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私も既製品を利用して、自動撮影のまねごとをしている(現在、休止中)ので、動物写真家の宮崎学さんはその先駆けであり、独特でエネルギッシュな、好奇心旺盛で既存の「常識」にとらわれない撮影には一定の敬意を持っているところです。 さて、以前から氏の主張の中で、私はすっと納得できない主張があります。それは、「熊が増えている」というものです。 その根拠は、氏が自動撮影などを始めた昔よりも、今はたくさんの痕跡や撮影結果が得られる(枚数ではなく、写っている個体を識別しての個体数そのものが多い)ということからのようです。 8月4日の信州Live on(信濃毎日新聞)の記事からです。 身近にいる熊の生態知って 駒ケ根の男性が写真集出版 駒ケ根市在住の動物写真家宮崎学さん(61)が、中央アルプス山ろくの駒ケ根高原、近隣の民家や畑近くで撮影した熊の写真集「となりのツキノワグマ」を出版した。20〜30年前に比べ、一帯に熊が訪れた痕跡が増えていることに気付き、「大きなショックを受けた」という宮崎さん。熊の生活実態を照らし出そうと、ここ5年間で撮影した377カットが並んでいる。 ふんや食事場所などを頼りに見つけた熊の通り道に、センサーが感知すると自動でシャッターを切るロボットカメラを仕掛け、定点撮影した。写真集には、日中は多くの観光客が通行する登山道を歩く熊の親子をはじめ、高速道路から約15メートルの近距離で車のごう音にもたじろがずに栗を食べたり、ロボットカメラを抱え込んだりする熊の姿を掲載した。熊が実を食べた樹上の跡「熊棚」を民家のすぐ脇でとらえた写真も並ぶ。 「ツキノワグマは絶滅の可能性も指摘されているが、その定説をあらためて見直す必要があるのでは」と宮崎さん。写真集では、1982〜84年の3年間に駒ケ根高原で宮崎さんが撮影した熊は1頭だけだったが、この5年間では「さまざまな熊が毎日のように映っていた」と指摘。「少なくとも長野県では、20年前に比べ熊は著しく増えている」とまとめている。 写真集のタイトルは「足元の自然に無関心な人たちに、もっと目を向けてほしい」という願いを込めた。宮崎さんは「住民や行政、研究者らが、もう一度熊の生活実態を見つめ直す時期にきている」と話している。 B5判変型、160ページ。新樹社刊。2310円。 (提供:信濃毎日新聞)私はまだこの本を買わせていただいたわけではないので、もしかしたら本文中に記事以外の様々なことを書かれているのかもしれませんが、少なくとも氏のHPや講演会などでのご主張は、概ね上記記事中のとおりです。 宮崎氏の撮影された活き活きとしたツキノワグマの様々な表情・活動は、作品としてだけではなく、メッセージ性のある、さすがプロというものです。撮影なされた1枚の写真から多くのことが読み取れるものであり、例え同じ機材があろうと、私などは到底撮影できるような写真ではありません。同じ絵筆を持っても、誰もが傑作を描けるわけではないというのと同じです。 記事末尾の住民や行政などが身近な自然に関心を持っていただきたいというご主張は全く同感です。また、人家近くに出没して活動しているという、「昔よりも民家近くまで来るようになった」という実感と撮影結果からの結論は、私も同じです。行動が変化していることも。 さて、むろん、宮崎氏にはこの記事では触れられていないその他様々な根拠やご経験、簡単に言葉や理屈にできない現場での実感、山里の人々との交流などを総合しての上記記事中の結論なのでしょうけれど、上記記事を見る限りでは、「民家近くに現れる熊が2〜30年前より多くなった。だから熊は増えている」というご主張のように見えます。以前紹介した「マタギサミット」でも同じように増加を主張されたハンターさんもいらっしゃいました。 しかし、少なくともそれだけの根拠では「増えている」とは言えないのでは?と思うわけです。 例えば、全体数は以前から増えていなくとも、「昔は深山にまで広く分散していたのに、近年はそこに分散しているよりも人里に近い限られた場所にいた方が熊も食べ物が得られやすいので、棲みかを人里近くに変えただけ=狭い場所に一極集中してきたから」とも言えるわけです。 本来人の入り込まなかったような・宮崎氏でさえ足を踏み入れることができないような深山に棲んでいた熊が、木の実の一斉不作の年とか、イノシシやシカの増加などの影響で食べ物を求めて移動し、ひと気の無い人家まで来てそこで初めて果樹や農作物を食べることを覚えてしまい、それ以来、人里に通う・定住するのを1つの行動パターンとして持ってしまっただけかもしれません。だから、高速道路の音も定住化により慣れてしまったのでは?とも言えるでしょう。 なぜ、「人家近くで多く見られるようになった=熊の頭数が増えた」という推測になるのか、これだけではわかりません。 「小学校に行ったら、子供がたくさんいた。子供は増えている」なんてことを言われても、そりゃ子供が集まる場所だからたくさんいて当たり前でしょ?と。子供が増えているか否かを見極めるには、広い範囲の学校に行って、継続した時間の中で見ていなければ、分からないでしょ?ということです。ある学校では団地が開発されて児童数が増えているかもしれないけれど、古くからの団地では当然減る。そういう様々な地域性がある中で、少しばかりの学校の動向を見ただけでは、全体が増えているとか減っているとか、正確にわかるはずが無いですね。 ですので、「増えている」という根拠が、宮崎氏は何か所くらいの場所でどれくらいの期間観察をされて得た結論・実感なのか?ということが、(こういうことをいうと同氏は極めて不快感を持たれると思いますが)上記記事中程度の根拠の概要だけで、具体的データなどで示されない限りは、「そうなんだ」と安易に同意できるものではないということです。 また、以前も触れましたが、2〜30年も自動撮影や自然の中で活動を続けておられるのですから、当然、その分の経験の蓄積や撮影技術の向上、活動の範囲の広がりなど、宮崎氏ご自身も格段にレベルアップされているわけです。だから、意識せずとも撮影しやすい・効率的な撮影ポイントなどが得られるようになられた、ということもあるかもしれない。 自然保護・動物愛護団体が、根拠も無く、あるいは根拠が薄く「熊は絶滅しかけている」というのもどうかと思いますが、もし、上記記事中の根拠だけで「熊は著しく増えている」というのでしたら、同じくどうかと思います。 むろん、それで宮崎氏の写真のすばらしさが変わるものではありませんし、また、本来そういう熊の生息頭数や活動範囲といったことは、写真家さんの直接的なお仕事ではなく、環境や農業関係の行政や、生物学者の仕事であり、宮崎氏は写真家・動物界と人間世界の狭間をスクープされる「報道カメラマン」ですので、現場で得た実感を一定の根拠でもって世間に訴え、このように関心を喚起しただけでも十分にその役割を果たされている、その功績が無くなるわけでもありませんが。
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【ツキノワグマ・ヒグマ】
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私の興味のあるツキノワグマやヒグマについて、記載しています。
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今年は北海道以外では異常とも言える猛暑が続いていますが、高温が続くと農作物の生育に大きな影響を与えてしまいます。長い年月をかけて日本の気候に合わせて品種改良をされてきた農作物は、その気候に少しでも変化があると、たちまち影響を受けるものです。 気温の高低は、漁業にも影響を与えますので、異常な低温だった春〜初夏の野菜価格高騰以上の、食べ物全般に値上げ傾向に、この夏はなることでしょう。エアコンなどの電力消費量も伸びることでしょうから、家計は大打撃…という夏になりそうです。 8月2日の産経ニュースではこう伝えています。 やっぱり暑かった7月天気 東日本で下旬は過去最高 2010.8.2 21:04 7月下旬の東日本は統計史上、最も暑かったことが2日、気象庁のまとめでわかった。前半は梅雨による記録的大雨、後半は猛暑に見舞われた7月。東日本と北日本は月平均気温が平年を大幅に上回った。降水量でも全国4地点で月降水量の記録を更新した。 気象庁によると、7月中旬は南から暖かく湿った空気が流れ込み、東日本(関東甲信、北陸、東海)や西日本(近畿−九州)で記録的な大雨になった。24時間雨量では岐阜県八百津町の239ミリ、福岡県朝倉市の224ミリなど4地点で過去最高を記録。月降水量では、三宅島の502ミリなど4地点で記録を更新した。 中旬の終わりごろから太平洋高気圧が強まり、各地で最高気温が35度以上の「猛暑日」に。24日には36都府県の152カ所で猛暑日を記録した。 東日本の7月下旬の平均気温は平年よりも2・1度高くなり、過去最高を記録。7月全体の平均気温では東日本が1・8度高く、歴代6位。北日本(北海道、東北)が2・0度高く、歴代4位となった。 こうした天候は野菜の出荷に影響を与えている。農林水産省によると、大雨と猛暑により野菜が腐ったり、成長不良になったりするなどの被害があった。 一部の野菜の出荷量が減り、卸売価格が上昇。東京都中央卸売市場によると、7月23〜29日の取引価格はキャベツやレタスが前年同期比の約1・7倍になったという。 気象庁は、4日ごろからの1週間程度、北海道を除き気温が平年よりかなり高くなる恐れがあるとして、異常天候早期警戒情報を発表している。日本だけではなく、世界各地で気象の変動が大きいことから、世界的にもこのような傾向は強いと思いますので、輸入元の国や地域の気象状況によっては、海外産のものも高騰するかもしれません。 一方、北海道では7月28日付けの毎日新聞によれば、 日照不足:広がる影響 7月札幌、平年の44%「農作物管理注意を」 /北海道 7月の道内はぐずついた天気の影響で日照不足となっている。札幌管区気象台によると、1日から26日までの道内の平均日照時間は平年の65%にとどまり、札幌市では65・4時間と平年の44%。今後1週間は日照時間が少ない状況が続くとみられ、同気象台では農作物の管理などに注意を呼び掛けている。【今井美津子、鈴木勝一、金子淳】 【後略】という、日照不足という気候変動があるようです。 全国的でこのような気候の大きな変動があるわけですが、このようなあまり記憶に無いような猛暑あるいは日照不足に影響されるのは、むろん、人間だけではありません。 人間に直接的な影響が見えにくいために忘れられがちかもしれませんが、当然、野山でも植物が枯死したり、生育不足になるなどの影響が生じます。 するとどうなるか?と言えば、山の生き物が食べ物を求めて広範囲を動き、人や自動車との接触による事故の発生や目撃情報の増加、そしてただでさえ気候によって痛手を受けている農作物へのさらなる食害といったことにつながります。 ツキノワグマは学習能力が高い性質があるため、このような食べ物を求めて初めて人里にやって来て、そこに農作物や家畜飼料、その他食べ物になるものがあり、そして思ったよりも危険も無く得ることができるということを知った場合には、むろん、その食べられてしまった被害というのは大きいですが、もう1つの被害としては、その翌年以降、山の食べ物が普通に実った場合でも、農作物を食べた経験を覚えて、また食べようとするようになってしまうことです。 ですので、秋にドングリなどが不作になるという場合には、なお一層、農作物や家畜飼料など、熊などの食べ物になるものを食べさせることがないような管理が理想なわけですが、このように既に夏に例年以上に暑い、または日照不足という場合には、もともと夏は食べ物が豊富とはいえない時期ですから、ドングリの生育が悪い秋と同じように、人里に出没するということが懸念される、つまり早くから農作物を動物達に与えないように警戒と対策を構築しておくことが後年のためにも理想ではあるんですけれどね…。 さて、そんな夏のためか、各地でツキノワグマの目撃だけではなく、接触事故も相次ぎました。 8月3日のテレ朝ニュースでは、 畑から突然クマ出没し女性けが 長野・高山村(08/03 16:42) 通行人の女性がクマに襲われました。 2日午後8時過ぎ、長野県高山村の村道を女性が歩いていたところ、畑から突然、飛び出してきたクマに襲われました。クマは体重70キロから80キロとみられ、女性は胸や足などをつめでひっかかれましたが、幸い軽傷でした。 被害に遭った女性:「急に横から来て、気づいた時は倒されていた。あんな所にいるとは思わなかった」 地元の猟友会が見回りをするとともに捕獲用のおりを設置しましたが、村ではクマが出没しやすい深夜から早朝の外出を控えるよう呼びかけています。映像ニュースで現場の状況を拝見すると、あまり作物は無いように見えますが、まるっきり無いわけでもないというわけでもなく、この報道からでは情報が少なくて何とも言えませんが、1つの可能性として、畑作物を食べに来ていたということも考えられます。 現場が特定できないので、被害者の方の「あんな所にいるとは思わなかった」という現場周辺がどのような場所であるかも何とも言えないのですが、以前書いたように、山菜取りや登山などで山に入るわけではない、日常生活の中での通行に、熊鈴やラジオを傾向するはずはありませんから、それで熊と近接近となり、加害、ということが、1つの推測の範囲として考えられもします。 この長野県での事故とほぼ同じ時間、兵庫県では牛舎に侵入し、飼料を食べていた熊に加害されたという事故も起きてしまったようです。 8月3日付けの読売新聞の記事です。 牛舎に行ったら、いきなりクマ…男性襲われけが 2日午後7時30分頃、兵庫県香美町小代区大谷の牛舎で、所有者の宮脇弘さん(43)から、「牛舎内でクマに襲われた」と119番があった。 宮脇さんは頭や背中などを爪でひっかかれるなどしてけがをした。美方署の発表では、クマは体長約1メートルで、牛舎内の餌を食べていたところに鉢合わせしたという。クマは山中に逃げた。 (2010年8月3日16時49分 読売新聞)こちらは現場の細かな住所がわかりましたので、Yahoo!の地図で航空写真を見てみますと、山間部の街で、周辺に熊が生息していても不思議では無いように見えます。 ですので、これが即、私が冒頭で書いたような、猛暑との因果関係は不明ですが、結果的にでも「餌付け」をしてしまったことから、所有者の男性に驚いて逃げたことに、熊が懲りるか、懲りないか、というのはその個体の個性にかかると思いますが、今後しばらくは再度の来襲が無いことを警戒しなければならないでしょう。 女性が襲われた長野県内では、翌3日には、登山道近くで男性が襲われるという事故も発生したようです。 8月4日の時事ドットコムの記事です。 アルペンルート玄関口にクマ=男性襲われ軽傷、注意呼び掛け−長野県警 3日午後2時10分ごろ、長野県大町市平の関電トンネルトロリーバスの扇沢駅近くでクマに襲われたと、名古屋市の男性(62)から110番があった。男性は胸や背中などを引っかかれ軽傷。県警大町署は、現場が立山黒部アルペンルートの玄関口で観光シーズンでもあることから、観光客らに注意を呼び掛けている。 同署によると、男性は山中にある同駅近くの観光案内所「扇沢総合案内センター」南側の沢付近にいたところ、突然背後からクマに襲われた。振り払おうと抵抗すると、クマは山中に逃げた。男性の話や傷の部位から、本州に生息するツキノワグマの子グマとみられるという。(2010/08/04-00:06)この現場周辺もYahoo!の地図で見ますと、緑多い山岳地域です。 当然、熊がいてもおかしくはないのですが、気になりますのは、平日で週末よりは少ないとはいっても昼間に、比較的観光施設のある場所に出て来て、突然背後から男性を襲ったという行動です。 子熊とした根拠は大きさのようですが、親離れしたばかりの熊なのか、親と一緒の子熊なのかまではわかりません。 親離れしたばかりで自分の領有地を確保しようと移動中の熊なのか、あるいは単に若い熊で好奇心が強く同時に警戒心が少ない経験不足の個体だからゆえなのか、これも何とも言えません。 いずれの事故でも、加害した熊がいずれも逃走中であることから、人間を攻撃してみて、他愛も無く逃げることができたという事実を、熊が悪い方向で学習しなければと、心配です。 その他、人を加害しなかった熊でも、農作物に味をしめて繰り返し出没することも、農作物の被害が継続することと、人身被害予備軍になりかねず、地味ですが心配な傾向であると思います。 いずれにせよ、この夏の猛暑あるいは日照不足は、山の木々への生長・実りにも影響を与えるのは間違いないところでしょうから、今後も特に食欲が増す秋から冬、そして翌年以降の熊の行動にも、大きく影響するような気配を感じます。
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以前、北海道で、5月以降にヒグマの目撃情報が急増しているという新聞報道を紹介しましたが、7月26日の北海道新聞に同じような記事が掲載されました。 クマ目撃 5月以降前年に比べ26%増 春の低温が影響か 道内(07/26 21:30、07/26 21:36 更新) 道内でのヒグマの目撃件数が、今年1〜4月は前年同期比で3割減だったのに対し、5月以降(7月20日現在)は同26%増の293件と急増していることが、道警のまとめで分かった。専門家は春の低温の影響を指摘している。人が襲われて死亡する事故も2件発生しており、道警は注意を呼びかけている。 道警によると、ヒグマの目撃件数は1〜4月が同36%減の42件。5月以降の増加の影響で、20日までの今年の累計は335件、同12%増となっている。 2006〜09年の目撃件数と比較すると、1〜4月の目撃件数は過去4年間の平均の54件を下回ったが、5〜7月では、平均の248件を大幅に上回っており、例年に比較しても今年のヒグマの出没時期は遅い。 5月下旬には、胆振管内むかわ町で山菜採り中の男性(73)が襲われて死亡、6月上旬にも帯広市で女性(66)が襲われて亡くなった。何気なく読むと、ヒグマの頭数が増えたか行動に変化があったのか、とにかくヒグマの活動が大量・活発になっていて危険・何か変だ、という印象を持ちます。 しかし、1〜4月までは例年より3割減ということですから、単に例年その時期に活動をしているヒグマの活動が5月以降にずれ込んで、結果として5月以降の目撃件数が増えただけで、ある期間を見れば確かに増加でも、トータルの期間で見れば出没時期が偏ったというだけで、件数そのものは微増、というようです。 そもそも、この目撃件数の増加も、記事にもある5月下旬や6月上旬にかけての死亡事故による影響も考えられます。道内で短期間で死亡事故が発生してしまったということは、むろん、その時期に何があったのか?ということも考慮すべきことですが、立て続けに起きてしまったということで、道民の関心と緊張が高まったゆえに、それまでは目撃しても別に通報しないという人や、あるいは目撃した場合どこに通報して良いのかわからない・警察でいいのだろうか?と躊躇していたような方が、目撃しだい通報、ということになったのかもしれないとも考えられます。 また、5月以降は徐々に北海道への観光客が増加してくる時期ですので、活動時期がずれ込んだために熊の活動が一斉に始まり、例年よりも少し多いだけの時期が集中したというだけでも、目撃者となる人間(=観光客)が例年よりも多い時期というタイミングになっていたということも考えられます。 こういう情報はそのように、よく読まなければ印象操作を受けてしまいかねませんので、接するときには注意が必要ですね。 春以降、しばしばこのブログでも取りあげていますが、新聞報道ではたびたびツキノワグマの目撃情報が報じられています。 これも、例年と同じ規模なのに新聞報道やそれに至る通報が多くなっただけなのか?それともやはり活動そのものに変化などが生じているのか?という分析をしながら接しなければある意味危険ですね。 7月21日の朝日新聞には、ツキノワグマについて掲載されました。 ツキノワグマ被害多発 若いクマ増加・登山ブームも背景 2010年7月21日15時1分 山菜採りなどで山に入った人がツキノワグマに襲われる被害が増えている。朝日新聞のまとめでは5、6月だけでツキノワグマがいない北海道、沖縄を除く全国で1人が死亡、22人がけがをした。攻撃性の高い若い熊が増えているとみられ、登山ブームで中高年の入山者が増えていることも背景にある。専門家は熊が冬眠する11月ごろまで注意するよう呼びかけている。 【中略・事故事例】 環境省は04年度以降、全国のツキノワグマの人身被害(けが、死亡)を集計。熊が多数出没した04年4月〜05年3月の109人と、06年4月〜07年3月の145人以外は年50人前後だ。朝日新聞のまとめでは、今年は5月に18人が死傷、6月は5人がけがをした。福島県警によると、今年の福島県内での熊の目撃情報は7月8日現在で74件という。09年1年間は119件だった。 1992年から全国の被害事例を集めるNPO法人日本ツキノワグマ研究所(広島県)の米田(まいた)一彦理事長は「5月だけで被害が10人を超えるのは異例」と話す。被害増加の原因について「今年は攻撃性が高い若い熊が増えているのではないか」と指摘する。 ツキノワグマは12月ごろに冬眠し、翌年2月ごろ出産するのが一般的だ。子熊は母熊から「野生化訓練」を受け、翌々年の春から夏に独り立ちする。米田さんによると、2〜3歳ぐらいの若い熊は生活拠点が定まらず広い範囲を移動する上、特にオスの熊は他のオスを過度に警戒するため攻撃的になり、人身被害につながりやすいという。 森林総合研究所(茨城県)の大井徹・鳥獣生態研究室長は「04、06年の大量出没の時に熊が人里近辺に定着し、人との危険な遭遇が増えた可能性がある」と指摘する。 独立行政法人の国立登山研修所(富山県)によると、全国の60歳以上の推計登山人口は06年に約3万4千人で、91年の約1.5倍になった。5、6月に死傷した23人の年齢構成も高齢層に集中しており、70代8人▽60代10人▽50代3人▽30代1人▽年齢非公開1人、だった。 同研修所の専門職、東秀訓さんは「ハイキングや登山、山菜採りなどを楽しむ高齢者は熊の危険性を認識し、恐れを持って入山してほしい」。米田さんは「秋以降にドングリなどの不作が重なれば、さらに被害が増える可能性がある」と警鐘を鳴らしている。(小寺陽一郎) 【後略・熊と遭遇した場合の対応や、ツキノワグマの解説】先日、朝日新聞の山梨地方版の記事について、「読者をミスリードする目的か単なる無知かわからないが、とにかくひどい書き方の記事」と批判しましたが、こちらの記事は複数の研究機関などからの声を聞いて記事を構成しているという点で、一見、好感が持てそうな記事です。 しかし、環境省の公表している「全国の人身事故件数」と、今年の「福島県での目撃件数」を並べられても、それだけでは「増えている」という論拠にはなりませんし、例年が年間50件の人身事故でも、ここ数年だけで「例外」が何回かある点で、今年だけが何か特別増加しているような印象をもたれるような記事の書き方はどうかと思います。 60歳以上の年齢の方が登山を行うのが他の世代より多いとか、20年ほど前の1.5倍というのは当然で、それは団塊の世代の一斉退職などから余暇利用をする人が増えているわけですし、少子高齢化の形態がここにも出ているに過ぎません。 高齢者の山岳遭難が件数として他の世代より多いのはわかりますが、山に出入りする人の割合の中で高齢者が多い以上、被災率が高いのも当然であり、全年齢層における登山人口の比率と、事故の被災率を比較してそれでも高齢者が多いならば、「高齢者は熊対策に不注意ではないか?」と問題視して注意を促すなどすべきでしょうが、この記事からは高齢者が取り立てて「悪い」とは一概に言えないのに、何か高齢者が不注意で事故に遭っているかのようにも印象を残す書き方です。 情報を正しく把握し、分析しませんと、偏った見解に陥り、そのミスに気づきませんと打つ対策も誤った方向になりかねません。
新聞記者さんも、もう少し情報を整理して、結論ありきで記事を構成していくような姿勢は改めたられたらいかがでしょうか? |
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先日、山間部での日常生活における熊との遭遇について2回ほど書いたのですが、7月24日の日本海新聞に、新聞配達中の男性が熊に加害されたという記事がありました。 クマに襲われ男性けが 鳥取県若桜町 2010年07月24日 23日午前4時40分ごろ、鳥取県若桜町つく米の民家近くで、新聞配達をしていた同町若桜、【中略・被害者氏名】さん(64)がクマに襲われ、左腕と顔にけがを負った。病院に搬送されたが命に別条はないという。 郡家署によると、【中略・被害者氏名】さんが歩いて配達する途中、民家の裏から出てきた体長約80センチのクマに遭遇。クマは覆いかぶさるように襲ってきて、倒れた横山さんの顔を前脚で殴ったという。【中略・被害者氏名】さんが大声を上げて暴れるようなしぐさをすると、クマは民家裏の林へ逃げた。 近くの氷ノ山自然ふれあい館「響の森」では被害情報を受け、館内掲示板などで注意を呼び掛けた。スタッフの【中略・施設スタッフ氏名】さんは「この付近はクマの生息地。夕暮れから早朝にかけて遭遇しやすいので、鈴やラジオなど音が出る物を携帯してほしい」と話している。 県公園自然課によると、クマが人を襲う被害は2004年に旧八東町と旧船岡町で発生して以来6年ぶり。若桜町は、防災無線で町内全世帯に注意を呼び掛けたほか、猟友会若桜支部がおりを仕掛けて捕獲する準備を進めているという。記事中では「民家の裏から出てきた」とありますが、いつものとおり、Yahoo!の地図で鳥取県若桜町つく米を航空写真で見ると、ここも緑多い山間部の地域であることがわかります。 「体長約80センチ」とありますが、熊を見慣れない人の場合は驚いて正確に大きさなんて把握できないことが多いものですが、区切りの良い「1m」などではなく、具体的な「80cm」というのが、何か他の物的証拠からなのか、被害者の目撃証言なのか、記事からはわかりません。 もしこれが正確な大きさだとすれば小さめであるので、親離れしたばかりの若い熊で、自分のなわばりを探しての移動中だったのかもしれませんし、若いがゆえに民家や人をそれほど警戒しない好奇心からの接近だったのかもしれません。同時に、身体がまだ小さめなために攻撃力は小さく、「命に別条がない」という不幸中の幸いにつながった要素もありえます。 ただし、熊による加害の場合、特に顔などの負傷の場合は命に別条は無くとも重い後遺症やひどい傷痕にもなりやすいため、「命に別条が無い」という程度の表現の報道だけでは、安易に「良かった」などとは言えないものがあります。 その辺のことを理解していないと、「命に別条が無い=軽傷=熊は人に大きな害を与える動物ではない」と短絡的に思い込み、「被害者は命に別条が無かったのに、熊を捕獲(殺処分)するのは残酷・行き過ぎだ」などと一方的な非難を始めるような人や団体が出たりして、被害者や担当行政らと意見が合わないということになるケースもしばしばあります。 それにしても、朝刊配達の時間が早いですね。早朝5時前。私の住んでいるところ(まあ都市部)では、だいたい6時過ぎごろに配達されます。 あくまでも私の経験の範囲ですが、農家の多い地域は朝が早いために、朝刊配達や商店の営業もそうではない地域よりもかなり朝が早い(夜が閉まるのも早い)という傾向にあるように思います。この事故現場地域もそんな感じだったのかもしれません。 早朝や夕暮れの時間帯は人の活動が少ない時間帯ということもあって一般に熊の活動が活発な時間でありますので、山間部で農作業や新聞配達に従事する方は、それだけその他の業務の方に比べると、遭遇しやすいお仕事と言えるかもしれません。山間部で早朝に通学する(部活の早朝練習とか)のお子さんも同じかもしれません。特に農作業の方は、農作物を目当てに田畑に来ているかもしれませんので、一層注意が必要になると思います。 氷ノ山自然ふれあい館「響の森」のスタッフの方のおっしゃることは正論ではありますが、鳥取県内での人身事故は6年ぶりということですし、事後にそういう呼びかけをするのは簡単です。おそらくはそういう対策は何もしていなかったであろうとも、今回の被害者にはなんら落ち度は無かったということは言えます。 と、いうよりも、そういう地域にある自然体験施設で、事後にそうおっしゃるくらいならば、日ごろから地域に対してそういう情報をどう発信していたんですか?この事故後、今の時点ではHPに何らこの事故を触れていないようですけれど? 新聞配達や農作業といった「日常生活」の中で、熊鈴やラジオの携行というのは一般的ではなく、その登山や山菜取りなどと違った山間部での注意の呼びかけというのは盲点で、また、毎日の生活の中でその「ひと手間」をかける呼びかけをどう効率よく浸透させるか?仮に、その対策が山間部にお住まいの方にとって「当たり前」になったとき、熊の方も「当たり前」になって慣れてしまわないか?という点でも検討課題が残ると思います。 ついでに言えば、鈴は身に付けた状況によっては鳴らないですし、山間部ではラジオが入りにくく人間にとって耳ざわりということもありますから、決して万能ではなく、状況に応じた使い分けをしなければならないという当たり前の基本にも触れませんと、せっかくのアドバイスも中途半端でしょう。報道の編集や字数制限はあるのかもしれませんが。 いろいろとこの記事から考えることがありますが、最後に気になるのは、鳥取県内での人身事故が6年ぶりということです。 様々な要素、何か1つではなく複合的な要素なのかもしれませんが、これが熊の行動の変化なのか、環境の変化なのか、この6年間と今年・この事故現場がどう違うのか?ということは重要なポイントだと思います。 山間部での日常生活中の事故の続発。気になる傾向です。 加害事故はその後も発生し、7月25日の産経ニュースにも山梨県内では登山中の方が襲われたという記事がありました。 クマに襲われ39歳男性が負傷 山梨・上野原 2010.7.25 19:08 25日午後0時50分ごろ、山梨県上野原市川合の高柄山(たかつかやま、733メートル)登山道で、埼玉県所沢市東所沢のアルバイト、【中略・被害者氏名】さん(39)がクマに襲われ、右腕と左ほおを負傷した。病院で手当てを受けたが、命に別条はないという。 上野原署によると、襲ったクマは体長約1・5メートルで体重約80キロ。山に姿を消したという。【中略・被害者氏名】さんは右腕をかまれたほか、左ほおを引っかかれて出血したが、自力で約1時間歩いて下山し、近所の住民が110番通報した。 【中略・被害者氏名】さんはこの日午前から単独で登山を開始し、山頂から約1時間下山した地点で襲われたという。 同署が上野原市の防災無線を通じて住民に注意を呼びかけたほか、同市は26日、登山道の入り口に「熊出没注意」の看板を設置する予定。こちらは冒頭の日常の中での加害事故とは違い、登山中・昼間に発生した事故です。 どのような状況下であったのかわからないのですが、この記事の時点では捕獲の予定は書かれていません。 加害し、負傷者が出ていることだけ見れば双方の事故に変わりは無いのですが、方や山間部とはいえ住宅地・日常生活空間に出没し、方や登山中ということでの状況の違いがあるのかもしれませんし、ケガの程度や状況など、総合的な判断なのかもしれません。 何らかの理由でも、熊が人を加害して逃げおおせた場合、熊の個体ごとの性格や状況にも寄りますが、場合によっては熊が人に対して慣れる・自信を持つという恐れもありえますので、ここしばらくは、この地域ではいつも以上に事故への警戒が必要になると思います。 こういう人身事故や、農作物被害が発生した場合、被害者にとっては当然、加害した熊への憎しみの感情が生じるという場合があります。また、その周辺の住民らも、不安や恐れを持つのも当然でしょう。 このとき、人間で言うところの「処罰感情」のみで状況を総合的に判断することなく捕獲・補殺をすることは頭数管理・自然保護の観点だけで見れば正しくないように思いますが、同時に、「悪いのはこの加害した熊1頭だけで、それを処分したから大丈夫」と、加害した熊1頭を処分することで、地域の熊全体が感情的な「魔女狩り」に遭うことを結果的に防止している?という気もしないでもないです。それは単なる「いけにえ」に落ちるに過ぎないことではあるのですが。 こちらの報道でも、負傷された方のケガの程度を「命に別条はない」とあります。
ツキノワグマの事故でもこのような表現をされることが多いように思うのですが、体長が小さめのツキノワグマの加害で大人が命を失うとか「重傷」となるということはむしろめずらしく、しかしだからと「命に別条が無い」という語感からなんだかかすり傷のようにイメージしてしまいますが、そんなものでは到底済まないことは多く、この表現が果たしてふさわしいかどうか、疑問です。顔を何針も縫う負傷でも、「命に別条が無い」とはいう表現は間違いではありませんからね。 むろん、ツキノワグマはやたらめったら人を襲ってくるような恐ろしい猛獣、というわけではないのですが。今のところ。 |
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また熊に関する新聞記事の話題で、ご覧の皆さまも食傷気味と思いますが…。 秋田県で、熊が自動車とぶつかるという事故が続いたようです。 まずは、7月19日の秋田魁新報社の記事から。 秋田自動車道で乗用車とクマ衝突 秋田市外旭川、山林に逃げ込む 19日午後5時40分ごろ、秋田市外旭川字万治沢の秋田自動車道下り線で、男鹿市の男性(39)が運転する乗用車とクマが衝突した。クマは近くの山林に逃げ込み、男性と同乗していた家族3人にけがはなかった。 県警高速隊によると、現場は秋田北インターチェンジ(IC)から約2キロ。男性が秋田中央ICから秋田北IC方向に運転中、左側路肩から体長約1メートルのクマが飛び出し、前部左側ではねた。バンパーやボンネットなどを破損した。 また同日午後1時35分ごろ、秋田市泉字五庵山にある平和公園の中央広場付近でクマが歩いているのを、車で通行中の男性が目撃した。秋田東署によると、クマは東側斜面のやぶを下りていった。 同日午後5時ごろには、同市下北手宝川字姥ヶ沢の県道でもクマが目撃された。民家から約800メートル。 (2010/07/19 22:47 更新)秋田北インターチェンジ付近での衝突以外にも、県内各所での目撃があったようです。いずれも人にケガが無くて何よりではあります。 続けて、NNN(秋田放送)の7月21日に伝えたニュースを見てみましょう。 秋田道にクマの死がい 20日夜、秋田自動車道の山内パーキングエリアの近くで、体長1メートルほどのクマが死んでいるのが見つかりました。車と衝突したものとみられています。 クマの死がいが見つかったのは、横手市山内の秋田自動車道上り線です。県警高速隊によりますと、20日夜10時半過ぎに道路をパトロールしていたネクスコ東日本の職員が体長1mほどのクマが横たわっているのを見つけました。 クマは走行車線の内側に倒れていて、警察では走行中の車と衝突したと見ています。クマの死がいは路肩で回収されたため、通行に影響は出ませんでした。 県内ではおとといも秋田自動車道で、クマと車が衝突する事故がありネクスコ東日本が走行に注意を呼び掛けています。死がいの見つかった「山内パーキングエリア」は、冒頭の記事の秋田北インターチェンジからはかなり離れた場所ですから、そちらで衝突した熊がここまで逃げて力尽きて死んだというような、関連はまず考えられません。力尽きて死ぬような熊が移動できる距離ではありませんし、また高速道路に出て来る理由もありません。 さて、以前も「動物の交通事故による交通事故」を書いたときに、なぜ動物をはねて死亡させたときに、その死がいを道路管理者に通報したり何らかの処置をしようとしないのだろうか?ということを書いたのですが、伝えられている内容を見ると、道路管理者がパトロール中に死がいを発見したというようにありますので、通行車両の運転手や、その熊に衝突した運転者が通報したわけではないようです。 体長1mほどの熊であれば、重さは数十kgにはなります。それに自動車道ですから自動車の速度は時速80kmは出ているでしょう。それならば、衝突したならば気づかないはずがありません。 通行している運転者も、夜でも道路上に熊の死がいがあるのに気づいたならば、後続車のために高速道路上のあっちこっちにある連絡用電話でそのことを通報するのは私は人としてドライバーとしての義務だと思うのですが。 この死がいの放置により、回避しようとしての事故などが発生するかもしれない、とは考えないのでしょうか? 熊の場合、負傷した場合に気が荒くなり、人の接近に関して普段なら逃げ去るところ、攻撃に転じるような性格の変化も生じかねません。後者の事故の場合は死んでいるのでその心配はありませんが、「乗鞍岳・畳平バスターミナル」の事故の発端は、バスと衝突とも言われています。 従って、ぶつかったのが動物でも、逃げ去った場合でも、通報する必要があるわけです。逃げて行った先で、どなたかが加害される可能性があるのですから。 秋田県の自然豊か(だった)場所を高速道路で分断すれば、その移動のためには、動物達が道路を横断するしかないでしょう。
高速道路を建設するときには様々な経済的理由で、山間部を通す方が合理的なのは異論が無いところです。しかし、道路の地下に移動用のトンネルを設けるなどをしなければ、動物の保護はもちろんですが、動物との接触や死がいを回避しようとしての重大な交通事故が発生しかねないという観点から、道路管理者としては一定の防止策は構築しなければならないでしょう。 また、道路の恩恵を受けている全てのドライバーは、運転中には高速道路とはいえ十分に注意することや、事故死した動物を発見した場合には通報するなど、そういうことをする必要もあると思います。 |




