山本甲士 / もの書き生活

日常のどうでもいいことをつづっております。暇つぶしにどうぞ。

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      『がんこスーパー』 ハルキ文庫 680円+税

 ここ数年の間に、近所のスーパーが何軒か閉店し、そのたびに夫婦間で「あそこ、潰れたよ」「やっぱりかー」などと話していた。いずれも生鮮食料品が充実しているとはいえず、パート従業員さんたちは不愛想で、人気店と比べると店内が清潔感に欠けていた。こういう店は、レジに行列ができて隣のレジが新たに開放されたとき、一番後ろに並んでいた客がささっと移動して先に精算することを許したりするので、先に並んでいた客の不評を買ったりする。
 その潰れた跡地の一つにチェーン店のドラッグストアが建った。スーパーの機能も備えていて、地元産野菜のコーナーもある。こちらはパートさんたちの愛想がよくて顔を見てちゃんと挨拶をしてくれる。新たにレジを開放するときは必ず二番目に並んでいる客に声をかけて誘導するので、誰も嫌な気分にならない。
 そういった出来事の体験と前後して、たまたまスーパーや道の駅にまつわるドキュメント番組をいくつか見る機会があった。いずれも成功例として紹介されていたわけだが、最初から上手くいっていたわけではなく、どん底から復活を告げたケースが目立った。
 ある個人経営のスーパーは、価格競争に巻き込まれて窮地に陥ったが、日々増えてゆく売れ残り野菜がもったいなくて社長夫人がほうれん草のおひたしや芋の煮っころがしとなどの総菜にしたところ、料理の腕前もあって人気が広まり、ついには開店前に行列ができるほどになった。一方の社長さんも、毎年のそれぞれの時期の気候と品目別売上をこまめにメモして商品ロスを把握、毎日きれいに棚が空になるという達人技をものにした。
 他にも、経営者が従業員に命令するのをやめて「ありがとう」と声をかけるようにしただけで店の雰囲気が大きく変わってパートさんたちがさまざまなアイデアを出してくれるようになった、地元の小規模農家さんたちの野菜を扱うようになったらその家族や知り合いなども客になってくれて売り上げだ伸びた、などの実例が紹介されていた。
 もの書きという仕事柄、そういった話はいつか小説のエピソードとして使えるかもしれないと思いメモを取っておいたのだが、集まったメモを並べて眺めていて気づいた。
 これ、小説のエピソードとかじゃなくて、丸まんま、一本の小説にできんじゃね?
 かくして、リストラ対象となって潰れかけていた弱小スーパーに副店長として派遣された冴えない中年男が、最初はやる気がなかったパートさんたちと力を合わせて、どのようにして巻き返しを図ってゆくか、という逆転劇小説が生まれたのでありました。
 よろしくね。

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