日々是雑感

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【有害鳥獣駆除・ハンター】

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 私は動物や命というものを大切に思っていますが、同時に、人間の気持ちや生活というのも大切に思っています。

 人間と動物というのは時に対立・摩擦が生じるものです。

 ここでは、安易に動物を保護しハンターや行政を批判したりはしません。
 農作物と動物が、どうすればうまく折り合っていけるかということを、考えることができればと思います。
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アライグマ被害

 農業被害で最近全国で急速に増えているのが、アライグマやハクビシン、ヌートリアといった、熊や鹿、イノシシなどに比べて小型の哺乳類によるものです。
 動物による被害と言えば、農業被害や人身事故などをすぐに思い浮かべますが、この他にも先だってトウホクサンショウウオの話題を紹介した際にあった寄生虫や病気の媒介や、民家などの屋根裏に棲みつかれてしまい音や糞尿による汚損といった被害もあります。

 特にアライグマはもともと樹洞などで生活するためか、民家や寺社の屋根裏に棲みつくということがその他の動物よりもよく聴いたりします。こういう、食べ物を選ばない雑食性で、かつ都市部の空間にも適応できるというライフスタイルの動物はいったんその地域に入り込むとその旺盛な生命力で発展していくものです。
 小型なだけに、目立たず行動ができるというのも、対策が遅れる要因になっています。

 近年、そういう話を多く聴くようになってきた一因というのは、人間の生活様式も変わって来て、例えば農業用水用に作られたため池が農地が減少して水の需要が少なくなったのにそのまま放置されていたりすると、ヌートリアのように安定した水辺環境を好む生物が繁殖しやすくなるわけです。
 少子高齢化などで空き家が増えれば、庭木として植えていた木々の実や特に果樹などが放置され、それをハクビシンやアライグマなどが食べ、古い空き家の床下や天井裏を住まいにしたりします。
 全てではありませんが、そういう人間の生活が変わってきたことで与える自然への影響というのは、何も二酸化炭素の排出というような大きなものだけではなく、実は意外に地味な部分でも確実にあるわけです。人間社会がごく「普通に」生活していることでも、その他の生物の繁栄に影響するわけで、その「普通」が変われば、それまで抑制としていた要素が無くなり、増加するわけです。
 これは逆に言えば、人間の生活が変わることで抑えられていた動物が繁栄するようになると、玉突き現象的にその他の動物が繁栄した動物に今度は抑えられてしまうということになります。

 そんな中、京都にある世界遺産・二条城では、アライグマによる破損被害が、という記事がありました。
 4月20日付けの読売新聞です。
アライグマ爪跡、二条城・平等院…世界遺産台無し
4月20日21時56分配信 読売新聞

 京都市中京区の世界遺産・二条城では、二の丸御殿(国宝)の柱や屋根など約50か所で爪跡などが見つかり、京都府宇治市の世界遺産・平等院でも鳳凰堂(国宝)の柱に爪跡を発見。関係者は「障壁画などに傷がついては取り返しがつかない」と、わなを仕掛けるなど対策に追われている。

 二条城を管理する京都市によると、3月5日に二の丸御殿車寄(くるまよせ)の天井裏で動物の排せつ物を発見。NGO「関西野生生物研究所」に調査を依頼したところ、二の丸御殿白書院や本丸御殿(重要文化財)の外側の柱などで、最大で幅3センチ、長さ10センチのアライグマとみられる5本指の爪跡があった。市は4か所に捕獲用のわなを設置した。

 平等院では昨年、鳳凰堂の回廊の柱にアライグマとみられる爪の跡が見つかった。木が傷つけられる被害もあり、建物のすき間を金網でふさぐなどした。

 同研究所が全国約1000か所の寺社などを調べたところ、約8割でアライグマの痕跡があったという。川道美枝子代表は「寺社は森や水辺があり、都市部でもアライグマにとって安全な場所。被害は広がっており、建物内部への侵入を防ぐ措置が必要」としている。
 在来種では、そんな被害を出すような動物はまずいませんから、これは外来種による特有の被害と言えそうです。

 しかし、これら外来種、特にこのアライグマやらヌートリアやらのような人為的に持ちこまれた動物による被害というのは、全て人間のエゴによるものから発生したということを忘れてはいけません。

 佐渡島のトキ大量死にかかわったテンについても同じですが、先日書いた「原因の原因」で言えば、なるほど、二条城を傷つけた原因はアライグマによるもので間違いないのですが、ではなぜ本来国内にいるはずのないアライグマが国内にいるか?という原因の原因を考えれば、それは全て我々の愚かさであり、二条城を傷つけた原因は直接ではないけれども私たちなんですね。
 末永く二条城とともに残っていくであろう柱の傷は、二十世紀後半に生きた私たちの社会が愚かだったということを後世に伝えてくれる傷でもあるのです。

 アライグマの場合は、以前にも書いたとおり、1970年代に放送されたアニメをきちんと見ていなかった人々が欲しがり、しかし成長とともに気性の荒くなるアライグマを持て余し、アニメ同様「自然に返す」という言い訳をして野山に捨てたというのが大きな一因と言われています。
 近年、アライグマを飼いたいという人はほとんどいないと思いますが、そういう人間社会の嗜好やライフスタイルの変化、それに関わる営利事業などが、こういう外来種問題を発生させたり後押ししたりしているわけです。

 いったん拡がり増えた外来種を捕えて根絶というのはもうほとんど絶望的ですが、その変化した私たち自身のライフスタイルを人為的に以前のようにするということは1つの方法でしょう。
 例えば、ヌートリアなどが棲みつくようなため池は定期的に水を放水して水面を上昇・下降させたり、空き家の果樹などを地域で取ったり、ということからですね。
 捕まえて殺すよりも効率的かつ確実ですし、食べ物や棲息環境を悪化させることで自然減少をさせる方法の方が、命への接し方としては時間がかかっても、一定の責任の取り方のようにも思います。そうすることで、この柱につけられた傷が、ただの愚かさの記録となるか、それを克服した第一歩の記念碑となるのか、分かれ道になるのかもしれません。

【追記 2010.5.12】
 今日の朝日新聞に、こんな記事が掲載されていました。
農産物や文化財の敵、アライグマを追え 発信機つけ調査
2010年5月12日19時40分

全国で農産物や文化財に被害を与えている北米原産のアライグマの生態を調査し、捕獲に役立てようと、環境保護団体「関西野生生物研究所」(京都市)が京都府と大阪府で捕獲したアライグマに発信機をつけ、1年間の追跡調査をする。12日、調査地となる京都府亀岡市で住民説明会を開いた。同市では昨年度に174匹が捕獲されている。 

 アライグマは1970年代に放映されたテレビアニメの影響などで人気が出て、ペットとして飼育されるようになった。しかし、かわいらしい外見と違って気性が荒く、飼い続けられなくなった人が山に放すなどして野生化。繁殖力が強く、環境への適応力も高いため生息範囲が広がった。生態系に深刻な影響を与えたため、2005年に外来生物法で特定外来生物に指定され、原則的に飼育や移動などが禁じられた。 

 農林水産省のまとめでは、08年度、アライグマによる果物や野菜への被害は全国で約2億円。また京都府や奈良県などでは、国宝や重要文化財に指定された寺社の建造物や仏像が鋭いツメで傷をつけられる被害も相次いでいる。 

 05年からアライグマを調べている関西野生生物研究所によると、アライグマは林や建物、畑などを移動して生活しているとみられる。捕獲したアライグマの首に発信機をつけ、1年間かけてねぐらやエサ場、わなへの対応能力を調べる。研究所の川道美枝子代表は「徹底的に捕獲しないと数は減らせない。よく立ち寄る拠点を見つけ、わなを仕掛ける必要がある」と話す。 

 調査は亀岡市から始め、隣接する大阪府能勢町まで広げる。まず2匹に発信機をつけ、最終的に10匹程度の行動を追跡する予定。(西江拓矢) 
 取りあえず効果的な駆除の方法を模索するための調査ということですね。
 それにしても記事の見出しですが、「農産物や文化財の敵」とありますけれども、確かに被害を出すのはアライグマですが、その「敵」を国内に連れて来てここまで莫大な被害を生みだす原因を作ったのは、ペットとして安易に売買し、そして安易に捨てた人間の責任であることを忘れてはなりません。
 誰に知られなくともアライグマを野山に捨てた・逃げられたという人は、一生その深い罪を悔い続ける責任があります。
 報道の皆さんには、人間が捨てたという事実を広く報道していただき、かつてアライグマを安易に売買した人間に一生後悔させるようにしてほしいものですし、そういう報道が次なるアライグマ防止には大切だと思います。
 ツキノワグマによる林業被害=熊剥ぎへの防除効果として幹回りにテープなどを巻く方法に効果が見られるということはかねてから言われていますが、4月7日の毎日新聞の記事に、シカの食害に古着が効果がある!?という記事が掲載されました。
シカ被害 山林食害は古着で撃退 山梨の農家
4月7日10時24分配信 毎日新聞

 シカによる山林の食害に悩まされていた山梨県北杜市白州町の農業、上原公夫さん(75)が独自の防止策を考案し、効果を上げている。方法は、木の幹の地上約1メートルの位置(シカの口とほぼ同じ高さ)に古着を巻くだけ。県によると、木の周りを柵や網で囲むなどの対策はあるが「古着は聞いたことがない」。科学的な根拠は不明で、他地域の山林まで効果があるか分からないが、上原さんは「人間のにおいがするから、わなだと思うのかもしれない」と推測している。

 上原さんは約3ヘクタールの山林を所有。元はクヌギやナラ林だったが、35年ほど前「いつかは役に立つだろう」と、高級木材のヒノキに植え替えた。

 しかし、若いヒノキの皮はシカの餌となるため、植えた直後から苗木が食い荒らされた。シカが急増した15年ほど前には、被害は年間100本近くに達した。地元の猟友会に駆除してもらったり、シカの舌がしびれる薬を幹に塗ったが、被害は止まらなかった。農業資材のビニールを幹に巻いても、破られた。

 途方に暮れていた95年3月ごろ、着古して処分するつもりだったズボンや肌着を見て、ふと思いついた。「せっかくだから巻いてみるか」。若木10本の根元に巻き付けてみると、不思議なことに食害に遭わなくなった。

 ただ木が成長すると、また被害が出た。試行錯誤の結果、シカの口とほぼ同じ高さの位置に巻き付けたところ、被害がやんだ。知人から古着を集め、今は約3000本のヒノキのうち若い約600本が服を“着ている”。周辺で林業を営む友人らにも勧め、効果を上げているという。

 県森林総合研究所によると、シカは嫌なにおいがするものには最初は近寄らないが、やがて慣れるという。担当者は「なぜ古着に寄りつかないのか、不思議だ」と話している。【山口香織】
 科学的根拠がわからないということですが、野生のシカの基本性質は非常に臆病で、少しでも異変を感じた場合にはひどく警戒行動を取ると言うことは知られています。このあたりがカギではないでしょうか?

 「古着」という、自然界ではまず見られない色もデザインもサイズも多様な人間の臭いのついたものがあちこちにあることでその地域一帯を警戒し、それで近寄らないのではないでしょうか?
 全く同じものが同じように規則正しく巻きつけてある場合よりも、そんな様々なパターンのものが不規則にあることで、「慣れにくい」のではないかと思います。風で袖が動いたりすれば、一層効果的でしょう。
 また、古着が徐々に集まることで、管理者が同じ地域に度々取り付けに出入りする機会も増えますからそのことじたいと、そして少しずつでも新たな古着がその範囲内で増えて行くことで、少しずつその地域に慣れてきたところのシカに対してまた少し変化した「異変」を感じさせ慣れをリセットさせるという、「頻繁な取り付け(行動)」がシカに疑心暗鬼・警戒心を呼び込んでいるのではないでしょうか?

 「シカの口とほぼ同じ高さ」の巻くことが効果的というのも、口の高さというよりはシカの目線の高さで目につきやすくなるために効果も上がるという考え方もありますし、樹皮を一か所噛んでそのまま引きはがそうとするときにちょうど良い高さで抵抗があれば剥がしづらいちうシカの都合もあるでしょう。

 それにしても、これで本当に効果が上がるようでしたなら、朗報ですね。人工的なテープなどを別途用意するのは費用もかなりかかりますし、材質によっては相当な年月、そのまま山の地中に残ってしまいます。しかし、ウールなどの天然素材の古着であれば、経年劣化していずれ自然の中で分解されて消失することも期待できます。費用もかかりません。
 問題は、運搬するときにかさばるので、一度に大量に山に持って行って作業ができないという作業効率の悪さだと思ったのですが、逆にその取り付けのために頻繁にその地域に出入りし、時間をかけて少しずつ・頻繁に様子を変えるということでのシカに与えるインパクトが発生するということでもあるかと思いますので、一見作業効率が悪いことでも実効性を高めている結果になっているのかもしれません。

 唯一の不安要素は、この古着によってシカに与えるインパクトが、その地域全体で実施した場合であっても、最後まで忌避効果が持続するか否かですね。今はたまたま、特定の狭い範囲だけで見慣れないことをしている数少ない人があるために、シカに強烈なインパクトを与えているのかもしれませんし、それほどのインパクトではなくとも「少し不安だから、他に行くか。いくらでも他があるし」と、何も無いところが近くにあることでの忌避ということも考えられます。この記事の人の管理地だけでは被害が激減しても、他の人の管理地や農地に流れ込んだだけでその地域全体では被害が減っていないかもしれません。果たして地域全体にこの古着作戦が実行された場合でも、同じような結果になるかどうか。

 森林総合研究所や林業関係行政機関には、ちょっと検証試験をしていただきたいなあ、と思います。

【追記 2010.4.21】
 4月20日付けの信濃毎日新聞に、超音波でシカを撃退するという試みが紹介されていました。
シカの食害対策に超音波 南牧村
 4月20日(火) 

 南牧村は、シカによる食害対策で、シカの嫌がる超音波を出す機器を試験的に導入する農家への補助を始めた。この春から1年かけて効果を検証し、結果によっては来年度から本格的な利用につなげる予定だ。県内での設置は現在のところ同村だけ。
 機器は縦横約25cm、奥行き約40cm。スピーカーが4個付けてあり、シカが嫌う周波数を、音域などを変えながら断続的に流す。50〜80m先まで届く。
 ホームセンターなどでも、犬猫・ネズミからゴキブリやダニまで、「超音波」を使ったものが並んでいますが、哺乳類ならばまだしも、昆虫には効果は疑問です。
 その哺乳類相手でも、よくよくその種のみが感知できるような特定周波数で無い限りは効果は難しく、そうでない場合であればターゲットとなる哺乳類も不快感を感じるでしょうけれども人間もやはり不快感を感じるでしょう。
 これも、追試をしっかりとやって欲しいですね。聴覚として人間が感知できなくとも、知らず、不快感などのダメージを受けているということはありえますし。
 3月19日付けの読売新聞の記事に、有害鳥獣駆除を取り巻く様々な問題・課題が紹介されていました。
イノシシ問題で猟友会、骨折り損?
「捕獲せず追い立て」方針
 
 金沢市の住宅街に出没したイノシシを、警察官が発砲して駆除する騒ぎを受け、市は、イノシシが再び市街地に現れたら、山に追い立てる方針を決めた。だが、キバを持ち猛スピードで突進してくるイノシシ相手では、命の危険も伴う。対峙(たいじ)する猟友会員らがケガをしても、場合によっては保険の適用外になるなど、イノシシ駆除には課題が山積している。(小峰翔)

■街中の対応

 県や市、猟友会、地域住民らは「イノシシ対策情報連絡会」を開き、住宅街に現れたイノシシは、市から要請を受けた猟友会員による捕獲隊が、捕獲せず山へ追い返すことを決めた。イノシシが向かってきた時に備え、網(縦1・8メートル、横6メートル)も携帯する。とはいえ、「大声を出せばイノシシが暴れる危険もあり、具体的な手順は決まっていない」と手探り状態だ。

 35年の狩猟経験があり、捕獲隊長を務める県猟友会金沢支部長の奥村勝幸さん(63)は「イノシシに近づかずに追い返せればいいが、難しい。網で捕まえることもあるだろう」と話す。副支部長の広村靖男さんは、スピードのあるイノシシの追い立ては「不可能」と言う。「逃げる場合もあるが、人に向かってくるイノシシもいる。網での捕獲はかえって危険」と指摘する。

 奥村さんも「キバでやられたら人が死ぬ」と危険性は十分承知だが、「(突進を)防ぐ盾を作成中。公道や建物近くでの銃刀の使用はできず、(法定猟具の)網の使用がベスト」とみている。

■想定外

 「追い立て」の際、緊急避難的に、法定猟具以外の刃物やハンマーなどで立ち向かって、けがを負った場合などは保険の適用外になるという問題もある。広村さんはかつて、夜中に民家に押し入ったクマに向け発砲した。夜間や住宅での発砲は鳥獣保護法で禁じられているが、「住民の命が危険」と判断して撃ち殺した。

 猟友会員は共済保険加入が義務で、任意の団体保険にも加入するが、法に逸脱する行為は保険で補償されない。市街地での捕獲行為は「自治体が定める捕獲場所なら保険に適用可能」(共済保険担当者)だが、そもそも金沢市を始め自治体は、市街地での捕獲は想定していない。

 金沢市は、事故が起きた場合、「正当な捕獲行為なら、話を聞いて対応を考えたい」としており、奥村さんは「あいまいな点ははっきりさせる必要がある」と話し、今後、市と協議を重ねる考えだ。

■頭数増加

 市街地にイノシシが出没するのは、山中で頭数が増えすぎているためだ。県によると、2006年は589頭、08年には約2倍のイノシシを捕獲したが、農業被害額は、06年の510万円から08年には2720万円に急増。少雪で餓死するイノシシが減ったことや、竹林や耕作放棄地が増え、餌場や隠れ場所が増えたためとみられる。

 猟友会員の減少の影響も大きい。会員は高齢化などで、78年の2669人をピークに、06年には700人を割り込んでいる。

■対策

 このため、県は狩猟免許(わな、あみ、鉄砲、空気銃)の取得者を増やそうと、年に1回平日のみだった免許試験を、08年度から年2回、平日のほか日曜日に実施。2年間で受験者、合格者数はいずれも倍増した。

 だが、受験料や猟友会員登録料などで約5万〜7万5000円が必要。散弾銃購入には約8〜10万円、ライフル銃だと25万円ほどかかるため、「免許が欲しくても簡単には受験できない」(県自然保護課)。県猟友会金沢支部によると、わな免許を取る農家も増えているが、わなや網による捕獲の割合は全体の15%に満たず、銃による捕獲に頼っているのが実情だ。

 他県では自治体による新たな試みも始まっている。サルやカラスによる農作物被害に悩まされていた富山県魚津市では、08年に男性職員6人が狩猟免許を取得し、市が散弾銃6丁を購入。10年度は、職員が実際に会員らに同行して銃使用の経験を積むほか、さらに新たに3人が免許取得を予定。市環境安全課は「将来は、市職員だけで捕獲隊を構成する」としている。

(2010年3月19日  読売新聞)
 以前、野生動物の対応も警察官が行ったことに関して危機感を書きましたが、こういうものはもはや自治体などの役所が通常・直接行う業務の範囲を超えていると私は思います。
 自治体は、昨今の行財政改革が進んでいるため人員が減っている反面、その業務は多種多様になっています。役所では2〜3年で人事異動ということがありますが、有害鳥獣駆除にあたるためには長い時間をかけて経験や技術を積む必要がありますし、そして実際に対処するときには長時間連続して大勢がそれに当たらなければならない有害鳥獣駆除は、現在の自治体の組織体制では無理があるでしょう。

 とは言うものの、もしそれら公務員が職務として有害鳥獣駆除に当たり、それでもって負傷したとか他人に損害を与えてしまったという場合には、それは業務上のものとして、ほとんどの事故においてその職務命令を出した自治体などが保障することになると思うのですが、「ボランティア」の場合は、事前に明確に決めていない限りは「個人の責任」になってしまうわけです。
 同時に、「ボランティア」に「要請」するという立場である行政は、そのボランティアに強いことを言いづらいということが、昨日も書きましたが様々な弊害が起きる要素の1つになっています。

 体重100kg前後ある野生動物が、時速数十kmで自分のところに向かってくるというのに冷静に対処するということは、よくよく訓練や経験が無ければ難しいことです。
 さらに、気温の高い初夏〜秋ごろを中心に、野生動物の警戒に長時間活動するというのは、高齢化の進む現在の猟友会では、その任務に当たるハンターも大変ですし、事故もますます起きやすいのではないかと非常に心配です。

 ですので、こういうものをそもそも「ボランティア」に「要請」するというハンター人口が多く、また野生動物の出没問題がそれほど多く無かった時代とほとんど変わらない対処方法は、漫然と続けている行政の柔軟性の無さに問題があると言わざるを得ません。
 こういう場合は、きちんと駆除費用を予算化して、猟友会やハンターに業務を委託するという契約を結び、その契約の中で、様々な特約を付加した保険に加入する掛け金をも含ませるとか、契約仕様書の中で過失事故の場合には発注した行政も一定割合の賠償責任を負うというような規定を盛り込まなければ、警察官OBにお願いしようと、銃器の管理の厳しさを知っているか否か以前になかなか引き受ける人も出て来づらいのも当然でしょう。

 と、いう点では、有害鳥獣駆除では直接ありませんが、札幌市の取り組みは、学ぶところもあります。
 同じ日・3月19日の北海道新聞の記事です。
シカ ヒグマ 出没実態調査 市、新年度 移動経路や原因 対応策を提案へ (03/19 14:56) 
 
 札幌市は、市街地などへのヒグマやエゾシカの出没が増えていることを受け、新年度、初の全市的な出没経路や原因の調査を行う。専門事業者に委託し、半年かけて出没地域周辺を調べ、その結果から緩衝帯造成などを含め総合的な対応策を提案してもらう。(東野純也) 

 本年度、市に寄せられたヒグマの目撃や痕跡発見の情報は78件。件数は前年並みだが、南区の住宅街で出没情報が相次いだほか、清田区で家庭菜園が荒らされるなど、「危険度の高いケースが増えている」(地域振興部)。エゾシカも市街地出没や車との接触事故などが問題となっている。市民への注意喚起などだけでなく、柵の設置など抜本的な対策も検討する必要があるため、調査実施を決めた。 

 国の雇用対策の交付金を活用。調査員などとして31人の雇用を条件に、民間事業者に委託する。定例市議会に提出した新年度補正予算案に約7700万円を計上している。 

 期間は5〜11月。本年度、市街地に出没した地域を中心に、ヒグマの毛を採る「ヘアトラップ」を使うなどして移動経路を調べるほか、「近くに畑の作物がある」など出没の原因も探る。調査結果から、出没原因への対処法のほか、電気柵の設置や雑草を刈って人里と山を隔てる緩衝帯の造成など、出没防止策を検討してもらう。同部は「提案を参考に、市として2011年度以降の対応策を講じたい」としている。 
 国の雇用創出事業の中で地方に配分された予算で雇用を確保するとともに、野生動物対策の第一歩を行うというものです。
 公共事業を実施する際に、環境調査を民間業者に委託するということはこれまでも行われていましたが、このような業務でこのような発注をするというのはめずらしいことです。
 有害鳥獣駆除についての今後のあり方も、何かこれにヒントがあるような気がしますが、しかしこの雇用対策事業は永続的な予算措置ではなく一過性のものですので、それが一番の欠点ですね。

 莫大な金額の農業被害や、人身被害などを予防するために、国民の生命や財産を守るべき国や自治体が一定の予算を確保して効果的に対応するのは当然の業務だと思うのですが。
 有害鳥獣駆除や動物による加害事故防止においては猟銃による駆除は効果が認められるのですが、欠点はそれを取り扱う人の中にはモラルが低い人や猟銃の管理がずさんで問題を起こしてしまう人などが混じっていることがまずあります。
 また、有害鳥獣駆除を「お願い」する立場になる行政らと、「お願いされる」側の猟友会・ハンターらの立場関係など、課題が多いというのが実情だと思います。

 このような問題があるので、猟友会や狩猟を批判をする人もいます。
 それがまっとうな批判であれば良いのですが、単に感情的な批判というのも少なくなく、猟友会やハンターはそれを嫌って、正当な活動であってもその実情を外に向かって発信したくなくなっていて閉鎖的になりがちです。
 しかし、それは一般の人にも猟友会やハンターが何をしているのか不透明な印象や誤解を持たれてしまうことにもなっています。
 ところが、このモラルの低いハンターというのはその不透明な部分に目をつけて好き勝手やっているという場合もあり、それをまた、外からは批判と不審の対象になってしまう…という悪循環に陥ってしまっています。

 モラルの低い猟銃所持者のために、猟銃所持の規制が厳しくなってきています。
 そういう狩猟を取り巻く環境の変化や余暇利用の多様化により、猟銃を所持したり狩猟そのものをする人そのものも著しく減少しており、残った方も高齢化が進んでいるということです。
 こうなると、有害鳥獣駆除などに影響が出てきてしまうというわけです。

 これらの課題や問題の対策として、質の高く、行政らと対等の関係で透明性の高い有害鳥獣駆除を目指し、各地で行政が主導でボランティアハンターを育成するという動きが出てきていますが、3月19日の京都新聞に、警察官OBにこれをお願いするという試みを紹介する記事がありました。
警官OB、ハンターに
京都府、退職後に要請へ 

 シカやイノシシの有害駆除を担うハンターが年々減少する中、京都府は警察官OBにハンターになってもらうよう働きかけを始める。「銃器の扱いに慣れているから」との理由だが、どれほどのOBが応じてくれるかは未知数だ。

 府によると、銃を使う狩猟者の登録数は1975年には約9千人だったが、2008年には約1800人にまで減少している。近年は年に100人のペースで減っており、平均年齢も60歳を超えているという。

 農林業被害の拡大に伴い、わなを使う狩猟者の登録数は増えているが、猟銃は所持に試験や各種手続きが必要なことから「初心者が始めるのには心理的なハードルが高い」(府森林保全課)。

 このままでは有害駆除の担い手が不足する恐れがあることから、府が白羽の矢を立てたのが警察官OBだ。現役時代に銃器を日常的に扱っていた経験を生かしてもらい、退職後の地域貢献活動として駆除に携わってもらえないか働きかけを始める。3月末で退職する警察官をターゲットに、勧誘文書の配布などを検討している。

 府森林保全課は「せめて現状程度のハンターの数を維持したい。警察官だけでなく、自衛官や海上保安官のOBも勧誘対象と考えている」と話す。一方、府警OBの一人は「いいアイデアだと思うが、警察官は銃の管理の厳しさをよく知っている。気軽に応じる人は少ないのでは」と懐疑的だ。

 府によると、野生動物の有害駆除数は年々増えており、シカの場合は97年に約1000頭だったが、08年には約5800頭となっている。
 私もこのアイディアは面白いと思うのですが、1つは心身を鍛えた警察官の方であっても定年退職後であるということは60歳以上の方がほとんどだと思います。山野での活動などに対応は難しくなってくるというのが心配です。

 また、記事中のOBの方がおっしゃるとおり、銃器の管理について厳しさを自覚されているというのは間違いないと思います。しかし、京都府が思うように警察官が「銃器の扱いに慣れている」というのが疑問です。
 多くの警察官が、現職で働いている間、一度もその職務で発砲することは無く、幾度かの訓練で行うくらいと聴いています。また、警察官が扱うのは拳銃であり、狩猟では散弾銃やライフルを扱うという違いがあります。さらに言えば、犯罪者相手の拳銃使用(威嚇目的の使用から)と、山間地域などにおける野生動物との対峙は全く違います。
 もっとも、一般の人は扱う経験は皆無でしょうから、それに比べれば「慣れている」「公共心が高い(ことが期待できる)」とは思います。しかし、「道具としての銃器の扱い」がベテランと言えるかどうか。
 その辺を見誤ると、思いがけない事故や失敗につながりかねません。

 しかし、これが全体計画ではなく、その一環というのであれば、効果が期待できますね。

 それにしても、駆除数が97年に1000頭だったのが、11年後の2008年には5800頭と5.8倍というのはすさまじい増加です。これは山野の環境の変化などだけではなく、明らかにシカそのものが増加しているということであり、その増加の受け皿が農作物の被害というのは間違いないことでしょう。だからこそ、個体数の調整というのは緊急対処としては欠かせないわけです。

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 以前、北海道と釧路支庁とで、エゾシカの有害駆除にボランティアを募るという記事を紹介しましたが、同じく北海道の伊達市では、報奨金を出して駆除をしようと試みて、ちょっとした問題が出ているということです。

 2月23日の北海道新聞の記事から。
有害獣駆除のシカの尾に8千円「市外からも」 伊達市議会で論議 (02/23 10:15) 

【伊達】エゾシカの食害多発で伊達市が、狩猟期間中の昨年12月から今年3月まで道内で唯一、有害鳥獣駆除の許可を道から受け、駆除したシカの尾と交換に1頭8千円の委託料を支払う制度にしたところ、持ち込みが急増し、22日の臨時市議会で「市の確認方法に問題がある」との議論になった。 

 同市では有害駆除は通常4〜10月に行われ、定額制で道猟友会伊達支部に委託してきた。今回の駆除は伊達支部伊達分会のハンター28人を対象に、尾を市に提出すると8千円を支払う方式とした。その結果、昨年春から7カ月間の駆除数は68頭だったが、12月と1月で100頭に上った。 

 市議会では複数の市議が「(狩猟期で報奨金が出ない)市外で捕獲したシカを申請するなど不正の疑いを指摘する声がある。市の不正防止策は甘い」などと指摘、市がシカの死骸(しがい)を確認するよう求めた。道によると、駆除の確認方法として「尾や耳を持ち込むのは珍しくない」という。
 良く解釈すれば、定額制から1頭当たりにしたことで、「やる気」が出た結果、駆除数が増えたと考えることができます。
 むろん、悪く解釈すれば、伊達市議が指摘するような問題が出てくるのですが。

 行政の場合は、多くの仕組みで「性善説」を取っているのでそれはこのご時世、問題ですが、そもそもハンターの誰もが品行方正で紳士淑女であれば、こんな疑義は生じないはずです。
 一生懸命に駆除に当たるハンターはかわいそうな気もしますが、全国で、極端な問題行動を起こしたり、それに至らずともマナーや常識が無い行動・言動をする一部のハンターがいるために、そう思われてしまうのは、それはそれで、ハンターの皆さんで自浄作用を働かせるべき反省点ではないのではないでしょうか?

 北海道で、こういうお金がらみの「卑しい疑義」で真っ先に思い出すのは、道内のスーパーだったかで食肉偽装をしたことを謝罪して、「レシート無しでも自己申告で返金する」と発表したところ、見るからにうさんくさい連中が大挙して押し寄せて「カネよこせ」とわめいていた報道ですね。

 尾だけの確認、というのを聞くと、確か昔はどこの国でも、戦争で敵を討ち取ったときに首とか鼻でもって報奨金の申請や手柄を誇示したということですが、鼻や首では誰かわからないだろうと、非戦闘員を殺してそれらを敵の戦闘員だと主張するということも結構あったと聴いたことがあります。
 伊達市の担当の方は、そのような史実を知らなかったのでしょう。

 と、思っていたところ、続報がありました。
 3月6日の北海道新聞の記事です。
駆除したシカ 9頭は対象外 伊達の猟友会 (03/06 08:32)
 
【伊達】駆除したエゾシカの尾と交換に1頭8千円の委託料を支払う伊達市の制度に対し、市議会から「確認方法が甘い」と指摘されていた問題で、市から駆除を委託された道猟友会伊達支部伊達分会が、2月に提出した68頭中9頭は市外のシカだったとして、申請を取り下げたことが5日わかった。 

 市は、同分会に過去にさかのぼって再確認を求める方針だ。上山重信同支部長は「市外の元ハンターが市の報酬制度を知って持ち込んだ。これ以上の持ち込みはない」と話している。 

 市は、エゾシカの食害が広がったために昨年12月、狩猟期の有害鳥獣駆除許可を道から得て3月末までの期間で実施。1月分までで計100頭の尾が提出され、委託料計80万円を支払った。2月22日の臨時市議会で「市内にそんなにシカが多いのか。シッポでは、市外のシカが持ち込まれても区別ができないのでは」などと、論議になっていた。
 道猟友会伊達支部は、どういう確認をしているのでしょうか?
 先の記事によると、伊達支部伊達分会の28人が尾を持ちこむと報奨金が出る、というシステムだったようですが、今回の弁明にある「市外の元ハンターが持ち込んだ」というのは、それと矛盾します。矛盾が無いように解釈すれば、市外の元ハンターが伊達分会のハンターと共謀して伊達市から報奨金を詐取しようとした、とも受け取れます。

 もし、そういう悪意が感じられるようであれば、伊達市は公金に対する詐欺未遂事件として、告発すべきでしょう。刑事訴訟法では、公務員がその職務において犯罪を見聞きした場合は、捜査機関に告発義務があります。
 有害鳥獣駆除では、ハンターらに弱い行政という構図が多いようですが、そういう旧態依然の構図をまず打破しない限りは、この先の対策には程遠いと思います。

 だから、行政主導での新たなボランティアのハンターでの組織化を試行錯誤することが必要ですし、ハンティングには厳重な監視や課金が必要ではないか?と思うわけです。

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