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昨年の秋に、ツキノワグマの加害事故としては類を見ない大量負傷者を出した、岐阜県ひだ丹生川乗鞍 畳平バスターミナル事故においてはまだまだ調査しなければならない不明な点が多いのですが、「なぜ、そんな高度のところに熊がいたのか?」ということは疑問のTOPにあげられるでしょう。 むろん、いたことが不思議・謎、というほどではないのですが、いる必要性・理由が見当がつかないんですね。 ところが、少し古い記事で恐縮ですが、乗鞍岳ではツキノワグマどころか、イノシシまで高山で活動しているという調査を報じた記事がありました。 昨年12月11日付けの毎日新聞の記事です。 イノシシ:3000メートル級、乗鞍岳登山 お花畑、高山植物食い荒らす ◇ライチョウ危機? 長野・岐阜県境の北アルプス乗鞍岳(3026メートル)の高山帯に今夏から秋にかけてイノシシの群れが現れ、高山植物の根を食べる被害が出ていたことが、信州大教育学部の中村浩志教授(鳥類生態学)の調査で分かった。標高数百〜1000メートル程度までの里山にすむイノシシが、北アの高所へ登ったことが確認されたのは初めてとみられ、関係者は驚くとともに生態系への影響を懸念している。 中村教授によると、9月に乗鞍岳南斜面の標高2650〜2700メートルの岐阜県側のお花畑(高山植物の群生地)2カ所で、計約1・5ヘクタールにわたり、イノシシがタカネヨモギやセリ科の植物を根こそぎ掘り返して食べたとみられる跡やふんを見つけた。また、8月には頂上直下の標高約2800メートルの長野県側の山小屋前で従業員が1頭を目撃し、写真撮影した。 中村教授は「掘り返した跡の広さなどからみて、群れによる仕業だろう。国の特別天然記念物ライチョウの生息域で、高山植生の破壊など影響が心配だ」と話している。 イノシシは本州、四国、九州の丘陵地や低山地に分布し、草木の根や木の実、昆虫類を食べる。近年、温暖化や里山の手入れ不足で勢力を広げつつあり、畑を荒らしたり市街地へ下りて人を襲う例も増えている。長野県環境保全研究所の岸元良輔専門研究員は「最近は標高1000メートルの飯綱高原(長野市)にも現れるが、食べ物が多いとは言えない高山帯にまで進出するのは意外だ」と驚いている。 乗鞍岳では9月19日、岐阜県高山市側の標高約2700メートルのバスターミナルに、この標高で珍しいツキノワグマが現れ、建物内に侵入するなどして暴れて観光客ら9人がけがをする事故が起きた。【武田博仁】この乗鞍岳周辺の環境、農地などの分布がどのようなものかわからないので何とも言えないのですが、イノシシにしても熊にしても、なぜ、確実な農作物に目を付けず、山を下らずに登ったのだろう?ということが率直に思います。 わずかながら食べられるものはあるようですが、豊富ではありません。 もし、そう遠くない範囲に農地があり、そこで被害が出ていないという状況であったとしたら、イノシシや熊が農地に向かわずに山を登った理由を調べることで、全国的な農作物被害防止のヒントになるかもしれないのですが。 しかし、農地に出ては当然追われ、山を登れば高山植物やライチョウが心配だと言われ、イノシシの立場だけで言えば「じゃあ、どこに行けばいいのさ」と言いたくなるでしょうな。 レジャーで山に行き、生活のために農地を作り、しかし残された自然はとっておきたい、と、あれもこれも欲しいでは、行き場の無い動物を考えれば、そりゃ通用せんでしょう。順番を付けるならば、農地、自然、というような順番に私はなると思うので、少しぐらいは動物が安心して棲息できる森林地帯があって、入山規制・動植物持ち出し禁止などの場所があっても良さそうなものですねえ。
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【有害鳥獣駆除・ハンター】
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私は動物や命というものを大切に思っていますが、同時に、人間の気持ちや生活というのも大切に思っています。
人間と動物というのは時に対立・摩擦が生じるものです。
ここでは、安易に動物を保護しハンターや行政を批判したりはしません。
農作物と動物が、どうすればうまく折り合っていけるかということを、考えることができればと思います。
農作物と動物が、どうすればうまく折り合っていけるかということを、考えることができればと思います。
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3月2日の時事通信の記事です。 「キツネ事故」で遺族逆転敗訴=高速道管理の過失認めず−最高裁 3月2日18時22分配信 時事通信 北海道苫小牧市の高速道路で飛び出してきたキツネを避けようとして事故死した女性=当時(34)=の遺族が、東日本高速道路(旧日本道路公団)などに損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(藤田宙靖裁判長)は2日、同社に賠償を命じた二審判決を破棄し、請求を退けた。遺族側の逆転敗訴が確定した。 同小法廷は「キツネなどの小動物が高速道路に進入しても、死傷事故が発生する危険性は高くない」と指摘。「動物注意」の標識も設置されており、道路の安全性や管理に問題はなかったとした。 判決によると、女性は2001年10月、キツネを避けようとして高速道路の中央分離帯に衝突。後続の車に追突されて死亡した。何かの過失にしたいという遺族感情はあるのかもしれませんが、私の感覚ではこれを道路管理者の過失だと二審判決や、そもそも損害賠償を求めて提訴するという感覚が理解できません。 普通、ブレーキを踏むか、回避するか、そのいずれもできない場合は轢いてしまうという判断をするところでしょう。 しかし、自動車を運転する全ての人は、学ぶべき事故であり、判例です。 北海道の高速道路に限らず、街中でも犬や猫、野生動物が出て来ます。今後、その頻度は多くなってくるかもしれません。そのときにヘタな運転で対応されては、本人だけではなく周囲にも被害を及ぼすということが1つ。 それと、犬や猫、キツネなどの小動物であればまだ衝突してもそれら動物の被害だけで済むでしょうが、これが数十kgになる動物、例えばシカやイノシシ、ニホンカモシカ、ツキノワグマなどに衝突した場合は、スピードにも寄りますが車も運転者にも相応のダメージになります。 その場合は無保険車との事故や自損事故のようなもので、車両保険に入っていなければ車そのものの損害などもカバーできないでしょう。 大型動物が出るような場所では、そのようなリスクも考えての保険加入という時代になってくるかもしれませんね。 シカの増殖率は10〜20%ということですから、今はどこかほのぼのとする扱いの「街中にイノシシ(シカ)が出た」というTVニュースも、そのうち深刻な事故で笑えないか、めずらしくもなくて取りあげられない時代が来るかもしれません。 そうなったとき、それに対応するのが警察官では、対応しきれませんよ。警察官は、なんでも屋ではありません。
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私の住む宮城県ではアライグマの被害というのはほとんど聞かないのですが、全国的にはやはり急速に増えてきたようですね。 2月1日の中国新聞の記事ですが、これまで密度が高く無かった地域で急速に増えているというのが気になります。 アライグマ、島根全域に生息 '10/2/1 1970年代後半のアニメ放映で人気を呼んだアライグマが野生化し、島根県内全域に生息しているとみられることが、県中山間地域研究センター(飯南町)の調査で分かった。ペットとして飼われていたが捨てられて繁殖、生息域拡大の波が中国地方にも及んでいるとみられ、鳥取県東部でも数を増やしている。農作物を食べ荒らし生態系を乱すとして、自治体が対策に乗り出している。 アライグマは外来生物法で特定外来生物に指定されている。センターによると、2008年に7頭だった捕獲・交通事故死数は、昨年26頭に増えた。益田市での捕獲、目撃例が多く、ブドウ園の食害や民家に侵入して猫の餌をあさるケースが報告されている。 神社仏閣の天井裏に忍び込んだ痕跡が、柱についた特有のつめ跡などから確認できることから、センターは昨年9〜11月に県内全域の178カ所を調査。痕跡確認率は西部92%、県央部94%、東部89%で、県全体では91%(162カ所)だった。 アニメでは、愛くるしい姿が人気を集め、北米からペットとして輸入された。成獣になるとどう猛になるため、手に負えなくなって捨てられたという。 環境省の06年度調査では、36都道府県に分布。北海道、近畿、関東などで密度が高かった。中国5県でも生息情報があったが密度は高くなかった。ここ数年、山陰側で目撃例が増えている。 特定外来生物は、環境省に申請することで狩猟免許を持たない地域住民も捕獲できるようになる。中国地方では、鳥取市など鳥取県東部の5市町が08年度から順次この手続きをとり対策に乗り出している。島根県も近く防除指針を策定する。記事中の「アニメ」とは「あらいぐまラスカル」のことだと思うのですが、以前にも書いたと思いますがアニメの中でも主人公のラスカルの管理の悪さで近隣住民とトラブルになるということはちゃんと描かれており、「アニメの責任」ではなく、「それはキチンと理解できない愚か者の責任」ということは、まず大前提ですね。 生き物を途中で捨てたり逃がしたりする程度の飼い主では、きちんとアニメから教訓を学ぶこともできまいが。その意味では、そういうどうしようもない愚か者の欲望に火を付けたという責任はあるかもしれませんがね。 それにしても、アニメの放映が1970年代で、30年ほど前のこと。それでここ最近、急速に被害や目撃が増えているのだとしたら、いったいどうしてなのでしょうか? 生物が増殖する要素としては、「天敵がいない(少ない)」「食料が豊富」「気候が安定し、住処も確保できる」というものが考えられます。ここ近年で大きく変化しているといえば「地球温暖化」がすぐに出て来そうですが、むろん平均気温の上昇で、過ごしやすくなっているというのはあるでしょうね。それと、山間地の果樹を取らなくなったこと。空き家の増加でそこに住みつくようになったとか、そういう要素が思い浮かびます。 とにかく、こう目撃や被害が増えている原因の調査というのは急務でしょう。 私も趣味にしている自動撮影装置を、北海道でうまく使って成果を上げている事例がありました。 2月15日の北海道新聞の記事です。 アライグマ12匹捕獲 過去最多 カメラ移動の効果 ウトナイ湖 (02/15 13:20) 【苫小牧】苫小牧市植苗のウトナイ湖周辺で環境省苫小牧自然保護官事務所が昨年、駆除したアライグマは12匹と前年より5匹増えた。生態をより詳しく調査しようと、アライグマが通りそうな場所にわなと自動カメラを置き、2週間写らなければ場所を移動する方式が、捕獲数増にもつながった。(安藤徹) ウトナイ湖はラムサール条約登録湿地で、国指定鳥獣保護区。マガンやヒシクイなど希少な野鳥が多数飛来する。雑食性のアライグマは湖畔全域で生息が確認され、野鳥の被害が危惧(きぐ)されており、同事務所は2006年から駆除に乗り出した。 アライグマは雄1匹と雌4〜5匹が400〜500メートル四方で活動するため繁殖しやすいとみられる。 06年は約30カ所のわなで8匹を捕獲した。同事務所は07年、センサーで24時間対応できる自動カメラを11台導入、わなと一緒に設置した。ただ、捕獲数は07年が8匹、08年は7匹と横ばいだった。 09年は、より生態を詳しく調べようと、自動カメラとわなのセットの設置場所を8カ所に減らす一方、アライグマが14日間写らなければ別の場所に移動させ、写れば設置期間を延長することにした。 その結果、カメラとセットのわなの捕獲数は、08年の3匹から09年は5匹と増えた。1カ所当たりの捕獲数も0・28匹から0・63匹に。わなだけでの捕獲数も7匹あり、計12匹(雄9匹、雌3匹)と過去最多となった。 ただ、同事務所の石田守雄自然保護官は「カメラの活用だけでは駆除できない。自治体や市民のさらなる協力が不可欠」と話している。こういう捕獲方法というのもあるんですね。 記事中の写真を見ると、私も以前使っていた既製品のフィルムタイプのカメラのようですが、これは実際の現場では画像をすぐに確認できないなど、効率性が悪いですね。現像をして、写っているか否かを確認して、それでまた移設するかどうかを決めるということになるからです。 デジタルカメラタイプは高価なのに北海道では密漁をする人物によるものかこういう生態調査用のカメラを持ち去るという事件もあるようですし、またハードな扱いが可能でもあるフィルムタイプを選択せざるを得ないという事情もあるのかもしれません。 反面、自動撮影装置をそれこそ熊をはじめとする動物の密猟のために悪用されなければ良いな、と思います。 2月21日の時事通信の記事ですが、原産地でもあるはずの北米のニューヨークで、アライグマによる狂犬病感染の危険が報じられていました。 大都会に迫る狂犬病=アライグマの感染急増−NY 【ニューヨーク時事】高層ビルが林立する米ニューヨークのマンハッタン地区に、狂犬病の脅威が忍び寄っている。感染したアライグマが今年に入り、セントラルパークなどで相次いで確認され、人がかまれる被害も発生。関係機関が緊急対策に乗り出す事態となっている。 市保健当局によると、同地区で1月から1カ月余りの間に、狂犬病感染が確認されたアライグマは40匹。2008年までの6年間はコウモリ1匹の感染の報告例があるだけで、急増ぶりは明らかだ。 大半は年間2500万人が訪れるセントラルパークで「既に死んだか、症状が現れた状態」(市担当者)で見つかった。このため、市などは同公園を中心にわなを仕掛け、捕らえたアライグマにワクチンを接種し、まん延を食い止める方針を決めた。(2010/02/22-09:49)広大とは言え、ある程度範囲の絞られ周囲の自然環境から分断されているセントラルパークですから、捕獲→ワクチン接種で地道に対策をしていけば対応できると思います。 しかし、ニューヨークでも野良犬や他の動物もいるでしょうから、そちらへの感染拡大は懸念されますね。このアライグマたちに急速に狂犬病が広まった理由というのもハッキリしません。 ハッキリしないと言えば、今日の読売新聞の記事に、北海道のアライグマで虫歯がまん延しているという非常に興味深い記事がありました。
野生アライグマに虫歯?まん延、原因は不明 北海道の支笏洞爺国立公園内に生息する「アライグマ」の間で、虫歯のような症状が広まっていることが、国立公園の維持管理をしている自然公園財団支笏湖支部の調査で分かった。 野生動物は一般的に虫歯にかかりにくいとされ、原因は不明。専門家も首をかしげている。 同財団は、アライグマが特定外来生物に指定された2005年以降、箱ワナを使い、支笏湖周辺で駆除活動を始めた。これまで約130頭を捕獲し、約20頭の頭骨を調べた。 その結果、半数の10頭から奥歯に虫歯のような痕跡が見つかった。臼歯のエナメル質が溶けて虫食い状態になったり、歯が大きく崩れたりしている個体があった。中には上あごと下あごに計6本も虫食い状態の歯のある個体も見つかった。 動物園などで長期飼育している動物やペットは、歯垢(しこう)細菌が原因で虫歯になることがあるが、野生動物が虫歯になるのはまれ。同財団によると、捕獲したアライグマの大半は人里から離れた場所で生息し、人間の出した残飯を食べている形跡もないという。 歯学博士で、北里大獣医学部准教授の進藤順治さんは「野生動物に、これほど高い割合で虫歯が発生するのは通常なら考えられない。アライグマを取り巻く環境に、何らかの問題が起きている可能性がある」と話している。 (2010年2月23日15時45分 読売新聞)最初記事見出しを見たときに、人間が面白半分に与えた食べ物や残飯による影響と思ったのですが、どうもそうではないようです。 なぜ、このように虫歯が急に出てきたのか?ということの原因が、推測さえできません。 この症状がアライグマ以外の野生動物にもまん延してはいないか、大いに気になります。 虫歯の症状はご存じの方も多いでしょうが、非常に痛みます。アライグマの神経系統も同じく激痛に感じるのかわかりませんが、痛みや食べ物が接種できないことで行動に異常が生じたりしなければ良いのですが。 |
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農作物が野生動物に荒らされることは昨日書きましたが、では対策はどうなっているのでしょうか? 病気や害虫であれば薬剤を噴霧することで一定の効果が現れる(是非は別として)のですが、野生動物を根絶やしにすることはさすがに誰からも支持はされないでしょう。 そうなると、「共存」の道としては、農作物を食べられないように柵で覆うとか、忌避剤を散布するという方法になります。古くから「かかし」がありますね。 しかし、広い農地を柵で覆うということは費用がかかり、一戸の農家がそれを行うのは非常に大変です。ここで、住民の財産を守るという点や、農地の維持、野生動物保護の観点から、行政からの補助金といった制度があります。 最新の、あるいは様々な取り組みをご紹介しましょう。 2月10日の中日新聞の記事です。 イノシシ撃退に激辛大作戦 トウガラシ成分入れロープ、シート 【中略】 現場は鳥獣保護法に基づく「定光寺鳥獣保護区」で、国指定特別天然記念物ニホンカモシカも生息。イノシシの駆除はできるが、けがをさせるわなや猟銃は使えない。市や農事組合などでつくる市鳥獣害対策連絡協議会はけがをしない「箱わな」を所有しているが、ほかの地域で使用中だ。 そこで、市から依頼を受けた瀬戸旭地区農業改良推進協議会が、駆除効果があるとされるトウガラシ成分を染み込ませたロープやシートを、民家周辺に張ってみることにした。 市産業課は「捕獲が第一だが、箱わなが足りない。効果があれば、箱わなが設置できるまでのつなぎとして、農家に紹介したい」と期待を寄せていた。カウンターアソールトのようなカプサイシンスプレーは強力な刺激を与えるから忌避効果がありますが、ロープやシートに塗ったものがどれほどの効果と持続性があるか、記事中にもあるように「つなぎ」かもしれません。今後の効果検証が待たれますね。 2月10日の信濃毎日新聞の記事は、作付する作物そのものが忌避されるものにしようという取組を紹介しています。 中山間地でサンショウやユーカリ 鳥獣被害対策で注目 上伊那地方の中山間地で、野生鳥獣による被害を防ぎながら収入も確保しようと、被害に遭いにくいとされるサンショウやユーカリを栽培する試みが広がっている。味や香りに刺激があり、葉にとげがあるといった特性をシカやイノシシが避ける傾向があるらしい。効果が証明されているわけではないが、営農組合や農協による取り組みも始まっている。 【中略】 県農業試験場(須坂市)は「被害に遭わないと言われる作物でも、動物の学習状況や周囲の植生などが影響するため、鳥獣が避けているのか明確には分からない」と指摘。県環境保全研究所(長野市)は、オーストラリア原産のユーカリが在来種を脅かさないよう慎重な管理が必要としている。いつものことながら、最後に他の視点からの冷静な意見も掲載するなど、信濃毎日新聞は自然関係の報道においては非常に良い記事を書かれると思います。 続いては、2月1日の朝日新聞の記事から。 鷹匠少女に依頼殺到 「ピピッ」とひと吹き、害鳥駆除 2010年2月1日1時31分 女子中学生の鷹匠(たかじょう)が、タカとともに各地を飛び回っている。佐賀県武雄市の石橋美里さん(15)。笛の合図でタカを自在に操り、ハトやカラスを追い払う。害鳥に悩む九州や四国のごみ処分場や大学から、依頼が相次いでいる。 【中略】 害鳥に悩む各地から「出動依頼」が次々に入る。カラスの被害を受ける四国のごみ処分場やハトの糞(ふん)害に悲鳴を上げる福岡市の大学など、昨年は九州を中心に約30回出向いて、タカを飛ばした。実費をもらいながらの活動だ。 「継続的にやれば、タカが飛んだ場所は生態系が変わる。原始的だが、効果も大きい」と秀敏さん。航空機のエンジンに鳥が衝突する「バードストライク」の予防にと、佐賀空港でタカを飛ばすテストをしたこともあるという。 通常の害鳥駆除では、鳥を銃で撃ったり、わなで捕獲したりする。だが、タカは飛ばすだけで一定の効果が出る。美里さんは、自身の活動の意義を「無駄に命を落とさずに済む」と話す。その一方、自分が飼うタカの命は、エサとして与えるヒヨコの命に支えられている。「いつも命に感謝しています」 【後略】天敵を利用する方法は害虫駆除でも用いられる方法です。 この場合は「脅し」ですが、タカも対象となる「害鳥」も傷つかないのはいいことかもしれません。しかし、実際のところ、飛行するだけで「害鳥」を攻撃するようなそぶりが無かったり、あるいは定期的に飛ばない限りは、効果は一過性かもしれません。 また、一番気になることは、これはどの対策でもそうですが、一か所で有効に追い払ったところで、その個体群は他の農地に押し寄せるだけではないか?ということですね。 こういうことを考えると、農作物被害への対策は、「その地域に自然の食べ物を食べる状態だけで生きていける数がどれくらいなのか?」ということを算出し、そして「今、実際にはその地域にはどれくらいの数が生きているのか?」を調査し、その結果から、「どのくらいの数であれば『適正』と判断するのか?」や「余剰となった場合は駆除するのか?捕獲するのか?」ということを常に調査研究し、対応していかなければならないということを痛感します。 2月10日の大分合同新聞の記事には、ヤギを利用してイノシシ防除とありました。 ヤギの食性利用して イノシシ被害対策 [2010年02月10日 09:32] 玖珠町鳥獣被害対策協議会は、1月からヤギを活用してイノシシのすみかとなるやぶをなくす事業に取り組んでいる。 農林水産省の鳥獣害防止総合支援事業の一環で先月18日から実施。町内岩室の農業梶原岩治さん(78)が町内帆足に所有する耕作放棄地約200アールで、ヤギ2匹を使って生い茂ったササなどを食べさせている。周囲に電気柵を設置し、ヤギが野犬に襲われないような対策も取っている。 ヤギの借り料や電気柵の設置費用は国からの補助金。梶原さん方での事業は3月末までの予定になっている。現地を訪れた梶原さんは「よく食べている。かわいいし、また頼みたい」と話した。 協議会では「耕作放棄地は増えており、イノシシがすみかにしたり、通り道にして隣接する田んぼなどを荒らしている。ヤギはあと2匹おり、要望があれば貸し出したい」としている。問い合わせは町農林業振興課(TEL0973・72・7164)へ。田んぼの除草にアイガモを利用するような方法ですね。 耕作放棄地がイノシシの住処になることも多いことを考えると、こういうヤブ払いは効果が期待できそうです。 2月2日付けの朝日新聞には、モンキードッグを利用した取り組みが表彰されたという記事があります(現在リンク切れ)。 モンキードッグで農水大臣賞/大町市 2010年02月02日 サルの農作物被害を防ぐため、全国に先駆けて「モンキードッグ」を導入した大町市が、鳥獣被害対策優良活動表彰で初の農林水産大臣賞を受賞することが決まった。9日、東京都内で表彰式がある。 同省は野生鳥獣による農林水産被害が全国的に広がっていることから、今回、対策に取り組み、被害防止に貢献している人や団体を表彰し、取り組みを広く紹介することになった。 大町市の授賞理由は、モンキードッグの先駆的な取り組みなど地域が一体となった総合的対策。サルに発信器を着け、行動域を監視するとともに、農家の犬を訓練してサルの追い払いを実施している。2005年からこれまでに22頭を育成した。各地の自治体などの視察が絶えず、モンキードッグは全国的な広がりを見せている。 また、06年にツキノワグマが異常に多く出没したのをきっかけに、間伐ややぶの刈り払いで里山を整備し、人里との緩衝帯をつくっている。自治会を中心に、サルの生態の学習会や放置されたカキの実の収穫、また、サルにつけた発信器の電波を受信すると集落のサイレンが鳴って追い払うしくみ作りなど、地域ぐるみでの総合的な活動が評価された。 降籏和幸・市産業観光部長は「今後とも地域に呼びかけて複合的な対策を続けていきたい」と話している。(山田新)この地域が表彰されたというのは、モンキードッグを用いたからではなく、「地域が一体となって総合的な対策に取り組んだ」ということです。 病害虫駆除もそうですが、こういう対策は一戸の農家が行っただけでは抜本的な解決とは言えません。 地域全体が推し進めることで、農作物依存から脱却させることができ、その地域の中での自然の食べ物の量の範囲で生きていける数が自然と調整されていくものだと思います。 |
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先日、北海道根室市に冬眠しないヒグマが出没していることを紹介した際に、帯広市では農業被害額が急速に増加しており特にヒグマの出没範囲が急激に広がっているということにも触れました。 急速に農業被害が増加しているのはこの北海道だけではなく、例えば富山県ではイノシシの被害が急増しているようです。 2月8日の北日本放送(KNB)のニュース記事です。 2010 年 02 月 08 日 14:45 現在 農作物被害、イノシシによる被害最大に 去年、県内で起きた鳥獣による農作物被害のうち、イノシシによる被害額はおよそ3千400万円で、鳥獣の中で最も大きくなったことが分かりました。 県農林水産部のまとめによりますと、去年、県内で起きた鳥獣による農作物被害額は、1億4626万円で、調査を始めた平成11年以降では平成14年の1億4764万に次ぐ金額となりました。 鳥獣の種類別ではイノシシによる被害額が前の年よりも600万円程多い3458万円となり、最も大きくなりました。 イノシシによる被害額は平成17年には89万円でしたが、その後急増していてわずか4年間で40倍程になったことになります。 被害はほとんどがイネを踏み荒らして生じたものだということです。 【後略】イノシシの場合は、稲を食べるだけではなく、踏み倒したり、強いにおいを残してしまうなど、食べられた量以上に被害を受けることがあります。 被害金額が増加したことが即、イノシシの数が増加しているという結論にはなりません。栽培している農作物の価格が高騰しているためや、より利益の大きい農作物に転換した結果、金額が大きくなったからかもしれないからです。 しかし、なんにせよ、被害額は莫大であり、そして近年、各地域においてそれまで少なかった動物からの被害が大きくなっているということは間違いないようです。 イノシシのような雑食性ということは、それだけ生き残りに有利ということで、まして特にこれと言った天敵がおらず、繁殖力もあるために急増しやすいのか、イノシシによる農作物被害増加は全国的な傾向にあるようです。 仙台市内でも、急速に被害が増加しているという記事が、2月14日付けの読売新聞に掲載されました。 イノシシ農作物被害急増 03年度11件→今年度383件 仙台市内でイノシシによる農業被害が急増している。付近に生息するイノシシが大量に繁殖したとみられ、被害額は5年前に比べて約200倍。市や農家は、田畑を柵で囲ったり、ワナをしかけたりして対応に苦慮している。 市によると、以前はイノシシによる農業被害は県南がほとんどで、2003年度の市内の被害は11件、2万円だった。06年度頃から増え始め、08年度は210件、487万円に上った。今年度も12月までに383件、446万円に達した。 【後略】1月13日付けの北國新聞の記事では、石川県の様子を伝えています。 クマ目撃は激減、イノシシは活発 昨年の石川県内 昨年1年間に石川県に寄せられたツキノワグマの目撃・痕跡件数は74件で、2008年の半分以下だったことが、県の12日までのまとめで分かった。奥山の木の実が豊富だったためで、里山に大量出没した06年の約7分の1に激減した。これに対し、雑食性のイノシシは新たな餌場を求めて生息域を拡大、今後も市街地への出没が懸念されており、関係者の間で警戒が強まっている。 【中略】 県が昨年8〜9月に行ったクマの餌資源調査では、ブナとミズナラが「豊作」で、餌を求めて平野部に下りてくる可能性は少ないと予想。「木の実の実り具合が良く、予測が当たった」(自然保護課)としている。 一方、イノシシは年間捕獲数が数頭にすぎなかった1998年度以降、増加の一途をたどり、08年度は1013頭を数えた。イノシシは30センチ以上の積雪が続けば生息が困難になるとされ、県では温暖化の影響で積雪が少なくなり、生存率が向上し、個体数の増えたイノシシが移動、生息域を広げていると分析している。 【後略】と、あります。 自然のリズムにより起きる木の実の豊凶で出没が大きく影響されるならば、「奥山が荒れて、食べ物が少なくなったから、山を下りてくる熊が多くなったのだ」という考え方があまりに短絡的な意見であるということになります。 仮に日本中の林業地の針葉樹林を広葉樹に変えたところで、多くの樹種での不作が重なってしまえば同じく山から下りてくるでしょうし、また、木の実の不作・豊作に関係なく、人の農作地の管理に手が回らなければやはり誘われて下りてくるでしょう。 単純な問題では、無いのです。 一方、イノシシの捕獲頭数が増加したことも、即「数が増えている」とは必ずしも言い切れません(まず、増えていると思いますが)。「農地に味をしめた個体が増えたから」かもしれませんし、ワナの誘引物に誘われた結果とか、ワナの設置数が多くなって捕獲できる数が増えたからかもしれないからです。 和歌山県では、アライグマの被害が急増しているということです。 2月7日付けの毎日新聞の記事です。 紀州ジグザグ:野に放たれたアライグマ 農業被害「もうたまらん」 /和歌山 ◇田辺市、捕獲累計1000頭を突破 【中略】 県によると、県内のアライグマ捕獲頭数は05〜08年度、693頭▽736頭▽739頭▽1077頭−−と増え続けた。県内30市町村の大半で捕獲報告があり、それぞれの年度の農業被害額は、3065万円▽1663万円▽2887万円▽3332万円−−にのぼる。県自然環境室によると、05年10月の「外来生物法」施行後は、アライグマの新たな飼育は禁じられているが、繁殖力が強いと見られる。 田辺市では02年夏から捕獲が始まった。市ふるさと自然公園センター嘱託職員の鈴木和男さん(53)=ほ乳類学=は「農業被害が目立ち始め、『もうたまらん』となったのでしょう」と当時を振り返る。捕獲数はひと月10〜20頭程度で推移し、昨年10月に1000頭を突破、今月1日現在1064頭に達した。 【中略】 同公園センターの鈴木さんは02年夏以降、捕獲されたすべてのアライグマの性別▽年齢▽DNA▽病気▽寄生虫の有無−−を調べており、「他の動物や人にとって危険な寄生虫もいる。野生動物が身近になれば、それだけ動物と人間の病気が接近する」と指摘。「増加にブレーキをかけることが大事」とし、「生ゴミをあさられたり家の中に入って来られるようになると、生活環境への被害が始まる」と警告している。 鈴木さんの心配を尻目に、昨年末にはJR紀伊田辺駅近くの商店街の屋上で、今月1日には市役所近くの市営住宅のそばの松林で、それぞれ箱わなにかかった。この記事のポイントは、野生動物が他の生き物や人間と接する機会が増えることでの、病気や寄生虫など、生活環境への警告という点です。 岩手県ではハクビシンの被害が急増しているという記事も、1月19日の岩手日報は伝えていますが、こちらも注目です。 農家困った、ハクビシン食害急増 県、制度見直しへ 県内でハクビシンの農作物被害が深刻になりつつある。2007年度から気仙地域や一関市でトウモロコシや果物などの食害が出始め、09年度も過去を大きく上回る被害が見込まれる。網を張っても畑に入り込む「新顔の厄介者」に効果的な駆除方法は少ない。武器となる「箱わな」は、設置に必要な許可制度が実態に合っておらず、県は早急に見直しを検討する方針だ。 県のまとめでは、ハクビシンの農業被害額は06年度まで確認されなかったが、07年度は164万円、08年度は315万円と急増。トウモロコシやトマト、スイカ、メロンなどの被害が目立つ。 有害捕獲数も08年度38頭だったものの09年度は10月末現在で105頭に上る。市町村別にみると住田町、一関市、大船渡市、陸前高田市が多くなっている。 【中略】 自宅の屋根裏に住みつかれた大船渡市三陸町綾里の熊谷静子さん(78)は「夜はうるさくて眠れない。イチゴもトマトも全部やられた。(食害で長年悩まされる)シカより悪質だ」と訴える。 【中略】 比較的効果の高い箱わなだが、有害駆除の許可を得るためには、猟銃使用者と同じ保険に加入するなど高額な経費がかかる。狩猟期間(11月15日〜2月末)は、住宅敷地内などでの箱わな使用に狩猟免許、狩猟者登録が不要なケースもあるが、この期間は農業被害も少なく、実態に即していない。 「ハクビシンの駆除だけしたい」という人にとって現行制度はハードルが高く、大船渡市は有資格の市職員がわなを設置している。ただ、被害がさらに拡大すれば、手が回らない事態も懸念される。 県自然保護課の立花良孝総括課長は「現行の有害駆除の許可制度は実態に合わなくなっており、できるだけ早期に見直したい」としている。 【後略】農作物を自家消費もしている場合は、栽培物が失われただけではなく、その失われたものを「新たに購入する」という費用も発生してしまいます。 また、この記事に出ている被害者の方のコメントのように、精神的被害は忘れてはならない要素です。想像してみましょう。何ヶ月かかけて、苦労して育てた作物が収穫するときの喜び…それが、獣害により喜びを奪われるどころか踏みにじられたときの気持ち。 社会的な損失として考えられるのは、被害を受けたりそれを伝え聴いた農家が「もう、作る気がしない」という嫌気が差し意欲が減退し農業を諦めたりすることで、その農作物の収量確保ができなくなったり、耕作放棄地の増加ということにもなります。 こういう問題は、単に「被害額」だけの問題ではないのですね。 さらに、動物の行動範囲の広域化は、農業以外にも様々な事故や被害をもたらします。
2月11日の信濃毎日新聞の記事が、いつものように非常に良い着眼点の記事を配信してくれました。 JR飯田線でシカと衝突4年で5倍 JR東海、対策検討 長野、静岡県境の山あいを走るJR飯田線(辰野−豊橋間195・7キロ、全94駅)で、走行列車とシカがぶつかる事故が本年度52件(9日現在)発生し、4年前の5倍以上になっていることが分かった。飯田下伊那地域でシカが急増しているのに伴う傾向とみられ、食害にとどまらず社会生活への影響を広げている格好。乗客の安全を守り、運行の遅れや車体の故障を防ぐため、JR東海はシカとの衝突を避ける対策の検討を始めた。 【後略】農業だけの問題ではもはや無いのです。 それらが急増している傾向にあるのは、強い危機感を持つべきことです。 |




