くに民家はない。雄か雌かわからない、ということですが、普通に考えれば、子連れは母熊=雌熊と考えます。むろん、子熊を守ろうと防衛のための先制攻撃だったのでしょう。 「命に別条は無い」とはあっても「顔や腕をひっかかれる重傷」ともありますので、そのケガが心配です。 熊の爪は鋭く、腕力がありますから、人間の皮膚を簡単に切り裂くことができます。ですので特に顔の場合はひどい傷になってしまい、場合によっては傷だけでは済まず顔の形や人相が大きく変わってしまうようなひどい後遺症に、肉体的にも精神的にも大きなダメージを受けてしまうこともあります。 無事な回復をお祈りするほかありません。 この事故の場合は山菜取りではありませんが、山中を登山道を外れて広範囲歩くと言う点では通常の登山とは違い、やはり熊には遭遇しやすくはなると思います。 12人の方の先頭という状況が1団にかたまっていたのか、ある程度距離が離れていたのかわかりませんが、多少はお互いに話をしながら歩かれていたかもしれませんし、会話が無くとも体臭のにおいも多くなるなど、お1人での行動よりはある程度熊に気配を感じさせることもできていたのではないかと思うのですが、「子連れ」ということで、足が遅く警戒心の薄い小熊がいたために、熊が人間の接近を察知をしていても、思うように逃げることができなかったのかもしれません。 また、この記事でわかることは、熊は人の人数の多寡では、攻撃するか否かを決めるわけではないということです。これは過去の事故例からもわかっていることです。 むしろ今回の場合は、子連れで、それに加えて大人数がいたことが、逆に熊をより心理的に追い詰め、攻撃に駆り立てる要素になったかもしれません。どちらかの要素だけであれば攻撃そのものがされなかったかもしれません。 しかし一方で、大人数でいたおかげで、熊からの攻撃の部位はひどいことになってしまったもののすぐに逃げ去ったかもしれませんし、救急の連携が図ることができたとも言えます。 これが1人や少人数で襲われていれば、病院到着までもっと時間がかかり、場合によっては大量出血など、命にかかわっていたかもしれませんし、攻撃そのものももっと長く攻撃されていたかもしれません。 いずれにしても、野山に入るときは季節を問わず、熊への警戒というのは大切ですね。 【追記 2010.5.12】 予想していたことが起きたと言いましょうか、山形県で山菜取りの高齢の方が顔に重傷を負うという人身事故が、直後に発生してしまいました。 襲われたのは昼間ということですが、11日のお昼頃は東北の日本海側から雨雲が立ち込めて来ていましたので、曇り空、少なくとも快晴ではなかったと思われます。熊は、朝や夕のほか、昼間でも曇りや霧の日に活動が活発化します。そういった要素も今回の事故と関係あるかもしれません。 毎日新聞の記事では「顔を負傷し重傷とみられる。」とありました。これらの報道からだけではどういう状況かはわかりませんが、ただ回復をお祈りするばかりです。。。 5月12日の読売新聞の記事です。 クマに襲われケガ 河北の湖でクマ男性襲われ負傷 11日午前11時49分頃、河北町岩木の引竜(ひきりゅう)湖付近で、山菜採りをしていた同町谷地中央、無職佐藤幸男さん(78)が「熊に襲われた」と、近くの消防を通じて寒河江署に届け出た。佐藤さんは顔面に裂傷を負い、病院に搬送された。 発表によると、家族の話から、佐藤さんは11日午前8時半頃から1人で山に入っていたところ、熊に襲われたとみられる。佐藤さんは、顔面から血を流した状態で、引竜湖から直線距離で約4・8キロ離れた消防分署まで自分で車を運転して助けを求めた。 県警地域課によると10日現在、熊の目撃報告件数は9件(昨年同期4件)。人家近くや道路を横切るところを目撃された例もある。同課は、▽ラジオや鈴を携帯し音を出して移動する▽足跡などを見たら静かに周囲から立ち去る▽残飯などのごみを山中に捨てない――などと呼びかけている。 (2010年5月12日 読売新聞)山形県内では先日、相次いで熊が目撃されたという記事を紹介したところですが、こういう報道を誰もが少しでも敏感に感じていたら、もっと注意されて山にお出かけになり、事故も回避できるのかもしれません。 被害者の方も、そのご家族も、山菜取りにはこういう事故が相当起きているという事実を認識し、最大限の防止策でもってお出かけいただきたいですね(私は山菜取りそのものからして、賛成・推奨はとてもできませんが)。 しかし、この山形県などで目撃が多い傾向というのも、人が熊の生息域に入るからなのか、その逆なのか、あるいは熊が増えているのかで、今後の対策が変わって来ますね。 去年、福島県でも目撃情報が増加していると伝える良質な記事を紹介しましたが、こういう遭遇事例の細かな分析が、今後の対策には欠かせないことでしょう。 【追記 2010.5.15】 5月15日の読売新聞に、岩手県でまた山菜取りの方が熊と遭遇、重傷を負われたという記事が出ていました。 岩手の山林、山菜採り男性クマに襲われ重傷 15日午前9時50分頃、岩手県一関市大東町の山林で、山菜採りに来ていた同市舞川、運転手千葉久作さん(62)がクマに襲われてけがをしたと、一緒にいた男性から119番があった。 千葉さんは両腕骨折のほか、頭や顔に切り傷の重傷を負ったが、生命に別条はないという。 県警千厩(せんまや)署の発表によると、千葉さんは同日午前9時半頃から男性2人と山に入り、2人を先導。雑木の密集地を抜けた所で襲われた。 (2010年5月15日19時41分 読売新聞)両腕骨折と頭や顔に切り傷とは、かなりひどいおケガです。 これらの一連の報道で見てきた重傷や軽傷、目撃情報などにおいて、どの程度事故回避のための防御をしていたのかわかりませんが、ここ数日だけでここまで山菜取りでの事故が続くと、いい加減にウンザリしてきます。連日このように少し調べればわかる、山菜取り最中の事故を、少しは自分のものとして認識し、事故防止の自己責任を果たそうとは思わないのだろうか?と、不思議でなりません。 高齢の方が被害に遭うのが多いのは、むろん、余暇が圧倒的に多く、野山に入って山菜を取る趣味も高齢者が多いからという分母が大きいからでしょうが、そういう情報弱者としての側面もあるかもしれません。しかし、家族などもいらっしゃるでしょうから、そういう人も、「父さん、山菜取りに出かけて事故に遭う人が多いようだよ」と、声をかけてはいないのでしょうかね?私でしたら、もし両親が山菜取りに行くと言ったら、必ず注意し、鈴や携帯ラジオを買い与えますが。 こういう事故が起きた場合は、できれば報道される側もその事故の状況をもう少し踏みこんでお調べいただいて、それで鈴やラジオなど、本人の防止状況はどうだったか?ということも少し注意して触れていただきたいです。むろん、被害者を非難するというのが第一の目的ではなく、それが次なる防止にもつながることが大いに期待できるからですし、それら基本的な準備をしていても事故が起きたという場合には熊の行動の変化などを知る上での参考情報にもなるからです。
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先ほど、「報道機関は熊の出没情報を流すのも大事だが、基本的な対応も合わせて報じるようにしてほしい」と書きましたが、その後、立て続けに対応をも合わせた報じている記事が配信されました。 まずは日テレNEWS24(秋田放送)から。 クマの出没相次ぐ 予防対策を (秋田県) 県内でクマの目撃情報が増えています。 今年は既にけが人も出ていて、県では予防対策を呼びかけています。 県内では4月中旬から、クマの目撃情報が出始めています。 8日夜は、大仙市南外地区の秋田自動車道上で、走行中の車とクマが衝突する事故が発生しました。5月6日には、美郷町と大仙市で、クマに襲われてけが人も出ています。 県によりますと、クマの目撃情報は例年、5月から10月に集中。人が襲われるケースでは、山菜やキノコ採りが最も多くなっています。 県では、クマが左官に行動する季節になったことを受けて、被害の発生場所や統計をホームページ上で公開。山での単独行動はしない、音を出しながら行動する、足跡やフンといった痕跡が見つかったら引き返すなどの予防対策を呼びかけています。 [ 5/9 11:55 秋田放送]「左官」とあるのは「盛ん」の誤入力だと思いますが、影響力と速報性の高いテレビで報じてもらうのは良いことですね。山に行く人も最近はラジオだけではなくワンセグ携帯電話を持って行く人もいますので。 続いて、5月9日の毎日新聞山形県版です。 先日、毎日新聞は好きではないと書きましたが、地方によってはこのように頑張っている記事も見られます。 クマ:行楽や山菜採りシーズン、注意呼びかけ ラジオなど音の出るもの携行を /山形 行楽や山菜採りで山に入る機会が増える時期。ツキノワグマが山菜を探して動き回る時期でもあり、県みどり自然課は「山菜探しに夢中になり注意が散漫になると、クマと遭遇し襲われる危険が高まる」と注意を呼びかけている。 遭遇しないための方策として、ラジオや登山用のカウベルなど大きな音が出るものを持ち歩く▽においがクマを呼び寄せる食べ残しやごみ、食べ物の包装紙は持ち帰る▽子グマを見たら、近くに神経質になっている母グマがいるので、できるだけ早く遠ざかる−−としている。 遭遇した場合は、背中を見せずに、ゆっくりと後ずさりして距離を取る。クマは「逃げる」ものを追う習性があるので、急いだり、背中を見せては危険だという。また「死んだふり」は、クマが興味を持ち、寄って来る可能性があるので、逆効果だという。 襲われた場合は、頸動脈がある首の周囲を手で守り、しゃがんでじっと動かない。「クマも人間が怖いので、じっとしていれば退散していく」という。昨年5月には、金山町で山菜採りの男性がクマに襲われ軽傷。07年5、6月にも大江町と小国町で山菜採りの男女が襲われ重軽傷を負っている。【和田明美】 毎日新聞 2010年5月9日 地方版「遭遇した場合」だけではなく、「遭遇しないための方策」と「襲われた場合」まで、基本的なことは全て書かれており、まとまっていて良い記事ですね。 「熊も山菜を探している」と伝えることで、山菜取りをする方ご本人だけではなく、その知人やご家族が注意するなども期待できます。 【追記 2010.5.15】 5月15日の読売新聞に、甲府市での熊の出没を伝える記事に、少し観点を変えた記事がありましたので紹介いたします。 甲府・湯村にクマ出没 温泉街近く今年度初旅館「風評被害心配」 甲府市湯村で14日午後2時50分頃、通行人の男性が体長約1メートルのツキノワグマ1頭を目撃し110番通報した。クマは湯村山に逃げ、けが人はなかった。現場は湯村温泉街近くの住宅地。同市が防災無線で注意を呼びかけたほか、甲府署員が付近をパトロールした。 同市森林整備課によると、通報の直前に近くの公園で植木の刈り込み作業をしていた同市職員も同一とみられるクマを目撃していたという。同市に寄せられたツキノワグマの目撃情報は、今年度初めて。昨年度は計18件の目撃情報があったが、いずれも山間部だった。 湯村温泉の「旅館明治」社長窪田義明さん(52)は「こんなところにクマなんて聞いたことがない。風評被害が気になる」と話す。現場近くに住む、4歳の長男がいる主婦斎藤真子さん(33)は「子どもを公園に連れて行くのに不安。いい対策はないでしょうか」と心配していた。 一方、ある旅館の主人は湯村山付近では数年に一度はクマが目撃されていると指摘し、「人を襲わずに逃げているし、特に心配していない」と静観していた。 (2010年5月15日 読売新聞)110番通報というほど緊急性があるのかどうか記事からはわからないのですが、行政機関は休みでしょうから最寄りの交番などがわからなければやむを得ないでしょうね。 目撃されたのは状況からして、2か所で目撃されたのは同じ熊という可能性は高いでしょう。どちらが最初に遭遇したのかわかりませんが、いずれも熊に刺激を与えなかったので、目撃者も、そして次に遭遇した人も襲われずに済んだと思われます。 旅館の社長としては経営を心配するのは当然かもしれません。小説や映画の「ジョーズ」を思い出します。また、お母さんとしてはお子さんの心配をするのは当然でしょう。 しかし、旅館の責任者としては、そういう事実は事実として受け止め、もちろん既にお考えだとは思いますが、お客さんにどう注意を呼び掛けるのか?ということも事故が起きる前のこういう予兆の段階で真剣に考えるべきでもあるでしょう。 温泉地近くの住宅地というので、いつものgogleマップで甲府市湯村を見ると、確かに住宅街ではありますが、山間部に接した地域で、何らかの要因で迷い出て来てもそれほど不思議でもありません。 ですので、お母さんの心配はもちろんかもしれませんが、元々そういう場所にお住まいということを自覚され、むろん住民生活の安全を守るのは行政や警察の仕事ですが、大切なお子さんを守るのはまずご家族なのですから、何かいい方法を教えてもらおうというばかりではなく、しっかりとそういうことを調べに動くという姿勢も必要でしょう。 私が特に印象に残ったのは、記事最後の匿名の旅館のご主人のコメントです。
あまり過剰に騒ぎたてることなく、しかしそういうことを知らない人には基本的なことをそっと教える。そういう態度が、山間地域での旅館サービスとしては基本的なことかと思います。 |
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先ほど書いた記事で紹介しきれなかった報道を、参考資料として紹介いたします。 4月22日の東京新聞です。 【群馬】 クマ出没、池田小 中学校に警戒通知 沼田市教委 2010年4月22日 沼田市下発知町の民家に近い畑で二十日にクマの目撃情報があり、市教育委員会学校教育課が通学区域にある池田小学校と池田中学校に警戒するよう文書で通知したことが二十一日、分かった。 文書では児童・生徒の集団登下校やクマよけの鈴の携帯などを呼び掛けている。学校側は児童・生徒を通じ、保護者に連絡した。 市教委がクマ対策で注意を喚起する文書を小中学校に通知したのは本年度初めて。 (山岸隆)学校ですから、熊への具体的な注意を呼び掛けるとともに、これを機会に熊を含めた環境教育を行うというのもありかもしれません。 5月6日の山形新聞の記事は、県内各地での熊の目撃情報を紹介されています。 県内、クマ目撃相次ぐ 2010年05月06日 12:34 【尾花沢】 5日午前7時55分ごろ、尾花沢市毒沢でクマ1頭を目撃したと、車で通り掛かった男性から尾花沢署に通報があった。 同署によると、クマは体長約1メートルで、国道13号の猿羽根トンネル南側入り口の上を東に向かって歩いていたという。同署はパトカーなどで付近の住民に警戒を呼び掛けている。 【米沢】 5日午前10時15分ごろ、米沢市赤崩の市道で、車で通行中の市内の男性が子グマを目撃したと米沢署に通報した。 同署によると、現場は関根小赤崩分校から約900メートル北側。男性が北進中、右側の杉林から道路に向かってくる子グマ1頭を見つけた。クマは杉林の中に引き返していったという。同署は付近のパトロールを強化し、注意を呼び掛けている。 【朝日】 5日午後1時半ごろ、朝日町大暮山でクマ1頭を目撃したと、近くに住む男性(70)が寒河江署に届け出た。 同署によると、男性が農作業中、大暮山公民館から約200メートル北西の原野で体長約1.5メートルのクマを見つけた。クマは山の方向に逃げていったという。民家が近いことから同署は付近をパトロールし、注意を呼び掛けている。山形での目撃が大量に報じられているのは、「山形での生息頭数が多い」のか、「山形では人と熊の活動域・生息域が重なっていることが多い」のか、「山形では、そういう目撃があった場合には通報するという習慣がかなり根付いてくれている」のか、いずれなのでしょうか。 危険なのは、「目撃情報が多い=生息頭数が多い」とは限らないということを忘れることで、単に人あるいは熊の行動の変化によって接触する機会が増えているだけかもしれない可能性を除外することは、駆除、同時に、保護、において、誤った結論を導きます。 目撃情報を多く掲載・羅列するのも良いのですが、掲載記者さんはここまで事例をあげておきながら、では、熊に遭遇しないようにするためにはどうすれば良いのか?とか、遭遇してしまった場合には基本的にどうすれば良いのか?ということを読者に伝えるということは思いつかないのでしょうか? 報道の使命というものは、事実を伝えるだけで良いとは思えず、事故を未然に防ぐという役目も担っていると思うのですが。 5月5日の東奥日報では青森での目撃情報を伝えています。 2010年5月5日(水) 碇ケ関でクマ目撃 5日午前7時半ごろ、平川市碇ケ関久吉蕷ケ平の久吉ダム水道企業団管理センター付近で、体長約1メートルのクマが道路を横断するのを、通りがかった弘前市の男性(66)が目撃、黒石署大鰐分庁舎に通報した。 同署によると、付近に民家はないが、たけのこの里オートキャンプ場などがある。同署が付近をパトロールし、平川市などに連絡して警戒を呼び掛けたこの場所をGoogleマップの航空写真で見ると、熊が目撃されて当然という地域ですね。 しかし、キャンプをする人への安全のために呼びかけるのは大切です。こういう目撃情報は速やかに周知するよう、報告や報道は大切です。 しかし報道する際には、山に行って、山に熊がいるのはある意味当たり前ですので、報じるときに過剰なまでのセンセーショナル・大げさにならないようにするという注意も、必要でしょう。 5月2日の日テレNEWS24では、山菜取り中の目撃を伝えています。 にかほ市象潟町の山でクマが目撃され、警察ではブナの森を訪れる観光客などに注意を呼びかけています。現場は、にかほ市象潟町横岡の横岡第一発電所の近くの山のなかです。3日午前8時15分ころに山菜採りに来た人が体長およそ1メートルのクマを目撃したものです。 【後略】山菜取りと朝という組み合わせですね。遭遇しやすいという事例です。 5月1日の日刊スポーツの記事でも、山菜取り中に立て続けに被害が出たことを伝えています。 クマに襲われ、山菜採りの2人けが 1日午後2時ごろ、新潟県阿賀野市の山林で、山菜採りをしていた同市の自営業上田芳克さん(60)と同市の会社員遠藤栄一さん(60)が相次いでクマに襲われた。上田さんが両手首に、遠藤さんが右脚に軽いけが。 阿賀野署によると、2人は別々に山菜採りに来ていた。上田さんは「下山途中、子連れのクマに襲われた」と話している。襲ったのが同じクマかは不明。(共同) [2010年5月1日22時16分]こちらも軽いケガで済んで何よりですが、山菜取りと年輩の方という組み合わせです。 普通に考えれば、先ほど紹介した大仙市での事故と同様、同じ個体であると考えるのが妥当だと思います。最初の遭遇で興奮してしまい、次の事故にもつながったと推測することも可能です。 この事故の場合はどうかわかりませんが、山中で熊に遭遇した場合、最初の対応を誤って興奮させてしまうと、遭遇した人ばかりではなく、他の場所を歩く人にまでその余波が行って二次被害をもたらす場合もありえます。 山に入る人は、熊との遭遇を避ける方法や、遭遇した場合の基本的な対処方法、遭遇した場合の報告をするなど、そういった基本的な知識やマナーを身につけるということが必要でしょう。 【追記 2010.5.13】 5月13日の産経新聞に、栃木県での事故が紹介されました。
クマに襲われ男性軽傷 栃木 2010.5.13 17:49 13日午後2時5分ごろ、栃木県日光市と鹿沼市の市境にある薬師寺岳の山頂付近で、埼玉県所沢市東所沢、保険代理業、森田準之助さん(78)が、クマに襲われ、右太ももに軽傷を負った。 県警日光署の調べによると、森田さんが1人で写真を撮りながら下山していたところ、親グマと遭遇。右太ももをかまれた。その後、子グマ2頭も襲ってきたが、森田さんがクマを足でけるなど威嚇したところ、3頭とも逃げたという。 同署によると、森田さんは18人のグループで、朝から薬師寺岳を登っていた。高齢な方の事故ですが、昼間での事故です。天気が悪いという情報は聞いていません。また、山菜取りではなく登山のようです。 この事故の要素は、比較的大勢の登山ではあっても、被害者はお1人で行動されていたところであったことがまずポイントでしょうか。それと、平日であること。まだ春の山ですし平日ですから、登山をしていた人は週末よりは少ないでしょう。まして、月曜、火曜、水曜日と続いての木曜日ですので、登山道でもこの前の日曜日から時が過ぎて、ひと気が無い日が続いて熊も登山道周辺を徘徊していたのかもしれません。 事故の詳細がわかりませんのでこれも推測だけですが、様々な要素をこう推測することで、事故や熊の行動も推測することにつながります。 |
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熊の冬眠明けは、冬眠前から冬眠明けの気候などに大きく影響を受けるようですが、概ね4月初旬から下旬にかけてが多いようです。 この時期は、高山では春スキーや登山、里山などでは山菜取りなどが始まって来る時期でもあります。 昨日も書きましたとおり、夏は鈴や熊用スプレーなどを持って対策を取る人が多いものの、冬や春先はその警戒感が緩むこともあって、遭遇しやすく、また、植物が生長途中ですので熊も身を隠す茂みが少ない・人にとっては遠くまで見通せることができるために、目撃も多くあるように思います。 以前も書きましたが、この時期の山菜は冬眠明けの熊にとっては数少ない食料であり、それを探し求めて移動しています。従って、この時期に熊の生息域で山菜を取りに登山道を外れ山中を歩くということは熊に会いに行くようなものです。 まして、鋭敏な熊も採食中は集中力をそちらに向けていますし、人間の方も山菜を探したり取ったりすることに夢中であったりそもそもが山菜取りが感覚の衰えて来ている高齢な方が多くするためか、お互いがお互いの存在に気づきにくいということもあります。 高齢な方は一般的に朝が早いためか、山菜取りはなぜか朝早く=熊の行動時間)にお出かけのこともあるので、さらに一層遭遇しやすいと言えます。 ですので、結果として高齢者の山菜取り中に熊との遭遇・事故が多く聞かれるのだと思います。 そういう点では、そのとおり(毎年あるいつもどおり)の目撃事例がありました。 5月8日の北日本放送の報道です。 小矢部市の山間部で親子連れのクマを目撃 8日午前、小矢部市の山間部で山菜取りをしていた女性が親子連れと見られるクマ3頭を目撃し、警察に届け出ました。この付近では3月にもクマの目撃情報があり、小矢部市では注意を呼びかけています。 小矢部市役所によりますと8日午前8時ころ、小矢部市菅ケ原の山間部で山菜取りをしていた女性が、親子連れらしいクマ3頭が林道を横切るのを目撃し、警察に届け出ました。 クマは親がおよそ1メートル、子どもが80センチほどと見られ、猟友会が調べたところ足跡も見つかったということです。 クマが目撃された場所からおよそ600メートル離れた場所には民家があるほか、3月31日には、およそ500メートル離れた場所でもクマの目撃情報が寄せられていて、小矢部市では広報車を出すなどして注意を呼びかけています。この遭遇がどれくらいの距離だったのかはわかりませんが、親子連れの熊と遭遇して事故が無くてお互い、何よりでした。 熊も体力が落ちている時期ですが、高齢な人もやはり体力や気力が充実していないという場合もあり、熊が人を加害するときは簡単な1つの要素だけではないでしょうけれども、遭遇した場合、動物の本能的なもので一瞬で女性や高齢者というのが自分にとって脅威か否かというのも判断し、そのときの遭遇状況にも絡んで、襲うか逃げるかを考えて行動するのかもしれません。 観光地で餌付けされて凶暴化しているニホンザルは、威嚇してみて人間の反応を見て、その次の行動(逃げるか、食べ物を奪うか)に移ることが知られていますからね。 少し前の4月13日の朝日新聞地方版では、昼間ではありますが、高齢者の山菜取りという構図での事故が報じられています。 クマに襲われけが 越前市 2010年4月13日 13日午後1時20分ごろ、越前市瓜生野町の山中で、夫婦で山菜採りに来ていた福井市の男性(67)がクマに襲われ、右肩をかまれた。越前署と県自然環境課によると、男性は3カ所をかまれて深さ約3センチの傷を負ったが、命に別条はないという。 【後略】命に別条が無くて何よりです。 この越前市のすぐそばでは、昨年も山菜取りの方が熊と遭遇してケガをしたという事故がありました。昨年の事故を踏まえ、行政間でどのような広報をしていたのか?ということや、昨年加害した熊との関連なども興味あるポイントです。 5月7日の毎日新聞では秋田県での事故を報じています。 クマ:2人襲われ軽傷−−大仙、美郷 /秋田 6日午前4時50分ごろ、大仙市横堀の道路上で、近くに住む農業の女性(76)がクマに襲われ、顔に軽いけがをした。大仙署の調べでは、クマは体長約1メートル。女性は一輪車を押していた。 また同日午前6時半ごろ、約4・5キロ離れた美郷町本堂城回の民家裏で、この家に住む会社役員の男性(58)が裏口から出たところクマにかまれるなどして顔に軽傷を負った。このクマは午前7時15分ごろ、現場から約300メートル離れた場所で猟友会メンバーにより射殺された。同署によると、クマは体長135センチだった。 同署は2件が同一のクマか判断できないとして、7日も大仙市の現場周辺で注意を呼びかける。【加藤沙波】早朝の5時前と6時過ぎですから、熊の活動時間であり、同時に人の活動はそれほどでもない時間帯ですので、秋田では大きな方の市街地でもある大仙市でも熊が出没し、遭遇しやすかったという背景があるのかもしれません。 Googleマップで秋田県大仙市横堀の航空写真を見て見ますと、山に囲まれた地勢ですが、現場地区は水田か畑のある、住宅も多い町中であることがわかります。食べ物を求めて移動していての遭遇になってしまったのでしょうか。 一方、美郷町本堂城回は、大仙市横堀の東側で、位置と時間から考えると、大仙市で女性を襲った熊が生息地である山に逃げようとする途中で男性も襲い、その後直ちに射殺されたと考えることは十分に整合性が取れます。 至急の通報と、それに応じて迅速な対応をされた猟友会の方々のお手柄と言えるでしょう。 最初に遭遇した女性がどういう状況だったかはわかりませんが、驚いて逃げようとされたとか、急に近距離で遭遇してしまったとか、そういう要素以外に考えられるのは、「高齢の方だった」ということもありえるかもしれません(早朝に行動されるのは高齢の方という別の見方も成り立ちますが)。 それらは何とも推測しかできません。 しかし1つ言えますのは、この大仙市での現場は市街地ということであり、山のすぐそばではないという事実です。熊が冬眠明けで食べ物を求めていたとは言え、ここまでやって来るというのは正直、少し驚きます。 山間部の集落などでは人口が減るまたは活発な行動の減る高齢者人口が増えるとその分、活動による人の気配や音などの活気が減るために、集落でも熊や動物がやって来るものですが、早朝とは言え、大仙市がそんな状態ともちょっと思えません。 秋田県では昨年、熊のそれまででは考えづらい行動が多く発生しましたが、そういう熊の行動パターンが、比較的自然の多く残っており、阿仁マタギ文化などが残る秋田県においても変化してきているというのが、何とも理解しがたくどこか不気味な感じがします。 行政の有害鳥獣駆除担当や猟友会の方の中には、「家畜や人を襲った熊は、必ず人をまた襲うようになる」と言われています。家畜を襲った場合には学習して(味をしめて)また家畜を襲う場合はあっても人を襲うとは考えづらいのですが、人を襲った熊の場合はそうなることは多いのです。 しかし、今回の場合、同じ熊であったとしても、昨年発生した乗鞍岳の事故のように、逃走行動の中で興奮した中での一連の行動と見る方が筋が通っているような気がします。「最初の女性を襲って成功したので学習して次の男性を襲った」というよりは、「最初の女性を襲って興奮し、逃げる途中にまた人と遭遇してさらに襲った」という、そういう要素ですね。 その点で、その後さらに陽が昇り人々が出歩く時間になってしまった場合には、乗鞍事故と同じように次々に被害者が出ることも十分予想ができ、捕獲などという悠長なことを言っている余裕はなく、また、ここで逃がした場合には人を甘く見る(学習した)ことも考えられ、射殺はやむを得ない当然の処置でしょう。 翌5月8日の秋田魁新報では、遭難や熊被害防止のための緊急の会合が持たれたことを伝えています。こういうことに緊急に関係者が検証して協議し、次に活かそうという姿勢は大変ご立派でありがたいことです。
クマ被害や山林での遭難防ごう 大仙署で対策会議 クマの被害予防や山林での遭難防止をテーマとした緊急対策会議が7日、大仙署で開かれた。大仙市と美郷町で6日、クマに襲われ男女2人がけがをした事故を受け同署が開催。署員と市、町の職員ら16人が出席し、非常時の連絡体制などを確認した。 菊地孝署長が「山菜採りシーズンを迎え、今後、クマに襲われる入山者が増える可能性がある。関係機関が情報を共有し、住民が被害に遭わないよう連携していこう」とあいさつした。 出席者は6日出没したクマへの対応を検証。美郷町の担当者は「クマを駆除する際、住民が周辺に集まり危険だと感じた。今後はクマに近寄らないよう呼び掛けるなど、広報の仕方を工夫する必要がある」などと話した。 署員は山で遭難したり、クマに襲われる高齢者が多いことを指摘し、「体調が悪い場合は山菜採りを控えたり、入山時は音を出してクマに人の存在を知らせることが大切。市民に自衛策を周知していきたい」などと話した。銃を使う駆除ですと、思いがけず事故などにつながることもありますので、心配で様子を知りたいという住民のお気持ちもわかりますが、屋内に留まるといった呼びかけは確かに重要ですね。これはどこの自治体でも基本的な対応として、共有しなければならないですね。 同時に、熊の行動変化の観察や、高齢者の方の山菜取りはこのように危険な要素があるという呼びかけもしていくべきでしょう。 |




