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昨夜は、山間部における早朝や夕方の農作業の際、熊鈴をつけていることはまずありえず、また、まさか熊と遭遇するとは思っていないという身近な場所ゆえの当然の油断によって発生している被害という点で書きました。 そんな中、23日の朝に金沢市内で散歩中の女性が熊に襲われ重傷を負われるという事故が発生してしまいました。 7月23日付けの北國新聞社の記事です。 金沢市でクマ 女性襲う テクノパークの公園近く 73歳、顔に重傷 猟友会などが捜索 23日午前6時半ごろ、金沢市北陽台2丁目の北陽台みはらし公園付近の市道で、散歩中の無職【中略・被害者名】さん(73)=同市薬師町=が「クマに襲われた」と草刈り中の男性に助けを求め、男性が119番通報した。【中略・被害者名】さんは内灘町の金沢医科大病院に運ばれたが、顔をひっかかれ重傷を負った。今年に入り、石川県内でクマに襲われてけが人が出たのは初めて。 金沢東署と同市消防局によると、【中略・被害者名】さんは散歩中に公園の東約40メートルの路上で突然クマに襲われ、自力で約500メートル歩いて男性に助けを求めた。額から口にかけて裂傷を負った。搬送時「クマの大きさは1〜1・5メートルだった」と話していたという。 同署と県猟友会金沢支部の計約30人が付近を捜索するとともに、付近住民に注意を呼び掛けている。地元の不動寺小は同日午前7時半、保護者に一斉メールを送り、クマの出没を知らせた。サマースクールで登校した児童は集団下校し、教員が警戒に当たった。 現場は金沢市北東部の金沢テクノパークの一角で、工場の周辺に住宅が立ち並ぶ。昨年8月には、近接する正部町で男性がクマに襲われ、軽傷を負った。 県によると、クマの目撃情報は今年に入り22日までに、前年同期比22件増の53件となっている。目撃情報は2008年が128件で、昨年は半分以下の58件に減った。 県自然保護課によると、クマは6〜8月に繁殖期を迎え、若いクマが行動範囲を広げて人里に出没するケースもあるという。県はツキノワグマの出没情報地図をホームページに掲載するなどして、注意を呼び掛けている。 この影響で、金沢市が24日に金沢テクノパーク内で予定していた子供向けの体験イベント「竹やぶバスターズ」は中止となった。こちらも女性が被害者ですから、顔にひどいケガをされたという点で(むろん、男性が被害を受けたのであってもそうでしょうけれども)、熊に襲われたことそのもののショックとともに、精神的な傷も相当深いと思います。目撃した熊の大きさに幅があることからも、遭遇時と加害されたことのショックの大きさが垣間見えます。 額から口への裂傷ということですから、相当ひどいもの。まずはそちらの傷跡をきれいに治療することが心の傷も癒すものですから、快復をお祈りしたいです。 いつものように、Yahoo!の地図で現場の「金沢市北陽台2丁目」を見てみると、なるほど、「金沢テクノパーク」という整備された公園もありますが、山と田畑の境界付近のような市道で住宅地からもやや離れており、航空写真で見た限りでは熊が出てもそれほど不思議とも言えないような場所のようです。 散歩中ということであれば、やはり熊鈴やら熊用スプレーなどお持ちのはずはないでしょう。また、整備された人里は山中と違って熊が慣れた場所ではなく、身を隠すような茂みも無かったりするでしょうから、なおのこと、パニックになるのかもしれません。 人も熊も、思いがけない場所での遭遇というのは、山の中での遭遇より、お互い、悲劇的な結果になりやすい?という気もしてきます。 ですので、この熊が大きな公園付近に思いがけず出没したとか、熊の個体としての異常行動ということはこれだけでは言い切れません。 しかし、記事にもありますが昨年の今ごろも、近接する正部町というところでやはり加害事故があったということで、この金沢市正部町とはどのあたりか?とまたYahoo!の地図で見てみると、記事どおり、今回の事故現場に非常に近い場所であるということがわかります。 この昨年の事故は熊が捕獲されたか否かは調べられませんでしたので何とも言えませんが、昨年の事故は夜9時過ぎに散歩をしていた男性が、民家のスモモを食べていた熊と遭遇、熊が逃げる時に倒れた男性を踏みつけて行ったという状況だったようです。 昨年の熊と今年の熊が同じか否かで、先日書いたように、「1頭の個体のみが街(人)慣れしただけ」なのか、それとも「地域に棲息する個体が同じく街(人)慣れしている」のか、判断の1つの目安になるかもしれません。 熊も当然、食っていかなければなりません。 普通に山に食べ物があれば、その地域で生きていけるだけの頭数が自ずと調整されることが期待できるわけですが(それが林業行政の失敗が原因だろうとそうでなかろうとも、荒れていようがいまいが)、普段は何とかギリギリ間に合って食べていけるという生息数と生息環境のバランスの中で、広葉樹の定期的な不作が数種の樹種で重なってしまった場合、食べ物を求めて広範囲を歩くことになります。 その移動の際、山間部近くで経験した、田畑のおいしく栄養価の高い食べ物や人家近くに無造作に保管されている食べ物を発見した場合、撃ち取られない限りは、多少人を恐れている感覚を残していようとも、その食べ物の誘惑には勝てず、そしてそこに赴いたときに人間がいた場合、自分の縄張りからの排除ということを試みる個体も出るかもしれません。 そんなことを母熊がしているのを一緒の子熊が見れば、それが正しい熊としての食餌行動・加害行動ということで学習してしまい、引き継がれてしまいかねません。 また、人里に下りて農作物や果樹などを食べ、生き残り出産できる個体が増えることは、それだけ本来その地域の自然環境の中で生きて行くことが許される頭数以上の生息数を許すことになります。 人里に来ることを覚え、同時に自然環境の中で生きていける以上の頭数になっているとすれば、それは人里に下りてくるというのは当然と言えば当然の結果でしょう。 ですので、特に広葉樹の実が一斉に不作になるような年はなおのこと、田畑の作物や果樹、庭木の実、生ゴミなどの管理は注意徹底しなければならないということになります。 木の実の不作の年に人里に現れた熊は駆除をすることなく、徹底して人里から排除をし、山中の食べ物が無くとも人里に下りて食べられるものでもない、という認識をさせることが理想ではありますが、労力や費用、維持といった観点から、なかなかそういうことは難しいでしょうね。 (こういう基本的なことも知らないくせに短絡的な情緒論を展開して読者をミスリードし、特定団体の利益に導きかねないようなことを書くから、先日、朝日新聞を批判したわけです。) これは、奥山に広葉樹林が多かろうと問題の構造は同じと言えます。
ただ、近年急激にその地域で変化した要因があるのであれば、安易に補殺することは、その地域からすぐに熊を絶滅させるという懸念があるということはさらに別途、危惧すべきことです。 それと、もし動物を保護するために広葉樹の植樹を行うというのならば、その地域にある木々の実から苗木を育て、そして樹種によって起きる不作というもののリスクを分散すべく、何種類もの樹種を植樹しなければ、弊害も大きいというのは間違いないでしょうね。同じ樹種を植えた場合、全ての木で不作になった場合は、その年は食べ物がゼロということになるわけですから。 ですので、地域ごとの自然環境と生息頭数の把握というのは、人と熊という双方の保護・共存には欠かせない第一歩と考えます。 「自然を大切にしている」ということを自己満足したいただけの人や団体は、結果を急ぎたく、地道で面倒で知識が必要になる作業や調査研究はしたくないことが多いので、そこまで考えて実践なんてしてやいませんが、それでは弊害を生むばかりでしょうね。 |
【ツキノワグマ・ヒグマ】
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私の興味のあるツキノワグマやヒグマについて、記載しています。
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熊の話題が続きます。 7月21日の岩手放送「ニュースエコー」で伝えられた人身事故の話題から。 3頭のクマに襲われ女性がケガ(久慈市) (2010年07月21日 14:54 更新) けさ早く、久慈市山形町で草とりをしていた女性が3頭のクマに襲われ、頭や顔などを引っかかれけがをしました。 きょう午前5時半頃、久慈市山形町小国で自宅敷地内の畑で草とりをしていた70歳の女性が、突然現れた3頭のクマに襲われました。女性は頭や顔、腕などをクマに引っかかれ、近くに住む娘の家に逃げて助けを求め、娘が119番通報しました。 女性は、久慈市内の病院で手当てを受けていますが、命に別状はないということです。 3頭のクマは女性を襲ったあと逃げており、久慈市では防災無線を通じて住民に注意を呼び掛けています。3頭というのは、母熊1頭と子熊2頭だと考えることもできると思いますが、真相はわかりません。 やはりYahoo!の地図で「岩手県久慈市山形町小国」を見ると、航空写真で見れば山の緑が多く残る地域ということがわかります。 午前5時半という、熊の動きが活発な時間帯ということを考えますと、食べ物を探しに子熊を引き連れて動いていた熊が、草取りという音がそれほど出ない(朝早い時間帯なので、出さない、というべきか)作業をしていて、まして、草取りは多くの場合、しゃがんで行うでしょうから、背丈の高い草の陰なんか身体が隠れたりして、熊の側も被害者の方に気づくのが遅れて、気づいたときには近過ぎた。それで子を守ろうとする行動で、加害に転じた、というのが一般的な、このわずかな状況から推測できるストーリーですね。 ご自宅の敷地内、ということですから、当然、熊鈴なんて身につけているとも思えませんし、もしも身に着けていたとしても草刈り作業ではその音もなかなか鳴らないでしょう。 この場合、周辺が山に囲まれている緑豊かな地域ですので、熊が「自宅敷地」でその家の方を襲ったという状況ではありますが、こちらは行動が変化しているとは一概には言えませんね。 しかし、得られる教訓は、「山間部においては、自宅敷地内、あるいは所有する田畑で作業するときにも、周辺を散歩するときでも、早朝や夕方は熊に遭遇する可能性はむろんある」ということ。 そして、登山や山菜取りに行くという非日常の場合と違い、「日常生活の中では、何らかの熊対策をするわけでも・心のどこかで熊に遭った場合のことを考えているわけでもないということから、遭遇しやすいとも言え、また、遭遇した場合には一層衝撃も大きいと言えるかもしれない」ということです。 先日も、早朝に「散歩中」の男性が熊に襲われ重傷を負うという記事を紹介したばかりでしたが…。 従って、山間部においては、面倒でうるさいかもしれませんが、作業を行うときにはラジオか何かを流してあたるということが、今後一定程度、有効かもしれません。
特にここ1週間ほどは相当暑い日が続いており、こまめに流される暑さの話題・熱中症に注意を呼び掛ける放送を聞くことで、それらの事故の予防喚起にもなるかもしれず、2種の事故防止になるかもしれません。 |
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昨今、急速に人の行動圏に熊が現れ、目撃情報や、接触する事故などが相次いで伝えられています。 7月19日の中国新聞です。 クマ襲撃受け観光リフト運休 '10/7/19 島根県津和野町後田の津和野城跡登山口近くで17日、観光客の男性(53)がクマに襲われて軽いけがをした事態を受け、同町は18日、ふもとと城跡を結ぶ町営観光リフトの運行を安全が確保されるまで見合わせることを決めた。 町は同日朝、猟友会にクマの捕獲を要請。リフトの運休も決め、乗り場付近に入山禁止を知らせる文書を掲示した。登山口に近い太皷谷稲成神社にも警戒を呼び掛けた。 観光リフトの年間利用者は約1万4千人。夏休みと紅葉シーズンが最も多く、月間約2千人の利用がある。 城下町の風情を残し、多くの観光客が訪れる殿町通りは、クマの出没地点から1キロ以上離れた町中心部にあり、クマの被害は考えにくい。町商工観光課の山岡浩二課長は「観光地津和野のイメージ悪化が心配。クマの早期捕獲が一番だが、事態が長引けば、かき入れ時の秋までに入山者の安全対策をまとめたい」と話している。Yahoo!の地図で津和野城跡を見ると、何しろ昔のお城の跡ですから、当然、攻め込まれづらい山にある場所というのはわかりますが、しかし長年の発展で、道路や町が近くまで形成されているという土地であることもわかります。 そのような場所ですし、夕方という比較的熊の活動が活発化する時間帯であることを考えると熊が出ても「不思議」とまでは言えないかもしれませんが、観光地であり、人里にもそれほど遠くない場所で、また17日の産経新聞によりますとこれまで目撃も少なかったとありましたので、やはり行動に変化によるものか否か、気になります。 短い記事ですので何ともいえませんのであくまでも印象ですが、普段熊が出るのはめずらしいという場所で被害者の方も「観光客」とありますので、被害者の方も熊を意識しての行動=鈴なんて身につけていなかったとしても当然だと思います。しかし、何らかの理由でその場所に来ていた熊がいたことが、急接近という結果となり、逃避行動による加害、というような感じがします。 この島根県津和野町では、この後も熊騒動がありました。 7月22日の中国新聞です。 速報】クマが公民館外壁破壊か 津和野 '10/7/22 22日午前10時ごろ、島根県津和野町左鐙の横道公民館の外壁が幅3メートル、高さ1・5メートルに渡って壊れているのを近くの農業水津定さん(60)が見つけ、町役場に通報した。壁にひっかき傷があることから、クマが破壊したとみられている。 町教委によると、木造平屋の建物は普段は無人で、住民が管理している。壊された部分にハチの巣があり、クマが再びやって来る恐れがあるため、県西部農林振興センター益田事務所(益田市)の職員が公民館の周囲に電気柵を設置した。同じ津和野町ではありますが、やはりYahoo!の地図で住所地を見ると、こちらは山岳地の中のようです。 ミツバチが公民館の壁の中に巣を作ったわけですので、そのようなものが成り立つくらいの自然の残る場所なのでしょう。 加害したのが17日で、この破壊が22日。熊の行動範囲を考えれば同一の個体の可能性も無いとは言い切れません。 同一の個体だった場合は、「食べ物を求めて広範囲を動き回っていること」と同時に、いくら山の中のとはいえ、人の行き来する施設ですから、人の気配を意に介さないような性質を持っているかもしれない可能性が出てきます。 別々の個体だった場合は、地域の個体が活発な動きをしているという可能性が高まりますので、今後しばらくは同じような人との接触も考えられるかもしれませんね。 さて、場所は、まるっきり別になりますが、岐阜県では飲食店倉庫に入って油かすを食べていた若い個体が捕獲されたという記事が。 7月19日の読売新聞の記事です。 中津川でクマ捕獲 18日午後2時40分頃、中津川市付知町の付知峡にある飲食店倉庫で、体長約1メートルの2歳ぐらいのオスのツキノワグマ1頭が、油かすを食べているのを男性従業員が発見した。 男性従業員が倉庫からクマが出られないよう、木片やロープでバリケードを作った。クマは間もなく寝入った。同日午後5時25分頃に男性獣医師が吹き矢で麻酔をかけ、猟友会や中津川署員らが10人ががかりで捕獲し、近くの夕森山に逃がした。 店の近くには観光客がいたが、けが人はなかった。 (2010年7月19日 読売新聞)この場所もYahoo!の地図で見ると、やはり山の中であることがわかります。熊が出没しても、おかしくはないように見えます。 推定2歳という若い個体であるとのことですが、若い動物というのは警戒心よりも好奇心が旺盛であることも多いです。 熊も母熊とともに行動する時期に、人との接触を避けることを含めて学習するという成長をたどるようですが、この侵入が独自の餌場を確保できずにやむを得ず侵入したというのならば良いのですが、もし、その成長過程で人を恐れるということを学ばなかったような個体であったならば、ちょっと困ったことになります。 この熊が再度人家近くなどに出没するか否か、それはわかりませんが、もし現れた場合でも、「山に食べ物が無いから」なのか、「人を恐れないから」なのか、その判断はその地域で大規模な個体数調査や植生なども把握し、総合的な判断をしなければ何とも言えないです。 先日書いたような、朝日新聞の記事にあった短絡的・浅薄な因果関係では「説明」ではなく、「想像」というのです。 とりあえずの対応として、この捕獲した個体を放つとき、いわゆる「おしおき放獣」をしたのか否か。油かすという自然界にある食べ物以上の高カロリー・味の良いもので、しかも容易に多く入手できることを学習しなかったか。そのいずれを「学習」していったかによって、今後、この熊の取る行動が変わるでしょう。
ある意味、注視すべき案件ですね。 |
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7月13日の午前8時ごろ、北海道知床半島先端部で、国立公園の巡視をしていたという環境省職員2名がヒグマに遭遇し、転んでケガをしたという記事がありました。 7月15日の朝日新聞の記事を見てみましょう。 環境省2職員 ヒグマに遭遇 知床岬 2010年07月15日 ■1人けが 知床半島先端部で国立公園の巡視を続けていた環境省職員2人が13日朝、羅臼町相泊から岬へ約5キロのトッカリ瀬(通称)でヒグマと遭遇し、1人が逃げる際に軽傷を負った。近くには有人の番屋もあることから、このヒグマは同日午後、同町の猟友会などが現場近くで駆除し、14日夕までに死骸(しがい)を船で回収した。環境省は当分の間、知床岬方面のトレッキングの自粛を呼びかけている。 同省ウトロ自然保護官事務所によると、遭遇したのはオスの成獣で、衰弱してけがをしていた。「オス同士の争いでケガを負い、興奮状態にあったことから人に接近した極めてまれなケース」という。 ヒグマは岩陰から走ってきて、職員2人の3〜4メートル手前まで接近。1人は後ずさりする際に転倒し、腰や足に打撲やすり傷を負った。逃げる際にザックを残したが、ヒグマはザックをかみ、振り回した後に立ち去ったという。この遭遇は2人に近づいてきているという状況ですから、ここから言えることは、熊が人を襲撃するときには、その人数が1人か複数かは関係が無いということです。 肉食動物が獲物を襲うときに、群れでいるから襲わない、ということはありません。群れの中で弱い・狙いやすい獲物を見定めて襲います。雑食の熊も同じです。複数人数でいるとより安全と言える要素は、単にその分、周囲に対して人の気配を多く発信でき、熊が回避してくれやすくなるからに過ぎず、思いがけない遭遇や、最初から威嚇や襲撃の意図があるならば、人数は関係ないというわけです。 環境省ウトロ自然保護官事務所は「オス同士の争いでケガを負い、興奮状態にあったことから人に接近した極めてまれなケース」と言っていますが、そうでしょうか? この時期にオス同士の争いが起きやすいのは知られていますし、ケガを負えば神経過敏な興奮状態になります。また、以前紹介したとおり、知床は世界有数のヒグマの棲息密度と言うのですから、そういう事象になりやすいのも世界有数と言えるのではないでしょうか?単に知床半島の先端という、一般の人が行きづらい場所であるために、結果的に人との遭遇は少ないというだけではないですかね?7月14日の日刊スポーツのこの事故を伝える記事によると、「知床岬方面へトレッキングするのは年間150〜200人程度」とありますからね。 続きまして、トレッキング自粛要請を発信しているくらいですから、この地のこのテのことを管轄している部署であろう、環境省釧路自然環境事務所の緊急情報を少し見てみましょう。 知床岬方面トレッキング利用の自粛要請解除について 2010.07.15 釧路自然環境事務所 7月14日付けで、知床岬方面トレッキング利用については自粛を要請しておりましたが、同14日、駆除したヒグマの死体回収が終了しましたので、自粛要請を解除いたします。 しかし、知床半島先端部地区の利用は、常に滑落、落石、ヒグマとの遭遇等ハイリスクの環境下での利用であり、今回の自粛要請解除は、決して先端部地区利用の安全を保証するものではないことにご留意ください。 1. 概要 回収日時:平成22年7月14日 15:00 回収場所:羅臼町化石浜(トッカリ瀬付近) 個体の状況:オス成獣 体重200kg、体長169cm、前掌幅16.0cm 左肩に23cmの裂傷。左足裏に咬み傷、その他頭部などに多数の傷。 死後、他の動物に採食された痕跡はなし 2. 知床半島先端部地区利用者へのお願い 今回の駆除個体に他のヒグマが餌付いた痕跡は確認されませんでしたので自粛要請を解除します。しかし、これは決して先端部地区利用の安全が確保されたものではありません。 知床半島先端部地区は、世界有数のヒグマ高密度生息地であり、それに加えて厳しい自然条件が待ち受けています。滑落、落石、ヒグマとの遭遇、急激な気象の変化など、先端部地区の利用は常に高いリスクが伴います。過酷な条件に自らの力だけで対処できる極めて高度な技術・体力・判断力が必要であり、また、全て自己の責任において判断し、行動しなければならない場所です。 さらに、誤った判断は自分自身だけでなく、同行している仲間や今後同じように訪れようとする方々まで危険にさらしかねません。 知床半島先端部地区への立ち入りを計画されている方々にあっては、必ず「知床半島先端部地区利用の心得」を入手し、入山前に内容を学習されるとともに遵守してください。 この時期はヒグマの交尾期にあたり、オス同士の争いによって傷を負うなど興奮状態の個体に遭遇しやすい時期でもあります。リスク低減に関する情報を入手するため、必ず事前に知床世界遺産ルサフィールドハウス、羅臼ビジターセンター、または知床自然センターにお立ち寄りください。 【後略】様々な紙面での記事にもこの遭遇などの一連の経過は詳しくは出ていないので何とも言えない部分がありますが、記事だけを見る限り、別に駆除の必要性が急迫していたとは感じられません。まあ、現場の総合的な判断の結果の妥当なものだと信じましょう。 しかし、知床は「世界有数の熊の棲息密度」と言われるほど、面積に占める熊の頭数が多いとされている地域です。そこに早朝から出かければ、当然、ヒグマに遭遇する可能性はかなり高いということは、知床に入るからには知っておくべきです。 むろん、この環境省の人らは、普通に考えれば熊鈴かラジオをつけるなどして巡回をしていたと思われます(常識ですもの)。熊に遭遇した際に「後ずさりをした」ということや、「逃げる際にザックを残した」など、基本的な対応方法ができているくらいですから、それくらいのことを知っているからには、当然、熊鈴やラジオなどといった対策をも知っていて実行したと考えられそうです。 ですが、私は今回の場合、なぜカプサイシンスプレーを使わなかったのだろうか?と疑問に思います。 背負っているザックを残す行動が取れる時間的・精神的余裕があり、また、後ずさりをしている職員に近づいてきたくらいですから突進してきたようでもなさそうです。私は、スプレーは使える状況ではなかったのかな?と感じました。 これも以前も書いたのですが、持っている荷物、特にそれに食べ物になるようなものが入っていた場合、賢い熊は「人間を脅かせば少量だが味の良い食べ物が手に入る」と学習し、次から来る人まで襲われかねなくなるからです。 従って、結果的にヒグマを射殺したということは、後難の憂いを排除できたとも言えますが、同時に、カプサイシンスプレーで排除できれば、射殺の必要は無かった、つまり射殺を回避できたかもしれないと考える余地ができます。 ちなみに、遭遇した際の対処方法としては、上記釧路自然環境事務所が紹介している「知床半島先端部地区利用の心得」にも、その心得の中で具体的なヒグマへの対処の仕方として紹介している「知床自然センターのホームページ」にも、「荷物を置く」ということは書かれてはいません。 むろん、現場で手負いとなった熊が突然出てきたのですから、どんな手段を取ろうと、結果、2人の方がひどいケガをすることなく無事に済んだというのは一番の朗報です。それは冷静な対処のたまものでしょうし、現場にいない私が安全な場所から少ない情報で言う資格があるとも思えませんが、スプレーを使わなかった理由・状況というものを、後学のためにお伺いしたいところです。風向き? なお、「苫前三毛別事件」の記録を残し、ヒグマの生態に詳しい元営林署職員の木村盛武さんは、著書の中などで「林務官が熊に遭遇するのは、恥ずかしいこと」と自戒を込めておっしゃっています。 状況などにも寄りますので何とも言えませんが、私も概ね、そのご意見の主旨には賛成です。 上記の釧路自然環境事務所の緊急情報を再掲しますと、 知床半島先端部地区は、世界有数のヒグマ高密度生息地であり、それに加えて厳しい自然条件が待ち受けています。滑落、落石、ヒグマとの遭遇、急激な気象の変化など、先端部地区の利用は常に高いリスクが伴います。過酷な条件に自らの力だけで対処できる極めて高度な技術・体力・判断力が必要であり、また、全て自己の責任において判断し、行動しなければならない場所です。
さらに、誤った判断は自分自身だけでなく、同行している仲間や今後同じように訪れようとする方々まで危険にさらしかねません。
知床半島先端部地区への立ち入りを計画されている方々にあっては、必ず「知床半島先端部地区利用の心得」を入手し、入山前に内容を学習されるとともに遵守してください。
…と、随分と当該地域へ立ち入ろうとする人に様々な警告や覚悟を呼びかけており、私はこれは正しいと思います。この時期はヒグマの交尾期にあたり、オス同士の争いによって傷を負うなど興奮状態の個体に遭遇しやすい時期でもあります。 しかし、そう市民に呼び掛けているわけですから、当然、今回話題になった環境省の職員らもそんなことは承知だったわけで、しかしそれなのに、実際に遭遇した、というのは、何だか私は、呼びかける説得力に欠けてしまうように思います。 今回の職員が環境省のどこの部署の職員かはわかりませんが、少なくとも同じ環境省の職員が遭遇したわけです。ですので、他人にそんなこと、言えるんですか?まずは、環境省の中で、そういう基本的なレクチャーをしたらどうですかね?と、少しイジワルを言ってみたくなります。 だいたい、冒頭の新聞記事の中で、同じ環境省のウトロ自然保護官事務所は、「極めてまれなケース」と見解を述べ、しかし釧路自然環境事務所は「遭遇しやすい時期」と全く反対の見解を述べ、同じ環境省の内部の部署同士でも見解が全く違うではないですか。 うがった見方をすれば、ウトロ自然保護管事務所は今回の職員2人に近い関係で「この騒ぎは2人の落ち度は無く、事前予測できずとも仕方が無いくらいのまれなケースなんですよ」と言い訳したいがためのコメントで、釧路自然環境事務所はやや遠い関係にある一方その地域の事故防止が業務なために「事故が起きても、それは遭遇しても当然の時期だからで、そんな常識を知らずにノコノコ行く方が悪いんですよ。ウチは悪くないんです」とでも言いたいからのコメントでは?と疑念を持ってしまいます。 少なくとも、今回環境省のお二人がご無事であったのは何よりですが、同時に、ご自身らがヒグマ1頭の命が失われる一因…は言い過ぎかもしれないですが、それに関わることになったという事実は、今後の国立公園を維持・保全していく上で肝に銘じて、日々のお仕事に励んでいただきたいと感じました。
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群馬県で男性が熊に襲われ、手を骨折するという重傷を負ったという記事が出ていました。 7月15日の毎日新聞の記事です。 クマ:山林で襲われ、70歳男性重傷−−みどり /群馬 14日午前5時40分ごろ、みどり市東町草木の草木湖左岸の山林で、散歩中の同町沢入、無職【中略。被害者名】さん(70)が体長約1メートルのクマに襲われた。【中略。被害者名】さんは持っていたカマで抵抗したがかまれた左手首を骨折しており、全治2カ月の重傷。クマは山中に逃げた。【中略。被害者名】さんは約50分後に自力で帰宅。【中略。被害者名】さんの妻(69)が119番した。 大間々署によると、【中略。被害者名】さんは草木湖沿いの県道を散歩中、キノコを探そうとガードレール下の山林に入ったところでクマに遭遇したという。現場周辺に民家はないが、金子さんの毎朝の散歩コースだった。市や同署は、防災無線やパトカーによる巡回などで、現場近くの住民に注意を呼び掛けている。 近くに住む無職、【中略。氏名】さん(80)は「救急車で運ばれる【中略。被害者名】さんの服は血だらけだった。クマが出るので早朝と深夜は出歩かないよう周りの人と注意し合っていた。襲われた時のことを考えると怖い」と話した。【喜屋武真之介、角田直哉】記事を見た時、「散歩中の」とあるのに、早朝5時40分は散歩には少し早いですし、カマを持っているというのもなぜだろう、と思っていたのですが、7月14日付けの産経新聞の記事では男性がキノコ採りに出かけたという記述が見られました。 以前から繰り返し書いていることですが、早朝や夕方や曇り空などのときは、熊が活発に活動するという時間帯です。そんな中、山菜やキノコなど、熊の食べ物になる場所へ好んで出かけるということは、高い確率で熊に遭遇すると言えます。 詳細はわかりませんが、言えることは「早朝」という時間帯です。 この被害者の方も事故現場からそう遠くないところにお住まいのようですが、同じ範囲と思われる地域でも、「早朝や深夜は出歩かないように周りの人と注意し合っていた」という人もいれば、出歩く人もいるという、知識などについて、温度差を感じます。 記事のとおり「散歩中」ということであれば、まず「熊鈴」のような音の出るものを、まして早朝から身に着けていたとは考えづらく、そういった面でもなおのこと遭遇しやすいという見方もできます。 被害者の方がカマを持って抵抗をしたことが、手首の骨折という重傷に違いありませんが、まだそれだけで済んだとも言えるかもしれません。 一刻も早い快復をお祈りするほかありませんね。
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