日々是雑感

初めてお越しの方は、私のプロフィール欄をご覧ください。

【有害鳥獣駆除・ハンター】

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 私は動物や命というものを大切に思っていますが、同時に、人間の気持ちや生活というのも大切に思っています。

 人間と動物というのは時に対立・摩擦が生じるものです。

 ここでは、安易に動物を保護しハンターや行政を批判したりはしません。
 農作物と動物が、どうすればうまく折り合っていけるかということを、考えることができればと思います。
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ハンターが絶滅危惧種

 仕事がかなり忙しかったことと、泉ヶ岳でなんと数年前までは確実に存在しないと言えたイノシシが目撃されてその調査などをしていたため、かなり久々の投稿です。

 春から予兆があり、報道機関なども関心が高かった熊出没問題ですが、やはり、というか、この秋になっても様々に取り上げられています。

 10月24日の産経新聞に、以前からこのブログでも類似記事を紹介したことがありますが、有害鳥獣の駆除を担う猟友会の実情の一端が紹介されていました。
出没多発クマ対策が危機 ハンターの方が「絶滅危惧種」
産経新聞 10月24日(日)22時23分配信

 散弾銃などを扱える狩猟の第1種免許を持ち、クマやシカなどの駆除を担っている猟友会の会員減少が続いている。会員の高齢化に加えて銃規制が強化されたことなどが原因で、全国組織「大日本猟友会」によると、一時期は40万人を超えた第1種免許の所持会員は平成21年度には約9万9千人にまで落ち込んだ。今年はクマ出没も多発しており、関係者は「野生動物管理のために駆除は必要なのに、ハンター自体が絶滅危惧(きぐ)種になっている」と危機感を深める。(油原聡子)

 「クマの目撃情報が出たので確認してください」

 金沢市から出動要請があると、石川県猟友会金沢支部の広村靖男さん(68)は現場まで車を走らせる。猟友会から支払われる日当は1日千円。それで1日に4回出動する日もある。捕獲が1日がかりになることもある。

 「会員には、仕事を抜けて駆除に行く人もいる。こんな状態では若い人は続かない」。広村さんは、駆除に携わる会員の高齢化に警鐘を鳴らす。昭和50年ごろは800人いた同支部の会員数も今では約160人。平均年齢は65歳くらいだという。

 「狩猟に経済的リターンはほとんどない」。大日本猟友会の竹田康夫事務局長(58)は話す。職業としての狩猟業はもう成り立たない。取っていた動物の肉や毛皮の需要は少ないのに、猟銃の所持許可は更新料がかかる。

 クマなどを駆除した際にもらえる報酬は地域によってさまざまだが、「多くはボランティア同然」(竹田事務局長)。市街地に現れたクマを射殺すれば、害獣として駆除しているのに、「かわいそう」「殺さずにすまないのか」と苦情が来ることさえあるという。

 長崎県・佐世保で起きた平成19年の銃乱射事件を機に行われた銃規制強化も、会員減少に拍車をかけた。昨年施行の改正銃刀法では、猟銃の所持許可の取得や更新に精神科医の診断書添付を義務付けるなどしており、手続きの複雑化が、免許から希望者を遠ざけているという現実がある。

【後略】
 金沢市では1日たった1,000円の日当なんですね。車も自分のものなのでしょうから、日当が出ると言っても、有償ボランティアとさえ言えないほどの、全くのボランティア同然です。

 住民の安全を守るのは行政の業務なわけですから、それを善意のボランティア任せにしているというのは私はちょっとシステム的に「何も考えていない」というか、手抜き感が否めません。
 地域を地域住民の自治意識でもってまず守るという考え方があるのを否定するものではありませんが、例えばこの金沢市では消防団員に出動のつど3,000〜3,300円を支払っているのに比べても、猟友会のハンターに対しての待遇がひどいと感じます。

 私の住む仙台市ではハンターにどのような待遇をしているのかはちょっと調べられませんでしたが、仙台市の消防団員の報酬を調べてみると、出動のつど、3,700円〜4,400円という報酬のほかに、団長や団員など、役職に応じて年額24,000円〜93,000円の報酬が支給されているようです。

 むろん、火災を扱う消防団と、日常の個人的な趣味の部分を含めての狩猟者を同一に比較はできません。しかし、少なくともある程度有害鳥獣駆除という公けの業務に就いた場合の、実情に近い待遇や補償、あるいはステータスなどを有害鳥獣駆除に当たるハンターに与えなければ、なかなか後継者などが続くのは難しいでしょう。

 なにより、シビリアンコントロールと言えば言い過ぎかもしれないけれど、狩猟や有害鳥獣駆除について許認可権を持ち、指揮する立場にあるべき行政が、ボランティアの善意としてのハンターに「お願い」するという形はいびつと感じます。私は何も、猟友会やその会員が全員、品行方正で立派な人ばかりと言っている・思っているわけではありません。
 ハッキリと行政の指揮下に狩猟者を置くという位置づけにしなければ、「慣れ合い」というか、狩猟者に対して行政が「貸し」を作るというような形になりかねず、それは正しい鳥獣保護の在り方に暗雲をもたらす要因になりかねないですし、部外者からのあらぬ誤解や言いがかりにもつながりかねませんから、誰にも良い結果につながりません。

 猟友会に対して正式に業務委託契約を締結して「発注者と受注者」という関係を構築すれば、行政側には強い指導力や発言力を持てますし、猟友会も必要経費プラスアルファの収益の確保というメリットが得られます。
 あるいは猟友会とは別に、有害鳥獣駆除専門のハンターを公費でもって訓練・教育して対応するというような形を取って行くべきではないかと思います。

 …という点で、兵庫県が行う「鳥獣害対策マイスター育成スクール」の制度は、実に先進的な試みではあるのですが、そういうことでさえ、一部のおかしな動物愛誤団体はイチャモンをつけています。代案1つ出さず。
 まっとうな理路整然とした冷静な苦情ならばともかく、「かわいそう」だの、「麻酔銃」だのと現実をわきまえず、本当は熊や森や動物のことを考えて言っているのではなく単に自分の感情だけを満たすためだけに活動をしている個人や団体など、猟友会も行政も、相手にする必要は無いように思います。

        *************************

 ついでに。

 よく、このテの話には「麻酔銃をなぜ使わないのか」という知ったかぶった苦情を言う困ったチャンがいます。
 麻酔銃(と麻酔薬)を扱うには、狩猟免許や猟銃の取り扱い許可の他に、その薬剤を扱うための専門的な知識と資格が必要です。このいずれも所持しているという人は非常に少ないです。
 麻酔は取り扱いに非常に難しく、その対象となる動物の種類や年齢、大きさなどを確認・推定した上で用いる薬剤量を慎重に決めなければ、効かない、あるいは過剰摂取させてしまい動物に害を残しかねないなどの危険性もあるわけです。
 また、麻酔の吹き矢などは、箱ワナにかかって身動きが取れない熊ならばともかく、森の中にひそみいつ飛び出てくるかわからないような状況下では、使い物になりません。
 さらに、麻酔もマンガや映画のように、速効性があるわけではありません。撃たれてすぐに倒れるわけではありません。追われて興奮した熊が、麻酔弾(矢)を撃たれて、思いがけない行動に出る危険性も十分にあります。

 と、いうような常識を踏まえて、屋外で被害を出した熊に麻酔銃(吹き矢)というまるで役に立たない意見を得意げ言っている人は、自分の程度というものを自覚して猛省してもらいたいものです。

 もう1つは、「猟友会がしのごの言うなら、警察や自衛隊をその任に就かせるべきだ」という意見を言う人もいます。馬鹿ですねえ。
 警察官や自衛官が銃砲を使用できるのは、正当防衛や緊急避難など、その職務上、やむを得ない場合に限るわけであるし、自衛隊がそんなために出動して火器を使うなんて、どのレベルまで上がっての出動命令を仰がなければならないのでしょう??県知事かな?総理大臣かな?
 以前も書きましたが、警察官の持つ照準も無いような小口径のピストルを数発撃ったところで、ツキノワグマの成獣でさえ倒すことは心もと無いですねえ。時速50kmで突進してくる大型野生動物に発砲する訓練を警察がしているというのでしょうかね?
 警察や自衛隊がその任に就くには、いくつもの関連法律を改正して、さらに武装内容も変えて、訓練もして、という、すさまじいまでの課題が山積しています。

 このように、クレーマー的な意見を言う人間というのは、そういう実社会での課題1つ知らず、思いつきや自分の気分感情だけで、現実を知ろうともせず、好き勝手騒いでいるに過ぎないということが、こういう「苦情」内容1つ見てもわかります。

 少し考えればわかることなのに、要するに、馬鹿だということです。
 人を殺傷したり、何度も人家近くまで出没する熊への対処方法について、そのようなクレージークレーマーが駆除以上に有効な提言をしたのを私は聴いたことがありません。
 何しろ、観光地で興奮して大暴れしている熊に対して「ゆっくり下がるべきだった」などと言う阿呆なことを言っている団体もあるくらいですから、お話になりません。

 行政や猟友会などは、「意見」「提案」ではなく、そういった相手にする必要の無い「馬鹿の雑音」は、無視すべきです。

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 ここしばらく、報道紙面を引用しての感想を書くことが多かったために、しかしその報道紙面もじっくり見て自分で判断しないと、実はおかしな、その字面の印象で思い込みをしてしまう危険性を昨日先日、書きました。

 しかし、それは別に新聞報道のみに限りません。例えば、統計資料も同じです。

 農林水産省のホームページに掲載されている「全国の野生鳥獣類による農作物被害状況について(平成20年度)」を見るとハッキリわかるのですが、全国的に見た場合、農作物被害額としてはイノシシやシカに比べツキノワグマによるそれはかなり少なくなっています。

 例えば平成20年度の獣類の被害面積や被害額をこの統計資料「参考 野生鳥獣による農作物被害の推移(鳥獣種類別)」から抜粋してみますと、
 イノシシ  12,400ha 53億7千6百万円(36.5%)
 シカ    44,800ha 58億1千6百万円(36.5%)
 サル     4,300ha 15億4千2百万円(10.5%)
 クマ     1,500ha  3億6千3百万円( 2.5%)
となっており、全国的にはイノシシやシカの被害額が多くを占めていることがわかります。

 しかし、作物の種類や時期、地域によってはそれが当てはまらないものも当然出てきます。

 「参考 野生鳥獣による都道府県別農作物被害状況(平成20年度)」を見ますと、例えば東北の青森や山形での被害金額を見ると、
       青森県         山形県
 イノシシ     0万円      207万円
 シカ       0万円        0万円
 サル   4,168万円    9,066万円
 サルが圧倒的というか、獣類においてはほとんどの被害額がサルであるとわかります。
 (この都道府県別には熊の被害発生状況は出ていません。主要3種に比べてどの都道府県でも少ないためと思われます。)
 全国統計で見ればイノシシやシカが圧倒的に多く、サルはそれらの3分の1以下であるのに、青森や山形ではサルが被害額のほとんどを占めているという、全国統計だけではわからない、地域性というものが浮き出て来ます。

 当然、これは地域におけるそれら動物の生息頭数や、生産する農作物の種類などの要素からと思われます。
 従って、最初に見た全国統計でも、単に全国における推測生息数がツキノワグマに比べてその他の動物の数が多い(繁殖力もある)ために全体量を押し上げている可能性があり、これらの統計資料には出て来ない「1頭当たりがもたらす被害量」は、ツキノワグマがイノシシやシカなどに比べて小食なんてことはありませんから、もし熊が特定の場所に執着するようになった場合、全国統計とは関係無く、その場所における被害額というのは大型動物ゆえに、無視できない被害額になります。

 これらの動物が被害額を大きくする(生息頭数を増加させることができている)一因は、「雑食性」で、いろいろなものを食べることができるからですね。ツキノワグマも雑食性で、畑作物だけではなく果樹のほか、イノシシやシカと違い養殖場の魚、ときには家畜まで襲いますから、被害額は大きくなる要素があります。

 新聞報道でも同じですが、このような統計に接するときは、そういうことまで予測や比較をしませんと、もしも怪しげな団体が冒頭の統計のみを示し、「全国的に見て、サルによる農作物被害額はその他の動物に比べれば少ない。他の動物よりも無害な動物なのだ」などという、おかしな論理展開をされた場合、それを信じてしまう人も出かねません。
 それはサルに限らず、熊でも同じことが言えるかもしれないのですから。

 例えば、7月27日の日テレNEWS24・秋田放送の報じた内容です。
クマ 相次ぎ農作物食い荒らす

(秋田県)スイカが食い荒らされたのは羽後町床舞の畑です。
 26日、収穫前のスイカ5個が割られて、果肉が食べられているのが見つかりました。スイカに残された爪痕から、クマが畑に侵入したものとみられます。
 畑にはタヌキの侵入を防ぐため、高さ1メートルほどの柵が設置されていました。しかし一部が押し倒され、鉄製のパイプも折り曲げられてしまっていました。
 この畑では去年8月にも収穫前のスイカおよそ30玉が食い荒らされたほか、授粉用のミツバチの巣箱も破壊されていたといいます。

 一方、大館市の畑では27日午前5時ころ、収穫前のトウモロコシがクマに食い荒らされているのが見つかりました。被害は3か所の畑で合わせて120本余りにのぼっています。
 農家の人の話しによりますと、現場の畑には2種類の足跡が残されていて、親子でトウモロコシを食べに来たのではないかと見られています。
 現場は国道沿いの畑で民家もあることから、警察で警戒を呼びかけています。
[ 7/27 19:20 秋田放送]
 正直、人身被害に比べれば、地味な印象です。
 また、熊に限らず、この被害はイノシシやアライグマでも発生する内容です。

 しかし、冷静に計算をしてみますと、スイカも良質な大玉ですと1個2千円前後はしますので、5個食べられただけでも1万円前後の損害です。30玉であれば、6万円。例えば自宅や事務所に泥棒が入って、6万円相当のものが盗まれた、と置き換えた場合、その損害が決して軽いものではないことが実感しやすくなると思います。
 仮に時給600円とした場合、100時間の労働=1日5時間のパートで20日働かなければ得られない額です。

 それだけではなく、大切に時間をかけて育てた農作物を野生動物が食い散らかして行ったのを目の当たりにした場合、それを許容する人もいますが、その動物に対して怒りや憎しみを持つというのも当然の感情です。
 まず、そういう人の気持ちや受けた被害を実感・共感しませんと、対策も、動物との共存を開始することも困難になります。
 このような統計にしても、報道紙面などにしても、その背景には、被害に遭った人の生活や人生、「顔」というもの常に意識して、そしてその数字から読み取れることを客観的に考えて接しませんと、同じ統計を見ても全く違う結果をもたらしかねない、怖いものでもあります。

 統計というのはその設問の仕方、集計の過程で真相が微妙に変化することもありますし、設問者あるいは回答者の思惑を反映させることもできる、そういうものとして、実際の現場をきちんと見なければわからないという面もあります。
 昨日、ヤマビルについての記事をご紹介した際、人家近くに野生動物が多く出没することは、農作物被害に留まらず、人間やペットとの接触による双方への病気・寄生虫被害などについても触れました。
 また、特に熊やイノシシなど、動物の種類によっては人身事故も起きえますが、以前から繰り返し紹介しているとおり、動物が道路に出没することでの交通事故も発生します。

 7月5日の毎日新聞の記事です。
交通事故 トラックと衝突、高速バス乗客1人死亡 徳島
7月5日10時31分配信 毎日新聞

 5日午前7時50分ごろ、徳島県牟岐(むぎ)町橘の国道55号で、

【中略】

 同署によると、現場は片側1車線のほぼ直線区間。トラックの前方を走っていた軽乗用車が路上でシカの死骸(しがい)を避けようとし、その軽乗用車を避けようとしたトラックが対向車線にはみ出したとみられる。衝突後、互いの右側をすれ違う形になり、その際、トラックに付いていたクレーンのアームがバス右側面の窓を次々と突き破った。死亡した中村さんは、バスの10列ある席の前から5列目の右側に座っていたとみられ、クレーンに接触した可能性がある。

【後略】

【山本健太、井上卓也、大原一城】
 さすがに路上のシカとなると、死がいとはいえ、軽自動車ではそのまま轢いてしまうという手段は取れないでしょう。急停止するか、回避するのはやむを得ない状況だったのかも?しれません。

 しかし、直線道路で朝の8時ごろ、そしてシカの死がいという大きなものが路上にあったのであれば、普通に運転をしていれば相当早くからそれに気づき、回避や停止などが余裕をもってできたのではないだろうか?とも思います。避けようとトラックが対向車線にはみ出るほどの軽自動車の動きというのが事実であれば、この軽自動車の運転手の過失は重大なのではないでしょうか?

 と、同時に、軽自動車がそこを差し掛かったときに既にシカが死がいとなっていたという以上、その死がいに至った原因はおそらくは交通事故による轢死だと思われますが、シカが死ぬほどの衝突をしたと思われる車は、どうなったのか、気になります。数十kgにはなるであろうシカに、時速数十kmで衝突したのであれば、普通、車両前方はかなりのダメージがあると思います。

 軽自動車が回避しようした直前にシカが轢かれたと言うのでない限り、あくまでも推測ですが、普通自動車であれば走行に支障が生じるくらいになるところでしょうから、そのまま走行していくとは考えづらいです。幹線道路のようですから、大きめのトラックが衝突し、それであまり車両にはダメージが無かったのかもしれませんね。それで放置して走り去った…というのも考えられます。
 いずれにしても、動物と衝突した場合、状況にも寄りますがそれを放置することは、事故を誘発しかねないということですね。

 また、幹線道路の月曜日の朝、というところから、既にそのシカの死がいを見ていたドライバーもあったと思いますが、そのようなものが路上に放置状態になっていて、危険だ・事故にならないように通報とか発煙筒を焚くとか、そういう回避手段を取ろうと考えた人は誰もいなかったのでしょうか?

 昨今、農作物の被害分布が広がっているという事実がある以上、また、春からこうも熊の目撃報道がされているという点においても、野生動物が人間の生活の場に出てくるということは意外なことでも無くなっており、野生動物の出没は何だか農家や行政だけの問題と思いがちで無関心という人も多いかもしれませんが、実は運転者においても今や決して油断のできない身近な状況になりつつある、ということの警鐘を鳴らしたいところです。

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現場の嘆き

 このブログでは様々なことを取り上げていますが、熊などの野生動物により人間社会への影響というものは非常に深刻なものです。

 一見、「人間VS野生動物」と思いますが、「人間VS野生動物&人間」という場合もしばしばあるということも、この問題をややこしくしてくれています。これが「人間VS自然災害」というのであれば、これは解決はほぼできないとは言えども、自然災害による農業被害に、被害者をとやかく言う人はまずいないはずです。
 ところが、これが野生動物などが絡むと、個々人の価値観や無知などが入り込み、農作物被害の深刻さを知らない、あるいは知ろうともしない、ひどい場合には知っていてもなお、動物側に一方的な肩入れをするという人や団体があります。

 私も豊かな自然環境や全ての命を畏敬し大切に思う1人ではありますが、それ以前に1人の人間ですので、人間の通常的な経済活動の範囲で生じる被害というものについては、「人間>動物」と考えています。まず、人間ということを知り、そしてそれぞれの思いや立場、利害関係などを理解した上でなければ、様々な意味でこのような農業被害については語る資格は無いと考えています。

 ですので、よく知りもしないで有害鳥獣駆除の現場に対して安易な批判をし、代替案も出さないような連中には激しい嫌悪感をもよおします。
 それは単に、被害を受けた人の心情を踏みにじる卑劣で心無い態度・言動であるのはもちろん、実際問題として、対策の第一歩である利害関係の調整や調査研究にも重大な支障が生じるためです。後者を具体的に言えば、被害者がそういう過剰な動物保護を訴える無知な人に激しい不快感や不信感を持つことで、経済的な被害への嘆きと合わせて、複雑に感情が高ぶるために、話し合いや調査に支障が生じてしまうことがあるのです。
 過剰に動物のみを守ろうとしか言うことができない根拠無いいわゆる「愛誤団体」などは、ただ人の心を踏みつけ対策を遅らせる、迷惑な自己満足なだけの存在ということはハッキリ言っておきたいと思います。

 さて、7月5日の日経BPにですが、そんな被害現場の声に触れたコラムがありましたので、一部を引用させていただきます。
2010年07月05日
ニッポンの「食」 働く意欲を奪う鳥獣被害の拡大

民俗研究家、フリーライター=結城登美雄

【前略】

 農水省のまとめによると、平成16年度の被害面積は約14万haで、これは千葉県の全耕地面積を超える広さである。そしてその被害数量は32万t。それを米に換算すれば、岩手県の水稲生産量に匹敵する。被害金額は報告されただけで206億円。獣被害の90%はイノシシ、シカ、サルによるものだが、クマ、タヌキ、カモシカ、ハクビシン、野ネズミと様々な動物が略奪を繰り返している。被害作物も、稲、麦類、豆類、果樹、野菜、芋類、飼料作物と、ほぼ全領域に及ぶ。なぜこれほどまでに野生鳥獣類の被害は広がったのか。

 環境省の調査によれば、国土全体で野生動物の生息地域は1.2〜1.8倍ほどに分布域が広がっているという。裏を返せば、それほどに人間の生活領域に動物たちが侵入してきたことになる。周知のとおり、中山間地域は過疎化や高齢化が進み、人間活動が低下し、里山の管理ができず、耕作放棄地もこの10年で 2.4倍に増加し、そこが野生鳥獣類の隠れ場やえさ場になり、繁殖率も上がった。

 私はこの15年ほど東北を中心に各地の中山間地の集落をたずね歩いてきたが、どこへ行っても訴えられる話は、鳥獣被害のひどさばかり。働く意欲が失せてしまうという。急速に進行する中山間地域の離農の問題は、高齢化などの内側の要因ばかりではないと気づかされた。

 むろん人々とて被害に対応しなかったわけではない。花火や爆音機でおどし、ネットや電気柵、忌避剤などで防衛につとめたが、多勢に無勢、なかなかに効果はあがらないという。また行政に捕獲や駆除を頼んでも、狩猟免許取得者がこの20年で46万人から20万人に激減し、しかもみな高齢化し、俊敏で獰猛な彼らに立ち向かうための限界があるのだという。

 それを知ってか知らずか、動物たちも人間の弱みにつけこむように、傍若無人のふるまい。私もしばしば猿の群れに出くわすが、追い立てても逃げるどころか、逆に歯向かってくる始末。そのあまりのひどさに、思わず村人に「いっそのこと、みんなでやっつけてしまったらどうです?」といったら、「そんなことをしたら、都会の人間が聞きつけて騒ぎ出す」と声をひそめた。

 その答えに思わずドキッとした。私にも心当たりがある。当事者意識を欠いた都市的人間のお気楽な動物保護論。それが中山間地の人々への無言の圧力になっているのである。むろん命や自然の大切さに異論はない。しかし、食べることはきれいごとで成り立っているわけではない。私たち日本人は1世帯当たり、年間 40kgの動物の肉と同量ほどの魚介類を消費している。すなわち、ほかの命を食わずには生きられない存在なのである。

【中略】

 「この村で食料を確保するためには、何よりもまず、猪から畑を守ることが重要でした。そのため村の周囲に24kmにわたってタテヨコ1mの石を積み上げ猪垣を築きました。それでも猪は侵入してきます。もちろん殺したくはないのですが、生きるためには仕方がありません。

【中略】

 沖縄だけに限るまい。農山村は、おだやかに農の営みをしてきたわけではない。日本の食は、そうした現場から私たちのもとに届けられているのである。

(初出:『日経エコロジー』2007年10月号)
 被害面積や被害量を単純に他の尺度で解説するのは安易過ぎると思いますが、まあそれは置いておいて、大変な被害があるという現状と、それに対する農家の苦労ということはおわかりいただけると思います。どんな背景があって、24km×1m×1mもの猪垣を積み上げるという途方もない労力をかけなければならなかったのか、事態はそれほど深刻だったということです。
 引用は最小限にしていますので、元記事の方もご覧いただくことをオススメします。

 このブログでも何度か触れていることで、書かれていることに真新しい主張というのは見られないですが、「有害鳥獣駆除をする狩猟者の減少」や、「不勉強のくせに、ただ批判するだけで代替案も出さない、よそ者の発言」などなどを感じていた私としましては全く同感ですし、同時に、それは何も私だけの特異な考え・印象ではなかったということでもありますね。
 この記事を書いた方も、しばしば中山間地の集落を歩いているという人ですし、私も学生時代は農業を専攻しつつ野生動物らに関心を持っている観察者ですから、農村集落の現場を少しでも知っていれば、農作物における野生動物の被害ということに、軽はずみなことは言えない・言わないものです。このことからして、「実践自然保護団体」などと言っている団体がそんなことを考えもしていないという事実に、「どこらへんが『実践』なのか?」と、よくも言えるものだと、呆れるばかりです。

 野生動物も生きるのに必死であり、人間も生きるのに必死なのです。
 野生動物や自然というものはそもそも、個体同士あるいは種族同士の生き残りの弱肉強食の世界です。それほど自然保護・自然のままに、と言うのであれば、その人たちの本来すべき主張はその自然の掟・原則を守るように言う=人間の食べ物を確保するためには他の種族をある程度殺傷するのはやむを得ない自然の摂理の中にあるという考えになると思うのですが。
 ライオンの群れの中で、メスライオンがさて水牛を狩りに行くか、というときに、あまり狩りをしないオスライオンが「動物を殺すな」と言うようなものです。メスライオンに「じゃあ、お前は何も食べるな」と言われることでしょう。
 水牛の群れの中にいて、ライオンが襲ってきたときに、離れたところにいるシマウマが「戦ってライオンを傷つけてはならない」と言うようなものです。水牛に「じゃあ、お前が無抵抗で食べられろ」と言われることでしょう。

 昨今、有害鳥獣駆除の現場というのを、なるべく表に出さないような傾向にありますが、私としては、それも問題を深刻にさせる一因ではないか?と考えています。
 もちろん、事実をきちんと寝ぼけた動物愛誤者に突き付けて徹底的に論破するという必要性もありますし、よく知らないでいる人に丁寧に説明して支持を取り付けるという意味、そして、不透明な駆除を少しでも失くすという効果も期待できるからです。

 私は物心ついたころ、両親に食べ物を食べるときには「いただきます」と感謝の挨拶をしなさいとしつけられました。
 教えられ・自ら考えるようにしつけられたのは、言葉だけではなく、その意味です。
 それは、「ご飯を作ってくれた母親」や「その食材購入のためのお金を稼いでくれる父親」に対しての感謝だけで終わるのはなく、「食材を店頭に並べるまでに働いてくれた流通や農家・漁業…の方」とか、「それを買うための父の給料を払っている会社やそのお客」とか、「食べ物になるために命を奪われた動植物」…など、全てに感謝しなさい、と、感謝の対象は他にどんなのがあるか?と私に考えさせられながら、そして教えられました。

 歴史を振り返り、そして世界に目を向けると、これほどまでにあふれるほどの食べ物に囲まれた現在の日本が、いかに人類の歴史の中で稀有なことであり、ありがたいことか、痛感します。
 その豊富さに溺れて食べ物そのものやそれに関わる全ての方々に対する感謝を忘れ、そもそも食べ物とはどんなものであるのか?ということを知らない・考えたこともない、あるいは忘れたのか、とにかく私がしつけられたことをしつけられていないような人が増えているのかな?と感じます。

 短絡的に、「野生動物なんて、皆殺しにしてしまえ」という極論が許されないのと同じく、机上で「野生動物を殺す狩猟なんてとんでもない」という意見も許される話ではありません。

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 昨年来から、度々農作物を守るとして、無許可でワナを仕掛けて熊を捕獲しようとする話題が聴かれているということを紹介し、北海道での事例では略式起訴ではなく正式な裁判により被告は争う姿勢という記事も紹介しました。

 その初公判が釧路簡易裁判所で行われたという記事がありました。

 まずは、今日の読売新聞の記事から。
「牛守るため」ヒグマ捕獲、無罪主張

 無許可でわなを仕掛けてヒグマを捕獲したとして、鳥獣保護法違反に問われた北海道浜中町、牧畜業三田牧男被告(72)の初公判が28日、釧路簡裁(青木忠儀裁判官)で開かれた。三田被告は起訴事実を「間違いありません」と認めたが、「わなは、牛が行方不明になったり、牧場の外に逃げて事故を起こしかねなかったりしたためで、安全のためやむを得なかった」と無罪を主張。弁護人は「緊急避難で、加罰的違法性はない」と述べた。

 検察側冒頭陳述などからは、三田被告の牧場に約10年前からヒグマが出没、2007年以降毎年、牛が行方不明になったり、クマに追われて5キロ以上先まで牛が逃げたりしたことなどが明らかにされた。

 また、三田被告が銃による狩猟許可を持ち、わな猟免許を申請しようとしていたことも明らかになった。

 起訴状によると、三田被告は道知事の許可を得ず、07年10月頃から09年11月の間、牧場内に箱わな1個を設置し、同月、ヒグマ1頭を捕獲したとされる。

(2010年6月28日  読売新聞)
 乳牛でしたら、ヒグマが本気で食べようと追いかければ、逃げきれないのではないかと思いますので、5キロ以上先まで逃げたのは、「クマに(5kmも)追われて」というよりは、「クマに驚いて」というような感じもします。
 北海道の乳牛牧場事情はわからないのですが、放牧場所から5km先に逃げられるものなのでしょうか?牧草地を囲む柵とかはどうなっているんでしょう。さすがに広大な土地だけに、難しいのかな。

 「行方不明」というのも、よくわからない表現です。
 子牛ならば持ち去られるということもあるかもしれませんが、普通の乳牛であれば、ヒグマの倍以上・600kgを越えます。そんな重量であれば、さすがにくわえて持ち去るということはできないでしょうから、加害現場で食べるなどするので、「行方不明」ではなく、ひと目ですぐそれとわかる「食害された」と熊に襲われたというストレートな表現になると思うのですが。行方不明だけでは、それが熊が原因なのか否か、客観的には何とも言えなくなってしまいます。
 ヒグマの形跡や血痕など、それとわかる特徴でもあったのかもしれませんが、この記事からは、本当にヒグマが加害したのかどうか、私にはわかりません。

 さて、「緊急避難」ですか。
 今日の共同通信のこの初公判を伝える記事には、緊急避難の解説が少し出ています。
クマ無許可捕獲で無罪主張 「牛守るための緊急避難」

【中略】

 刑法37条(緊急避難)は、自分や他人の生命や財産に差し迫った危険を避けるため、やむを得ずした行為について、生じた損害が避けようとした損害より小さく、ほかに方法がなかった場合には処罰しないとしている。
 これは一般でも適用され、例えば刃物を持っている人間に襲われてこのままでは殺されてしまう、という切迫した状態のとき、逃げようとして近くにいた逃げるのに邪魔な人を突き飛ばし、そしてその人にケガを負わせたとしても、殺されそうだという緊急の状況であればその程度ならば罪に問えない、というような規定です。

 さて、「検察側の冒頭陳述」などからわかるということに、この被告が3年前から牛の被害に遭っていたということがわかります。
 むろん、これを検察側があらためて告げているというのは、「緊急」では無いと主張したいのではないかと思われます。つまり、先に私も書いたように、数ヶ月から数年にわたって継続していた被害は同情すべきでも、一方でなぜ、そのような時間的猶予があるのにも関わらず、ワナ猟の免許取得や有害鳥獣駆除のための相談・手続きはしなかったのか?という点を指摘したいのでしょう。

 被告が「わな猟免許を申請しようとしていた」ということが明らかになったというのが、果たしてその手続きや相談中だったというような裏付けがある話なのか知りませんが、「遅い」というのがおそらくは検察の、そして私もそう考えます。これが被害発生してせいぜい数ヶ月で、ワナ猟の免許取得の手続きを待っていては被害は甚大になる…という状況ならば、感覚的には「緊急避難」と言われれば要件を満たすような気がしないでも無いのですが。

 被告は銃による狩猟許可を有し、ワナ猟の申請を考えていたということは、免許無く行うワナ猟が違法だとは知らなかったというわけではないようですから、「知っていてなお行った」という点は、検察側の理屈としては「悪質」と判断する要素になりえます。

 これが、牧場で牛の世話をしているときに突如前触れもなく熊が現れ、持っていた農機具で熊を殺した、というのでしたら、正当防衛なのか緊急避難というのか、とにかく免許の有無に関係無く、鳥獣保護法違反なんてなりえないわけですが。

 ですので、ワナを長期間にわたって仕掛けていたという点では、常識的(法律の)に考えれば「緊急避難」というのは適用されないのではないかと私は思います。「他の手段を取ったのか?取る時間は十分にあっただろう?」と言われれば、正論が必ずしも正しいわけではないのですが、しかし反論できないのでは。
 ですので、法律論からすれば、弁護側が主張するように、「これが罰金30万円も課すほどの違法性があるのか否か?」という点での司法判断が争点になるのではないかと。

 司法判断としてどのような判決や、その中で見解が示されるかわかりませんが、できれば、裁判長にはよくよく考えて、判決文を書いていただきたいですね。
 そもそも、今回の略式起訴で出されていた「罰金30万円」というのは、純粋に農作物被害に遭って損害を受けている人にとってはかなりの額です。しかし、熊を何頭か密猟し、うまくさばけば、それくらいの金額を得ることはできうるのです。頭骨、毛皮、熊の胆、肉などは一定程度の換金ができるのです。判決によっては、それが判例になり、悪質な密猟を摘発した場合に「いや、これは農作物被害防止のためやむなく」なんて言う密猟者に逆手に取られかねません。
 また、全国の農作物被害に悩む方々においても、「じゃあ、やろう」ということになりかねません。それは、今後頭数管理をして行こうと言う中では非常に障害になってしまいます。

 果たしてこれが、「緊急」避難になるのか否か。
 農作物を守る場合ならば、緊急性があれば無許可のものも違法性は問われない余地があるのか。
 その緊急性の判断は、総合的な状況判断なのか設置期間なのか。
 既に発生、またはこれから発生しうる被害額が判断に影響を与えるのか。

 そういった点では、おそらくは日本で初めての司法判断になるのではないかと思いますので、ここは釧路簡易裁判所には熟考した、今後の日本の農作物被害対策や有害鳥獣駆除、同時に密猟などへの影響を考慮しての判決文をお願いしたいところです。

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